ARMORED CORE VERDICT DAY ヴェニデの剣豪   作:D-delta

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書き溜めた物を放出。

今回は一日五千文字を目標として、更新速度を速めております。
まぁ他のことで忙しくなれば遅くなるのですが。


Chapter02 ヴェニデへ

 彼のACと死亡したアルルドのACを運搬している大型ヘリはヴェニデの軍事基地へと到着した。

 軍事基地は中規模のもので、一般兵器はもちろんのことACも配備されていた。

 この基地の一般兵器は防御型――脚部がキャタピラでシールドを装備することが出来る。機動力は遅いものの強力な武装を搭載することが出来、シールドの高い防御力も相まって今では拠点を防衛するのに適している兵器として認知されている――が多く配備されており、この基地が防衛基地だということが分かる。

 大型ヘリは下を確認してゆっくりとACを降ろす態勢に入った。

 

《ACを降ろす。第九格納庫の中に入れておいてくれ》

 

 冷静な声の主は下で待機している兵士に指示した。

 そして固定用のハンガーのロックを外してACを降ろした。

 待機している兵士がACを格納庫へと案内するためにヘリポートに近付いてくる。

 彼は操縦桿を倒してACを移動させて、兵士の指示通りに第九格納に向かった。

 格納庫は第十格納庫まであり、数字が大きくなるごとに使用頻度の少ない兵器が格納されているということになる。

 

《おい、ACのパイロット。戦場はどうだった?》

 

 彼が乗るACの横に止まった防御型のパイロットがうずうずしながら彼に問いかけた。

 しかし、東洋人の彼にはなにを言っているのか全く分からなかった。

 彼はなにか言わなきゃいけないという脅迫観念に捕らわれ、適当に返事をした

 

「私、おはよう、楽しい」

《ヘタクソな英語だな。まぁいいや、楽しかったのなら俺たちに周ってくる任務も刺激的なものだろう。じゃあな》

 

 話し終えると防御型はキャタピラを動かして彼が乗るACの横を通り過ぎて行った。

 彼は溜め息を吐いてACの操縦を続けた。

 第九格納庫に移動を続けていると兵士が足を止めた。

 彼も足を止める。

 

「ここが第九格納庫だ! 今開けるから少し待ってろ!」

 

 兵士が第九格納庫の扉に力を込めてやっとの思いで開けた。

 兵士は扉を開けるだけで疲れて格納庫の中にあるイスに座った。

 

「AC使えばいいのに」

 

 彼は日本語でボソッと呟き、ACを操縦して格納庫の中に入った。

 格納庫の中は三機のACが横に並んであったが、そのどれもがジャンクパーツで構成されたACだった。

 壁面にはAC用の武装もあったが、やはりというべきか粗製の武器が壁面に取り付けられていた。

 

「ACはそこに置け!」

 

 兵士は手に収まるサイズの小型扇風機の風を受けながら並んでいるACの一番端に置くことを彼に指示した。

 彼はACを操縦して一番端に移動し終えた。

 

「よし、良いぞ! 後は整備班がやってくれるからそのままにしておけ!」

 

 兵士に言われた通り、彼は機体をそのままにして機体から降りた。

 彼はその他に指示がないか駆け足で兵士に駆け寄って言った。

 

「ん? なんだ?」

「もう指示ない?」

 

 彼は率直に兵士に尋ねた。

 しかし兵士は彼の質問を聞いてはいたが、小型扇風機に夢中になって回答はしなかった。

 彼はただ立って回答が来るのを待った。

 

「はぁ、お前もイスに座れよ」

 

 彼の立ち姿に見飽きた兵士は彼をイスに座らせた。

 そこでようやく兵士は口を開いた。

 

「指示は俺が出す訳じゃないんだ。指示を出してほしいなら大型ヘリに乗っていた旦那に聞きな」

 

 ほんの少し聞き取れた旦那という単語は冷静な声の主だと勘付いた彼はイスに座ったまましばらく待った。

 すると格納庫に一人の男が入ってきた。

 見た感じでは薄ら髭を伸ばし、整ったその顔はイケメンがそのまま大人になったと言っても過言ではないだろう。

 

「待たせた、機体を仕舞うのとアルルドの死亡した理由述べに時間が掛かってしまった。大変申し訳ない」

「お疲れ様です! ハートマン副指令」

 

 入ってきた男の顔を見た兵士は突然イスから飛ぶように立ち、小型扇風機などそっちのけで敬礼していた。

 

「ご苦労、君はもう戻って構わないよ」

「了解しました!」

 

 兵士は小型扇風機を手に持ちながら第九格納庫から急いで出て行き、元の場所へと戻って行った。

 その様子を見ていた彼は冷静な声の主が副指令だとは気付かず、流石に驚いていた。

 

「霧山、君の名前をヴェニデのデータベースに登録する。来たまえ」

「はい」

 

