ARMORED CORE VERDICT DAY ヴェニデの剣豪   作:D-delta

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ここまで読んでくれた方、本当に感謝します。


Chapter FINAL 刃

 前も見えないほどの暗さのあるタワー内部の施設内。そこには死神たちのACが並んでおり、そのACの数と同じ台数の装置があった。

 それは死神を保管しておく装置である。

 そして死神たちはその状態でも会話は出来た。今は死神の中でも最高クラスの戦力になり得る者同士が会話をしていた。

 

「武器を失い、目の前にある目標を討ち損じるとはお前らしくないな、A」

「私は慎重に戦う。だからあの場は退いた」

「じゃあ君は死神失格だよ」

 

 AとJの会話に割り込むように調子の良い若い男の声が入ってきた。

 その若い男は肉体を持たず、完全に死神たちに掌握されたタワーに着陸した無人の大型ヘリから声を発していた。

 

「財団、なにが言いたいんだ?」

 

 財団と呼ばれる若い男の声は不敵な笑いをしながら「慎重になり過ぎると臆病とも取れるよ?」と声を発した。

 Aは財団の言葉に怒りを覚え、静かに冷静な怒りを声に出す。

 

「私に恐れはない。ただじっくり確実に仕留めたいだけだ」

「分かったよ、まぁ慎重な君がそう言うならそうなんだろうね」

 

 財団は嘲笑気味に言うと先ほど着陸した大型ヘリがタワーから飛び立ち始めた。

 

「じゃあね、僕は次の目標の行く末を見に行くとしよう」

 

 飛び立った大型ヘリはタワーから離れて東の方角へと飛んで行った。

 せいせいしたAは自分の意識を機体へと移して出撃準備を始めた。

 その様子を見たJも自分の機体に意識を移して準備を始めた。

 

 Aの機体。

 それは『オーバードウェポン』であるヒュージブレードを二基装備し、全身にふじつぼのようなエネルギー噴射口が無数に付いたAC。

 剣豪に勝つには近接戦で圧倒的な力を見せれば良いと判断した結果がこのACである。

 リミッターを外し、特殊なアクセス権限によってACの限界を超えた性能を手に入れたその機体はまさに〝悪魔〟と言えるだろう。

 

「J、私は剣豪を倒しにいく。異論は?」

「無い、私は黒い鳥を殺しに行くとしよう。先に行っている」

 

 先にJの機体がタワーのハッチから姿を現した。

 日光に照らされてJの機体の全身がはっきり見えた。

 その機体の風貌はかつて世界を滅びの道に導いた機体にそっくりであった。

 そしてJの機体が追加ブースターによって一気に加速し、発進した。そのスピードは化け物と言えるくらいのスピードだった。途中で大きな音が轟き、Jの機体のスピードが音速を超えた。

 10秒と経たずJの機体は姿が見えなくなった。

 

 Jを見送ったAは自らのACを死神専用の大型ヘリが機体運搬用のハンガーを固定させやすい場所に移動させた。

 そうして死神専用の大型ヘリはACを固定。

 そのまま牽引されて、Aは自分を負かした剣豪のいる地へと向かうのであった。

 

 

       ※※※

 

 

 防衛基地。深夜。

 二機の大型ヘリは霧山とフレイドのACを防衛基地へと到着。

 ACが無事に運び終わるとすぐに衛生兵や救護班が出動し、出血をしている霧山を機体のコックピットから運び出して医務室へと連れて行った。

 

 フレイドは霧山が医務室に送られていく様子を見て、確かに医務室に送られていったことを自らの目で確認したフレイドは自分のACを第一格納庫に戻した。

 自分のACを戻し終えると、フレイドは霧山のACに搭乗して第一格納庫に戻すために機体を操縦した。

 もちろんフレイドにとって霧山のACの操縦は難しかった。それもそのはず、あの三倍にも動かせる身体に対応した操縦桿なのだ、操縦桿を動かせるスピードが速すぎてまともな操縦ができないのである。

 それでもなんとか操縦し、第一格納庫に戻した。

 

「やっと戻し終えた」

 

 霧山のACを戻し終えたフレイドは機体から降り、疲れた足取りで一目散にイスに座った。

 

「あー疲れた。このところ死神が出過ぎだろ、勘弁してくれよ。俺の身体も霧山の身体も保たないぜ」

 

