もしも北郷一刀が東方の世界に転生したら。【打ち切り】 作:独田圭(ドクタケ)
ハイ、投稿が遅れてスミマセンデシタ…←ズタボロ
一刀「ヨロシイ。…で、今回はシリアス要素が入るんだよな?」
そうですね、あまり自信が無いので何時も以上に拙い文章になってるとは思いますがそれでも大丈夫な方はゆっくりしていって下さい。
一刀「(…駄文を書いてる自覚はあったんだな。)」
◇
永琳Side
ついにこの日が来たわ。
予てから計画していたツクヨミ様の月面移住計画を今日実行に移す。
私が開発したロケットに都市の住民を乗せて月を目指す。本来なら住民全員を乗せて行く予定だったけど一刀を含めた一部の兵士は地上に残る事になった。理由はよりにもよってこの日に攻め入ってくる大勢の妖怪からこの都市を守る為である。
妖怪と裏で取り引きしていた重役達は一刀が断罪したけどやはり妖怪達の進攻を未然に防ぐ事は出来なかったようね。
一刀はここ数ヶ月自宅に篭って多分修行してると思うわ。多分というのは一刀本人に確認を取ってないからなの。偶に一刀の家に行くけど何時も面会謝絶と書いた紙が玄関の扉に貼ってあるから中に入った試しは一度も無いの。でも一刀のやる事と言ったら大抵は修行か訓練しか無いから概ねその解釈で間違いないと思うわ。
普段は陽気で何時も私とツクヨミ様をからかったりしてるのに自分の仕事の事となると生真面目になって一切の妥協も許さないの。
一刀ってああ見えて結構頑張り屋さんなのよね。
一刀が地上に残ると決めた時周りを説得するのに苦労したわ。私も勿論一緒に月に来て欲しい気持ちはあったけど一刀は一度言い出すと頑固で譲らない所があるから私は一刀の意志を尊重する事にしたの。でも周りの皆んながそれを知った時には本当大騒ぎだったわ。
特に豊姫を説得した時が一番骨が折れたわ。豊姫は他の誰よりも一刀に懐いていたから何を言っても「一刀さんに付いて行きます!!」の一点張りで堂々巡りを繰り返していたわ。
これに業を煮やしたのは他でもない一刀で何時まで経っても引かない豊姫に一刀は軍の最高指導者の特権を行使して半ば強引に月に行かせる事になったわ。まぁその後も豊姫との間で一悶着あって色々と大変だったけどね。
昨日になって一刀は漸く自宅から出て来たけど共に地上に残る者達と大戦に向けて入念な打ち合わせをしていて、とてもじゃないけど割って入れる空気では無かった。
一刀に話し掛ける事が出来たのは長々と続いた打ち合わせが終わって計画を実行する直前の僅かな時間だけだった。
永琳「順調?準備の方は。」
一刀「ん〜?まぁ悪くはないかな。兵の士気は高いしそれに俺達も今日という日が来るまで何もしてこなかった訳じゃないからな。」
一刀は何とも思ってなさそうにそう言った。楽観視してる様な言い方だけど私もさして大きな心配はしていない。
一刀はこの都市でも1、2を争う実力者である。私でも一対一の勝負ではもはや勝ち目が無い程の強さを持っているのだ。その一刀が中心となって鍛え上げて創り上げた強者揃いの兵士達が妖怪達を迎え撃つのだからあっさり負けるとは思っていない。
一つだけ不安材料があるとすれば一刀のもう一つの性質、破壊神の暴走ね。これについてはツクヨミ様も今回の大戦を迎える上で唯一にして最大の懸念事項だと言っていたわ。
一刀は自分の神としての性質を知ってから今日に至るまで暴走を抑える方法を色々試していたけど収穫は得られなかったとぼやいていたわ。もし万が一、この戦いで一刀の破壊神が暴走する様な事態になってしまえば、敵味方問わず破壊し尽くして挙げ句周りには何も残らなくなる。
…それだけは絶対に避けなければいけないわね。
一刀「どうした?難しい顔して。」
