もしも北郷一刀が東方の世界に転生したら。【打ち切り】 作:独田圭(ドクタケ)
最新話です。
一刀Side
・・・場が一瞬静まり返った。
永琳は俺の言いたい事が解っていたのか、俺の言葉を聞いても大して驚いた様な表情を見せなかった。
だがヨミィは、明らかに動揺していた。本人は平静を装っているつもりだろうが俺の目は誤魔化せない。先程から目の焦点が定まっていない。
ツクヨミ「・・・何故そんな結論に至ったんだ?まだ何も起きてはいないじゃないか。」
ヨミィの言ってる事は正しい。確かに【まだ何も】起きてはいない。ヨミィは俺が決断を急ぎ過ぎたと思っているようだ。そう思うのも無理はない。俺だって逆の立場だったらもう少し考えろと思うに違いない。
だが、これを先延ばしには出来ない。何故ならこれには時間的猶予が残されていないと俺の勘が告げているからだ。
一刀「・・・根拠ならあるさ。これは最早一刻を争う非常事態である事は間違いない。」
ツクヨミ「それ程のものなのか?」
一刀「考えてもみろ。ヨミィの計画と妖怪の消えた時期が重なるなんて偶然にしてはタイミングが良過ぎる。そもそも妖怪がこの計画を知っていたとは到底思えない。・・・俺の推測では、都市の重役の誰かがヨミィの計画を外に流したんだ。それに犯人の尻尾ももう掴んでる。」
ツクヨミ「何だと!?」
ヨミィは俺の言った事が信じられないのか、本気で驚いていた。なんだよその反応。俺、結構ショックだぞ・・・
そんな思いは胸に仕舞いつつ、俺はある物をヨミィに見せた。
ツクヨミ「・・・何だこれは?」
一刀「ここ数カ月の無能な重役共の一日の行動をまとめた資料だよ。・・・見ての通りコイツ等、碌に働いてないだろ。」
ツクヨミ「・・・真っ白だな。」
永琳「・・・そうですね。」
ヨミィも永琳も無能共の真っ白な予定表を見て開いた口が塞がらないようだ。俺だって初めてこの事実を知った時は怒りを通り越して笑いしか出てこなかった。
だが、俺が注目して欲しい所はそこではない。
一刀「殆どの予定が真っ白な中、何故か此処だけは書かれてあるだろ?【訓練の視察】って。ヨミィ、この日付に心当たりはあるか?」
ツクヨミ「・・・!!この日って確か・・・」
一刀「そういう事。この日はココら一帯で妖怪が突然姿を消した日付と一緒なんだ。さて、これを偶然の1言で片付けられると思うか?」
永琳「どういう事?」
一刀「この日は隊員全員に休暇を与えたんだ。だからこの日俺達は訓練なんか行ってない。・・・つまりはそういう事だ。」
流石の永琳もここまでは予想していなかったらしく、口をあんぐりと開けたまま固まっていた。奴等の無能っぷりは今に始まった事ではないが、ここまで来ると最早1つの極みだな。
そもそも俺を嫌っている重役共がわざわざ俺達の訓練の様子を視察するとは思えない事は火を見るよりも明らかだ。
ツクヨミ「だが何故そんな事をするんだ?アイツ等にとって利点になる事など無い筈なのに。」
一刀「それは今から説明するよ。確かに殆どの重役共にそんな事をする利点など無い。」
奴等は自分にとって利益になる時だけしか動かない都合の良い輩である。そうなると何故この様な事をするのか疑問が残る。
一刀「考えられる事は重役共の中に人間に化けた妖怪がいるか、はたまた妖怪から賄賂を受け取ったか。だけど前者はヨミィにバレる恐れがあるから恐らく後者が濃厚だろう。」
永琳「そこまで出来る妖怪なんているのかしら?」
一刀「妖怪だからって甘く見ちゃいけないよ。妖怪討伐をやってきた俺だから知ってるけど奴等にも頭の回る奴は幾らでも居るし、人型の妖怪だって居る。あくまで推測の域での話だけど人間のフリしてアイツ等に近付いて賄賂を渡したんなら辻褄が合う。」
妖怪に良い様に駒にされてる事も気付かずに今頃机の上で何する訳でも無くふんぞり返っているだけだろう。駒にされた奴に待ってる末路は妖怪の餌食になるだけだ。だがそうなる前に俺が奴等を裁くけどな。
だってそうだろ?奴等はヨミィと永琳の長年に渡る努力を水の泡にする様な真似をしたんだ(その中には俺も少しは努力したんだが)。俺達を裏切る様な事は断じて許す訳にはいかない。
一刀「この件は俺がアイツ等を裁く。証拠も揃ってるしな。」
