もしも北郷一刀が東方の世界に転生したら。【打ち切り】 作:独田圭(ドクタケ)
では本編へどうぞ!!
◇
私の名前は八意永琳。この先のツクヨミ様が治める都市で薬師をしている。
都市の住民からは【都市の頭脳】呼ばれているけど私自身そんな大層な物でも無いと思っている。
普段から薬の調合などで忙しい私はこうして時間を作っては森を訪れて薬の材料になる薬草を探す事が日課になっている。
今日も何時ものように薬草を探しに森を訪れたのだが、今日は何時もと様子がおかしい。
永琳「…何かしら?」
…森の奥から幾つもの妖力を感じる。
別段この森に妖怪が居る事自体がおかしいとは言ってない。問題なのはそれが複数いる事だ。これらから推測出来る事は、…人間が妖怪に襲われている。
永琳「早く助けなければ。」
私は弓矢を片手に急いで森の奥へと向かった。自慢じゃないけど弓の扱いには自信がある。妖怪の1、2匹程度なら余裕で相手に出来る。
そんな風に思いながら歩を進めていた私は妖怪の群れの元へと辿り着いた。だがそこで見たのは私の予想と反する光景だった。
確かに妖怪の群れは居た。数はおよそ10匹前後と少し多い。だがその全てが完膚無きまでに叩きのめされていた。
その中央には1人の男性が立っていた。…もしかしてこの男が1人で妖怪を倒したというの?
一見只の人間に見えるが纏ってる気が普通の人間の物では無かった。
普通の人間なら霊力を纏っている筈。霊力というのは人間が生まれながらに持っている力の事で、霊力さえあれば自分や他人の怪我をも治す事が出来る。…多く持っていればの話だが。
目の前の男からも多少は霊力を感じるが、それ以上に何か別の力を感じる。
興味が湧いた私は立ち去ろうとしている男に向かって声を掛けた。
永琳「そこの貴方、ちょっと良いかしら?」
私の声を聞いたであろう男は何故かガックリと肩を落とすと、至極面倒くさそうにこちらに振り返った。
◇
一刀Side
…はぁ〜、全く今日は厄日かよ。次から次へと面倒事が起きやがる。早いとこ朝飯を済ませたいというのに。
でも相手は俺をご指名のようだし、って言うかこの場には俺しか居ないか。あっでも妖怪の屍も居たか。屍といっても殺しちゃ無いがな。
えっ?お前恋姫じゃヘタレだったじゃないかって?タグに色々書いてるだろ、タグに。
後ヘタレとか言った奴、後でしばく。
…実のところ俺自身も何で妖怪を倒せたのかヨクワカラナイ。前世では剣道やってたけど腕前は中の中といったところだった筈。そんな俺が何で妖怪を倒せたのか、気になるところだけど倒せたんだしまぁ良いか。
とまぁ深く考える事を止めてさっさと思考を放棄した所で後ろを振り返る。そこには弓を持った女性が立っていた。…えっ、俺殺されるの?
…と思っていたが、目の前の女性から敵意という物は感じない。警戒心はあるようだけど。
永琳「…どうして嫌そうな顔をするのかしら?」
一刀「そんなつもりは無いけど、只腹が減ってるから手短に済ませてくれると有り難いかな。」
これ結構マジで。なるべく穏便に済ませたいし流石に空きっ腹の状態で2度もドンパチやるのは御免被りたい。
そんな俺の思いが伝わったのか、女性は警戒心を緩めてくれた。話の解る人で助かった。
永琳「…分かったわ。でも1つだけ聞かせて頂戴。…貴方は何者なの?」
…おぉ、いきなり核心に迫る質問をぶつけて来たよこの人。…そうだなぁ、余り考え過ぎると不審に思われるからテキトーにはぐらかすのが無難かな。
一刀「俺はこの地を旅している者で名前は北郷一刀って言う。宛もなくフラフラと森の中を彷徨ってたら迷った。」
俺はさり気なく自分の名前を教えて不審者じゃない事をアピールする。宛が無い事も絶賛迷子中なのも事実。全て嘘で塗り固めるのでは無く、ある程度事実を混ぜるのが賢いやり方だ。
永琳「そう…。じゃあもうh 一刀「色々聞きたい事があるのは解るけど、取り敢えず飯食わせてくれ。」…それなら街に移動しましょう。」
一刀「君はm 永琳「八意永琳、これが私の名前よ。」…永琳は街の住民なのか?」
永琳「そうよ。この森の先にあるツクヨミ様が治める街に私は住んでいるの。」
…確か日本神話でそんな名前の神様が出て来たような気がするけど生憎俺はそっちの分野はチンプンカンプンなので詳しくは知らん。お偉いさんなのは分かるけどさ。