 整備班が周りで仕事をしている中、フレイドはイスに座って一人で愚痴を口からこぼしていた。

 その内にフレイドは連戦続きの疲れで強い眠気に襲われた。

 フレイドは霧山の下へ向かおうとするが眠気には勝てず、周りの整備班がうるさく仕事をしている中でイスに座ったまま眠ってしまった。

 

 それからフレイドは一瞬夢を見た。

 

 その夢はフレイドを深い闇に突き落とした。なにも見えない空間の中で目が次第慣れ、闇の中に鎌を構えている恐ろしい形相をした死神がフレイドの視界に映った。

 フレイドはあまりの恐怖に必死に落ちまいと抵抗した。

 ただ、それは無理だった。

 抵抗しようにも抵抗するためのものが一切ないのだ。

 抵抗しないのを見計らった死神は鎌をフレイドの首目掛け振り下ろす。

 フレイドには回避する手段はなく、鎌に首を切り落とされるしかなかった。

 

 助かる望みもなく、なにもない空間で必死に抵抗したその瞬間、反響するようにぶつかり合う金属音が大きく響いた。

 

 そこでフレイドは夢から覚めた。

 ここが現実なのかを確認するためにフレイドが周りを見渡すと整備班がまだ忙しくACを整備している光景が目に入った。

 

「いやな夢を見ちまったぜ」

 

 今視界に入っているのが現実だと確信したフレイドは安心してまた眠りに付こうとした。

 その時、突然危機を知らせる警報が第一格納庫内に響いた。

 フレイドはその警報に飛び起きて、疲れなど気にせずACに乗り込んだ。

 ACの起動準備をしていると、先ほど医務室に送られた霧山が複数の兵士に支えられた状態で第一格納庫に戻ってきた。

 戻ってきた霧山は自らのACになんとか自力で搭乗し、ACを起動させた。

 

《おい、霧山のACを勝手に動かしているのは誰だ?》

 

 霧山本人が動かしていることに気付いていないフレイドはいきなり動いた霧山のACに反応して通信機で問いかける。

 

「俺だ、フレイド」

 

 通信越しにいるフレイドは先ほど医務室に送られてすぐ戻ってきた霧山のことを心配し始めた。

 当の霧山は胸を押さえているだけで表面上そこまでの異常はなかった。

 

《出撃しても大丈夫なんだろうな?》

「ただの出血だ、いつでも出撃出来る」

 

 霧山は操縦桿を動かし、ACを格納庫の外に移動させた。

 今度フレイドが霧山の後に続いて格納庫の外に出た。

 外に出ると監視塔から既に放たれたリコンから情報が送られ、モニターに接近中の敵のデータが映った。

 そのACはこれまで戦ってきた死神と同じカラーの上に肩には王冠を被ったドラゴンのエンブレムがあった。

 

《さっき戦った死神か。霧山、準備は良いか?》

「いつでも行ける」

 

 霧山たちのACは『グライドブースト』で大急ぎに基地から飛び出して行き、全力で吹かされたブーストの強力な推力に任せて荒れた大地の上を飛んでいく。

 ある程度基地から離れると遥か向こう側から死神のカラーをした大型ヘリがうるさいローター音を出して正面から霧山たちに接近してきた。

 

《先ほどの続きだ。今度は確実に死んでもらおう》

 

 Aから殺気と殺意のある通信が入り、霧山たちに緊迫感が走った。

 大型ヘリの固定用ハンガーが解放され、Aの機体は荒れた大地の上に轟く着地音と共に足を地に付けた。

 

《霧山気を付けろ、あの死神『オーバードウェポン』を持っているぞ》

「なら気を付けながら斬るまでだ」

 

 霧山たちのACが遠くにいるAとの距離を縮めていると、距離が遠くても分かるくらい眩しいほどの暴力の光りがAの機体から溢れ出た。

 それは真っ暗な夜でもすぐに分かるくらいの輝きだ。

 

《お前たちの全力を見せろ》

 

 機体の全身から暴力の光りを朝になったと錯覚させるくらい輝かせ、右腕のヒュージブレードの先端に全てを焼き尽くすための軽く一万度を超えた熱が集まる。

 数秒後にその熱は塊になって一つのとてつもなく大きく恐ろしい光りの刃となった。

 

 Aはその熱の塊となった巨大な光りの刃で薙ぎ払うように横に振るった。

 巨大な光りの刃は大地を焦土にして、静寂の夜に暴力の光りで辺りを照らす。そして巨大な光りの刃は霧山たち目掛けて焼き尽くそうと接近。

 しかし、霧山は逆関節特有のジャンプブースターを使って巨大な光りの刃の上に行き、足裏を溶かされながらもなんとか回避した。

 フレイドは『グライドブースト』で巨大な光りの刃が消えるのを祈りながら迫りくる巨大な光りの刃から必死で逃げた。

 

