ARMORED CORE VERDICT DAY ヴェニデの剣豪 作:D-delta
霧山たちと他の兵士たちに召集がかかり、彼らは管制塔のブリーフィングルームへと向かった。
ブリーフィングルームには少人数がいるだけだった。
「俺はどこに座れば良いんだ?」
「どこでもいいよ」
遅れてきた彼らが席に座ったところで作戦の説明が始まった。
今回の作戦というものはシリウス・エグゼクティヴス――過去のMoHというミグラントの集まりから組織された勢力――を押し返す又は殲滅するということであった。
話しを聞くとシリウスが補給物資運搬のためにヴェニデの領土に侵犯してきたということだった。
そして敵戦力の中にはACが4機。
それらは補給物資運搬の護衛のために付いているようだった。
彼はフレイドに全て通訳してもらってようやくその作戦を把握できた。
「各員、出撃!」
この基地の司令官が出撃を促すとブリーフィングルームにいる兵士たちは駆け足で部屋を出て行き、それぞれが出撃するために管制塔から出て行った。
彼らもブリーフィングルームを出て、出撃にかかる。
「なぁフレイド、俺の乗る機体は?」
「そんなの聞かないでくれよ、俺はなにも知らないぜ」
フレイドはそう言って整備員の入れ替わりが忙しい第一格納庫に入って行った。
彼は格納庫の入り口の前でなにをすればいいか困っていた。
そこにハートマン副指令がやってきた。
「霧山、君の機体はこの第一格納庫に入っている。機体は一番右端の重量逆関節型AC、まぁ見ればすぐ分かるだろう。君の好みのチューンと武装を施してある、使ってくれ」
相変わらずハートマン副指令の言っていることを彼は理解できなかったが、指を指すなどのジェスチャーで自分が乗り込む機体がどれかをなんとか把握した。
彼は駆け足でそのACに乗り込む。
彼の機体は重量逆関節型ACであり、武装はBD-0 MURAKUMOを右手に装備し、左手にはエネルギー兵器を軽減するためのシールドを装備している。
操縦桿を前に倒して機体を格納庫の外に移動させた。
外は大型ヘリや攻撃ヘリがあちこちを飛んで、出撃に忙しい雰囲気を出していた。
《こちらAC02、先に戦場に行っている》
AC02のパイロットの老人といっていい老けた声が出撃する旨を言って大型ヘリに運搬されていった。
《こちらAC01、出撃する》
さっきまで聞いた声が出撃の旨を伝えて大型ヘリに運搬されていく。
彼はその声をフレイドということに気付いた。
「あいつもACに乗れたのか、てっきり整備員かと思ったぜ」
呟き、彼のACも大型ヘリのハンガーに固定されて徐々に上がっていく。
出撃する瞬間、彼も出撃する旨を言おうとするが、なかなか言えずに適当に言葉を放った。
「出撃する」
彼のACを運搬する大型ヘリも戦場に向かう。
基地を離れて荒れた大地だけが見え始めたところで、メインモニターを使って辺りを見回し、どこに敵がいるかを探した。
中々見当たらないことから彼はスキャンモードを起動した。
≪システム、スキャンモード≫
音声ガイドと共に敵の反応が出てきた。
敵影は丁度四つ。
彼がブリーフィングで説明されたのと同じ数だった。
《こちらAC02、敵を確認した。交戦を開始する》
老けた声の持ち主は戦闘を開始したようで遠くから轟く発射音を出していた。
彼のACを運搬する大型ヘリはAC02が作り出した交戦地域の下へと移動する。
《こちらAC01、こちらも敵を確認。複数だが関係ない、交戦を開始する》
フレイドも交戦を開始。
通信からして複数と戦っているようだった。
《東洋人、機体を降ろす。心の準備はできたか!?》
言語がよく分からない彼は二つ返事で適当にイエスと答えて、大型ヘリから彼のAC投下された。
彼は敵との戦闘に備えて戦闘モードを起動、盾を展開した。
《死神に食われるなよ!》
彼のACを運搬する大型ヘリのパイロットは彼に一言言って、大型ヘリは来た進路を戻っていった。
そして彼のACは荒れた大地に足を着いた。
戦闘は既に始まっている。
彼は操縦桿とフットペダルを倒して味方二機の下へと移動を開始した。