永琳「…一刀、あっちの方は大丈夫なの?」
一刀「…あぁ破壊神の事か。まっ、どうにかなるんじゃないか。」
一刀は相変わらずあっけらかんとした態度で私の質問に答えた。これから大きな戦が控えているというのに一刀ったら緊張感の欠片も無いわね。
永琳「…だけど油断は禁物よ。ツクヨミ様も一刀が暴走しないか心配してるのよ。」
一刀「相変わらず心配性だなぁヨミィは。気楽に行こうぜ気楽に。(大事な事なので以下略w)」
永琳「一刀、貴方はもう少し危機感を持ったらどうなの?貴方の場合は気楽に行き過ぎよ。」
一刀「わぁーた、わぁーたって。だから小言はヤメてくれ。気が滅入る。」
…全然分かった様に見えないじゃない。
全く、一刀はすぐそうやって面倒くさがる。私とツクヨミ様が一刀をどんなに心配してるか知りもしないで。これは一刀の悪い癖ね。
一刀「そんじゃ時間も無いしそろそろ行くな。」
永琳「…えぇ。」
まだ一刀に話したい事はいっぱいあったけど一刀の言う通り残された時間は後僅かしか無い。私もそろそろロケットに乗らないといけないわね。
私は最後に去り行く一刀に向かって声を掛けた。
永琳「一刀!!」
一刀「…ん〜?」
永琳「…元気でね。」
一刀「…あぁ。」
一刀が居なかったらこの街は早い内に妖怪達の手に落ちていたかも知れない。一刀が先陣を切って兵を鍛え上げてくれたから今日までこの街は安全でいられた。そして何より一刀は私とツクヨミ様の心の拠り所だった。
何時は私達をからかって弄んでいるのにいざとなれば私達2人を支えてくれて頼りがいがあった。私達の苦労を一番近くで見てきたのも一刀。何時だったかしら、そんな私達の苦労を知ろうともせず講釈ばかり垂れていた重役達を一刀が怒鳴り散らした事があったわね。本当一刀には感謝してもしきれないわ。
だけど今は感謝の気持ちを伝えない。もしそれを言ってしまったらもう二度と一刀に会えない様な気がしたから。
だから最後にもう一度、
永琳「…元気でね一刀。」
今度は一刀は振り返らなかった。その代わりに小さく右手を挙げてこちらにヒラヒラと振って返した。
…いつの日か必ず再会出来る事を願って。
◇
一刀Side
永琳と別れた俺は街の入口へと向かった。
今はまだ何も起きちゃいない。まさに嵐の前の静けさといった感じかな。
入口に到着すると既に何人かの兵士が列をなして並んでおり俺に向かって敬礼した。俺はその内の1人に声を掛ける。
一刀「…首尾は?」
兵士A「問題ありません。もうすぐ偵察に出掛けた兵がこちらに戻ってきます。」
一刀「そうか。」
ロケットの発射まではまだ少し時間がある。ヨミィの計画が成功するまでの間、俺達は妖怪共の足止めをして時間を稼がなくてはならない。失敗は決して許されない大仕事だ。
その時、偵察に出掛けていた兵士が帰ってきた。
兵士B「報告します!森の出口で妖怪の群れを発見しました!その数およそ2万!!」
「「…!!」」
あまりの数の多さに待機していた兵全体にどよめきが走った。
…2万か、対してこちらの数は20人弱。数の差ではこちらが圧倒的に不利だが俺達はそれを跳ね返せるだけの力を身につけたつもりだ。
それでも駄目なら覆す程度の能力を駆使して敵の数を減らすだけだ。
一刀「…良いかお前ら!!さっき聞いた通り敵の数は2万。今までの妖怪討伐とは訳が違う。どうしても後手に回らざるを得ないのは事実だ。だが恐れるな!!お前らは今日まで俺のシゴキに耐え抜いた精鋭共だ!!だから怯むな!自信を持って全力で当たれ!!」
「「オォォォォォ!!」」
一刀「…だが無理はするな。お前らには家族が居る。だから…
…全員生きて帰るぞ!!」
「「オォォォォォォォォォ!!」」
さぁ、おっ始めるとするか!!