 彼はいささか緊張してハートマンの後ろを付いて行った。

 彼らは第九格納庫を出て基地内をしばらく歩いた。

 基地内の様子は慌ただしさがあるものの悪いような感じはしない。

 しかし、空の様子と基地の色が相まって物騒な雰囲気はあった。

 

「ここだ」

 

 しばらく歩いていると管制塔に着いた。

 その建物はこの基地全員を管理するための施設であり、同時に司令塔でもあった。

 ハートマンは自動扉を通り、受付嬢に彼のことを話した。

 外で待っていた彼はハートマンに手で招かれ、駆け足で自動扉を通った。

 

「こいつが霧山一刀だ」

「私の名前、霧山一刀、よろしくです」

 

 受付嬢はヘタクソな英語をしゃべる彼に少し困惑したが、そのままコンピューターを操作して彼の名前を登録するのに必要な事務的な作業を行った。

 受付嬢はコンピューターの操作を終えると印刷機から印刷された一枚の用紙を彼に渡した。

 

「ここにあなたの名前を書いてください」

「了解」

 

 受付の女にボールペンを持たされるが、彼はなんのためらいも無く日本語で自分の名前を書いた。

 そして彼は受付の女に用紙を渡した。

 もちろん、渡された用紙に全く知らていない言語で名前を書かれたことによって受付嬢は困惑していた。

 受付嬢はもう一度コンピューターに向かい合って印刷機から印刷された用紙を彼に渡した。

 

「次は日本語じゃなくて英語で書いてください」

 

 受付嬢は笑顔を崩さず、自分の名前を英語で書けと彼に指示した。

 しかし、彼には受付嬢がなにを言っているのかが分からなかった。

 それでも彼はさっきの書き方がダメだったということをよく理解していた。

 だから筆がなかなか進まなかった。

 

「私が手を貸してあげよう」

 

 ハートマンは彼の代わりにボールペンを持って彼の名前を書いた。

 受付嬢はそれを受け取ってコンピューターに書かれた通りの名前を打ち込んでいった。

 

「これで登録完了です。お疲れ様でした」

「霧山、これで君もヴェニデの戦士だ。これからはよろしく頼むぞ」

 

 ハートマンから差し出された手に、彼はその手を握って握手を交わした。

 その後、ハートマンと彼は管制塔を後にして酒場へと案内された。

 

「ここで好きに飲んでいてくれ。私は用事があるから先に失礼するよ」

 

 彼は席に座ったままよく分からないその話しを聞いて、ここから去っていくハートマンを見つめた。

 取り残された彼は出されたビールを少し飲んだ。

 

「うわぁ、マズイ! なんだこれ!」

 

 あまりの大声に周りが反応した。

 もちろんなんて言ったのかは周りの人間には分からなかった。

 だが、その中の一人は彼の日本語を理解していた。

 

「まずいってか? 東洋人」

「!?」

 

 彼は突然横から顔を出してきた若い男に驚いた。

 そして若い男は手に持ったビールのジョッキを彼の頬に擦り付けた。

 

「やめろ!」

「ああ、ああ、やめないよ」

「日本語!?」

 

 彼はその若い男が日本語を使ったことに驚きを隠せなかった。

 しかしそれよりも若い男がジョッキを擦り付けて来ることに怒りを隠せなかった。

 そして怒りを(あら)わにした彼は手に持ったジョッキをテーブルに全力で叩きつけた。

 それを警告と受け取ってか若い男は擦り付けてくるのをやめた。

 

「分かったよ、もうやめる。許してくれ」

 

 彼は許しを請う若い男にキツイ目で見て席を移動した。

 彼は行動で許さないという意思表示を示した。

 しかし、意思表示を示しても若い男は更に迫って来た。

 

「来るな」

「そう嫌がらずに俺の話しを聞けよ」

 

 若い男はそう言って彼の隣に座った。

 そうしてビールをグッと飲んで一息つき、若い男は話し始める。

 

「まず、俺の名前はフレイド・イーダーだ。で、話しっていうのはこれから仲良くしようぜ、ていうことだ」

「ああ、それで?」

「それで仲良くなった証にはお前を出世させてやるよ!」

 

 彼はその話しを興味のない素振りで聞いていた。

 まず、彼にとって出世というものに興味がなかった。

 彼は生きるだけの生活ができればよかったのだ。

 それに不服なフレイドは説得しようと更に話を進めた。

 

「お前は自分で分かってないようだけど、凄い力を持っているんだ。だってあの使えない兵器であるMURAKUMOを使いこなして敵を全滅させたんだろう?」

「あれは簡単だった。全部感覚で攻めることができたし、凄いことじゃないよ」

「それを天才というんだよ」

「へ~」

 

 彼の興味ないような態度にフレイドは機嫌を損ねたようで話しはそこで一旦途切れた。

 そしてジョッキを高らかに上げてビールを口に入れた。

 彼はその派手な飲み方を見ても特に反応を示さない。

 

「く~、うまい! あ、そういえばお前の名前なんていうの?」

 

