もしも北郷一刀が東方の世界に転生したら。【打ち切り】 作:独田圭(ドクタケ)
教えてぇ~、一八(わんぱち)先生!!
一刀「え~、ペンネーム秋の葉っぱさんから頂きましたぁ。
『今年も6月になり、これから本格的な夏に入っていきますね。そこで一刀さんにお伺いしますが、一刀さんは夏の暑さを凌ぐ為に何かやっている事はありますか?教えて下さい。』
ハイ、ズバリお答えしましょ~う。
結論から言うと夏の暑さは凌げませーん。打ち水やら何やらで一時的に暑さを回避させる事は出来ますが、永久的なものではありません。
そもそも夏は暑いものだと割り切ってしまえば気分的に楽になります。
人生何事も諦めが肝心です。
……という訳で関係ないけど本西くん、廊下で逆立ちしてなさーい。」
◇
一刀Side
何処からともなく鶏が寝ている住民に朝を告げる為にやかましく鳴き俺の耳をつんざく。
目を開けば視界を朝日が覆い尽くし、耳をすませば朝早いというのに汐里がきゃっきゃとはしゃぎながら走り回る音が聞こえる。汐里にとっては良い朝を迎えたのだろう。
それに比べて俺は…
一刀「ゲロロロロロッ…」ゴボー
朝っぱらから二日酔いだというのに……
◇
和「一刀様!!何時まで寝てるんですか……って大丈夫ですか!?」
一刀「…気分わりー。寝る前に桶を用意しといて良かったわ。」ゲソー
和「そういう問題じゃないです!!どこの小説で冒頭からゲロ吐き散らす主人公が居るんですか!!」
一刀「しょうがねぇだろ。昨日酒場で1人飲んでたら商人のオッチャンと久々に会ってよぉ、調子こいてどんちゃん騒ぎしてたら酔い潰れてしまったんだからさぁ……おえぇぇぇぇぇ!!」ゴボボー
和「完全に自業自得じゃないですか!!」
だからしょうがねぇって言ってるじゃん。それに今大声出すの止めてくれ、頭に響く…
それよりそんな血相変えてどうしたんだ?俺にツッコむ時以外は常に冷静な和が珍しいな。
一刀「…どうしたんだ?朝起きるなり血相変えて部屋に入ってきて。」
和「何言ってるんですか。今日は諏訪子様が八坂神奈子との一騎打ちをする日じゃないですか。」
一刀「…あれ、そうだったっけ?」
和「忘れてたんですか!?しっかりして下さい!!」
あぁ…そう。あれから二ヶ月経ったんだね。そんな事とうの昔に忘れてしまったよ。
だったら何時までも寝ててはいけねぇな。早いとこ起きて支度しねぇと…
…最悪な朝だ。まさかここまで二日酔いが酷いとは。これに懲りて酒を止めようと思うけど無理かな?…無理だろうな。
一刀「…和、急ぐぞ。」
和「急ぐって…まだ時間はありますよ。」
一刀「違う、そういう意味じゃねぇ。早く厠に行かねぇとビックウェーブが来るぅ!!」ダッシュ
和「そっちですか!?」
ヤベェ!!もう奴が喉元にまで来てる!!流石に廊下一面にゲロ撒き散らしたら洒落にならん!!ここは男の意地を見せてやる!!
…あっ、ダメだ。二日酔いの所為で足元がふらついて…
バタン!!
和「一刀様!?」
今考えたら我ながらアホな事をしたとつくづく思う。
重度の二日酔い状態の人間というのは乗り物酔いと同じで平衡感覚が狂っている。そんな状態では走るのはおろか真っ直ぐ歩く事さえままならない。
だが厠に行く事ばかり囚われていた俺はその知識がすっぽりと抜け落ちていた為に廊下出てすぐずっこけるという大失態をやらかした。
しかもダッシュかました所為で奴が喉元を超えて……アカン、もう無理。
一刀「ゲロロロロロッ…」ゴボボボー
和「あぁー!!す、諏訪子様!!早く雑巾を持ってきて下さーい!!」
む、無念……す、すまん皆の者…後の事は頼んだ……ガクッ
◇
諏訪子「全く…こんな大事な時に何やってんだい。」
…イヤ面目無い。流石に羽目を外し過ぎた。
特にこの時代はソルマックも無ければ二日酔いに効く薬も無い。漢方薬ぐらいならあると思うが俺が見た限り諏訪の国には無かった。
汐里「おじさーん大丈夫?」
一刀「大丈夫じゃないです……」
誰かこの哀れなおじさんを助けてください…
皆が豪勢な朝食を摂っている中、俺だけ和お手製のお粥。
…悲し過ぎる。これじゃあ俺が病人みたいじゃねぇか。和のお粥がマズイとは言わん。だが俺だって肉を食いたい!!
