ハンターズギルドは今日もブラック【未完】   作:Y=

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サバイバル・ヒエラルキー

「…………ん?」

 

 ピー、ピー、ピー、と、長閑な鳥竜種の鳴き声が木霊する古代林の片隅にて、ドスマッカォの頭を手に持つ武器で串刺しにしていた男が、ふと空を見上げた。

 

 生い茂る木々の間から零れてくる木漏れ日は、微かな風に揺られて静かに揺れている。

 

 特に怪しい気配は無く、いつも通りの古代林は、今日も豊かな生態系と残酷な自然の摂理を間断無く刻み続けていた。

 

「…………気のせい、かな」

 

 誰かに話しかけられた気がしたんだけどなぁ、と、誰にともなく呟く。

 

 どうやら、“あれ? 今誰か、俺のこと呼んだ?”病が発症してしまったようだ。

 ぼっち固有の持病だ、仕方ない。

 話しかけられた気がしてしまって、つい周りを確認してしまう。

 そして、悲しいかな、お前なんかに話しかけることはないとばかりに過ぎゆく群衆の影。または雄大極まりない自然界。

 

 悲しみ背負ってるなぁ。

 

 

 

 今頃、可愛い弟子は、目隠しをしたまま、マッカォの群れを討滅し終えている頃だろう。

 

 群のリーダーは、今の時点でノールック討伐は厳しいだろうから、師匠として万難を排さねばと仕留めておいたのだ。

 

 下位のマッカォ程度、視線を飛ばさずとも気配を頼りに殲滅できるようにならなければ、将来的に狩りを行うに当たって色々と障害になることがあるだろう。

 

 例えば、ディノバルドの討伐をするクエストに行ったとして、殲滅の漏れ残しだったマッカォなんかに、ちょくちょく後ろから蹴りつけられる状況だったとしたら、ディノバルドの尻尾攻撃で斬り殺される可能性だってある。

 

 …………少し過保護すぎるだろうか。いやいや、少しばかり厳しい訓練を課しているのだ、なにも問題はあるまい。

 

 赤い頭蓋を上からぶち破り、ドスマッカォの頸椎まで貫通していた()()()()()を引き抜いた。

 

 機銃槍を引き抜かれたその身はビクンと大きく震え、辺りに真紅の血が撒き散らされる。

 後頭部破裂以外に目立った外傷のない所を見るに、このドスマッカォは苦しまずに死ぬことが出来たようだ。

 

 デロリと飛び出た脳漿は、緑色の体躯を自在に跳ね回らせる鳥竜種の無惨な最期に追悼の花を手向けるよう。

 

 レオンハルトは銀色の穂先を振って、槍の身に付いた血液を落とすと、統率者を失ってなお飛びかかる隙を伺うマッカォの残党たちへと足を踏み出した。

 

 

 ぐっと、宙を舞う感覚。

 ゆっくりと流れていく時間の中、浮遊感に身を委ねながら、慣れた空中動作で上下を確認。

 所々が赤黒く染まったゲリョスが、尻尾を振りきった体勢で立っている。

 

 調子に乗らず、さっさと逃げれば良かったものを。

 

 アナスタシアは、全く雑念の排された頭で、静かに思考する。

 

 あのゲリョスが必死になって揺り動かしてくれたお陰で、おこぼれを狙いにくるだろうゲネポスなどの小型肉食モンスターに食い散らかされずに済んだ。

 あのまま意識の海を揺蕩っていれば、そのまま死んでいたに違いない。

 

 栗色の瞳をキョロキョロと動かして、ゲリョスから十五メートルほど離れた場所に転がっている操虫棍を確認。

 腕には、五年以上苦楽を共にしてきたエルドラーンがしっかりとしがみついていた。

 

 お前も、一緒だったね。

 

 すっかり頭の中から飛んでしまっていた相棒に謝りながら、腰のポーチへ手を探らせる。

 