一刀「出陣!!」
◇
…それから何時間か経った。
俺達は槍を仕掛けた落とし穴を戦闘前に外の至る所に配置し敵を誘導、知能の無い下級妖怪はこの罠にまんまと嵌り序盤のうちは順調に数を減らしていったが、相手も頭の回る奴が居るようでそれが罠だと解ると次第に俺達の誘いにも乗らなくなった。
それからは膠着状態になり両者共に決め手を欠いていた。
実を言うと俺は能力をまだ使っていない。…というよりか使えていないと言った方が正しい。
何故かというと、俺はこの戦いの最中にこの能力が持つ重大な欠点に気付いてしまったからだ。
この覆す程度の能力は確かに脅威だ。だがこれを使うにはその事象の固定概念を正確に把握し尚且つその固定概念をどう覆すか具体的にイメージしなければならないのだ。
まさかよりにもよってこの戦いの途中にその欠点に気付いてしまった俺は自分の低能さに舌を打った。
一刀「…クソッ!!」
俺は霊力が底を尽かない限り動き続ける事が出来るのでまだ良い。だが共に戦う仲間達はそうもいかない。
言葉は悪いがいくら俺が鍛えたからといって所詮は人間の域を出る事は無い。それに体力だって妖怪に比べたら格段に劣る訳だし、このままジリ貧になるのはやむを得ない。
普段の俺ならオーマイガー!!なんてこった!!とバカ騒ぎするところだが、状況が状況なだけに流石に節度は弁えてるつもりだ。
とにかく状況はかなりマズイ。何人かの兵士は疲れの色を見せておりいつ均衡が崩れてもおかしくない状態だ。
妖怪と人間では基礎体力が根本的に違う。これは俺達人間が我武者羅になって訓練したところで体力の差をある程度埋める事は出来てもその差が完全に無くなる事は不可能に近い。
言ってみればこれは妖怪と人間の絶対的な一つの定めみたいな物かな………ん、ちょっと待てよ?
妖怪、人間、体力、定め……
一刀「!!」
そうか!分かったぞ!!あるじゃないか、この状況を打開するとっておきの秘策がぁ!!
…全く、何でもっと早く気付かなかった。でなければこう苦戦する事も無かったのに。
繰り返し言うが俺の能力は覆す程度の能力。ありとあらゆる事象に必ず一つは存在する固定概念をひっくり返す事が出来るチート能力。
此処での固定概念は【人間は妖怪に体力面で勝る事は出来ない】だ。ではそれをどう覆すか?
答えは簡単、【人間の基礎体力を上げる】。つまるところ、人間と妖怪の体力差をプラマイゼロにしてやれば良いだけの話。
何でプラマイゼロかって?そりゃあこの能力が持つもう一つの欠点が大きく関係してるからなんだよなぁ。
要するに不可能な事を能力で無理矢理可能にする訳だからそれに見合った対価というのを支払わなければならない。つまりタダでは覆せないって事さ。
俺がこの能力を使用する際には霊力が必要になってくる。しかもその消費量は覆す事象の規模の大きさによって変化する様になってるんだ。
もう分かっただろ?プラスにしたくても出来ないんだよ。この戦で大分霊力を使っちまったからこれ以上霊力を消費すると俺が持たない。その点プラマイゼロなら霊力を軽く消費するだけで済む。まぁ軽くと言っても俺基準での話だがな。
とはいえ一度に全員の兵士の体力を上げる事は出来ない。なのでまずは疲労の激しい兵士から優先して能力を使っていこう。その間妖怪の攻撃を躱しながらそれをやらなければいけないので結構重労働だ。
だがせっかく光明が見えたんだ。何が何でも成功させてやる!!