それにしても永琳が街の住民だったとは、出来る事なら俺を街に案内して欲しいんだが。
永琳は俺の言いたい事が分かったらしく、「今から貴方を街に案内してあげる。」と言ってきた。永琳よ、アンタは女神だ。
2つ返事で了承した俺はそのツクヨミ様が治める街に行く事になった。これで漸く野宿生活からおさらば出来る。
…えっ?1日しか野宿してないじゃないかって?細けえこたぁいいんだよ。
◇
森を抜けて歩く事数分、目の前に街が見えてきた。恐らく此処が永琳の住んでる街だろう。
街に向かっている道中も永琳と話をしていたが聞けば永琳はどうやら俺をツクヨミ様に会わせたいらしい。俺が何故かと聞いたら「貴方に興味があるのよ。」との事らしい。何で永琳の興味の有無で俺がお偉いさんに会わなきゃいけないんだ?よぉ分からん。
そんなこんなで街に着いたが辺りの道は良く整備されていて建物の高さも半端なく高い。…てか此処ってお金持ちが住む様な所じゃね?
行き交う人々も活気に満ちた表情に溢れている。なる程、良い街だ。
一刀「…良い街だな。」
永琳「そうでしょ。何せ私とツクヨミ様が中心となってこの街を発展させたんだから。」
思った事をそのまま言った俺に対して誇らしげにそう語った永琳。確かにそれは誇っても良い事だ。
……ん?ちょっと待てよ、永琳も街の開発に関わったという事はもしかして…
一刀「もしや永琳もお偉いさん?」
永琳「私は只の薬師よ。その時は人手が足りなかったから偶々借り出されただけよ。」
一刀「ふーん……」
永琳は謙遜してたが街の開発に借り出されたという事は永琳はこの街では大きな信頼を寄せられているという事になる。考えてみれば解る事だが都市開発という大きな仕事を信頼の欠片も無い奴に任せられるかって話だ。
その後は他愛もない話をしながら歩いていたが暫くして一際デカイ建物の前まで着いた時、俺達は足を止めた。
永琳「この建物の最上階に私達の上司のツクヨミ様が居るわ。中に入りましょう。」
この建物の1番上にお偉いさんが居るのか。やべぇ、緊張してきた。
一刀「1つ聞くけど、まさか最上階まで歩いて行くのか?」
永琳「この建物の中には人が利用する昇降機があるからそれに乗って行きましょう。」
前世で言うエレベーターみたいな物かな。確かにそれが無いと最上階に辿り着く前に野垂れ死にしそう。それ位高い建物なんだよ。
さて、最上階に着いた俺達は更にその奥へと歩を進めていき、ある扉の前でまたも足を止めた。どうやら此処がお偉いさんの居る部屋らしい。
永琳が扉を叩くと中から「入れ。」という女性の声が聞こえた。それを聞いた俺と永琳は一瞬だけ顔を合わせると扉を開けて中に入った。
永琳「失礼します。」
ツクヨミ「あぁ永琳か。…それと、お前さん見ない顔だね。私はこの都市の管理者のツクヨミだ。好きに呼んで貰って構わない。」
随分と威厳が漂う女性でおらっしゃった。言葉の一つ一つに重みを感じる。後スゲー美人。ココ重要な。
一刀「北郷一刀って言います。永琳とはこの先の森で知り合いました。」
ツクヨミ「なる程、それで永琳と一緒に私の元へと参った訳か。後、敬語じゃ無くて良い。」
一刀「OK分かった。宜しく頼むぜヨミィ。」
ツクヨミ「ヨ、ヨミィ!?……まぁお主がそう呼ぶならそれで構わないが。」
若干困惑した表情をしたもののヨミィは渋々納得してくれたようだ。う〜ん、良いあだ名だと思うんだけどなぁ。
ヨミィは俺の目の前まで近付くと顔の前で手を翳してブツブツ言い始めた。呪いでも掛けているのかと思ったがそれは直ぐに終わり、体には何の異常も無かった。どうやら違ったようだ。
だがヨミィは何か含みのある笑みを浮かべると1人でウンウンと頷いていた。…何でかなぁ、どうも嫌な予感しかしない。
ツクヨミ「一刀、お主は非常に面白い力を持っているな。」
一刀「…はぁ?」
言ってる意味がイマイチ分からない。そりゃそうだろ。合って早々面白い力を持ってるなんて言われて戸惑わない方がおかしい。
ツクヨミ「お主からは霊力以外に神力を感じる。それも今まで見た事の無い質の神力を。これらから考えられる事は…」
ツクヨミ「一刀、お主の種族は新種の現人神だ。」
……なんだって。俺が…神だと?