ツクヨミ「あぁ頼む。だけど手荒な事だけはしないでくれよ。」
一刀「…善処するよ。」
次の日俺はヨミィ達を裏切った罰として財産の没収、都市からの追放を言い渡した。中には抵抗する奴もいたのでソイツ等は物理的に黙らせた。手荒な事はするなと言われたそばからこんな事をしたのでその後ヨミィにこっぴどく叱られたが。
その日の帰り、俺はヨミィと永琳を誘ってこの前永琳と行った居酒屋で互いの労を労う事にした。ヨミィには何度も断られているのでダメ元で頼んだところ以外にもあっさりと了承してくれた。何でも俺の送別会も兼ねての事らしい。
一刀「久し振りの酒だぁ!!」
永琳「…ついこの間私と飲んだばかりじゃない。」
一刀「こういうのは気分の問題だよ。気分の。あっ店主、酒もう1本追加で。」
ツクヨミ「…なんか飲むペース早くないか?」
一刀「そう言うヨミィも空瓶3本もあるじゃないか。」
親しい間柄と酒を飲めば酒も美味いしペースも進むもの。仕事を忘れて(多分無理だと思うけど)時間を忘れて飲む酒はやはり格別だ。
ツクヨミ「だが、たまにはこういうのも悪くは無い。」
一刀「だろ。酒は飲める内に飲んどかねぇとな。」
永琳「一刀ってお酒に呑まれるタイプね。」
一刀「人の事言えねぇだろ。」
永琳の言う通り、俺は酒に呑まれやすい性質である。実際、たまにこうして酒を飲んでは酔いつぶれるまで酒を飲んだ挙句、翌日二日酔いに悩まされるというお決まりのパターンが出来つつある。以前永琳にはその悪い癖を直すように言われたが俺が聞く耳を持たなかったので今ではもう諦めている。なんだかんだ言って永琳も酒好きなのだ。
ひとしきり酒を飲んだ後、ヨミィが神妙な面持ちになって俺に話を振ってきた。
ツクヨミ「なぁ一刀。」
一刀「ん?」
ツクヨミ「どうしても地球に残らなければいけないのか?」
一刀「…あぁ、妖怪との戦いは避けて通れない道だし、何より今更月に行くなんて言ったら共に戦う者達に顔向けが出来ない。」
ツクヨミ「お主の能力で妖怪を何とか出来ないのか?」
一刀「無理だ。規模がデカ過ぎる。」
ツクヨミ「でも私は…」
理解は出来ても納得は出来ないのか、それでも尚食い下がるヨミィ。…仕方ない、奥の手を使うか。
本当はヨミィの立場を利用してる気がするからこんな事は言いたくなかったけど一友人としてヨミィの立場を守る為に言わなければならない。
一刀「ヨミィ、お前は都市の最高責任者としての立場があるんだ。だから私情は捨てろ。情に流されて共倒れじゃ目も当てられないだろ。」
最高責任者の立場に居る以上、時には非情な決断を下さねばならない事がある。だからこそヨミィは確固たる姿勢を崩してはいけないのだ。
一刀「ヨミィの事だから月に行った後自分を責めるかも知れないけど、地球に残ると言い出したのは俺なんだからヨミィが責任を感じる必要は無いよ。もし、それをヨミィのせいだと言う間抜けな奴が居たら俺が片っ端からブチのめしてやるよ。」
相当酒がまわっているのか俺の思考もやや物騒な方向に傾きつつある。
…誰だ、今クサいセリフとか言った奴は。俺と少しオハナシをしようじゃないか。なに苦しゅうない、近うよれ。
ツクヨミ「…そうだな。最高責任者である私がしっかりしてないと一刀に申し訳が立たないよな。」
俺がアホな事(もしかして間抜けな奴って俺の事か?)を思ってる間にヨミィはポツリポツリと言葉を紡ぎ始めた。どうやら納得はしてくれたようだ。だが静かに語るヨミィの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
ツクヨミ「…だが今の私には一刀と笑顔で別れられる自信が無い。…だから一刀、最後に私の我が儘を聞いてはくれぬか?」
一刀「俺に出来る事なら何なりと言ってくれ。」
ツクヨミ「最後に…お主の胸を貸してくれ。」
一刀「…承知した。」
俺が返事をしたのと同時にヨミィは俺の胸に抱き着いてきた。そして堰を切ったかの様に泣き始めた。最高責任者である以前にヨミィも1人の女性なのだ。女性を泣かせるとは何て俺は最低な男なんだ。
それからヨミィは1時間程俺の胸の中で泣き続けた。
永琳「一刀、貴方に私から餞別があるの。」
永琳がそう言ってきたのはヨミィが泣き止んだすぐ後の事だった。はて餞別、…酒か何かかな?