一刀「ゆかり〜ん、お願いだからその肉野菜炒めを俺に分けてくれぇ。」
紫「ダ〜メ。」
一刀「ふおぉぉぉぉぉぉぉ!!」←発狂
紫「えっ!?ちょっとどうしたの!?」
目の前に肉野菜炒めがあるのに食べられないなんて……拷問だぁ、生殺しだぁ〜…
和や諏訪ちんの方を見ても2人共知らん顔で飯食ってやがるし、ここには俺に救いの手を差し伸べてくれる救世主はおらんのか…
汐里「おじさん、アーン。」
一刀「……」
…救世主は居た。肉野菜炒めを掴んだ箸を差し出すその姿は救いを求める俺の前に舞い降りた天使と言っても過言ではない!!
一刀「うおぉぉぉぉぉぉ!!しおりぃぃぃぃぃ!!」パクッ
汐里「おいしい?」
一刀「……!!
あぁぁぁぁぁ!!これはぁぁぁぁぁ!!
おっにくぅぅぅぅぅ〜」←全裸
和「えぇぇぇぇぇぇぇ!!何やってるんですかぁ!!」
汐里の目を隠しながら絶叫する和。
大丈夫だ、問題ない。だってこれはアニメじゃなくて小説だから。
一刀「あっ、アレとアレの旨味がナントカ的な感じでアレになってて……」
諏訪子「説明出来ないなら言うな!!」
和「は、早く服を着て下さーい!!」
汐里「ねぇ和さん、何も見えないけど今何が起きてるの?」
和「汐里様は知らなくて良いです!!」
一刀「あっヤベ、はしゃぎ過ぎてゲロ吐きそう…」
和「諏訪子様ー!!桶をー!!」
諏訪子「…やれやれ。」
そんなこんなですったもんだがあった朝の一コマ。
◇
紫「一刀、調子はどう?」
一刀「…ダメだ、まだ酔いが抜けてねぇ…」
今更ながら思うけど俺って昨日どんだけ飲んだのよ。もう昼前だぞ、これから諏訪ちんは一騎打ちに向かうってのに何やってんだよ俺さぁーん。
…まぁそれでも頭が回るまでには回復したから少しは良くなったんだろうがまだ足取りがおぼつかない。
太陽の光を浴びて寝てたら良くなるんじゃねと何の根拠も無い結論に至った俺は現在、洩矢神社の御神木の枝に寝転がるという傍目から見れば何とも罰当たりな事をやってます。
一刀「でも俺も半分とはいえ立派な神様だし、神様が御神木に寝転がっても別に罰当たりじゃないよねぇ。」
和「…半分は人間ですよね?」
一刀「それを言っちゃあおしめーよ。」
そんな細かい事は気にする事なかれ。諏訪ちんも何も言って来なかったから良いだろ。
一刀「紫、そろそろ汐里を連れて甘味堂に行って来い。」
紫「分かった。」
紫は敢えて笑顔で俺に応えた。常に笑顔を絶やすなとは俺が今日まで皆に言い続けてきた事だ。何があっても汐里にこの事を知られてはいけない。
ルンルン気分で去って行った(あくまで演技だが)紫と入れ替わる形で今度は諏訪子が俺達の方に近付いて来た。
一刀「もう行くのか?」
諏訪子「うん、向こう(大和)も出た頃だと思うし。」
一刀「…そうか、頑張れよ。」
俺のエールに諏訪子は満面の笑みで応えると決戦の地へと旅立って行った。
諏訪子の姿が見えなくなったのを確認すると俺は一つ息を吐いた。
言っておくが、俺達もこの日が来るのをただじっと待っていた訳ではない。和は神奈子の視察。俺と諏訪子はひたすらチャンバラごっこを繰り返し、紫は汐里の面倒を見ていた。
なんだかんだで皆忙しかった。まぁでもポンコツ作者が面倒くさがってそこら辺の描写はカットしたけど。
ただ、それを踏まえても神奈子に勝つ可能性は著しく低いだろうな。というか望み薄と言ってもいい。
やはり実戦の経験不足が大きな枷となり二ヶ月で挽回するのは無理と判断した俺は諏訪子に戦いの基礎を徹底的に叩き込む事にした。
どんな形であれ戦う者が最低限覚えなければならない基礎は三つ。
体力、駆け引き、そして間合いだ。
これはあくまで大きく分けた場合であってもっと細かく分けていくと機動力だの洞察力だの色々あるが今回は一騎打ちという事なのでそれらは全て端折った。そもそも全部を覚えさせる時間なんて無かったからな。
二ヶ月(厳密には一か月半)という期間で諏訪子は簡単にはへばらない様にはなった。…が、言ってみればただそれだけ。勝つ為の秘策は元より軍神を相手にどう立ち向かうかのシミュレーションさえ出来なかった。
