もしも北郷一刀が東方の世界に転生したら。【打ち切り】 作:独田圭(ドクタケ)
一刀「・・・ネタ古いぞ。」
オイオイ一刀君、そこは宜しくお願い致しますッって言うのが普通だろ?
一刀「お前の茶番に付き合う義理は無い。」
つ、冷たい・・・
やぁ、元気か?俺はぼちぼちだ。
あれから更に10年の歳月が経過したけど破壊神の制御は相変わらず手こずってる。以前に比べて少しはマシになった方だがまだ完全に制御出来ていないのが現実。
だが、能力は完全に使いこなせる様になっただけでも充分進歩したと思う。てかそう信じたい。
能力を使いこなせる様になったのは凄く単純な思い付きによる物だった。100年以上経ったつい最近まで霊力はちっとも増えなかったが、5年前のある日俺はふとある事を思い付いた。
それはその時の俺が能力を使える範囲の限界を探っていた時の事。まぁ能力の使用範囲自体はショボい物だったが、その過程で自身が負った致命傷レベルの怪我さえも自分の能力で治す事が出来る事が判明した時「俺の能力で霊力増やせば良くね?」と閃いた。
何の根拠も無かったが思い立ったら吉日で試しにやってみたらこれが大当り。爆発的に霊力が増えた。一瞬今までの100年間は何だったんだとも思ったが、何はともあれこれで1つ目の関門は突破した。いやぁ~人生何でもやってみるもんやね(笑)。
これで破壊神の制御に集中出来る。大変喜ばしい事である。
てな訳で現在、俺は何をしているかというと、
一刀「カァーッ、久し振りの酒は格別だな!!」
永琳「久々の休日だから嬉しいのは分かるけど、・・・ちょっと飲み過ぎじゃないの?」
今、俺は永琳と酒場で飲み明かしている。本当は俺1人で行く予定であったが、この日珍しい事に永琳と休みが重なった。せっかくなのでと思い永琳を誘い今に至る。1人で飲むより気心が知れてる相手と一緒に飲んだ方が楽しいだろ?
こういう時ぐらいは仕事の事を忘れて朝まで飲み明かしたい気分だ。まぁ明日は朝から訓練があるのでそれは出来ないが。
一刀「そう言うなよ。今度いつ飲めるか分かんないだからさ。」
永琳「・・・それもそうね。」
永琳も分かってくれたようだ。そう来なくっちゃ。
俺と永琳は休みらしい休みは殆ど無い。最後に休暇を貰ったのはいつだったけなぁ。・・・覚えてねぇや。
俺は能力で疲労を回復出来るから別に良いが、永琳は普通の人間ならとっくに過労死するレベルの仕事量を1人でこなしている。それに本業の薬師の仕事以外にも他の仕事の応援に回される事が多いので体に架かる負担は半端じゃない。週に1回俺が能力を使って永琳の疲労を取り除いているが、やはり休みが無いのはしんどいに決まってる。俺だったら発狂する自信がある。
永琳の仕事量を減らせとヨミィに頼んだが、「もう少し辛抱してくれ。」と返された。
なんかここ最近ヨミィがとても忙しなく動いている気がするのは気の所為じゃないと感じているのは俺だけじゃない筈だ。・・・何か企み事でもあるのか?
1回ヨミィに聞いてみたが「時が来たら話す。」とはぐらかされた。都市の最高責任者までもが動くような事態という事は恐らく大掛かりな計画を企てているに違いない。
仕事の事は忘れて・・・と言った矢先にこんな事考えているとは、こりゃもう病気だな。
永琳「一刀、最近訓練の方は順調?」
一刀「概ね順調だな。豊姫も依姫も良く頑張ってると思うよ。」
あの2人は上手く隊を纏めていると思う。豊姫は俺の特訓を受けたからなのか調練のやり方が俺と良く似ている。スパルタな所なんかが特に。だがシゴキ方は俺以上らしく、何人かの隊員からは鬼軍曹と呼ばれている。
依姫は兵の配置転換を始め、調練のメニューや軍の食事管理も一任している。更には傷付いた隊員の治療も永琳と共に任されている。元気溌剌な姉とは違いお淑やかで隊員にも優しく接しているので軍の中では依姫は密かに人気がある。
何故そこまで俺が知っているのかというと、最高指導者である俺は常に軍の情報を把握しておかなければならない。しかし、多忙な俺は隊員の情報を全て把握するのは流石の俺も無理なうえに永琳同様、他の仕事に借り出される事が増えたので訓練の様子を見る事が出来ない日もある。そこで訓練の様子や隊員の体調などより詳しい情報を依姫に提出させて確認しているのだ。
