嘆きのクローン   作:佐渡 譲

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第四話

 母は、即座に「町の外にはテロリストがいるから恐い」と答えた。

 すると、男は「なぁに、俺がおめぇを守ってやる…俺が付いてりゃ心配はいらねぇ」と言った。

 生まれてから一度も町の外を見た事がなかった母は、男に誘われて何となく好奇心に駆られた。

 そうして、男は母をトラックの貨物室に隠して、町の外に連れ出した。

 

 男は家に着くと、母をトラックの貨物室から降ろし、自分の部屋に連れて行った。

 男の部屋は、母が暮らしていたグロウレイクタウンの部屋とはまるで違っていた。

 雑然と並んだ家具や、そこいら中に放り出された衣類や小物を見て、母は不思議に思った。

 そうして、男に勧められるままにドリンクを飲んだ母は、何となく気持ちがよくなってボ~として来た。

 すると、男は服を脱いで下着姿になった。そして、何と尻尾をひょいと身体から引っこ抜いたのだった。

 嘘だろう!?…と母は思った。人間の尻尾には神経が通っている。引っこ抜けるはずがない。

 何が何だか分からぬままに、気持ちよくなって呆然としてしまった母は男に犯された。

 母は、後になってから男に飲まされたドリンクがお酒と言うものだと知った。

 それから、コーヒーやタバコの味を知った…ピザやハンバーガーも味わった。

 外の世界の何もかもが、母が暮らしていたグロウレイクタウンとは異なっていた。

 町の外は楽しい世界だと知った母だったが、それでも町に残して来た幼い私の事が心配だった。

 それで母は「残して来た子供が心配だから、グロウレイクタウンまで送ってくれる?」と男に頼んだ。

 それを聞いた男は、いきなり怒鳴り声を挙げて母を殴り倒した。

 母は、自分が男にオモチャにされているとは知らなかったし、監禁されている事も知らなかった。

「ガキの事が心配だとぉ?…おめぇは自分がマトモな人間だと思っていやがるのか?こりゃぁ、お笑いだ」

 罵るようにそう言われて、母は男から本当の話を聞かされる事となった。

 何と、母が暮らしていたグロウレイクタウンには重大な秘密があったのだった。

 

 巨万の富を蓄えたり、高い地位を築いたこの国のセレブや要人たちには、どうしても避けて通れない心配事があった。

 それは、自分が病気に罹ったり、年老いて死ぬ事だった…彼らはいつまでも贅沢をして、人生を楽しみたいと願った。

 そこで、医学が発達した機会を得て、セレブや要人たちは共同で大金を出資し、自分たちの臓器牧場を作る事にした。

 自分たちの細胞からクローンを作り、病に罹ったり、老化した臓器を、飼育したクローンの臓器と入れ替えるのだ。

 元々が自分の細胞だから、拒否反応もなく感染症の心配もない…それはセレブと要人たちの不老不死計画だった。

 金に困ってる貧乏人や、多額の借金を抱えている夫婦と契約してクローンを産ませ、代理の親として育てさせる。

 バイオ技術で遺伝子を操作され、成長を促進されたクローンは3~4年で小学生と同じくらいに大きく成長する。

 クローンの子供を寄宿学校に送り込んだ後は、代理の親は契約した金をもらって、時期を見て消えればいいだけだ。

 なぁに、飛行機事故とか船の事故とか、遺体の無い死に方は幾らでもある…クローンの子供はその真相すら知らない。

 

~続く~

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