仮にもし諏訪子が勝ったとしても諏訪の国とは倍以上の国力を誇る大和の軍勢が黙って引き下がる筈が無い。もう一度勢力を整えて今度は一騎打ちではなく戦争を仕掛けて来るだろう。そうなった時、諏訪子には勝ち目が無い。それに白状な言い方をするが俺達も何時までも此処に居れるとは限らない。そして居たとしても今度ばかりは手助け出来ない。
国の主が自分の国一つも守れないと思われてしまったら民からの信用を失う。信用を失うという事は信仰を失う事になり最悪の場合、洩矢諏訪子という存在そのものが消滅する事に繋がる。故に俺は静観を貫く事しか出来ない。
だからといって10年もの歳月を共に過ごした【仲間】を見捨てる様な真似をするつもりは毛頭ない。それは人間が一番犯してはいけない罪だから。
だから俺は神社に残った。今から俺がやる事は従者の和にすら話してない事で、それはまるで諏訪子を利用している様なやり方で申し訳なかったが、諏訪子達を……諏訪の国を【裏】から【確実】に守る手段はもうコレしか残されてない。
一刀「……和。」
和「はっ。」
一刀「今から大和の国に行ってこい。……特に神奈子以外の奴等の動向を注意して見ておけ。」
和「……御意。」
俺の命令を受けた和は鳩の形へと姿を変え戦場へと飛んで行った。敢えて詮索しない和は本当に優秀な従者だと思う。
何故こんな事をするか?俺にはある一つの確信めいた予感があった。
遡る事二ヶ月前、あれは丁度神奈子と会談をしていた時の事だった。
あの時、会談の場として使われていた部屋の外には見張りの兵が何人か居た。その中には俺が脅してこの部屋まで案内させたしゃくれ神も居た。言わずもがな見張りの兵は全員神奈子の部下。
先に断わっておくが、俺は八坂神奈子という人物を決して甘く見てなどいない。だがあまりに堂々とした俺の態度が気に喰わなかったのか時折見張りの兵から怒気を感じ取っていた。
そして俺が神奈子に一騎打ちの提案をした時、明らかに怒気が強くなった。その時はただそれだけだったがそれ以降俺が口を開く度に怒気を強めるもんだから本気で斬り伏せてやろうかと思ったわ。
……今思い出しても腹が立つ。先に一方的な要件を突き付けてきたのはテメェ等の方だろうが。
……話を戻すが、その後会談を終えて帰ろうとしてた時にしゃくれと一瞬目が合った。しゃくれは俺を睨み付けていたが俺は何とも思ってなかった。
……奴の口の動きを見るまでは。
奴はこう言っていた。「皆殺しにしてやる」ってな。
これを見た俺は確信した。奴等は間違いなく諏訪の国に攻め入って来ると。
……もう分かっただろ?何故俺が神社に残ったのか。洩矢神社は言ってみれば諏訪の国の総本山、ましてや持ち主の諏訪子は一騎打ちの為に出払っていて俺以外に誰も居ない。打ち落とすには絶好の機会、これを奴等がみすみす見逃すと思うか?
奴等は間違いなく此処に来る。それも神奈子の許可なく独断で。
奴等はそれを正義と言うだろう。だがそれは断じて正義ではない。人の帰る場所を奪い去る行為を正義と言うのなら……
……俺はその正義に背いてでもテメェ等をぶっ倒してやろう。
一刀「……来るなら来いよ。誇りを捨てる覚悟があるならな。」
ただテメェ等が思ってるより……
最後の壁は高いぜぇ。
◇
和Side
私は今、大和の国の入口前に居ます。
勿論人型ではありません。会談の時には私も居たので一刀様程ではありませんが多分顔は知られていると思います。
国中を飛び回って見てみましたが八坂神奈子の姿は見当たりませんでした。恐らくは決戦の場に向かったのだと思われます。
それならば何故入口の前に兵が列を成しているのでしょうか?今回は一騎打ちなので今更兵を整える必要は無いと思うのですが……
ここで私は一刀様の命令を思い返してみました。
確か一刀様は八坂神奈子以外の奴等の動向を注意して見ておけ……と言ってましたが一体どういう事なのでしょうか?