《なるほど、一振りでやはり死なないか》

 

 全てを焼き尽くす巨大な光りの刃は収まるが、もう片方の左腕に装備されているヒュージブレードから発せられた巨大な光りの刃が輝き始めた。

 そしてAはもう一度巨大な光りの刃を振るう。今度は袈裟斬りだ。

 霧山は三倍の速さで『ハイブースト』を瞬間的に連続で放ち、右腕を多少焼かれながらもギリギリで回避した。後少しでも左にずれていれば右腕を完全に焼かれ、そこから一万度を軽く超える熱が伝わってコックピット内をスライム状に溶かし尽くしてしまうだろう。

 

《霧山! 大丈夫か、おい!》

「くっ……大丈夫だ」

 

 フレイドの声に少し意識を向けると心臓部である小型ジェネレーターから発せられる異常な熱量の負担が身体全体に走った。

 それでも霧山は耐えて、フレイドに返事を返した。

 

《霧山、俺が囮になる。霧山は死神の横から斬りにかかってくれ》

「そんなことしたらフレイドが死んでしまう可能性があるぞ?」

《俺はしぶといから大丈夫だぜ》

「分かった、だったら絶対に死なないでくれよ」

 

 霧山たちのACはブーストを使って素早く左右二手に分かれて動き出し、フレイドは囮となるためにACが手に持つ武器をシールドに持ち替えてAに接近する。

 Aはそれを見てフレイドのACに向けて両腕ヒュージブレードを振るう。

 フレイドは巨大な光りの刃となった熱の塊の恐ろしさに屈せずシールドを前面に構えて突撃を繰り出した。

 

《そうか、お前たちはそういう戦術を取るのか。分かり易いものだ》

 

 フレイドの突撃、霧山のACが左から弧を描くように接近してくる姿。Aはそれらの行動で簡単に悟ることが出来た。

 

〝これは囮を使った近接攻撃を仕掛けてくる戦術だ〟と。

 

 AはフレイドのACに向けられたヒュージブレードの巨大な光りの刃をカット、今度は霧山のACに狙いを付けて右腕のヒュージブレードで作られた巨大な光りの刃を振るう。

 

《霧山! そっちにブレードが行ったぞ!》

 

 足を止めたフレイドの通信越しからの注意を聞き、弧を描くのをやめて光りの刃を回避することに専念した。

 フレイドはこの隙にガトリングによる射撃とCEミサイルを連続で打ち放つ。

 

 もちろんそんな攻撃もAにとっては織り込み済みであり、空いている左腕のヒュージブレードからも大きく恐ろしい光りの刃が形成され、それをフレイドに向けて振るう。

 巨大な光りの刃は放たれるガトリングの弾とCEミサイルを焼き尽くし、そしてフレイドのACに巨大な光りの刃が到達。右腕を溶かし尽くされ、ガトリングを使用不能にさせられた。

 

《この野郎! 悪あがきしてやる!》

 

 フレイドは残った左腕に残されたセントリーガンを設置、自動的に攻撃を開始してAの機体に浅い傷を付けながらヒュージブレードへとダメージが溜まっていく。

 それに続いてボックス型の残った左肩からCEミサイルをAの持つヒュージブレードにお見舞いする。

 フレイドを狙うヒュージブレードは破損してエネルギーが上手く伝達しなくなり、巨大な光りの刃はセントリーガンを破壊しながら消えた。

 だが、フレイドのACのコアが左側の一部溶かされていた。それもコックピットの近くだ。

 

「フレイド!!」

 

 胸に痛みが走るが、我慢してフレイドに向けて声を出した。

 しかし、返事は帰ってこない。

 霧山のACは一度立ち止ってそこからブーストを吹かし、フレイドの下へ向かおうとした。が、Aはそれを許さなかった。

 ヒュージブレードの巨大な光りの刃がフレイドの下へ向かうことを邪魔したのだ。

 

《そいつは死んだ、お前の味方はもういない》

 

 Aのその言葉を霧山は認めなかった。

 あのしぶとい友がそう簡単に死ぬはずがないと信じていたからである。

 だから、霧山はフレイドに呼びかけた。

 

「フレイド、返事をしろ」

 