 手癖の悪いゲリョスにポーチの中身を荒らされたようだけど、必要な道具は粗方揃っていた。

 もちろん、回復薬も。

 

 最後に、身につける防具──“レギオスXシリーズ”の肩を守る、千刃竜の斬刃鱗で造られたプロテクターを一撫でした。

 

 守ってくれて、ありがとう。

 貴方のおかげで、私は生き残れる。

 

 

 落下と共に、引き抜いた投げナイフを、此方へ振り向いたゲリョスの身体へと投擲する。

 刃の表面に、薄く液体の塗布された投げナイフ。

 曲芸のような空中での軽業によって、緩い放物線を描きながら空を切り裂く銀色の刃は、棒立ちをする藍色の背中へ突き立った。

 

「ギャッ!?」 

 

 悲鳴を上げながら、身を飛び上がらせるゲリョス。

 

 少女の投げたナイフは、ゲリョスの身体に比べれば小さくとも、少女の正確な投射は身体の中心線──神経の集まるところを的確に穿っていた。

 

 そんなゲリョスの様子を見ながら、六メートルほどの放物線運動から、猫のように膝を曲げて静かに着地したアナスタシアは、その勢いのまま、身を丸めて横へと転がって、バネのように跳ね起きて、地面に落ちていた“灼炎のテウザー”へと駆け寄った。

 

 ゲリョスの方を確認しながらポーチを漁り、上級の回復薬──“回復薬グレート”の瓶を取り出す。

 

 藍色の身体を短く痙攣させるゲリョスを見るに、神経に作用する毒を塗っておいた投げナイフは、その一本で功を奏したようだ。

 モンスターの神経に侵入すると、その身体を麻痺状態に落とす神経毒に、ゲリョスは目を白黒させながら苦しんでいる。

 

 相手モンスターの晒した明確な隙を見て、アナスタシアは緑色の液体をぐっと呷った。

 

 里にはなかった、“回復薬”という魔法の薬。

 口に含むだけで、即座に全身のダメージを癒やす効果を発揮するというデタラメな薬だ。

 里の近くには調合の素材となる“アオキノコ”が全く繁殖していなかったために、ここまで突出した効果を持つ薬は無かったのだ。

 

 薬効成分特有の苦味を覆い隠す甘い蜂蜜(ハチミツ)の香りが口腔内を満たす。

 

 身体を癒やす痺れるような甘味と共に、全身へ一気に回復薬が回っていく。

 

 損傷を受けていた筋組織が急激な回復にプルプルと痙攣し、わずかに残っていたゲリョスの毒を一掃されたアナスタシアの身体は、重い倦怠感に包まれた。

 腹に入った回復薬が、強烈な異物感を刻みつける。

 

 武器を持つのも辛くなるようなそれを打ち払うために、アナスタシアは、ギルドに登録した時に教わった“ガッツポーズ”をとった。

 両腕を身体の真横に上げて、グッと胸を開く。

 途端、その身を蝕んでいた不快感は消え、残ったのは傷や痛みの癒えた狩人のみ。

 

 服用した人間に劇的な作用をもたらす回復薬は、飲みっぱなしにしてしまうと、様々な副作用と悪影響を及ぼす。

 それを打ち消すための画期的な対処法であるガッツポーズは、回復薬を服用した狩人にとって必須の動作であるが故に、受けたダメージから回復する一連の動作は、狩り場においては大きな隙となる。

 それでも、モンスターに受けた傷を、致命傷や欠損などでない限り完治させる回復薬は、半永続的な戦線維持を可能にする素晴らしい道具だ。

 

 アナスタシアは、濡れた口元を手の甲で拭って、テウザーの刃を確認する。

 

 燃え盛るように輝く火属性の操虫棍は、まだまだ暴れ足りないと訴えるかの如く、ギラリと強く煌めいた。

 

 セルレギオスの繁殖地という、生存競争の激戦区に迷い込んだ、ディノバルドの身体から作った操虫棍。

 その遺志の未だ消えざるを証明するかのようにぎらつくテウザーは、間違いなく相棒と呼べる一振りだ。

 