私は時折一刀様の人間性が分からない時があります。何時もは周りの人達を振り回して私だけでなく諏訪子様までも困らせる傍若無人を絵に描いた様な人物ですが人妖大戦の出来事を語っていた時の一刀様はそれとはまるで別人、普段の一刀様とはあまりにもかけ離れた人格だった事は今でも覚えています。
一体どっちが一刀様の本当の性格なのか……
そこまで考えていた時、列を成していた兵達の先頭に誰か立ちました。先頭に立ったのは以前一刀様に木刀を突き付けられたあの顎の長い神様。
しゃくれ「良いか!!これより我らは諏訪の国に攻め入る!!狙うは洩矢神社だ!!」
「「オォォォォォォ!!」」
和「…………!!」
……どういう事ですか、話が違います。
会談では確かに一騎打ちで話は纏まった筈です。なのにこんな事って……
一刀「『神奈子【以外】の奴等の動向を注意して見ておけ。』」
…………!!
和「……まさか一刀様はこの事を想定して。」
一刀様の勘の鋭さには驚くばかりです。
ですが今現在、神社には一刀様しか居ません。このまま彼等の侵攻を許してしまえば一刀様が……
私はほぼ無意識に飛び立ちました。一刻も早くこの事を一刀様に知らせなければという一心で。
◇
一刀Side
……転生してもうどれくらい経つのだろうか。
転生当初はこんな人生を送るなんて考えてもみなかった。能力は桁外れにチートだし、種族は厨ニくせぇし。破壊神になるぐらいならその正反対の創造神になりたかったなぁなんて思ったり思わなかったり。
今はこんな人生かも知れないけどいつかはのんびり過ごして、彼女作って結婚して、子供作って子供作って子供作って……
そんな輝かしい未来が待ってると思うと……
……ムラムラします。
…………あっ、もう俺のSide?始まってたの?
……オホンッ、じゃあ少しだけ真面目にやろうか。
しかしまぁアレだね、暇だね(笑)。
暇を持て余してたから俺の人生の未来予想図を想像してたんだけど……
……まさか見られてたなんて、きゃあ恥ずかしい。←棒読み
えっ?全然真面目にやってねぇじゃねぇかって?…………すまん、その通りだ。
逆に聞くけど俺がクソ真面目にやってるシーンなんて想像出来るか?
第一、シリアスオンリーで終わったパートも無いんだぜぇ。タグに基本ギャグって書いてあるだろ?ゆる〜くやりゃ良いんだよゆる〜くな。
和「一刀様!!大変です!!」
かなり切羽詰まった様子で和が戻ってきた。はい皆さん、ここからシリアスパートに入りますよぉ〜。
一刀「どうした?そんなに慌てて。」
和「大和の軍勢がこちらに向かって来ます!!」
一刀「……数は?」
和「およそ200人弱。」
200か……思ってた程多くねぇな。恐らく大将はあのしゃくれに違いない。
和「どうしますか、諏訪子様を呼び戻しますか?」
一刀「イヤ、その必要は無い。」
和「ですが200人もの軍勢を相手に一刀様1人では……」
一刀「和、此処に居るのは人妖大戦の生き残りなんだぜ。あの時相手にした数に比べたらこれ位大した事ねぇよ。それに……」
俺は腰に差してた霊閃を抜き、一度振り回して感覚が鈍ってないか確かめる。……うん、悪くないな。
一刀「……汚れ仕事は俺1人で充分なんだよ。」
思えば人妖大戦が起きたあの時から全てが変わった。
未練が無くなったかと言えば嘘になるが、スローライフ願望を打ち砕かれて茨の道を歩まざる負えなくなった今、俺に出来る事は目の前に通ずる道をただひたすら真っ直ぐ進むしか無い。
例え道行く先に敵が待ち構えていようと、例えそれらを切り捨てて返り血まみれになろうと俺のやるべき事は変わらん。
和「時に一刀様、一つ伺いたい事があるのですが。」
一刀「……何だ。」
和「……一刀様は初めからこうなる事をご存知だったのですか?」
一刀「……知ってたさ。どんな事でも常に三手先を読むのは戦の常識だろ?」
和「でしたら何故私達に何も言わなかったのですか。」
一刀「言ったところで俺達に何が出来る?諏訪の国の傭兵達に奴等が止められると思うか?」
和「そ、それは……」
和もそれは分かっていたのか俺の言葉に反論出来なかった。
傭兵の質の悪さはもはや俺でも目を覆いたくなるレベルだ。そのくせ自意識過剰で人の言う事は全く聞かない。主の諏訪子が多忙で調練に参加出来ない事を良い事に調練をサボって遊び出す始末。
じゃあお前が鍛えれば良かったんじゃないの?と俺に対して思うだろうが考えてもみろ、ここではぽっと出の俺の指示をアイツ等が聞くと思うか?
