ARMORED CORE VERDICT DAY ヴェニデの剣豪 作:D-delta
夕日をバックにして調整された霧山を乗せている輸送ヘリが防衛基地へと飛んでいく。
「こちら輸送ヘリ、まもなくそちらの防衛基地に着く。着陸の許可を願いたい」
《了解、許可する》
基地から許可を取った輸送ヘリのパイロットはそのまま輸送ヘリを操縦して防衛基地へと飛び、基地の上空に到着。パイロットは輸送ヘリを着陸させる。
「よし、研究主任に渡されたプラン通りにプロトタイプを医務室に連れて行くぞ」
「分かった、そっち側を持ってくれ」
着陸すると輸送ヘリのハッチが開き、中にいる兵士たちが担架に乗せられている霧山を運び出した。
運び出される先は医務室である。
そこでは運ぶ間に身体の異常が発生していないかを調べるのだ。
そうして医務室へと運ばれていく。
その最中、霧山が戻ってきたということで辺りが少し騒ぎ始めた。
「霧山!」
声を上げて担架で運ばれている霧山に向かって走るフレイド。
フレイドはこの少しの騒ぎに霧山が戻ってくるという望みを掛けていたのだ。
そしてその望みは叶った。
フレイドは走って担架で運ばれる霧山に近付くが、輸送ヘリに搭乗していた兵士たちが近付くことを許さないようにフレイドを押さえた。
フレイドは医務室に運ばれていく霧山に触れることはできなかったが、無事を確認できただけでもフレイドはホッとしていた。
「やっと戻ってきたか、明日が楽しみだ」
霧山が戻ってきたことによって安心したフレイドは独り言を呟き、自分の部屋に戻って行き、眠りに付いた。
担架に乗せられた霧山は眠ったまま、医務室へと着く。
二人は眠りに付いた。
※※※
第16支部防衛基地。朝。
フレイドと霧山は第一格納庫で自分たちの機体を整備班と共に修理及び改修をしていた。
「おい、そこのレンチを取ってくれ」
左手に少年漫画を持って読みながら右手で脚の展開装甲辺りでネジを回しているフレイドは髭面の整備士にレンチを頼まれた。
フレイドはネジを回すのをやめて少年漫画を読みながらレンチを髭面の筋骨たくましい整備士に投げつけた。
その凶器になり得る投げられたレンチを髭面の筋骨たくましい整備士はうまくキャッチしてなにごともなかったようにコックピット内の整備を続けていく。
フレイドは再びネジを回しながら少年漫画を読み続け、時より熱くなっていた。
「よし! お前の機体はこれで十分だ!」
髭面の筋骨たくましい整備士は整備と改修が終わったことをフレイドに告げ、他の整備士たちと共に機体から降りた。
フレイドは少年漫画を衣服のポケットに詰め込み、髭面の整備士と並んで自分の機体を見上げた。
「どうだ? 感じは悪くないだろう?」
「おお、かっこいいな!」
「言うと思ったぜ」
フレイドはそのヒロイック且つ重い見た目のACにうっとりしていた。
しかもそれが自分のACとなるのだからフレイドは狂喜乱舞していた。
フレイドのACは以前と変わらない実弾防御特化の機体だが、使われているパーツを近頃噂の立っている素性不明の『傭兵』のACに似せているので以前のACよりは機動力が上がっている。
その『傭兵』のACと違う点は腕部パーツだけであり、内臓武器を搭載できるよう両肩部がボックス型になっている。そのためより多くの武器を搭載できるようになっているのだ。
武装面は新しく肩部に搭載されるようになったCE弾頭のミサイルと右手にガトリング、それと新しく実弾防御に優れたシールドとエネルギー防御に優れたシールドを両方のハンガーユニットに搭載していた。
そして見たこともない長方形のような形の武器が左手に装備されていた。
「整備班のおっちゃん、左手のあの武器なんだ?」
「あれか。あれはな、セントリーガンっていう武器だぜ。詳しくはこの取扱い説明書に記載されている」
フレイドはセントリーガンの説明書を受け取り、説明書を読んだ。
数分熟読していくと、フレイドはセントリーガンの扱いを理解し、説明書を整備士に返した。
「設置武器をACのFCS(火器管制システム)で制御するのか。これはどう見ても援護向きの武器だな」
「そうだ、フレイドは援護が得意だろう?」
「まぁな、俺に背中を任せておけってな」
フレイドは上機嫌になってグッと拳を作った。
「じゃあな、俺たちは次の兵器の整備をしてくるぜ」