 口伝の中にしか存在しなかったモンスターを前に、怖じ気付く里の皆を前線から退かせて、初めて自分中心に立ち回ったモンスターだった。

 命の灯火の尽きる瞬間、自分を殺した一人の少女の勇猛なるを誉め称えるかのように、目の前で膝を地に突いたあのディノバルドの姿は、今もなお記憶の奥底に焼き付いている。

 

 元々里にあった独自の鋳造技術で彼の身体から作った棍を、ギルドの精錬技術で強化して作られた。

 

 自分に膝を屈したその日から、ずっと傍で支え続けてくれた、大切な武器。

 

 

「ギェェェッ!」

 

 ゲリョスが眼球を真っ赤に染めて怒りの雄叫びを上げた。

 麻痺から回復したのだろう、満身創痍ながらも、その身を震わせながら、一頭のゲリョスが討つべきハンターをギリと見据えた。

 

 ゲリョスの生態を考えれば、自らをここまで傷つけたハンターを相手にすれば、脚を引きずってでも逃げ去るもの。

 けれども、呆けていたアナスタシアに対する自分の圧倒的な攻勢に臆病を灼かれたのだろう、卑劣に姑息に生き延びることを本能に刻むゲリョスが、地面を踏みしめ、ハンターに向かって飛び出した。

 

 そしてそれは、ゲリョスと言うモンスターの未知の領域(負けパターン)であった。

 

 アナスタシアは、叫び声を上げながら走り寄ってくるゲリョスに視線を固定して、静かに腰を沈める。

 

 弱虫、泣き虫、取るに足らない狩人、無能、役立たず。

 同じ愚行を飽きもせず繰り返して、ようやく届きそうだった安寧をグチャグチャに放り出して。

 失敗ばかり、あれもこれもと言っては捨てて、結局何もかも無くなってしまって、それでも。

 それでも、棍を振ることは止められない。

 

 右腕を絡めるようにして構える操虫棍は、その刃先まで神経が通っているかのように馴染んでいる。

 

 バタバタバタバタッ!

 

 無残に引き裂かれた翼膜の切れ端をばたつかせながら、ドタドタと駆けてくるゲリョス。

 

 霧が音を吸い込んでいるかのように、雑音の聞こえない沼地のほとり。

 

 鼻を突く泥のニオイ。

 

 怒りで真っ赤に染まった目。

 

 今度こそ、失敗は出来ない。

 

 腕に緊張が走る。

 

 不自然な力み方はないか、繰り返した手順は忘れていないか、自分の身体に染み込ませた動きを頭でシミュレーションしようとして、無駄な思考は排さねばと、霧のように頭を真っ白にした。

 

 呆ける視界。

 

 近づいてきたゲリョス。

 

 だんだんと遅くなっていく世界。

 

 膝を沈める。

 

 懐かしい感覚だった。

 

 側には誰もいない。

 頼れるのは、己の棍と虫だけ。

 

 それでも、私は操るのだ。

 

 誰も追いつくことの出来ないスピード、速さと闘争心のみが支配する狩りの世界で。

 

 目前に迫った闘争へ、命を懸けてその名を刻むのだ。

 

 

 

 気付けば振り抜き終わっている刃。

 踏み込んで斬り捨て、藍色の首元へ一太刀入れた。

 

 真っ赤な血液が飛ぶ。

 指先で針の穴に糸を通すように、切り返した棍がゲリョスの足先へ迫り、爪先を裂く。

 

 つんのめるゲリョス。

 左手から飛び立ったエルドラーンが、白い吐息を出すゲリョスの頭へ迫り、鋭い爪でザクッと攻撃を仕掛けた。

 

 よろめいたゲリョスの無防備な背中。

 脊髄を持つ全ての生物に共通する弱点。

 

 地面を向いていた刃は、次の瞬間には湿っぽい地面に突き立てられて、大地を踏み切り高飛びするアナスタシアの身体を中空へと飛ばした。

 

