もしも北郷一刀が東方の世界に転生したら。【打ち切り】 作:独田圭(ドクタケ)
◇
一刀Side
一刀「…いきなりで本当に悪いんだけどさぁ、……あれから10年の月日が経った。この小説もプロローグを除けば記念すべき10話目だからさぁ、それに合わせて10年端折ったって訳。そういう事でアーユーOK?」
和「イヤ、あの……言ってる意味が分かりませんが…」
一刀「この10年で変わった事って言えば、嘗て俺が保護した人間の赤ん坊が成長したって事ぐらいかな。人間の赤ん坊がだぞ!!信じられると思うか?」
和「あの、それ……当たり前です。」
??「おじさーん、一緒に遊ぼうよ。」
一刀「まぁその所為か現在進行形でこの娘…えと、名前は汐里(しおり)って言うがその汐里からおじさん扱いを受けております。和の時はさん付けなのに……解せぬ。」
和「……というか、さっきから誰に向かって話してるんですか?」
一刀「決まってるだろ、この小説読んでる読者達に言ってるんだよ。」
和「さらっとメタ発言しないで下さい!!」
一刀「…えっ、もう本編に入ってんの?」
和「今頃気付いたんですか!?」
諏訪子「朝早くから何やってんだい…」←寝起き
汐里「おじさんオモシローイ。」
一刀「ダーハッハッハッ。んじゃ皆起きた事だし朝飯にするかぁ。」
諏訪子「和ぃ〜、早くご飯作って〜。」
和「それは良いんですけど……紫様は?」
一刀・諏訪子・汐里「「「あっ……」」」
◇
一刀「…ゆかりーん、頼むから機嫌直してくれよぉ。」
紫「ムー……」
俺達が存在を綺麗さっぱり忘れてた所為で朝っぱらから至極ご機嫌斜めなゆかりんを宥めている今現在。ちなみに今では朝飯は和が作る事がお決まりとなっている。その腕前はミシュランガイドで最低でも星3つは付くと俺は思う。
今こそ声を大にして言いたい。
頂きました!星3つです!!
実は俺にも一つだけ得意な料理はあるがあれは料理っつーよりおやつに近いし、つーかそれ以前に材料ねーし。
汐里「和さん、料理上手ー。」
和「お褒め頂き大変恐縮です。」
子供の汐里が相手でも恭しく敬語を使う我が従者和。以前和に「子供だからタメ口でも良いだろ。」と言ってはみたが和は「従者としての体面を重視していますので。」と答え、頑なにそれを拒んだ。
話はだいぶ逸れるが神社や寺の料理って精進料理のイメージがあったが普通に肉や魚が出てきてちとびっくりした。後、和は鶏肉を食べる事に抵抗が無いようでそれどころか庭でニワトリを何の躊躇も無しに捌いていた所を見て何とも言えなくなったのはここだけの話な。
諏訪子「和って鳩の妖怪だよね?なのに鶏肉食べるんだ…」
和「鳩の肉以外ならば食べます。」
ハッキリと断言するが、俺達がこの先どれだけ長く生きようがはよ死のうが鳩の肉を食べる機会は永久に来ないだろうな。和には悪いが食えるものなら是非とも食ってみたい。
長い野宿生活でゲテモノばっかり食ってきたから鳩の肉も普通の鶏肉と大差ない……筈。
一刀「…って思ってるけど俺はバカ舌なのかねぇ?」