◇
時折襲いかかってくる敵を返り討ちにしながら地道に全兵士の体力の底上げ作業を繰り返して今さっき漸くそれが終わった。
完全に疲弊していた兵士は見事に完全復活を果たし先程までの膠着状態から一変して徐々にこちらのペースに傾き始めた。
そんな時、俺の元に待ちに待った報告が飛び込んできた。
兵士C「報告します!ツクヨミ様達を乗せたロケットが無事打ち上げ成功したとの事です!」
一刀「そうか!!」
予定よっか大分時間が掛かったがこれでもう一安心だ。俺は心の底から安堵しそして空を見上げた。
そこにはヨミィ達を乗せたロケットが遥か彼方の月を目指して飛んでいってる様子が見えた。これで本当にヨミィと永琳とはお別れだな。…今度会えたらまた一緒に酒でも飲もうぜ。
…そんな呑気な事を考えていたからだろうか、俺のすぐ背後から妖怪が攻撃態勢に入っている事に気付く事が出来なかったのは。
一刀「…があっ!!」
斬りつけられたなんて生易しいもんじゃない。背中から腰にかけて肉を抉り取られたかの様な感覚が全身を襲った。…完全に油断した。
俺はその場に倒れ込む。起き上がろうとするも力が入らず体は全く言う事を聞いてくれない。
兵士C「隊長ォォォ!!」
俺が倒れた事により兵全体に動揺が走った。自慢じゃないけど街一番の実力者である俺が妖怪にやられた事で残りの兵士は次は自分じゃないかと不安が募り完全に士気が落ちてしまっていた。
戦況というのはふとした事が切っ掛けでいとも簡単にひっくり返る。さっきまで俺達に傾いていた流れはあっという間に妖怪共に持っていかれ防戦一方なっていった。
能力を使えばどうにでもなるだろうと甘ったれた考えを持っていたこの間までの俺を全力でぶん殴ってやりたい。その結果がこのザマかよ……ふざけんなよ北郷一刀!!
どんなに愚痴ったところで状況は良くならない。どんなに動けと念じたところで俺の体はピクリとも動かない。
…このまま負けんのか?
…このまま俺は死ぬのか?
……冗談じゃねぇ。ふざけるな!!
生きてもう一度ヨミィと永琳に会うんじゃねぇのか。会って一緒に酒を飲むんじゃねぇのか!またアイツ等とバカやって笑い合いたいんだよ!!
だから……
……絶対に死ぬ訳にはいかねぇんだよ!!
その直後、俺の意識はプツリと途切れた。
◇
第三者Side
北郷一刀は地に伏して動かなくなった。
それを見た他の兵士達は絶望し、逆に妖怪達は勝利を確信したかの様に雄叫びを上げていた。
妖怪達からしてみれば敵の大将を討ち取ったも同然なのだから勝鬨を上げるのはおかしな事では無い。後は残りの兵士を片付ければ良いだけの事。相手は士気が落ちていて討ち取るのは容易い。
だが妖怪達はすぐには襲わなかった。妖怪達は皆一様に嘲笑を浮かべており明らかに見下した様な態度を取っていた。
妖怪達は全員北郷一刀の存在を完全に意識の外に置いていた。無理もない、一刀に対して致命傷と言える一撃を与えたのだ。生死の確認をするまでも無いとこの場に居た妖怪全員がそんな風に思っていた。
だから妖怪達は気付かない。
北郷一刀がまだ生きているという事実に。
だから妖怪達は気付かない。
倒れていた筈の一刀がいつの間にか起き上がっている事に。
だから妖怪達は気付かない。
一刀の身体から放たれている気が人間の物では無くなっている事に……
その気はまるで【刃】の如く鋭利で、そして冷たかった。それも触れるだけで全てを破壊し尽しそうな程に。