 返事はない。

 通信機から流れてくるのは砂嵐の音だけだ。

 それでも霧山は諦めず呼びかける。

 

「フレイド! 生きているか!」

《う……呼んだ……か?》

 

 通信機からやっとフレイドの声が聞こえてきた。

 霧山は安心した。フレイドが生きているということが確信出来たからだ。

 

《まだ生きているとは素晴らしい耐久力だ。ならば今度は必ず仕留める》

 

 フレイドを殺そうと右腕のヒュージブレードの先端が光り輝き、夜の中を照らしながら熱の塊が再び集まった。

 

《俺のことより敵を倒せ……霧山!》

 

 霧山は操縦桿を全力で前に倒し、ブットペダルを全力で踏んだ。

 友であるフレイドを救うためにヒュージブレードを輝かせているAに突撃したのだ。

 

《真正面から来るか、ならば私の勝ちだ》

 

 ヒュージブレードから再度巨大な光りの刃が作り出され、Aはその巨大な光りの刃をフレイドから霧山に標的を変えて縦に振るった。

 霧山に光りの刃が到達するまでたったの三秒。

 しかも霧山のいる位置はAと離れており、霧山の武装では明らかに届かずヒュージブレードでは確実に届く距離だった。

 

「やってやる!」

 

 霧山は操縦桿とフットペダルを通常の三倍の速度で動かし、『グライドブースト』、『ハイブースト』を多重に使ってACの移動速度を通常より二倍に速くした。

 もちろんかなりの負担が掛かった。

 霧山はこの時点で既に吐血し、目や鼻から血を流していた。

 

 巨大な光りの刃が霧山に到達するまで後二秒。

 距離は130mを下回った。

 太陽が顔を出し始めた。霧山たちが二十分弱戦っていた荒れた大地の暗闇は次第になくなり、太陽の光りがこの戦場にいるACたちを照らした。

 

 

 巨大な光りの刃が霧山に到達するまで後一秒。

 距離は60を下回った。

 近付いてきた光りの刃は霧山の頭部を焦がし、溶かし始めた。

 霧山が死ぬと思われたその瞬間、霧山はもっと早くACを動かした。

 その身体の性能を限界以上に使い、放った操縦テクニックは神速の如く速さ、そして霧山の心臓部である小型低出力ジェネレーターはとんでもない発熱量を出した。

 

「うああああ!!! 俺を救ってくれた大切な友を救うためならば、この命捨ててやるぞ!!!!」

 

 霧山は己の中にある〝血を求める刃〟つまり意識をコントロールして、フレイドを救うこととAを殺すことの二つに向けたのだ。

 霧山にとってその行為は痛みを軽減することをやめたと言っていい。

 しかし、その行為こそが更にACを早く動かす要因になった。

 

 霧山のACはヒュージブレードを縦に振るっている最中のAの眼前にまで接近。MURAKUMOの太陽の光りによって輝いた刃での斬撃とVendettaの光りによって出来た影に刃を忍ばせた斬撃が繰り出される。

 MURAKUMOの刃は振るっている最中のヒュージブレードを真っ二つに切り裂いた。

 Vendettaの刃はAの機体をいとも簡単に切り裂き、上半身と下半身に分けた。

 

《剣豪……お前は素晴らしい》

 

 その通信を最後にAの機体は行動を停止、もう片方のヒュージブレードの光りも機体から溢れ出ていた光りも消えた。

 

 Aとの戦いは終わったのだ。

 

 

       ※※※

 

 

「ちくしょう、いてぇ」

 

 フレイドはコックピットの中で先ほどのヒュージブレードの熱で失った右腕の部分を押さえつつ、まだ生きているモニターを見た。

 そこには上半身と下半身に分けられた死神のACと霧山のACが斬る時の姿勢のまま立ち尽くしている姿が映し出されていた。

 

「霧山、生きてるか?」

 

 しかし、返事は毎回の如くなかった。

 フレイドは身体を動かして自分の身体を固定しているベルトを外した。

 その時チラリとモニターで霧山のACを見ると、軍服を着た小柄な女の子がコックピットハッチを開けて血を吐いている霧山を引っ張り出そうとしていた。

 フレイドは霧山を助けることで頭がいっぱいになり、その女の子を手伝おうとして急いでコックピットハッチを開け、霧山のACに目を向けた。

 

「あれ? どうなっているんだ?」

 