和「間違いなくバカ舌だと思います。」
Oh、クラウディア!!和に即答されちゃった。やっぱ野宿なんかするもんじゃねぇな。
諏訪子「でもさぁ、最初は鶏肉を食べる事に抵抗があったんじゃないの?」
和「鶏肉は高タンパクでありながら他の肉と違って低カロリーですので昔から好んで食べていました。特別抵抗があったという訳ではありません。」
諏訪子「…タンパク?カロリー?」
他の鳥妖怪が聞いたら背筋も凍る様な事を平気で言ってるよこの娘!?特に鰻焼いてる雀妖怪が聞いたら卒倒するレベルだぞ。
……ってあれ?この知識どっから湧いて出てきた?イヤそれよりもだ……
一刀「…つーか何でタンパク質とかカロリーとかの言葉知ってんだ?」←小声
和「えっ!?…それは、その……本に書いてあったので…」
一刀「あっそう…」
…そんな書物この時代にあったっけ?俺の記憶じゃそんなもん無かったような気がするが…
思えば俺と和のファーストコンタクトの時も俺は初対面だったのに対して和はまるで俺を知ってるかの様な接し方だったな。
当時はこんな可愛い娘が俺の従者!?…って完全に舞い上がってたから深くは考えてなかったが今思うとどうも釈然としない。
和ってまさか……
紫「一刀ぉ、どうしたの?」
汐里「おじさん大丈夫?」
一刀「……ん?…あぁ悪い。」
イカンイカン、また1人で考え込んでしまった。柄にもねぇな。即断即決、人生行き当たりばったりが俺のモットーだろうが。
紫「何か考え事?」
諏訪子「悩みがあるなら聞くよ。」
一刀「イヤ、大した事じゃないさ。ただ前々から考えてた事なんだが……
…う○ことう○ちの違いってなんだろうなぁって。」
諏訪子「食事中に何て事考えてるんだい!!」ガスッ
一刀「ぶぶっ!!」ドンガラガッシャーン
イテテ…また鉄輪で殴られたよ。確かに下品だった事は認めるがなにも鉄輪で殴らなくたって良いだろ…
食事中の皆、マジでゴメンな。
一刀「ゔがぁ〜…頭が割れる…」
諏訪子「バ一刀は放っといて早く食べるよ。」
和「そうですね。」
…俺の扱い酷えぇ!!
◇
昼過ぎ…
一刀「…という事で今から汐里に勉強を教える。行くぞぉ〜、レッツ・ホニャララ!!」ガッツポーズ
汐里「ホニャララ〜!!」ガッツポーズ
和「ホニャ…って汐里様までやらなくて良いです!!」
さぁ始まりましたよぉ〜。北郷一刀の世界一受けてみようかなぁ〜と思うかも知れない授業!!
まだ学校という教育施設が無いこの時代、子供に勉強を教えるのは本来親の役目。
だが汐里には両親が居ない為、俺達がその代わりをする事になる。立ち位置的には校長が俺で、教頭が和で、汐里はぁ……まぁ学級委員長で良いや。
俺達とは言ってもゆかりんは人に教えを説ける程見聞を広めておらず諏訪ちんは国中の見回りと傭兵部隊の調練やらで忙しい。つー訳で居候で尚且つ暇を持て余してる俺と和にそのお鉢が回ってきたのさ。
幸いにも俺は前世ではそれなりに頭は良かった方で及川に良く勉強を教えていたので何も問題は無い。
和は……言わなくても分かるだろ?