余談だが、この件に関しては依姫に全て任せている。理由はこの軍の軍師を務める彼女は噛み砕いての説明が出来るからである。反対に豊姫はさながら軍人気質の為、この仕事は向いていない。
そう言えば、依姫は姉の豊姫が奇襲部隊の隊長になってからというのもシゴキ方が半端ない所為で怪我人が続出して涙目になりながら治療していると愚痴を零していた。・・・閑話休題。
紆余曲折ありながらも、訓練そのものは順調だ。たった1つの不安材料を除いては・・・
一刀「・・・だけど最近の依姫からの報告書を見て1つだけ気になる点があるんだ。」
永琳「何か問題でもあるの?」
一刀「・・・妖怪の目撃情報が少な過ぎる。それもある日突然急に数が減ったんだ。偶に遭遇しても妖怪は尻尾巻いて逃げてるみたいだし。」
永琳「突然の妖怪の消失、・・・何か引っ掛かるわね。」
永琳も俺の言ってる意味が分かったようだ。普通妖怪にとって人間は格好の獲物である。言葉を発さない下級妖怪なら人間を見付けたら直ぐに牙を向けてくる筈なのだ。それがここ最近は人間の姿を見付けただけで退散する事が果たして有り得るだろうか。・・・嫌な予感しかしない。
一刀「・・・この事はヨミィの耳に入れておいた方が良いな。」
永琳「そうね。・・・用心に越した事は無いわ。」
知らせるなら早い方が良い。朝まで飲み明かすつもりでいたが予定変更だ。明日にでもヨミィの所に行ってこの事を知らせよう。
翌朝、俺と永琳は駄弁りながら建物の最上階に位置するヨミィの部屋を目指していた。
というのも、今朝起きて早々ヨミィから呼び出しを喰らったのだ。普通なら面倒くさがる所だが昨日の件をヨミィに知らせようと思っていたのでハッキリ言って手間が省けた。
昇降機で最上階に上がるまでの間、手持ち無沙汰なので逆立ちしてその状態のまま腕立て伏せをする事にした。永琳からは呆れられたがもう習慣になっているのでしょうがない。・・・うん、やっぱ病気だな俺。
・・・なんてくだらない事を考えてるうちに昇降機は最上階に到着した。
部屋に入るとヨミィを始め、普段見る事の無い上層部の人間がふんぞり返る形で椅子に座っていた。
実を言うと俺はこの上層部の人間を心底嫌っている。何でかと言うとコイツらは何一つ仕事してないからだ。只椅子の上に座って講釈垂れているだけの無能な奴らだと思っている。
ツクヨミ「来たか。永琳と一刀よ。まぁ取り敢えず席に着いてくれ。」
ヨミィの言葉に従い俺達はそれぞれ席に着く。全員が着席した所でヨミィは再び口を開いた。
ツクヨミ「早速本題に入るが、数年前から戯れの存在が大きくなって我々の力を持ってしても対処出来なくなってきてる。そこで我々は戯れの無い月に移住する計画を立てている。後半年程でこの地上を出て遥か彼方の月を目指す。今、その準備段階に入っている所だ。」
戯れ・・・それは妖怪と死の両方を指す言葉だ。俺がまだ隊長だった頃は妖怪退治なんて日常茶飯事だった。確かにこれ以上妖怪が増え続けるのはマズイのでそれはまぁ分かる。だが死については人間として生きている以上、避けては通れない運命なのだ。俺はもう人では無くなってしまったので普通の人間よりかは寿命は長いが所詮早いか遅いかの違いだけで死は必ず訪れる。ヨミィには悪いけど俺はその計画には素直に賛同出来ない。
・・・それにしても、やはり引っ掛かる。この計画が持ち上がった時期と同じタイミングで妖怪が消失するなんて、偶然にしては出来過ぎてる。何か裏がある様に思えてならない。
ツクヨミ「ーーー以上で話は終わりだが誰か質問はあるか。」
一刀「1つ聞くが、もし月に発つ日に妖怪が攻めてきた場合、計画はどうするんだ?」
「若造が!!ツクヨミ様に対して馴れ馴れしいぞ!!口を慎め!!」
・・・テメェに聞いてねぇんだよ。いちいちしゃしゃり出て来んな。
一刀「・・・己の私腹を肥やす事しか能の無い部外者共は口を挟まないで貰いたい。」
俺の1言で周りの空気が張り詰めた物に変わったのを感じた。自称重役の男の額に青筋が浮かび、怒りで顔を真っ赤に染める。永琳はどうして良いか分からずオロオロしており、ヨミィは腕を組んだまま俯いていた。