フレイドが拳を作っている余所で整備士たちは次の兵器の整備をしに行った。
「これで俺の機体は最強だ!」
次は両手でグッと拳を作った。
自分のACに満足したフレイドはまだ改良中である霧山のACのところへ向かった。
フレイドが数歩進んで霧山のACのところに着き、イスに座って胸を押さえている霧山に近付いた。
「霧山、身体の調子はどうだ?」
「ちょっと胸が痛むだけだ、身体の方は安定して動かせる」
「本当か?」
霧山はコクッと頷いた。
しかし、霧山が頷いてもフレイドは安心できなかった。
それもそのはず、この基地に戻ってきたばかりでしかも胸を押さえているのだから。
「はぁ、俺の心配より自分の心配をしろよ」
「悪かったな、霧山。でも、俺は霧山の友なんだ。心配して当然だろう? それに出世するにはお前が必要だしさ」
霧山は溜め息を吐いてフレイドを不信に思った。
そして最初の実戦、出世のための捨て駒として使われたことを思い出した。
霧山はいやなことを思い出して率直にフレイドに問いかける。
「俺を出世道具に使うつもりじゃないのか?」
「そんなことしないよ、二人で仲良く出世するんだよ。そうすれば俺も霧山もウッハウハって訳だ」
「分かった、フレイドのことを信じるよ」
霧山は多少の不信感は抱きつつもフレイドを信用することにした。
信用されたことでフレイドは上機嫌になり、グッとまた拳を作って喜んだ。
「あんたたち、そこで喋ってないでこっちを手伝って」
コックピットから整備班長が顔を出して霧山とフレイドを呼び、彼らは整備中の霧山のACへと近付いた。
彼らは整備班長と整備士たちから、あれを取ってこれを取ってと指示され、その通りに改良に必要な物を手渡していった。
改良が続いて一時間。
霧山のACの改良が済んだ。
「よし、改良完了。いい具合に仕上がってると思うからさ、これでバーンと活躍してね。じゃあ」
改良を済ませた整備班長と整備士たちは霧山の機体から降りて次の兵器へと向かって行った。
「いつもああゆう態度なら整備班長も可愛いんだけどな」
フレイドは整備班長の怒りを恐れて霧山にしか聞こえないくらいの小声で言う。
しかし、整備班長は振り返り、フレイドを睨んだ。
「いつも可愛くなくてごめんね! このバカ野郎!」
整備班長にはちゃんと聞こえていたらしく、フレイド目掛けてスパナを投げた。
フレイドはそれをサッと避けて、投げられたスパナは床に転がった。
「危ない危ない」
「フレイドは言葉が過ぎる」
「うるせぇよ、それよりお前の機体はどうだ? 自分の満足いく出来か?」
霧山は改良が済んだ自分の機体を再度見つめた。
霧山のACは重量型逆関節型から軽量逆関節型へと変更され、装甲をあまり落とさずなるべく軽量にされている。
武装面は重量の関係上右腕だけをA11 Vendettaにし、左腕はCE弾を防ぐための腕部パーツに変更され、左手に持つのはA11 Vendettaを愛用する前に装備していたBD-0 MURAKUMO。ハンガーユニットには軽量化を計るため武装は搭載されていない。
「刃……」
「まぁ霧山には丁度良いACかもな。俺には絶対に扱えないけど」
笑いを含んで言いながらフレイドも霧山のACを見つめる。
ACを見つめる傍ら、フレイドは横目で霧山を確認すると少し様子がおかしいことに気付いた。
霧山はA11 Vendettaを凝視して、声は出ていないが誰かと喋るように口を動かしていたのだ。
「どうした? 霧山」
フレイドの声にハッと我に返った霧山はフレイドに目を合わせた。
先ほどの様子にフレイドは心配になり、霧山に問いかける。
「霧山、お前本当に大丈夫か? あの研究者たちになにかされたんじゃないか?」
「研究者のことはよく分からないけど、俺は大丈夫だ」
霧山がそう言ってもフレイドは心配だった。
心配したフレイドが霧山を座らせようとした瞬間、基地内に警報が鳴った。
《防衛部隊が全滅、基地内に所属不明のACが侵入した! 基地内にいる全兵士は迎撃に出ろ!》
基地内のうるさいスピーカーが敵の侵入を告げ、基地内は騒がしくなった。
霧山とフレイドも侵入してきた所属不明のACを迎撃するために自分たちのACに乗り込んだ。
《基地の防衛部隊が全滅ってことは元親衛隊の老人もやられたのか、一体どんな奴が侵入しているんだ》