《味方全機に通達、敵ACの中に見たことのない腕部パーツを付けたACがいる。なにをしてくるか分からん、注意されたし》
老けた声が注意喚起して、戦闘を続行する。
その注意喚起が入ったところで彼のACがようやく交戦地帯に入った。
戦闘はこちら側の数が少ないものの質はシリウス側より勝っていた。
シリウス側のACは共通して標準中量二脚型AC。武装面は共通でライフル、バトルライフル、レーザーライフル。
しかし、内一機のACだけが射撃武器を持たず、彼らが見たことのない腕部パーツ、すなわち武器腕を装備していた。
《ようやく来たか、小僧》
《パーティはもう始まっているぜ》
入り乱れる火線の最中、老けた声の主が乗るACとフレイドが乗るACを確認する。
老人のACはヒートキャノンを両手に持ち、ハンガーユニットにバトルライフル左右どちらにも固定しているタンク型AC。
フレイドは実弾防御を重点に置いた中量二脚型ACだった。武装面はガトリング二つをハンガーユニットに固定し、バトルライフル二つを両手に装備していた。
入り乱れる火線を掻い潜ってきた彼のACは『ハイブースト』を使って一機の敵ACに接近。
射撃武器で攻撃するのには近過ぎる距離にまで近付いた。
そう、この距離こそが彼にとって本調子が出せる距離なのだ。
回転を付けた斬り方を繰り出し、最高の切れ味を持つMURAKUMOの刃がコアのコックピットハッチ辺りを切り裂いた。
刃はコックピットの中にまで通ったが、パイロットはまだ死んでいない。
反撃に出た敵のACは『ハイブースト』の瞬間最高加速からの『ブーストチャージ』を彼のACに直撃させた。
≪機体がダメージを受けています、回避してください≫
鉄がぶつかり砕けるような音と音声ガイドが機体の耐久値が半分近くに低下していることを彼に知らせた。
敵ACは再度『ブーストチャージ』による攻撃を彼のACにヒットさせようと、その予備動作を見せる。
彼はその動作を見て一瞬で判断し、『ブーストチャージ』により接近する脚をシールドで受け流した。
受け流され、通り過ぎた敵にMURAKUMOの刃がコア背部のジェネレーターに突き刺さった。
破損したジェネレーターによって機体の各部へのエネルギーの伝達ができなくなり、敵ACは動きを止めた。
そして彼のACは動きを止めた敵ACの正面に周り、コックピットから逃げようとするパイロットをMURAKUMOの刃で叩き切った。
刃は血に塗れる。
パイロットを殺すことを、彼は戦闘データや自分の存在をバラされる危険を減らすことだと認知していた。
《若造に負けてられぬ、そろそろ元
彼の活躍を見た老人が昔のことであろうことを引っ張り出したこともあってか、突然動きが良くなった。
タンク型のACは突撃し、ヒートキャノンを四、五発発射。
その砲弾たちは敵ACの両腕に直撃して使い物にならなくした。
しかも直撃の影響により発生した衝撃がACの機動を邪魔した。
タンク型ACはそのまま突撃、車体を使った『ブーストチャージ』を繰り出し、敵ACの上半身を持って行った。
《敵撃破》
残る二機はフレイドを挟み撃ちにするように動き、攻撃していた。
彼と老人はフレイドの援護に向かう。
しかし、武器腕なるものを装備しているAC『グライドブースト』で加速し、フレイドのACの眼前にまでに接近した瞬間、破壊する音が辺り一帯に響いた。
フレイドのACから火が噴き、息の根が止まったように動きも止まってしまった。
「死んだか?」
彼はフレイドに直接問いかける。
《俺はしぶとさが売りなんでね、まだ死んでないぜ》
「なら、いい」
フレイドの生死を確認し終えた彼のACはそのまま武器腕のACに接近してMURAKUMOの刃で切り裂く。
しかし、その刃は武器腕の刃に受け止められた。
そして右腕の刃は彼のACに振られる。
彼は『ハイブースト』を使って急速後退するが、シールドが斬られた。
彼のACの武装はこれでMURAKUMOだけである。
《逃げるなよ、お前も刃を持っているなら尚更》
通信越しから武器腕のACのパイロットの文句が聞こえてきた。
すると武器腕を持つACは彼のACをひたすら追いかける。
まるでなにかに憑りつかれているようかのように。