確かに月人と暮らしていた頃は俺は軍の最高指導者の立場に居たが、あれはヨミィの推薦があったからそうなっただけで肩書きに負けないよう必死になって修行しまくったお陰で呂布も真っ青になる程無双しちまったが結果的にあの時の仲間は皆俺に付いてきた。
それは何故か?
これは永琳から霊閃を貰った時に聞いた話だが、ただ純粋に俺みたいな強さを手に入れたいというひたむきな思いがあったと言ってた。言っとくが俺が自分で言った訳じゃねぇからな。永琳が言ってたんだからな。
だがここの奴等にはそんなひたむきな姿勢をまるで感じない。はっきりと言ってしまえばやる気が全く無いただの素人の寄せ集めみたいな感じだ。
一刀「……来たか。 」
遥か彼方、眼を凝らしてよーく見ないと気付かないが確かに列を成した人影がこっちに近付いて来てる。
一刀「和、お前は戦えないから神社の中に避難してろ。」
和「……それは命令ですか。」
一刀「あぁ、命令だ。」
和「……承知しました。」
和が戦えるならば従者と言えど遠慮なく共闘してもらう所だが、生憎和は自分の身を守る事が精一杯なのでこの場には置いておけない。
普段から和には世話ばかり掛けているからな、こういう時ぐらいは主らしいとこを見せとかないとなぁ。従者の身を守るのは他ならぬ主である俺の仕事だ。
一刀「安心しろ、一匹たりとも中には通さねぇからよ。」
和「……御武運を。」
和はそれだけを言い残して神社の中に避難していった。
紫に頼んで汐里を甘味堂へ避難させたのは正解だったな。なんせ今からやるのはチャンバラごっこでも模擬戦でもなく殺し合いだから、返り血にまみれた俺の姿を見せる訳にはいかねぇよ。
煙草を咥えて火を付けて改めて敵の軍勢を見据える。
豆粒程の大きさでしかなかった軍勢はこっちに近付いて来るにつれ次第に大きくなり、やがて顔がはっきりと見える程になった。
先頭を歩いていたのは俺の予想通りあのしゃくれで、しゃくれは俺の姿を捉えると声高らかに宣言した。
しゃくれ「北郷一刀!!諏訪の国を貰うついでに貴様の首を貰う!!我らに盾突いた事を悔みながら死ぬが良い!!」
俺はついでかというツッコミは胸に仕舞いつつ煙草を一服した後、御神木から降りて霊閃を引き抜いた。
かつて戦争を経験した祖父が昔俺に言っていた言葉を思い出したので俺はその言葉を借りて噛ませフラグ満載なセリフを言い放ったしゃくれと向かい合う。
一刀「……誇りが驕りに変わったら、兵は賊と変わりなし。平和を乱す賊とみなしてテメェ等を討つ!!」
さぁてゴミ掃除を始めようか。
◇
諏訪子Side
諏訪子「……アンタが八坂神奈子かい?」
神奈子「いかにも。そういうアンタは洩矢諏訪子で間違いないな?」
諏訪子「あぁそうだよ。」
今こうして対峙して舌戦を繰り広げているに過ぎないけど、コイツからの威圧感が半端じゃない。同じ神様でも私とコイツとでは力の差が違い過ぎる事に少なからずショックを受けた。
今この決闘の場には私と神奈子の2人しかいない。大和の神を初めて見たけどとにかくデカイよ。背もそうだけど特に胸が……
それに比べて私の胸は……
神奈子「おい、胸を押さえて何やってるんだ?」
諏訪子「イヤ、つくづく世の中は不平等だなって……」
神奈子「……何の話だ。」
諏訪子より
神奈子はデカイ
背も胸も。
……………。
自分で言っておいて何だけど、とてつもなく虚しい……(泣)。
まぁ、こんな事で愚痴をこぼしても仕方がないか。