動揺している俺をそっちのけでヨミィは話を続ける。
ツクヨミ「しかも、能力まで備わっておる。それも反則級の奴が。」
あまりにも衝撃が強過ぎてヨミィの話の内容が頭に入って来ない。
ツクヨミ「一刀、…おい一刀!!」
ヨミィに肩を揺さぶられて俺は漸く我に返った。というかまだ話があるのか。…正直もう勘弁して欲しい。
だが現実というのは以下略。
一刀「な、何だ。」
ツクヨミ「一刀、そこにある椅子を触れずに浮かせてみよ。」
出来る訳ねぇじゃんと思いながら取り敢えず椅子がある方に手を翳し浮かす様に念じてみる。椅子に何の変化も無かったのでやっぱ出来ねぇじゃんと思い、目を離した直後…
ツクヨミ「見よ、浮いておるぞ。」
一刀「えっ?……!!」
ヨミィの言葉を聞いてもう一度視線を椅子に戻すと信じられない事に椅子がモノの見事に浮いていた。しかも結構な高さで浮いていたのだ。
まさかと思い今度は沈めと念じてみた。すると椅子はゆっくり床へと降りた。まるで初めから椅子など浮いていなかったかの様に。俺マジシャンにでもなったのか?
ツクヨミ「それがお主の能力だ。一刀よ、私が椅子を浮かせろと指示した時、お主はどう思った?」
一刀「そりゃ浮く筈無いって……まさか!?」
ツクヨミ「その通り、いくらお主が神の力を持っていようと【普通】なら触れずに物を動かす事など出来ない。すなわちお主の能力とはそう言うものだ。言うならばお主の能力は【覆す程度の能力】という事だな。」
一刀「…それの何処が反則級なんだ?」
恐る恐る聞いてみたところヨミィは、
ツクヨミ「万物には必ず一つ【絶対】に覆せない事象、所謂固定概念という物が存在する。だがお主の能力はそれ等全ての事象を覆す事が出来る。その気になれば人の死ですらも……な。これを反則級と言わずに何と言う?」
マジシャンなんて次元の話じゃなかった。…なんだよその能力、それってもう程度で済むレベルじゃねぇじゃん。
嗚呼……サヨウナラ俺のスローライフ。
…貂蝉だ。貂蝉だな、こんな事したのは。
貂蝉からこの世界で俺が成すべき事を聞かされた時に薄々嫌な予感はしていたけどさぁ、こうしてスローライフを満喫出来ない事が決定的になると落胆を通り越してもう笑いしか出て来ねえよ。
…俺が何時神になりたいとかこんな能力が欲しいとか言ったんだよ。
この時、俺が言いたかった事はただ一つ。
一刀「…おのれ貂蝉ェェェェェン!!余計な事しやがってぇぇぇぇぇ!!」
永琳「一刀どうしたの!?」
ツクヨミ「一体どうしたんだ!?」
一刀「…イヤ、こっちの話だ。」
あんの肉ダルマ野郎め……いつか絶対しばく。
そう決意を固めた俺こと北郷一刀であった。
【完】
一刀君がチート過ぎる能力を付けられましたww
一刀「…笑うな。」
あれれ?もしかして一刀君、怒ってる?
一刀「俺言ったよな?転生してスローライフを満喫したいって。」
それだと書く事無くなっちゃうけどそれでも良いのかい?
一刀「ぐぬぬ……仕方ないか。」
そういう事、ではご機嫌よう。