《最新型の力は最高だぜ、フッハッハッハ》
武器腕の刃をひたすら振り続けるACは地面を削りながら彼のACを近付いた。
彼は振り続けられる刃の隙を見つけるが、装甲の耐久値が半分を切っているのと軽々と装甲を斬っていきそうな刃のせいで彼は近付けなかった。
《この感覚、痺れるぜ》
そしてその隙はようやく近付けるくらいの大きなものとなった。
両腕が地面を穿ったその瞬間を狙って『ハイブースト』での高速接近、MURAKUMOの刃が武器腕のACを映した時、刃はコックピットの中まで切り裂き、更なる血に塗れた。
《こちらも片付いた。全機撃破だが、本命の補給部隊は行ってしまったか》
老人は既に最後の一機を破損だらけの鉄塊にしていた。
正面から撃ち合ったのか、老人の乗るACは表面の装甲がボコボコに凹んでいた。
《こちら第19支部前線基地所属のACだ、貴殿たちが逃した補給部隊は我々が全滅させた。貴殿たちがACを撃破したことで全滅させるのは容易だった。今作戦はご苦労だった》
《了解、そちらもご苦労。通信終了》
老人が他基地のACとの遠距離通信の受け答えをして、作戦を成功という形で終えることができた。
《あちゃー、これはまた整備班に怒られるな》
大型ヘリが来たところでフレイドが少し焦り始める。
七機の大型ヘリが彼らのACと鉄塊と化した敵のACを運搬する。
敵ACはもちろん、ヴェニデの戦力として扱われる。
この前のエスパーダのACももちろんヴェニデのACとして扱っているのだ。
そしてそれらのACは大概他の基地に回されるか、格納庫に入れられる。
《ACを全機回収、これより基地に帰還する。通信終了》
大型ヘリの集団は基地に戻っていった。
持ち帰ったACの一つに麻薬にも似た武器があることも知らずに。
※※※
執務室。
そこでハートマン副指令とミセラブ・ブラッド司令が話し合っていた。
「ハートマン副指令、間近で見た霧山一刀の力の感想を教えてくれたまえ」
落ち着きのあるゆったりとした声だが、厳格な軍服と厳しい顔が相まって棘のある雰囲気を出していた。
「はい、司令。彼の力は大きなものです。あれならば他の『強化兵士』も同等の戦果を挙げているでしょう」
「なるほど、それなら良かった。これで『強化兵士』プロジェクトに参加した私も報われるというものだ。ただ霧山一刀という名前は少々格好の付け過ぎだな、これだから研究者が付ける名前というのは」
そこでブラッド司令は机の引き出しから一つの黒いファイルを抜き出して机の上に置いた。
「これは?」
「見れば分かる」
ブラッド司令はそう言ってハートマン副指令にファイルを手渡した。
ハートマン副指令はファイルの中身に目を通した。
そこに書かれていることは『強化兵士』に関する一部の資料だった。
「子供を回収して素質のある子供を選別、そしてその一握りの子供に洗脳と戦闘訓練を受けさせる極秘プロジェクト。まぁ私はプロジェクトの全てを知っている訳ではないがな。君もその資料に目を通してくれ、これからのプロジェクトのために」
「私に引き継げとでも言うのですか?」
「まぁそうなる、」
ハートマン副指令は黒いファイルを机に置き、ブラッド司令はそれを机に引き出しの中に戻す。
そうして極秘のプロジェクトはまた闇の中に隠れた。
「特別にだが、霧山一刀の最終試験を教えてあげよう。それは家族殺しだ、力を持てない不要な賎民を少なくすることを立派にそして正当に行えるからな。家族を持っている私にはこういうやり方はあまり好きではないが」
ブラッド司令は胸ポケットから大事にしている家族の写真を取り出し、その写真を見るや笑顔を作り、家族の写真をそっと戻した。
「今日の要件はこれだけだ、戻りたまえ」
「はい、失礼します」
ハートマン副指令は退室して、管制塔を出た。
すると地平線から七機の大型ヘリが数機のACを運搬し、この基地に戻ってきた。
あのACの中には霧山一刀がいる。そう思うだけでハートマン副指令は『強化兵士』として扱って監視すれば良いのか、それとも兵士として普通に接すれば良いのか、悩んだ。
ハートマン副指令がそう悩んでいると大型ヘリはACを基地に着陸させた。
「悩みごとがまた一つ増えてしまった」