和「一刀様、分かっているとは思いますが汐里様に変な事を吹き込まないで下さいね。」
一刀「わぁーってるって。俺もやる時はやるって。」
和「なら良いのですが…」
汐里「おじさーん、子供ってどうやって出来るの?」
おーっと!?いきなりそう来たか。
子供なら誰もが一度は抱くであろう素朴な疑問。ではわたくし北郷一刀先生が分かりやすく教えてしんぜよう。
一刀「…そうだなぁ、じゃあまず教える前にあるお話をしようか。」
和「あの……一刀様?」
一刀「むか〜しむか〜しある所に一組の夫婦がおりました。その夫婦は結婚してもう何年も経ちますが未だに子供を授かる事が出来ずに悩んでました。
「私達、何時になったら子供が出来るの?」
「うーむ、どうしたものか…」
夫婦はあらゆる方法を試してみたが子供が出来る事は無く途方に暮れていました。もう諦めようとしたその時!!夫が閃きました。
「そうだ!!今夜子供を作ろう。」
「えっ?でもどうやって?」
「俺に良い考えがある。」
その夜、夫婦は寝床で愛し合いました。
それから一年後、二人の間に無事子供が産まれましたとさ、めでたしめでたし。
…とまぁこんな感じの話だが、ここで重要な事が一つ。この夫婦は夜寝床である事をしたから子供が出来た訳なんだが…さて汐里、そのある事とは何だと思う?」
和「(とてつもなく嫌な予感がするんですけど…)」
汐里「う〜ん…………わかんなーい。おじさん、答え教えてぇ〜。」
…ギブアップか。流石に子供の汐里には難易度が高過ぎたかな?もう少し考えて欲しかったという思いはあるがまぁ仕方無い。
一刀「何、答えは簡単さ。正解は夜に夫婦は寝床で既成事実という名の○○○(ピー音)をだなぁ…」
和「それを言ってはいけませーん!!」
一刀「何故ダメなんだ!?これ以上無い位素晴らしい回答だろうが!!」
和「もっと他にあるじゃないですか!!例えばコウノトリが子宝を運んできたとか…」
一刀「なるほど、二人の体の中に居るコウノトリが愛し合ってる間に既成事実という…」
和「一旦そこから離れて下さーい!!」
顔をこれでもかという位真っ赤にさせて何処ぞのはわあわ軍師並にワタワタさせてる和。
…和がここまで慌てるのは珍しいな、一体誰の所為だぁ?…まぁ俺の所為だけど。
汐里「でも、諏訪子様に同じ事聞いたら諏訪子様も「コウノトリが子供を運んでくるんだよ。」って言ってたよ。」
一刀「諏訪ちんまで何言ってんだ。…良いか汐里、悪い大人の言う事を信じちゃダメだぞぉ。コウノトリってのはなぁ子宝も子供も、そんなもんは一切運んで来ない!!そんな事がある訳無い!!」
和「子供相手にとんでもない事言ってるんですけどこの人!!」
一刀「甘いぞ和!!大人ってのは子供に現実を教えてやらなければいけないんだぞぉ。ありもしない事を言うのは言語道断、万死に値する!!」
和「それは時と場合によるんです!!」
一刀「良いか汐里、悪い大人程自分の都合の良い様に解釈するもんなんだ。だから汐里はそんな大人になっちゃダメだぞ。」
汐里「はーい。」
和「…その言葉、そっくりそのまま一刀様にお返しします。」ワナワナ
……あっ、コレ結構マズイ展開じゃね(汗)?
肩をワナワナと震わせる和を見て俺の頭の中で警鐘が鳴った。マズイ、これは非常にマズイ……
一刀「汐里、ちょっと良いか。」
汐里「?」
状況を把握出来てない汐里を近くへ呼ぶ。トテトテとやって来る姿に癒されるが今はそうも言ってられない。
和を完全に怒らせてしまったのは100%俺が原因である。今日だけではなくこれまで散々やらかしてきた所為で和の堪忍袋の緖が遂に切れた。だからせめて……せめて最後くらいは汐里にちゃんとした事を教えねば。
一刀「さて問題、このヤバイ状況を切り抜けるにはどうしたら良いと思う?」
汐里「わかんな〜い。」
一刀「分からんか、正解はだな……
…逃げるんだよぉ〜!!」ダッシュ‼
汐里「はーい。」ダッシュ‼
和「待ちなさーい!!」ダッシュ‼
目指すは甘味堂、あそこまで逃げて和に甘い物を食べさせるんだ。そうすれば和も機嫌を直してくれる筈!!