私は神社を発つ前日に一刀と交わした会話を思い返していた。
◆◆◆◆◆◆◆◆
諏訪子『ねぇ一刀、八坂神奈子ってどんな奴?』
一刀『それこの間言ったばかりだろ。神奈子は大和の国を治める軍神で……』
諏訪子『そういう意味じゃなくて神としての具体的な力を知りたいんだよ。』
一刀『あぁ~、そういう事ね。俺も大した事はよく分かんねぇが一つだけはっきりと言える事がある。今の諏訪子が全力で戦ったとしても勝てる確率は10%以下だ。』
諏訪子『何でさ!!勝負はやってみなけりゃ分からないだろ!!』
一刀『そんな単純な話じゃねぇんだよ。お前と神奈子とでは決定的な差が二つある。
まず経験の差が一つ。数百もの戦を経験してる神奈子とは違ってお前は賊討伐すらやった事ないだろ。積んできた経験の数が多いという事はそれだけ手数も多いという事なんだ。
そしてお前の方が神奈子と比べて神力の量が圧倒的に少ない。
八坂神奈子という軍神がいつ誕生したかは知らんが会って見た限りアイツの神力は軽く見積もってもお前の4倍、下手すりゃそれ以上あるかも知れんな。』
諏訪子『4倍!?そんな事一刀は一言も言ってなかったじゃん!!』
一刀『今初めて言ったからな。あん時は近くに汐里が居たからテキトーにはぐらかしたが面と向かって会った感じだとそんなもんだろ。』
諏訪子『……一刀だったらどうする?』
一刀『何が?』
諏訪子『もし自分より格上の相手と戦う事になった場合、一刀だったらどうやって戦うつもり?』
一刀『……俺だったら戦いの中で相手の弱点を探る。中盤までは攻撃の機会があっても敢えて攻めず守りに徹して弱点を見つけたらそこを一気に攻め落とす。
弱点を突く戦い方を卑怯だと言う奴が居るけど俺はそうは思わない。俺に言わせりゃ弱点を克服してないテメェが悪いのさ。』
諏訪子『軍神に弱点なんかあるのかなぁ……』
一刀『どんな奴でも弱点の一つや二つはある。戦う前から弱点が無いって決め付けて弱気になる奴はただの負け犬、同じ土俵に上がる資格もねぇよ。』
諏訪子『……確かにそれは言えてるね。』
一刀『俺が神奈子と戦うならまず挨拶代わりに乳を鷲掴みにして怯んだ隙に押し倒してそれから……』
諏訪子『真面目に考えろ!!』ガスッ!!
一刀『ぶるぁぁ!!』
◆◆◆◆◆◆◆◆
相手の弱点を突くか……
当たり前な事だけど一刀が言うとやっぱり説得力を感じるね。……最後のアレはいらないけどさ。
とにかく、今はこの戦いに集中しなきゃ。
諏訪子「私達の提案に乗ってくれたのは有難いけど、そう簡単に国は明け渡さないよ!!」
神奈子「譲って貰おうとは思っちゃいないさ。自分の国を守りたいなら力ずくで守ってみな!!」
諏訪子「望むところさ!!」
一刀……お願い、私に力を貸して!!
一刀Side
雑魚1「うおりゃぁぁぁぁ!!」
一刀「はい、羊が一匹~。」ザシュ
雑魚2「おらぁぁぁぁぁ!!」
一刀「はい、二匹~。」ザシュ
雑魚3「せりゃぁぁぁぁぁ!!」
一刀「はい、三匹~。」ザシュ
ん?今諏訪子からヘルプの声が聞こえた気がするが……まぁ気のせいか。あっ、返り血付いた。
戦闘が苦手な和、汐里に悟られぬよう甘味処で時間稼ぎをしてもらってる紫、そして神奈子との一騎討ちの為に出払っている諏訪子。
それぞれが各々の役割がある為、この場を切り抜けるのは俺しかいない。傭兵?知らんなぁ~。
つまるところ俺が言いたい事は……
一刀「面倒くせー……。」
何が面倒くさいかというと、コイツ等無駄に体力あり過ぎー!!