不安と疑問に駆られたフレイドは一目散に機体を操縦して第一格納庫から出る。
霧山はフレイドの後に続いて第一格納庫から出た。
彼らが第一格納庫から出たところで死の臭いを放つ者が飛び、そして彼らの前にその姿を現した。
《老人の乗ったタンク型のACも周りの雑兵もみんな弱かった。お前たちは強いか?》
若い男の低い声、黒と赤のカラーに、猟銃を持ったドラゴンのエンブレムを持った重量二脚型AC、2/R.I.P3/G――死神だった。
二つのバトルライフルの銃口を霧山たちに向けて死神は問いかける。
《霧山!》
通信越しからフレイドは霧山に呼びかけるが、霧山は返事をしなかった。
《おい、霧山。どうしたんだ!》
霧山にはフレイドの声が届いていなかったのだ。
霧山は声を出さずに口を動かし、全ての意識を死神に集中させていた。
そして霧山のACはブーストによる高速機動で動き出した。
それに反応して死神も動き出す。
《その戦う姿勢、好きだ。一目惚れしそうだよ》
《あの死神、ゲイかよ》
余裕の笑みを含んで死神は機体を後退させ、徹底して引き撃ちに走った。
引き撃ちの際に放たれたバトルライフルのCE弾は『ハイブースト』と『グライドブースト』による変態的な機動をしている霧山の機体に掠り、地面にぶつかって爆発する。
《霧山、援護するぞ》
フレイドのACはガトリングとCEミサイルを連射、死神に連続でヒットさせた。
連続のヒットのおかげで死神の動きは若干鈍くなった。
その鈍くなった隙を逃さず、霧山は死神に接近、Vendettaの刃が死神に振り下ろされる。
《そんなにくっ付きたいのかい?》
死神から通信が入った直後、死神のACは両方に持つバトルライフルを捨てて霧山のACに抱きついた。
その影響で刃は死神に届かなかった上に、霧山のACと死神のACが離れない故に誤射を恐れたフレイドはガトリングによる攻撃ができなくなった。
《ウンっと抱きしめて殺してやる》
左手で霧山のACを離さないようにして、右手にハンガーユニットのヒートパイルを装備した。
そのACの装甲をも軽々と貫く鋭い先端を霧山のACのコアへと狙いを付ける。
霧山は操縦桿とフットペダルを使い、もがいた。
しかし、もがくも空しく、離れることができない。
《その命、もらった。死――》
死神のヒートパイルは確実に霧山のACのコアを捉え、霧山を狩ろうとした。
その直後。
フレイドのACがシールドを構え、命を捨てる覚悟でくっ付いた二機のACに突っ込んだ。
二機のACはシールドによる突撃をまともに受けて、くっ付いていた二機のACは強制的に離された。
《よくも邪魔してくれたな、雑兵が!》
霧山の命を狩ることができなかった死神は怒り狂ってフレイドのACに急速に接近、コアに向けてヒートパイルの先端を打ち出した。
しかし、装甲を貫く先端はコアには届かなかった。
《残念だったな! お前のご自慢の武器はこのシールドで防がせてもらった》
そう、左手に持つエネルギー防御特化のシールドによってヒートパイルの先端はシールドを貫通したもののコアには届かなかったのである。
その上ヒートパイルの先端がシールドを中途半端に貫通したため戻す時に引っかかってしまい、先端が抜けなくなっていた。
このチャンスを狙ってフレイドは右手の実弾防御特化のシールドで何度も死神を叩いた。
叩かれた時の衝撃に負けて死神は手も足も出せず、いつの間にか設置されていたセントリーガンによる実弾攻撃に晒された。
《霧山!》
フレイドの声にようやく反応した霧山は操縦桿を思い切り倒し、死神の後ろから接近。
MURAKUMOの刃が太陽の光りを浴びて閃き、死神の身体を上半身と下半身に斬り分けた。
《負ける……!》
もはや成す術のない死神。
トドメを刺すために霧山は斬り分けられた死神の上半身に向かってVendettaの凶刃を振り下ろした。
Vendettaの凶刃によって死神のコックピットもろともコアが斬り潰され、上半身が左右に分かれた。
死神は自らの残骸を晒してコンクリートの上に重たい音を発して倒れた。
「思い知れ、死神」
死神に言い放った霧山らしからぬその言葉は冷たく、なにかしらの闇と根強い恨みがあった。
ともあれ事態は収拾された。
死神を倒したことで第16支部防衛基地は一時の平穏を得たのであった。
全話書き終わったら、描写の追加をしようと思っています。