…が、俺の必死の逃亡も虚しく白鳩の姿になって追っかけてきた和に呆気なく捕まり処刑されましたとさ。
もしも北郷一刀が東方の世界に転生したら
【完結】
◇
一刀「完結…じゃねえぇだろ!!まだ原作の時間軸にも行ってねぇのに何勝手に主人公殺してんだDoctor K!!」←ズタボロ
汐里「おじさーん、もう甘味堂に着いたよー。」クイクイ
あれから俺は汐里を抱えて懸命に逃げた。それはもう風よりも速かったと断言しても良い。
だが白鳩状態の和と俺とではまさしく兎と亀と呼ぶに相応しく、全力疾走も及ばずあっという間に捕まりました。
それから俺は和の気が済むまで嘴で脳天つつかれまくって今に至る。
諏訪ちんの様に鉄輪で渾身の一撃を喰らうのもきついが地味に痛い攻撃を永遠と続くと肉体的のみならず精神的にもしんどい物がある。まぁ要するに俺こと北郷一刀のSAN値はガリガリに削られたという事です。
一刀「和ぃ〜、今日は俺が奢るからこれで勘弁してくれ…」
和「食べ物で釣られている様な気がしないでもありませんが…仕方がありませんね。」
和に許して貰えたところで気持ち切り替えて思う存分甘い物を堪能する事にしよう。
甘味堂という名の甘味処は俺達も何度か足繁く通っている店で今やすっかりこの店の常連客となっている。おはぎや大福、団子など、扱ってるメニューは多種多様。疲れた時は糖分を摂取するのが良いんですか?良いんです!!
一刀「という事でお姉さん、三色団子を【4つ】くれ。」
和・汐里「「??」」
店員「はぁ……かしこまりました。」
俺以外の皆は全員「何言ってんのコイツ?」みたいな顔してるけど俺は騙されんぞぉ。
何故なら今この場に甘味堂という言葉につられてしれっと付いて来た奴がもう1人いる事に気付いてるからな。
店員「お待たせしました。」
来た来た。じゃあ早速頂くとしようかねぇ。
4つの団子の内2つを手に取る。1つは当然俺の物、そしてもう1つは…
一刀「ほ〜れほれ、お団子さんだよー。」
紫「♪〜」モグモグ
和「…そういう事ですか。」
そういう事なんでスーザン・ボ○ル。イヤ流石にね、後に式神を得て幻想郷を創り妖怪の賢者と呼ばれる様になるゆかりんを二度も忘れるという失態をやらかしたら全国のゆかりんファンから消されかねん!!
……えっ、それ言っちゃダメ?イヤだって台本に書いてあったんだよ?それを俺が言わなきゃダメなんだよ?俺の身も察してよぉ…
汐里「ねぇおじさん、三色団子って何で出来てるの?」
おっ、早速子供が何かあった時に必ず聞く「何でアレはアレなの?」という質問シリーズ。今回は三色団子は何で出来てるのか?さて考えてみよう。
前世では合成着色料やら何やらが使われていたがこの世界…というよりこの時代にそんなもんは無い。即ち、この三色団子は最初っから最後まで全て手作りという事だ。
目を瞑って味を噛み締めていれば自ずと解る筈だ。素材の味という物が…
一刀「…つまりアレだ。下の団子から順に答えを言っていくとだなぁ…
よもぎ、白玉粉プラス白玉粉、そしてカービィだ。」
和「最後かなりおかしいんですけど!!しかも白玉粉プラス白玉粉って何ですか!?」
一刀「カービィというのはその気になれば何でも丸呑みにしてしまう恐ろしい生物だ。食べる際にはくれぐれも気を付ける事だな。」