強さ自体はぶっちゃけ大した事ない。敵の数も人妖大戦の頃に比べたら少ないんだけど、いくら斬っても斬り捨ててもしぶとく起き上がってくるもんだから全然終わんねー!!
一刀「……勘弁してくれよ。俺だってさっさと終わって紫達と糖分摂って酒も飲みてぇんだよ。こんなだらだらと続けるのはまっぴら御免被る!!」
しゃくれ「だったら大人しく死ね!!」
一刀「うるせー!!誰もテメェに言ってねぇんだよ!!お前こそさっさと死ね!!ハゲ!!しゃくれ!!」
しゃくれ「貴様ぁ!!人が気にしてる事をよくも!!殺す!絶対に殺す!!貴様等、コイツを殺れ!!」
雑魚兵「「うおぉぉぉぉぉ!!」」
チッ、やっぱ面倒くせー……
酒はここにあるから戦いの最中であってもいくらでも飲めるが←えっ!?
糖分は終わってからでないと摂れねぇんだよ。俺の体はとっくに糖分切れを起こしてやる気出ねぇよ。あまりに糖分が不足してきたから目にする物全てが糖分に見えてきた……
俺が持つ霊閃も糖分に……
敵が身に着けてる鎧も糖分に……
アレも糖分、コレも糖分、
糖分糖分糖分糖分糖分糖分糖分糖分糖分糖分糖分糖分糖分糖分糖分糖分糖分糖分糖分糖分……
ツンツン、ツンツン
一刀「……( ゚д゚)ハッ!」
首の辺りを優しくつつかれる感触に意識を引き戻された。まさかと思い肩の方を見ると……
和(白鳩)「一刀様、気を引き締めて下さい。」ボソッ
命令違反!?何しれっと出て来ちゃってんの和ちゃん!?
……ん?よく見ると嘴に何かをくわえてるぞ。この匂いはまさか!!
一刀「わざわざ持ってきたのか!!」
和「はい。今頃禁断症状が起きている頃だと思いましたので。」
紙袋の中に入っていたのはなんと柏餅だった。俺の事を気遣ってわざわざ作って持ってきた和お手製の柏餅。
いやはや流石はパーフェクト従者。用意周到な所は称賛に値する。命令違反?知らんわ、んなもん。
雑魚兵「「今だ!!かかれぇぇぇぇぇ!!」」
うおぉぉぉぉぉい!!
人が糖分摂取してる時に斬り掛かるのは反則だぞ!!
一刀「柏餅を……食わせろおぉぉぉぉぉ!!」ザシュ
雑魚兵「「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」」
断言しよう、俺は今この時鬼神になった。今なら鬼が相手でも勝てる気がする……あっ、柏餅めっちゃ美味い。
身体中が糖分で満たされていくのが分かる。お陰でやる気も幾分か回復し、敵の動きも心無しかスローモーション……には見えなかった(笑)。
一刀「行くぞおぉぉぉぉぉ!!必殺のぉ!!
ナントカ流ナントカ切り!!」ズシャ
雑魚兵「「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」」
和「(……必殺技にしては名前がテキトー過ぎます。ですが、太刀筋は見事です。)」
あ~あ、カズくん返り血まみれになっちまったよ。
だがしかし、これで敵はあのしゃくれだけになった。ここまで来るのに随分文字数使ったなオイ。
しゃくれ「コ、コイツ馬鹿強えぇ!!何なんだテメェは!?」
一刀「俺か?俺はなぁ……
諏訪の用心棒、北郷一刀だ。」
諏訪子に頼まれちゃいねぇ、俺が勝手にやってる事だがな。
◇
第3者Side
敢えて言うなら一刀は本来こういった面倒事に自ら首を突っ込む程お人好しな性格ではない。
むしろ北郷一刀という人物は割りと即物的な人間であり、頼み事を依頼された時それに見合った対価が見込めないと判断すると例え親友や彼女の頼みであろうと聞き入れる事は殆ど無い。
一刀が自ら動くのには一刀なりの理由がある。
今回の諏訪大戦で一刀が動いたのは汐里の存在が大きかった。
捨て子であった汐里を保護して諏訪子や和と共に面倒を見てきた一刀は汐里に出来るだけ辛い思いをさせない様にたっぷり甘やかしてきた。
そんな折、大和の国から果たし状が届き今住んでる場所が戦火に包まれるかも知れないと危惧した一刀はそれを避ける為に一騎討ちの提案をした。この時点ではまだ一刀自身は自ら動こうとは考えていなかった。