 フレイドの目に映ったのは不思議な出来事だった。

 軍服を着た小柄な少女と霧山はおらず、ましてやコックピットハッチさえ開いていなかった。しかもVendettaがなぜかパージされていたのだ。

 フレイドは訳が分からず、霧山のACへと向かった。

 フレイドはそのまま霧山のACを駆け上がり、まだ開かれていないコックピットハッチを開けた。

 すると中から酷い血の臭いがフレイドの鼻の中に入ってきた。

 

「酷い臭いだ」

 

 目も塞ぎたくなる鼻も塞ぎたくなるほどの臭いに負けて一度コックピットから離れた。

 それから一分ほどする臭いがなくなり、血だらけのコックピット内を見た。

 中には確かに霧山がいた。

 

「霧山!」

 

 フレイドは叫んだが、霧山は返事を返せなかった。

 

「おい、生きているんだろう?」

 

 フレイドは狭いコックピット内に入り、霧山の生存を直に確かめる。

 フレイドは霧山の顔周りの血を手で拭き取った。血が拭き取られるとその顔は確かに霧山の顔で目を瞑っていた。

 フレイドはその生きているような顔をしている霧山に「おい」と一言言って頬を軽く叩いた。

 しかし、霧山はなにも言えなかった。

 

「実は生きているんだろう? 早く起きろ」

 

 もう一度頬を叩いた。

 起きることも返事もない。

 

「なんで死んだふりしているんだよ」

 

 フレイドは既に分かっているのに認めなかった。

 霧山が死んでしまったことを。

 霧山の胸から腹が溶けて背のシートが見えていることに気付いているのにも関わらず。

 

 輸送ヘリのローター音が聞こえてきた。

 フレイドは霧山のACのコックピットから出て、その輸送ヘリを見た。

 その輸送ヘリはこの戦場に到着して中から研究者たちが出てきて、まっすぐ霧山のACへと向かってきた。

 

「お前たちか」

 

 フレイドの声に反応して研究者たちは右腕を失ったフレイドを見た。

 若い研究者たちがにこやかに笑っている中で老いた研究者が口を開く。

 

「なるほど、研究成果はしっかり発揮出来ているな」

「?」

 

 フレイドは老いた研究者の言葉に少し疑問が浮かんだ。

 

「フレイド・イーダー。その右腕の中を見るが良い」

 

 フレイドは言われるままに失った右腕の中を見た。

 すると、奇妙な形をした人工物が体内で(うごめ)いていたのがフレイドの目に映った。

 フレイドは悟った自分も霧山と同じ存在だったと。

 

「お前たち、フレイドと使い捨ての霧山を押さえろ」

 

 老いた研究者の命令で他の若い研究者たちは霧山とフレイドを再び自分たちの手にするために霧山のACを駆け上がった。

 

 フレイドは老いた研究者のその霧山に対する勝手な言い振りに怒りと、自分を魔改造してくれたことに憎しみを覚えていた。

 あまりの怒りにホルスターから9mm拳銃を抜き取り、銃口を若い研究者に向けて怒りの籠った銃弾を放った。

 その銃弾は虫のように駆け上がってくる若い研究者たちを一人、また一人と殺していった。

 若い研究者を全員殺し終えたところで、途方もしれない怒りの銃口は老いた研究者に向いた。

 

「謝っても許さない、俺の恨みを受け取ってくれ」

 

 憎しみと怒りの入った銃弾が放たれた。

 銃弾は老いた研究者の心臓を貫き、悲鳴が辺りに響いてその命は消えた。

 フレイドは仇を取れて笑った。

 そして涙をこぼした。

 

「こんな身体にされて、大切な友も二度無くして、生きる価値も失って……俺も今からそっちに行くぜ、霧山」

 

 まだ顔を出したばかりの太陽が荒れた大地の上を照らしている中、悲しい音が一つ響いた。

 




いや~ヴェニデの剣豪が完結しました。
長かったひたすらに長かったです。

まず毎日5000文字がきつかった。
目標にしたのに毎回未達成。その上、学校も忙しくなってさぁ大変。
話しの内容はあらかじめ考えておいたのにあまり役に立たず、前半の5話にしか適応していない始末。そこから先も少しは役に立ったとはいえ、プロットの組み直しをしてあーだーこーだやっている内に二か月が過ぎてしまうという……。
まぁ完結したからいいんですけどね、達成感もありましたし(^_^)
本当に終わって良かった。(^∀^ )


さて、ここまで読んでくれた方へ問題です。

死神部隊のAとPの元となったランカーは誰でしょうか?

答えは活動報告に書いておきます。
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