 フレイドが気付いたように彼に名前を訊いた。

 

「俺の名前は霧山一刀だ」

「やっぱり珍しい名前だな! 日本の名前は」

 

 彼は変に興奮しているフレイドを無視してビールを少しずつ飲んだ。

 その内に酔ってきた彼はふとした拍子に気付いた。

 

「フレイドはなんで日本語ペラペラなんだ?」

「なんでかって? そりゃ日本で、〝ある物〟を手に入れるためだ」

 

 彼は〝ある物〟というのが気になりながらまた一口ビールを口に入れた。

 その横でフレイドはある写真を彼に見せた。

 その写真を見た彼は口に入れたビールを噴いた。

 

「漫画かよ、いや問題はそこじゃなくてなぜエロ本?」

「だってさ、こういうのは日本じゃないとなかなかお目にかからないし、ガス抜きには必要なんだよ」

 

 彼はそんなしょうもない理由を聞かされて「質問するべきではなかった」と心中で思っていた。

 双方ともビールを一口飲む。

 そしてだんだんと彼は眠たくなってきていた。

 

「おう? 眠たくなってきたか?」

 

 そう言うフレイドも目を半分閉じていた。

 フレイドはなんとか立ち、眠そうな彼を立たせてそのまま宿舎にまで酔った足取りで歩いていく。

 酒場を出て行き、宿舎に移動。

 フレイドの部屋に到着し、酔った勢いで彼を部屋に入れた。

 本当のところは自分の部屋で待機させるのが規則なのだが、酔っているフレイドは空いたベッドに彼を投げた。

 

「寝て起きろよー霧山」

「言っていることが分からねぇーぞーフレイド」

 

 空いているベッドの上に投げられた彼は寝ぼけ半分に返事を言ってから深い眠りに落ちた。

 フレイドもベッドに横になって深い眠りに落ちた。

 

 

       ※※※

 

 

 朝。

 

「起床!」

 

 彼らの部屋に入ってきた兵士のうるさい声が部屋中に響いた。

 そんなうるさい声に起こされた彼は不調な様子で半分寝ぼけた状態のまま身体を起こした。

 彼が起きたことを確認した兵士は次の部屋へ向かった。

 彼はフレイドの寝ていたベッドに目を向けたが、フレイドはそこにいなかった。

 どうやらフレイドは先に起きているようだった

 

「眠い」

 

 一言呟いて、彼はしばらく周りを見渡して窓の朝日を浴びようと立った。

 しかし、立つと胃の中から汚物が逆流してきそうな吐き気に襲われた。

 彼はその吐き気を落ち着かせるためにベッドに座り込んだ。

 座って一、二分すると吐き気は少しずつ去っていくが、また一、二分すると吐き気が舞い戻ってきた。

 

「う、逆流する……」

 

 気持ち悪そうにしている彼は手で口を押えて逆流するのを耐えた。

 彼は水を探して蛇口を発見した。

 しかし、身体を動かすとマッハで逆流してきた。

 彼はそれを必死に押さえて、再びベッドに座った。

 

「う……」

 

 次第に吐き気は去ることがなくなり、こみ上げてくる吐き気を必死に我慢した。

 上半身を下に向かせて彼は胃を落ち着かせようとする。

 しかし、落ち着かない。

 いまにも逆流してきそうな彼は両手で口を押え、こみ上げるなにかを必死に押さえた。

 その内に胃の気持ち悪さはひどくなって行った。

 

「おはよう、シャワーから戻ってきたぜ」

 

 陽気な声が彼の耳に入った。

 彼はその声がフレイドと分かると、ゆっくり上半身を起こしてフレイドに顔色の悪い表情を向けた。

 

「水をくれ……」

「大丈夫か!? 今水やるから待ってろ!」

 

 彼の今にも力尽きそうな声にフレイドは急いで蛇口のある洗面台に向かった。

 洗面台にはコップがあり、それに水を入れて彼に渡した。

 彼はコップに入った水を飲み干して少しすっきりとした気分になった。

 しかし、その時である。

 水が変に胃を刺激してマッハの勢いで吐き気がこみ上げた。

 

「胃から……飲んだ物が逆流する」

 

 彼はマッハで逆流してきた汚物を防ぐために急いで口を押えた。

 しかし、いくら押さえようとも勢いよく逆流してきた汚物を食い止めることは出来なかった。

 そして噴き出した。

 それは龍が炎を吐くが如く繰り出された。

 

「ギャアアアアアアア!!! せっかく洗ったのに!」

 

 彼の口から繰り出された汚物ブレスはフレイドの全身を汚した。

 フレイドは開き直った顔でそのまま汚物の感触を味わっていた。

 

「もう一度洗ってくる」

「俺も洗う」

 

 彼らはシャワールームでその汚れた身体を存分に洗った。

 そのすぐ後に召集がかかった。

 それは次の戦場にいく合図だ。

 




きっとヴェニデはこんな感じなんだろう。
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