考えが変わったのは一刀が神奈子との会談に臨んだ時。大和の国の傭兵が諏訪の国に攻め入って来る事に気付いた時だった。
汐里の帰る場所を奪う行為を断じて許す事は出来なかった。だがそれ以上にまだ子供の汐里に人々が、神々が殺し合う光景を見せたくなかった。
要は汐里にこの事を知られずに全てが丸く収まればそれで良し、故に一刀は戦の早期決着を目論んでいた。
そうはさせじと一刀の前に立ちはだかっていた大和の傭兵達だったが、一刀が繰り出したデタラメな必殺技により200人程居た軍勢は僅か1人になり隊を率いていたしゃくれはいよいよ追い詰められた。
しゃくれ「クソッ、こうなったら!!」
しゃくれは半ばヤケクソ気味に叫ぶと持っていた刀を一度鞘に仕舞い込んだ。
一刀「……居合い斬りか。」
それを見た一刀も上等と言わんばかりに霊閃を腰に仕舞い構えた。
しゃくれ「……」
一刀「……」
辺りを静寂が包み両者は次の一撃に全神経を集中させながら飛び出すタイミングを窺う。その様子を和も黙って見守っていた。
一筋の風が吹き、2人の間に木の葉が通り過ぎた刹那、
しゃくれ「うおぉぉぉぉぉ!!」
一刀「はあぁぁぁぁぁ!!」
喉が千切れるかと思わせる程の雄叫びを上げて2人は間合いを詰める。
そして交錯する瞬間、2人は納めていた刀を抜き振り抜き通り過ぎた。
しばらくの間微動だにしなかった2人。和が固唾を飲んで見守る中、先に口を開いたのは一刀だった。
一刀「……安心しろ、後できっちり供養してやるからよ。」
一刀がそう言い切った直後、しゃくれの体から夥しい量の血が噴き出ししゃくれは膝から崩れ落ちた。
一刀が後ろを振り返った頃にはしゃくれは既に絶命しており、代わりに人型に戻りホッとした表情で一刀の元に歩み寄る和の姿を視界に捉えた。
一刀「(あー……返り血まみれじゃねぇか。替えの服用意しねぇと。)……和、風呂は?」
和「準備出来てます。」
一刀「……流石だな。」
つくづく用意周到な和を一刀は頭を撫でようと手を伸ばしたが、その手に血がべっとり付いている事に気付いてそっと手を引っ込めた。
一刀「……それより先にコイツ等を弔ってやらねぇとな。」
和「……そうですね。」
一刀の戦いは終わった。後は諏訪子の戦いを残すのみ。
10年間共に過ごした盟友に向けてせめて一矢は報いてくれと一刀はここにはいない諏訪子に心の中でエールを送った。
【完】
【おまけ】
和「一刀様、私から折り入ってお願いがあります。」
一刀「……お願い?」
和「全てが終わったら私に剣術を教えて下さい。」
一刀「……」
和「今回の戦で私は自分の無力さを思い知りました。主の身一つも守れないようでは一刀様の従者として失格です。だから……」
一刀「無力なんかじゃねぇよ。」
和「えっ?」
一刀「お前は俺を助けてくれただろ、柏餅持ってきてくれたりして。」
和「……」
一刀「どんな些細な事でも一つ先の事を予測し行動してるお前は従者の鑑だよ。決して無力なんかじゃないさ。」
和「一刀様……」
一刀「まぁそれでもお前がそうしたいって言うなら一向に構わんよ。ただ断っておくが俺の剣術は我流だから参考になるかは分からんぞ。」
和「構いません。」
一刀「言っておくが俺はスパルタだからな。途中で音を上げるなよ。」
和「……はい!!」
こうして和はチートへの道を歩み始める事となった。
【おまけ完】
一刀「さぁーて、次回のもし東は!!」
和「和です。夏になると暑さで大変過ごし難くなりますね。こんな時は夏歌でも聴いて気分をアゲアゲにしませんか?
さて次回は、
『諏訪子の叫び』
『和の憂鬱』
『一刀、人間やめるってよ』の三本です。お楽しみに!!
……って何私に嘘の予告をさせてるんですか!!これってもしかしなくてもサザエさんのパクりですよね!?」
一刀「P.S.シリアスパートに入るって言っときながらギャグ満載で悪かったな。」