 逆立ちの体勢から身を起こして、反り返る身体のバネを使って棍を引き抜き、頭の上で一回転。

 自由落下と共に、無防備な背後を曝すゲリョスへと急襲した。

 

 勢いそのまま、引き斬るようにザンッッと棍を振り回した。

 テウザーは深々とゲリョスの身体を引き裂いて、ピンク色の肉を顕わにする。

 

「ギャッッ」

 

 衝撃と痛みに泣き叫ぶゲリョス。

 地面に着地したアナスタシアは、振り返る反動でまた地面に棍を突き立て、大ジャンプ。

 

 枯れ草の中に倒れ込んだゲリョスの右側頭部を狙って、思い切り棍を振り下ろした。

 

 もがくゲリョスの首へ迫る赫い軌跡。

 それは、本能の為した業か、幸運故か、ゲリョスが頭を下げた瞬間に、その頭部を強撃して。

 

 バギィィッッ!

 

 火の粉をまき散らしながら、ゲリョスのとさかを粉々に打ち砕いた。

 

「ハギァッ!?」

 

 鉱質部位を砕かれたゲリョス。

 そこは、彼の本能が最も頼りにしていた起死回生の武器だった。

 故に、ゲリョスの中に臆病の心が舞い戻り、瞳に本来の逃げ腰(勝ちパターン)が戻ってきた。

 

 頭を襲った棍の軌跡に無理やり首を反らされ、暴れるその身は容赦なく振られるテウザーの刃に攻め立てられた。

 

 その首を一刀両断するつもりの攻撃は部位破壊に留まったけれど、ゲリョスの有効な閃光攻撃を封じることは出来た。

 左腕に帰ってきたエルドラーンが、ぷつッと針をアナスタシアに刺す。

 血が沸くような感覚に身を委ねて、思うがままにテウザーを振るった。

 

 瞬きの間の反撃も許さない。

 一気呵成、アナスタシアの身体に確かに戻ってきたあの頃の感覚が、狩人としての矜持が、棍を操る動きを加速させていく。

 

 右へ振り抜き、切り上げ、体重を乗せた回転切りで肉迫して、後方宙返りで一斬り、距離を取ったところで、再び切りかかると見せて地面に棍を突き立て、意識を右側に向けて反撃しようとしているゲリョスの意表を突いた飛び上がり、そして空からの急襲。

 ゲリョスの左半身へ降りたった瞬間に、振り向いて切り上げた。

 

 ドプッ!

 

 今までとは異なる感触が手に伝わった。

 

(入った!)

 

 弾力性に富んだその皮の内部、大事な内臓部位を切り裂いた感覚。

 

「ア、ギャ、ァ、アァァ……………」

 

 ゲリョスの瞳孔から光が失われて、地面を掴もうと足掻いていた全身が脱力した。

 ドサリと音を立てて、地面にその身を横たえる。

 

 アナスタシアが刻んだばかりの胸元の傷口から、ドクドクと大量の血が流れ出た。

 

 

「……ふっ…………ふぅ……」

 

 少し荒くなった息を整えながら、アナスタシアは半身の体勢を崩さなかった。

 

 ゲリョスは、それほど強力ではないモンスターであるにも関わらず、とある生態を持つモンスターとして、ハンターの間で知らない者はいないくらいに有名だった。

 

 それは、“死んだふり”。

 

 自らの生命にこれ以上ない危機が迫ったときに、気絶のようなものを本能的に引き起こし、仕留めたという油断を誘うゲリョスの生存術。

 

 自然界では、動くものに反応する肉食獣や天敵の目を欺くために、力の弱い生き物がよく見せる本能行動である。

 しかし、これがポテンシャルの高いモンスターに採用されるとなると、その危険性は格段に跳ね上がる。

 

 討伐したと思い込んでうっかり接近して、思わぬ反撃を喰らってしまえば、いかなハンターといえどその身に怪我、悪くすれば死を招く結果になる。

 