どうやら顔に出ていたらしく永琳は小さく溜め息を付いた。溜め息ばっかり付いてると幸せが逃げるZE☆…なんて微塵も思ってませんから笑顔で弓を向けるのは止めて下さい、死にます。
永琳「全く…残念だけど貴方が思ってる物とは違うわ。私からの餞別は…コレよ。」
そう言って俺に差し出してきたのは1本の木刀だった。聞けばこの木刀は永琳が弓を使う前に使用していた武器で一見ごく普通の木刀だが霊力さえ注げばどんな強固な物であってもいとも容易く斬れるらしい。…それってもう木刀なんかじゃなくね?
但し、霊力を注げる量には限界があるらしくあまりに大量の霊力を注ぐと木刀がその量に耐え切れず折れてしまうらしい。
だけどなんで永琳はそれを俺に渡すのだろうか。
永琳「貴方、武器を持ってないでしょ。貴方がこの街屈指の実力者である事は知ってるけど大勢の妖怪と生身で戦うのはいくら貴方でも辛いものがあるわ。コレは私から貴方へのせめてもの手助けだと思って頂戴。」
成る程納得である。そこまで言われたら受け取らない訳にはいかない。ここは永琳の厚意を有り難く受け取っておこう。
一刀「ありがとう。大事に使うよ。」
永琳から木刀を受け取った俺はこの木刀を【霊閃(れいせん)】と名付け、懐に仕舞った。その後俺の送別会という名の酔っ払い談議は終わりを告げ、俺はまたしても良い潰れたまま帰路に着いた。
それから1年が経ち、俺は大戦に向けた準備を着々と進めていた。
本来なら俺1人が地球に残る予定だったが、どっかから情報が漏れたのか俺と共に地球に残ると志願した隊員が現れた事には少しばっかし驚いた。
だが、豊姫と依姫までもが残ると言い出した時には流石に断った。俺自身正直残したい気持ちは多々あったが、もしそうすると月で軍隊を作った場合、軍を指揮出来る人間が居なくなってしまう。それを懸念した俺は2人の申し出を受け入れる訳にはいかなかった。
特に豊姫を説得する時には骨が折れた。「淋しいですよぉ。」と言われた時には申し訳ない気持ちになったがそのすぐ後に「一刀様とデート出来ないじゃないですかぁ。」と言った事で全部台無しになった。思いっきり私欲まる出しじゃねぇか!!とツッコんだ事は記憶に新しい。
準備を進める上で一番の壁となるのはやはり破壊神の制御だろう。今でこそ少しは扱える様になったが完全に制御下に置けていないのが現状だ。このままでは何時何かの拍子で暴走してもおかしくは無い。
一刀「…どうしたものか。」
正直言ってもうお手上げだ。あらゆる手段を片っ端から試してみたがどれも上手くいかなかった。万策尽きるとはまさにこの事である。ちなみに能力の方は霊力を能力で増やすというセコい事を何回か繰り返した結果、本来人間が持てる量の限界を遥かに上回る量の霊力を手に入れた。いざって時は能力を使って妖怪を退治すれば良いだけの話だ。
一刀「案外どうにでもなりそうだな。」
お気楽思考を持つ俺はこれ以上考える事を止めて来たるべき日に備えて準備を進める事にした。
だが、この軽率な考えが取り返しのつかない事態を招く事になるとはこの時俺は気付かなかった。
【完】
一刀「おい作者、投稿を遅らせるとはどういう了見だ。」
いや、それはその…仕事が忙しくて…
一刀「言い訳はいい。反省の色がまるで無いな。」
そ、そんな事は…
一刀「そういえば永琳から【霊閃】を貰ったんだったな。…丁度良い実験台も居るし切れ味を確かめてみたかったんだ。」
撤収ぅぅぅぅぅ!!
↑作者逃亡
一刀「チッ、逃げられたか。…コホン、こんなダメな作者が書く小説だが次回を楽しみにしていてくれ。…それじゃあな。」
※追記、プロローグ書き直しました。