和「生物って言っちゃてますし、汐里様の質問と全然関係ないじゃないですか!!」
汐里「おじさーん、かーびぃって怖いんだね。」
和「汐里様も一刀様の言葉を真に受けなくて良いです!!」
紫「和ぃ、私今度は大福食べたーい。」
和「そんなの好きにすれば良いじゃないですか!!」
一刀「違うぞゆかりん。そういう時は「和ぃ、私貴女が欲しいわぁ。」って言わないと。」
和「もうこれ以上話をややこしくしないで下さーい!!」←涙目
和が涙目になってきたのでいい加減終わりにしよう。流石にこれ以上やったら和の心を壊しかねん。
和本人が以前言った様に従者としての立ち振る舞いを意識してるからか常に敬語で堅物という印象が強いが、実際の和はこんなにも感情豊かで可愛いんだから俺達が和の心の拠り所にならないとな。
まぁ今のやり取りが心の拠り所になるかは本人次第なんだが…
汐里「アハハ、おじさん達面白ーい。」
和「……」
汐里が無邪気に笑う姿を見て和はハッと気付く。
子供の笑顔というのはこんなにも純粋で裏表が無い事に。
心の底から笑う事はまだ世間という物を知らない子供だからこそ出来る言わば子供の特権とも言える。これが大人になって社会という物を知っていくにつれ本当の笑い方なんかいつの間にか忘れてしまう。
その代わり大人はやれ営業スマイルだの、やれ愛想笑いだの、表面取り繕って相手のご機嫌取りをするペテン師へと成り下がる。かく言う俺もその1人だ。
汐里「おじさんどうしたの?」
一刀「…イヤ、何でもねぇよ。」
煙草を蒸かしながら思考に溺れていた俺に汐里がキョトンとした顔で俺を見てきた。
俺は煙草の煙が汐里に行かないよう気を使いつつ汐里の頭にポンと手を置き撫でながらこの日最後の教えを説く事にした。前世で俺が死ぬ間際におもった事を……
一刀「汐里、今この時を大切にしろよ。時間なんて一度進んじまったらもう元には戻らねぇんだから。俺の能力を持ってしてもな。」
汐里「はーい。」
多分汐里は良く分かってないと思うがそれで良い。確かに時間は戻らねぇが死ななきゃやり直しはいくらでも出来るから。この言葉の意味に気付くのはその後…
…ずっと後で良いんだよ。
一刀「さて帰るかぁ、もう日も暮れてきたしよぉ。」
和「そうですね。」
紫「じゃあ私スキマで先に帰ってるね♪」
一刀「諏訪ちんには内緒なぁ。」
汐里「おじさんおんぶー。」
一刀「あいよ〜、しっかり捕まってろよぉ。」
汐里「うん!!」
ニッコリと笑う汐里を見てその姿が早苗と重なってそういや早苗も心の底から笑ってたなぁと物思いに耽ってみたりしてぇ。
でも出来る事なら汐里には沢山甘えさせてやりたい。俺の背中で無邪気にはしゃぐ汐里を見ながらそう思い諏訪神社に帰宅した俺達御一行。
しかし帰宅するなりかなりご立腹な様子の諏訪ちんが俺達の前に現れて…
諏訪子「紫から話は聞いたよ!!汐里を連れて甘味堂に行ったらしいじゃないか!!」プンスカ
一刀「あんのスキマ小娘ぇ!!チクりやがったなあぁぁぁぁぁぁ!!」
諏訪子「しかも一刀が奢ったらしいじゃないかい!!どういうつもりだい!!」
一刀「コレには川より深く海より浅い理由があってだなぁ…」
和「そ、そうですよ。これは社会科見学の一環として…」
諏訪子「問答無用!!