最初に異変に気付いたのは一刀と共に戦っていた兵士達だった。のっそりと立ち上がって一言も発さずこちらを見ようともせず俯いたままの一刀の姿を見て兵士達全員の頭の中に危険信号が灯った。逃げなければいけない。兵士達が考えていた事は皆同じだった。
そんな兵士達の様子を見て妖怪達は漸く異変に気付いた。
兵士達の視線の先を目で追っていくとそこには依然として立ち上がって俯いたままの一刀が居た。それを見た瞬間妖怪達は一瞬思考が停止した。
だがそれも束の間、それはすぐに動揺へと変わった。確かにあの時、一刀は妖怪に致命傷とも言える傷を付けられ地面に倒れた。だから立ち上がる事はおろか生きていたとしても少なくとも戦闘不能になっている筈なのだ。
ところが一刀は何事も無かったかの様に立ち上がった。それだけならば妖怪達は再び一刀に攻撃を仕掛けていたであろうが【本当】の異変に気付いた時、妖怪達はまるで金縛りにあったかの様に動けなくなった。
本当の異変……それは一刀の気の質の変化である。
感情の変化によって起こる気の変化などでは無く、【気そのもの】が変化したのだ。
通常の人間なら霊力以外の力を持つ事は出来ない。だが一刀は現人神である。つまり人間の状態の一刀の身に何かが起ころうとも神としての一刀が死なない限り北郷一刀という存在が消滅する事は無い。
即ち、今現在北郷一刀は人間としてでは無く神として存在していた。
…そう、ありとあらゆる物を破壊し消滅へと導く破壊神【刃】として……
一刀…もとい刃が顔を上げた。刃となった一刀にこれといって外見的な変化点は見当たらない。だがそれは刃が顔を上げるまでの話。刃が顔を上げた時さっきまでの一刀とは明らかに変わった所が一つだけあった。
それは瞳の色である。その瞳の色は黒から紫へと変色していた。そしてそれを見た者が不気味さすら抱く程その瞳は妖しく光を灯していた。
しばらく無言だった刃は妖怪達に……いや、その場に居た者全員に向けてたった一言言葉を発した。
刃「…消えろ。」
そう言い放った直後、刃を中心に竜巻が起こった。
そしてその竜巻はその場に居た者全員を呑み込んでいった。
◇
ツクヨミSide
ゾワリと背筋に悪寒が走ったような気がした。
今まで悪寒が走るような事は無かった。しかも今このタイミングでそれが起こったという事は、もしかして一刀の身に何か起こったのではないか。
…嫌な予感がする。
いてもたってもいられなくなった私はロケットの窓から外を見た。
ロケットが発射されてから随分時間が経っている為そこから見える光景は私達が住んでいた地球だけでそこに人の姿も都市の姿も肉眼では確認出来ない。
だがある場所で不自然な規模で渦巻く竜巻を見た時に私が抱いていた嫌な予感は確信へと変わった。
ツクヨミ「…一刀!!」
私や永琳が最も恐れていた事態が起きてしまった。
一刀の暴走……それは一刀が持つ破壊神【刃】の手によって引き起こされる。一刀は自分の種族が判明してから今日に至るまでこの力を上手く使いこなす事は出来なかった。
この刃の力はあまりに強大でまさに反則級と呼ぶに相応しい。その気になれば星一つは余裕で破壊出来るエネルギーを持つその力を自分の思うがままに操るのは本当に難しい。事実、一刀も相当苦労していたようでもはや何時暴走してもおかしくない状態にあった。今日まで持った事が奇跡とも言える。
だが一度理性という名の枷が外れてしまえば目に付いた物は皆例外なく破壊対象となりそこに敵も味方も無い。あるのは全部破壊するという欲求だけ。
私が心配しているのは破壊する事ではなく破壊した後一刀がそれを知ってしまった時に自分を責めやしないか、そしてその挙げ句心が壊れてしまわないか、私が本当に懸念していたのはそれだった。