 だからこそアナスタシアは、他のハンターがそうするように、万が一の反撃に備えて警戒態勢を解かなかった。

 

 バクバクと心臓が強く脈動する。

 胸が苦しくなり、耳の後ろが不快に波打ち、脂汗が肌に浮かんだ。

 

 目の前で脱力する藍色の鳥竜種から、片時も警戒心を反らさない。

 

 たとえ“死んだふり”状態だとしても、こちらが追い詰めているのは確かなのだ。

 状況に即応する準備も出来ている。

 相手は目の前のゲリョス。

 ただ、目を離さずにいればいい。

 

 そうやって何度言い聞かせても、アナスタシアの心を鷲掴みにする黒い恐怖の手は(ほど)かれない。

 

 理由は明快だ。

 

 この期に及んで、脳裏に蘇ってくるあのイビルジョーの不吉な影が、自由な闘争の空に飛び立とうとするアナスタシアの脚に絡みついて離れないのだ。

 

 何度刃を突き立てられても決して倒れず、飽くなき暴食と暴虐を振りまき続けた健啖の悪魔。

 痛々しさがおぞましさを強調する腫れ上がった肉体に、幾本もの棍が突き刺さり、それでも立ち上がっては全てを喰らい尽くしていく、あの悪魔の落とす残映が、アナスタシアを縛り付ける。

 

 そして。

 

「ぁ…………」

 

 チカチカと光るゲリョスの頭。

 

 砕かれた発光部位は、ゲリョスの生体反応をしっかりと示していた。

 

 足が(すく)み、頬が恐怖に引きつって、嫌な汗が背中を伝った。

 

 だめ、止まっちゃだめだ、ここで逃げちゃだめだ、なんでゲリョスと戦ってるか思い出さなきゃ、震えてるだけじゃだめだ、うずくまってるだけじゃ何も変わらない。

 

 でも、無理だよ。

 

 だって、ほら、また起き上がった。

 

 

 ガバッと翼を広げながら起き上がったゲリョスは、空を勢いよく仰いで吶喊(とっかん)し、次いで頭を突き上げ、反撃の閃光攻撃に失敗した。

 

 それでも、ゲリョスの赤く染まった目には、死を目前にしたモンスターの、恐ろしいほどの生存欲求がありありと表れている。

 

 その双眸にあるのは、いつかの悪魔と同じ色。

 

 極限まで追い詰められて、逃げる場所もなく、いくら足掻いても救われず、それでも生を諦められないモンスターの、凄まじい執着心が。

 

 太ももを震わせながら固まるアナスタシアを見て、ゲリョスはもう攻め込むことを躊躇わなかった。

 

 ここしかないと、わき目も振らずにアナスタシアへ突進するゲリョス。

 

 モンスターの生命力の底無しさは、アナスタシアの心に強烈な重圧を与え、一度は持ち直したそれを、殆どへし折りかけていた。

 

 迫り来るモンスターの、文字通り命を懸けた突貫。

 

 じんわりと、生暖かいものが脚を濡らす。

 

 決して速くはないのに、どうしたって対処できないように思われるその突撃が、あの日の悪魔の一撃に重なって────。

 

 

 

 ────目の前に、赤色の背中が現れた。

 

 

 

 全てが、あの日と同じ状況だった。

 

 違うのは、自分が身につけている武具と、対峙しているモンスターと、自分を救ってくれる背中の有無だけ。

 

 駆け出したその大きな背中が、空を翔るまぶしい太陽のようにさえ見えて。

 

 

 置いていかれるのは、もうたくさんだ。

 ガシャンと、防具が音を立てた。

 

 肌に貼り付く下着(インナー)の感触を置き去りにするように、脚を踏み出し、慣れた取り回しで棍を一振り。

 勢いをつけて、空を飛んで。

 

 ブツンと、ゲリョスの首を真一文字に切り裂いた。

 

 

 


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