…これからは私も連れて行く事!!良いね?」
一刀・和「「イヤそっちかい!!」」
◇
その日の夜、俺はある夢を見た。
一刀「…あれ?ここは?」
見渡す限りどっかの教室のようだと思っていたが周りの男女が自分と同じ服を着ているのを知った時ここが何処なのか気付いた。
そう、ここは前世の俺が通ってた聖フランチェスカ学園の教室だ。しかも今は授業中のようだ。
ぶっちゃけて言うと俺はここの先公が嫌いだった。余計な御託ばかり並べて肝心な授業は噛み砕いての説明が下手くそな奴ばっかで為になる事なんかあったもんじゃねぇ。授業なんかクソ真面目に受けた試しが無かった。
それでもペーパーテストの成績は良かったので皆に不思議がられてた。特に及川に至っては「かずピーは学校に来ても寝てるだけなのに成績良いし彼女もいるし不公平だ!!」って喚いてたな。
彼女諸々はともかく勉強は高校入るまでに憶えるべき所は憶えたしはっきり言って今の俺に授業を受ける意味が無い。
まぁ学校内で浮いてた存在なのは認めるけどさ。
俺は授業中であるにも関わらず教室を出て屋上を目指した。この頃の俺は何かあろうと無かろうと何時も屋上に行っては街の景色を眺めて暇を潰していた。
高校生ではあったが俺は喫煙者であった。お酒と煙草は20歳になってから。20歳未満の人は臓器に悪影響を及ばず為どうのこうの…とか何の根拠も無い事をほざいてしょうもない規制をかけて傍迷惑にも程がある。
屋上に来て考える事は自分が今生きているこの世の中についてだ。例えば差別や格差社会を無くそうなんて綺麗事をお偉い政治家共が言う。
はっきり言ってお偉いさんが下の者にそんな事言ったところで何にも響かないし説得力なんてありゃしない。そもそも具体的な対策も無いのに言うだけなら馬鹿でも出来る。
じゃあ差別とは何か?平等とは何か?
学校の授業ではそんな事は教えてくれないし教科書にも載ってない。つまり誰も明確な答えを知ってる者など居ないのだ。
芸能界なんかは特に格差社会がはっきりとしている。あそこ程天と地の差がはっきりしてる業界も珍しい。
俺はお笑い芸人が好きだ。でも芸人は常に笑いを求められるし何かと損な役回りをさせられたり、大御所ならまだしも挙句何処の馬の骨とも分からんタレントからコケにされるし。
それでも挫けずに頑張ってる姿を見ると俺は芸人の方がそんな奴等より数倍も偉く感じる。
真面目に面白いネタを考えてスベるかも知れないという恐怖心と戦いながら渾身のネタを披露しウケた時の達成感は他の二流タレントには絶対に味わえないだろう。
それなのに芸人の平均年収はその二流タレントよりも少ない。まさに真面目に頑張る者が馬鹿を見る。それが芸能界でありそれが世の中だ。
これに気付いた俺はそんな世の中に嫌気が差して真面目に生きるのを止めた。これは俺が12歳の時の話。
その日からいい加減な男を演じ続けてもう6年。今では俺の本来の性格を知ってる人間は家族を除いて1人しか居ない。
日も傾き始め、校舎内に放課後を告げるチャイムが鳴った。
一本目の煙草の火を消して二本目の煙草に火を付けようとした時…
??「だ〜れだ?」サッ
一刀「オイ早苗、目ぇ隠すな。煙草に火ぃ付けられんだろうが。」
早苗「えへへ〜、当たりです。」
東風谷早苗。由緒正しき神社に1人で暮らしてる俺の幼馴染で今は恋人。神社の名前は……何だったっけ?
先程言った俺の本来の性格を知ってる唯一の人物。物心付いた時から当たり前の様に一緒に居て同じ釜の飯を食っていつしか彼氏彼女の関係になった。
早苗「もぉ駄目じゃないですかぁ。一刀君また授業抜け出して来たんでしょう?」
一刀「あんなもんのどこが授業なんだ。ただ教科書に書いてある事を黒板に丸写ししてるだけじゃねぇか。」
早苗「しかも、一刀君はまだ未成年なんですから煙草はいけませんよ。」
一刀「ハイハイ分かってますよー。」←棒読み
…と言いつつどさくさに紛れて二本目の煙草に火を付ける。それを見た早苗は「むー…」と頬をぷっくりと膨らませるが特別怒ってる訳では無い。こういった掛け合いは日常茶飯事なのだ。
最近俺が考えているテーマはもし自分が先公だったら生徒にどうやって教えを説くか、についてだ。
優秀な教師になる上で最も重要な要素とは何か?