その時、私の側に永琳が近寄ってきた。恐らく永琳も何が起きたかは見当が付いている筈。
永琳「ツクヨミ様…」
ツクヨミ「…永琳。もう気付いてるとは思うが、…一刀が暴走した。」
永琳は何も返さなかった。だが全てを理解した様な表情をしていた。…やはり気付いていたか。
私達の計画を邪魔しようとした妖怪達は破壊されて然るべき存在である。それに兵士達も暴走が起きる恐れがある事を承知の上で一刀と共に地球に残ったのだから言葉は悪いが巻き込まれるのは仕方が無い。
ただ一刀は自分の事となると思い詰めるきらいがあるからこの事を受け入れられるかが心配なのだ。
永琳「…大丈夫ですよ。一刀は、私達が思ってるよりもずっと強い人間です。だから一刀を信じましょう。」
まるで狙い澄ましたかの様なタイミングで永琳が言葉を紡いだ。確かにその通りだ。一刀は普段偶に愚痴を零す事はあったが弱音を吐いた事は一度も無く、私達の前では常に明るく笑っていた。
永琳「…それに一刀とはまた何処かで会える気がするんですよ。なんとなくですが。」
永琳が言うのだから多分そうなんだろうと私は思う。
永琳の良き理解者が一刀であった様に一刀の良き理解者もまた永琳であった。私は最高責任者という立場上一刀と会う機会は永琳程多くなかったがそれでも私を1人の友人として接してくれた一刀には心から感謝している。
だから私は永琳の言葉を信じる事にした。
…一刀、生きてお主とまた何処かで会える日が来るのを待っているぞ。
◇
第三者Side
辺りは一面荒野と化していた。
街も、人も、妖怪も、全てが消滅しておりそこが先程まで戦火を散らしていたという事実が嘘に思えてくる。
そんな荒野の真ん中で一刀はただ立ち尽くしていた。
一刀「(殺っちまったのか俺は……)」
人や妖怪、そして自分達が過ごした街も消え去り荒れ果てた大地に変貌したのを見た瞬間、一刀は己の直感に頼らなくとも何が起きたか理解してしまった。
妖怪だけならまだ良かった。だが一刀は、正確には刃は共に戦っていた仲間達をこの手で殺めてしまった。その事実が一刀の心に重くのしかかる。
仲間の中には家族と離れて一刀と共に戦う決断をした兵士もいた。だが暴走して刃となった一刀には破壊する対象を選ぶ事は出来ない。
制御出来ないにしろ大戦前にしっかりとした対策を行っていたらこの様な結末にはならなかった筈、だが一刀は能力があるから何とかなるだろうと途中で匙を投げた。その事を一刀は今とても悔やんでいた。
やがて一刀の意識が遠のき始めた。暴走したその所為で一刀の身体は限界をとっくに超えていた。一刀は虚ろな目をしたまま仰向けに倒れ込んだ。
暴走する前は死にたくないと思っていたが、今はそれすらももうどうでも良くなっていた。兎に角、一刀は早く楽になりたかった。
そして一刀は意識を完全に闇へと落とした。
こうして後に人妖大戦と言われる大きな戦は北郷一刀の心に大きな傷を残し、一刀以外生存者ゼロという結末で幕を降ろした。
【完】
一刀「……」
おや、どうしたの一刀君。
一刀「イヤ、厨ニ要素が半端ねぇなと思って…」
まぁ私は重度の厨二病患者ですからね。←キリッ
一刀「それ自慢になってねぇぞ…」
という事で後一話で人妖大戦編は終わりです。それとこれが今年最後の投稿になりますね。本当は今年中に人妖大戦編を終わりにしたかったんですけど…
一刀「自業自得だろ。」
では皆さん良いお年を!!
一刀「(逃げたなコイツ)…良いお年を。」