「・・・何だと!!若造の分際で我らに楯突くでない!!貴様らの様な野蛮な指導者と野蛮な薬師は黙って我々の指示に従ってれば良いんだ!!」
・・・言いやがったなコイツ。俺だけならともかく都市の頭脳とまで言われる永琳を野蛮扱いするとはいい度胸じゃねぇか。・・・いい加減キレたぜ。
永琳Side
・・・私は今、ひどく困惑していた。
ツクヨミ様から呼び出されて部屋に入るや否やツクヨミ様は月面移住計画の全容を話し始めた。
この計画は私も1枚噛んでるので大まかな内容は知っていたが、情報が漏れる事を懸念して今日に至るまで計画に携わった者であっても全容を話す事は無かった。だから私も詳細な計画の内容を聞くのはこれが初めてだった。
その話自体は何の滞りも無く進んでいったが、ツクヨミ様が私達に質問を投げかけた時に問題が起きた。
それは一刀がツクヨミ様に質問した時だった。普段から一刀は私的な場ではツクヨミ様をヨミィと呼んで親しく接している。ツクヨミ様もその呼び方を気に入っているようで一刀とは友達みたいな接し方をしている。
そんな一刀の質問の仕方が上層部の人達の癇に障ったらしく一刀に向かって噛み付いてきた。それに対して一刀は上層部の人達を睨み付けた。
一刀と上層部の人達との仲の悪さは都市の住民の間では有名だった。一刀は上層部の人達の事を無能で役立たずと平気で言うし、上層部の人達にとって俺流を地で行く一刀は目の上のたんこぶ的な存在でしかなく、両者の関係はまさに最悪だった。
一触即発な雰囲気が漂う中、私は一刀の身を案じていた。一刀はお世辞にも気が長い方では無い。況してやそれに輪を掛けるかの様に一刀が敵視している上層部の人間からいちゃもんを付けられて機嫌が良くない事は分かっていた。それでも私は一刀が冷静な対応でやり過ごしてくれる事を願った。
一刀「・・・己の私腹を肥やす事しか能の無い部外者共は口を挟まないで貰いたい。」
・・・現実は無情であった。私の願いなど何処吹く風で売り言葉に買い言葉で返した一刀。その瞬間、周りの空気が凍り付く感覚を覚えた。見ると上層部の人達は怒りに満ち溢れた表情をしていた。・・・最悪な事態になってしまった。
「・・・何だと!!若造の分際で我らに楯突くでない!!貴様らの様な野蛮な指導者と野蛮な薬師は黙って我々の指示に従ってれば良いんだ!!」
傲慢な態度でそう言い放った。・・・怒りが込み上げてくる。私の事よりも妖怪の手からこの街を守る為に血も滲む様な思いをしている一刀を野蛮って呼んだ事が何よりも許せなかった。
・・・せめて一刀の擁護をしなくては。そう思った私が席を立とうとした時・・・
一刀「野蛮なのはテメェ等の方だろうがぁ!!」
一刀の怒声が部屋の中に響き渡った。
一刀Side
身体中から怒りが込み上げてくる。多分、今の俺の顔は怒り一色に染まってるだろう。だが、そんな事はどうでも良い。
コイツ等は永琳の誇りを傷付けたのだ。
都市開発の1番の功労者の永琳を、この街を発展させる為に尽力を尽くしてきた永琳の努力を踏みにじる様な事はあってはならない。
一刀「テメェ等がこの街でのうのうと生きてられるのは誰のお陰だ!!テメェ等がこの街に少しでも貢献した事があるのか!!今こうしてテメェ等が胡座かいて座っていられるのもヨミィと永琳のお陰じゃねぇのかぁ!!」
まだだ、まだ足りない。永琳の努力とヨミィの努力をコイツ等に解らせる為にはまだ言葉が足りない。
一刀「テメェ等がふんぞり返ってる間もヨミィと永琳はこの街を守る為に身を粉にして働いているんだぞ!!それを野蛮という1言で片付けるんじゃねぇ!!」
上層部の野郎共は何も言い返してこなかった。そりゃ当然だろ。俺に図星を突かれたんだからな。逆にここで言い返せる程口が回るなら俺はコイツ等を褒めてやるぜ。
言いたい事は言ったのでスッキリはしたが、お陰で辺りに気まずい空気が流れる。自らが撒いた種とはいえ目のやり場に困る。
・・・これはヨミィへの報告は時間を置いた方が良いな。
結局その後なし崩し的な感じで解散となり、皆散り散りに散っていく中、永琳だけは椅子に座ったままボーッとしていた。ヨミィに後で報告するとして俺もその場から立ち去ろうとした時、
