荘厳な光に俺は出会い、その問答にギルガメッシュ王の財宝を望んだ。
元はエロゲーのFate、その第四次聖杯戦争の際に召喚されたアーチャーが使っていた宝具だ。
あらゆる宝具の原点が詰まった、二次創作御用達の能力。
生前からその辺りの創作物を読み漁っていた俺からすれば、その選択は間違いなかったと信じている。
きっとギルがやっていたみたいな弾幕を張れて、俺はこの世界で英雄になれる。
そんな事を思いつつ、今日も幼い身体を育てる。
母乳を飲むのは羞恥プレイだ、などとよく創作物では書かれていたが、なれれば大したことはない。
今は飲んで、食って、英雄に相応しい身体を作らねば。
そんな俺が王の財宝を使ってやろうと試みたのは、ある程度身体が育った小学一年生ときだった。
運よくというか、何かの意志が働いてか、俺は麻帆良に生まれた。
2003年に彼女たちが3―Aだという事から逆算して、どうやら同学年らしい。
と、いう事はあと8年ほどでしっかりとした英雄らしい実力を身につけておかねば恰好が付かないという訳で。
テンプレハーレム物は好きではない俺とすれば、女の子はたった一人で良いと考えている。
創作にありがちなナデポ、ニコポなんてものは存在しないと改めてこの世界に生まれて感じた。
この世界での俺の母親も父親も、まちがいなく一人の意志を持った人間。
都合の良いように動く存在ではないようだ。
主人公補正がかかるのは主人公であるネギなのがこの世の理なのだろう。
だったら俺は英雄補正をかけるだけだが。
とにかく、俺が俺の中にある気持ちをぶつけたいのは普通に普通の人生を歩んでいく存在ではなので、俺も彼女の隣に立てるほどの英雄らしさは持っていないとまずいという訳だ。
故に、その第一歩として、麻帆良学園都市に広がる森の中で、俺は念じて顕現させた。
俺の背後に黄金の波紋が生まれ、そこから出てきた一振りの剣。
それを見た瞬間、剣が発するどうしようもない存在感に俺の意識は塗り潰された。
――次に目を覚ました時、俺はまだ森の中で、目の前に髭をだれんと流した老人がいた。
学園長だ――本当に異形のような頭をしている。
ぐるり周りを見渡せば、数十人に及ぶ大人と子供。
それが汗を流しながら、必死に何かを振り絞っていた。
「その剣はお主が出した物なのかいの?」
学園長は目に見えるほどの膜のような何かで覆われた剣を指差して俺に問いかける。
こくりと俺が頷くと、ふむぅと髭を触って思案顔を作った。
「戻すことは出来るかの?」
多分と答えると、学園量は俺の身体をひょいと持ち上げる。
円の中心へと、膜で覆っている剣の傍へと、一歩一歩と歩みを進めた。
そっと俺が剣に触れると、剣はまた俺の背後に現れた黄金の波紋の中へと消えていった。
そして俺は――監視対象になった。
要するにギルガメッシュの王の財宝の中に収納されている宝具は選ばれた幻想の中の英雄だったり、宝具が発する圧倒的存在感を組み伏せる精神力や魔力を有している存在だけが扱える、という事だ。
王の財宝を光に望んだ俺であるが、それを扱えるだけの素質を持っていなかったという訳だ。
――考えてみれば当たり前のことだが、創作の読み過ぎで頭が腐っていたのか、俺なら出来るという根拠のない自信があったのか。
まぁ恐らくは現実味のない光の登場に舞い上がっていたのだろう。
だが俺の中では慢心だということにしておこう、英雄らしいしな。
監視対象になったからと言って、俺の何が変わったかという訳でもない。
ただ小学一年から中学二年生になった今の今までずっと担任が神多羅木――グラヒゲだということくらいだ。
あとこの世界の生家の隣にグラヒゲが引っ越してきたが。
英雄を目指す――好きな女の子の英雄で居たい俺は、そんな訳でグラヒゲに弟子入りした。
魔力は少なく身体能力もちょっと出来るくらいな俺だが、頑張ってみようと思う。
目標は大きく、乖離剣エアを使いこなし、英雄になるために。