それは話術だと俺は思っている。
名教授と呼ばれる人物は皆コレに当て嵌まる。話術は上手けりゃ上手い程人の心を掴みもう少し話を聞いてみようと思う気になる。
それから次に大事な要素は如何に生徒と同じ目線でいられるかだ。だがこれが結構難しい。
何故なら人間には性格があるからだ。例えばクラスにヤンキーが居たとしよう。人の話を碌に聞かないヤンキーを相手に教師はどうやって正しい道に戻すか?
ただ頭ごなしに叱るのはご法度、見て見ぬふりはもはや論外だ。
ではどうするか?一番有効な手段は相手に言わせるだけ言わせてみるだろうか。一体何が嫌なのか、どこが気に食わないのか思いの丈を遠慮なくぶちまけさせるのが一番良いのではと思う。
そうやって相手の意見を尊重した上で自分の考えを相手に伝える。ここで重要なのは無理強いをさせない事。自分の考えを押し付ける様な発言をしたら相手は反発して振り出しに戻ってしまう。
結局のところ俺の理論は普段から相手とコミュニケーションを取っている事が前提となっている為、この理論を成立させる為には相手と日頃から会話をして信頼関係を築く事が重要なのだろう。
早苗「…ちょっと一刀君?私の話聞いてましたか?」
一刀「…んあ?何て?」
早苗「もー酷いですよ。こんなに可愛い娘が目の話に居るのに一刀君ったら自分の世界に入っちゃうんだもん…」イジイジ
一刀「…ソレ自分で言うか?」
またも頬をぷっくりと膨らませる早苗。よくもまぁ表情がコロコロ変わるもんだ。小動物みたいだな。
一刀「…で何の話をしてたんだ?」
早苗「今日この後時間空いてますかって聞いたんですよ。」
一刀「…暇に決まってんだろ。部活引退して何もする事無いんだからよ。」
俺の場合進路はとっくに決まって暇持て余してるんだからな。一応バイトもやってるがそんなにシフト入れてねぇしなぁ。
早苗「でしたらこの後ファミレスで時間潰しませんか?週末に一刀君とデートするんでそのプランを一緒に練りましょう。」
一刀「OKレッツゴー。善は急げって言うしな。」
早苗「あっ、ちょっと待って下さいよぉ〜。」
今思えば俺はこの時どんな顔してたんだろうな。まさか自分が死ぬ事はおろかこれが早苗との最後のデートになるとは微塵も思ってなかったであろう。
この1か月後、俺は殺人事件の被害者となり早苗を遺して死ぬ事になる。
◇
汐里「おじさんおはよー!!」
一刀「いあうっ!?」
鼓膜が破れるんじゃねぇかと思わせる程の声量に耳キーン状態になりながら俺の意識は覚醒した。…お陰で眠気を持ってかれたわ。
一刀「汐里…頼むから静かに起こしてくれ。」
汐里「えへへ〜、ごめんなさーい。」
枕元に目をやると四つん這いの姿勢の汐里が俺に向かってニコニコと笑っていた。これを見る限り全く反省してるように見えない。…まぁ怒ってないから別に良いが。
しかしながら赤ん坊の時は全くと言って良い程俺に懐かなかったのに今となっては俺に一番懐いている。こういう腕白な所を見てると豊姫を思い出すな。
汐里「他の皆はもう起きてるよぉ。おじさんお寝坊さーん。」
一刀「…やれやれ、皆早起きだこと。」
新しい朝が来た。何て事無い、ごくごく普通の朝が。
と思っていたが…
諏訪子「一刀!!大変だよ!!
大和の国から果たし状が来たよ!!」
一刀「……!!」
平穏というのはそう長くは続かない。
【完】
和「一刀様、作者様から伝言がございます。」
一刀「作者から?…えーっとなになに、
『今回から前書きと後書きは君達に任せる。宜しく頼むZE☆』
…何が宜しく頼むZE☆だ!!要は俺達に全部丸投げって事じゃねぇか!!」
和「仕方ありません。作者様はこういう御方ですので…」
一刀「あんのポンコツ作者め…」
和「後、最後に私のイラストが出来上がりました。宜しければどうぞ。」
【挿絵表示】