ツクヨミ「一刀、ちょっと良いか。」
・・・ヨミィに呼び止められた。あちゃ〜、やっぱマズかったか。
ヨミィは俺の前まで来ると威厳たっぷりの声で俺に声を掛けた。
ツクヨミ「・・・会議中に大声出すのは褒められた事では無いぞ。」
・・・ですよねぇ〜。
一刀「・・・悪い、どうも俺は気が長くねぇ。あんな事言われたからついカッとなってしまった。」
ツクヨミ「お主が怒るのも無理は無いと思っている。だけど、こういうのはもうコレっきりにしてくれ。流石に心臓に悪い。」
一刀「・・・善処するよ。」
ヨミィと永琳を庇う為にした事が逆に2人に迷惑を掛けてしまった。短気は損気とは良く言ったものだなと俺は自嘲する。
だがヨミィは険しい表情から一変して笑顔になると俺の手を握り締めた。
ツクヨミ「・・・だが、私個人としては嬉しかったぞ。お主は私達の為に怒ってくれたんだ。それを頭ごなしに叱るのはお門違いだろ?」
そう言ったヨミィは永琳の方に顔を向けるといまだ放心状態の永琳に声を掛けた。
ツクヨミ「永琳も一刀に言うべき事があるだろ。何時までもボーッとしてないでお礼を言ってやれ。」
ヨミィの言葉で我に返った永琳は俺の元まで歩み寄ると頭を下げた。
永琳「・・・ありがとう一刀。私達の為に怒ってくれて。」
一刀「良いんだよ、ヨミィと永琳は俺の大事な友達だからな。」
所詮俺がやった事は只の自己満足だ。それでもヨミィと永琳は感謝してくれた。なんだかんだ言っても結局は2人に支えられているんだな。
だから俺の方こそ、
・・・ありがとう。
一刀「それで、ヨミィに報告したい事があるんだ。」
ツクヨミ「どうしたんだ?そんな神妙な顔付きになって。」
時間を開けてまた出直すつもりでいたが、今この場には俺を含めて3人しかいないのでついでに本来の目的を果たす事にした。
一刀「ここ最近、妖怪がこの辺りから姿を消した。それもある日突然にだ。」
ツクヨミ「・・・妖怪の謎の消失か。」
一刀「その通りだ。不自然だと思わないか?戯れの象徴である妖怪がある日を境に姿を見せなくなるって。」
ツクヨミ「ふーむ・・・」
妖怪が人間に対して恐れを為したなどまずあり得ない。かと言って人間を襲う必要が無くなったとは考えにくい。あらゆる可能性を考慮してみたが、どれも信憑性に欠ける。その中で1番可能性としてあり得る仮説が浮かび上がり、それを確信へと導く為に俺はヨミィに1つの質問をした。
一刀「ヨミィ、過去に似た様な事例ってあったか?」
ツクヨミ「・・・確か、前に似た様な事が1つだけあったな。」
聞けばこの都市が街として機能し始めた頃、妖怪の群れがある日一斉に失踪する事件が起きた。その群れは1ヶ月経った後に何事も無かったかの様に帰って来た。だが、失踪前と比べて攻撃力が格段に上がっていたという。
何とも奇異な出来事だな。そんな短期間で攻撃力を上げる事など【普通は出来ない】・・・・・・待てよ!!今回の失踪した規模はそれよりデカイ。もし前回と同じ事が起きているとしたら・・・
俺の嫌な予感ってのは大概的中する。今この瞬間、疑惑が確信へと変わった。ならば、俺の取るべき手段は・・・
永琳「ツクヨミ様、今回の失踪理由が前回と同じだとしたら。」
ツクヨミ「あぁ、計画を実行する前に無駄な犠牲を出す訳にはいかない。一刻も早くこの計画を進める必要があるな。住民の安寧の為に、そして永琳、一刀と平和に暮らす為に。」
一刀「・・・ちょっと待てヨミィ。」
1つの結論に辿り着いた俺はヨミィに待ったを掛けた。都市の最高責任者であるヨミィには己の私情で動いて欲しくない。何故なら今から言う事はヨミィと永琳を裏切る事になるんだから。
ツクヨミ「・・・何だ、我らと一緒に暮らすのが嫌と言うのか?」
永琳「・・・一刀、貴方まさか!?」
一刀「永琳は気付いたみたいだな。・・・ヨミィ、俺はそんな風には言ってない。ただ、2人には悪いけど・・・
・・・俺は月には行けない。」
【完】
いやぁ〜、一刀君キレちゃったね。
一刀「当たり前だろ。俺の親友を侮辱した奴は誰であっても許さん。」
一度に2人の心を鷲掴みにするとは、一刀君も罪作りな男だねww
一刀「・・・それ、どういう事だ。」
では御機嫌よう〜←逃走
一刀「オイコラ待て!!」