『無音』   作:閏 冬月

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第8小節 スパルタと押し売り宗教家

「彩葉ー!こっちだ、早く来いよ!」

 

魔理沙さんは、勢いよく山を登って行く。

しかし、私は普通の人間なのだ。疲れた。

なぜ、私が魔理沙さんと登山をしているかというと、体力づくりだそうだ。

私は家出をして、実家に帰るわけにもいかず博麗神社に頼ったけれど、霊夢さんは空音 いろはさんの家をあげると言ってくれた。

そして、そのことをいろはさんの家の管理者である、魔理沙さんも快く許してくれた。

 

「あの家に住むためには、体力がいるな」

 

魔理沙さんのその言葉から、妖怪の山登りは始まったのだ。

確かに、人里と比べるとあの家は相当な高さに位置している。体力とは縁がなかったさすがの私でも、体力づくりはしないといけないと思った。

 

襲ってくるそこらの妖怪は魔理沙さんの魔法によって退けられてるので、私は必死に魔理沙さんについていくことが最優先なのだ。

 

「やっぱり、彩葉、お前は魔法とか興味ないのか?」

「丁重にお断りします」

 

幻想郷最弱を名乗っている者として、何かの自己防衛手段を持ってはいけない。

という、考えもそろそろ捨てるべきかな。

 

「それでも…やっぱり興味はあります」

 

自己防衛手段として。

 

「それなら、後で私の家に来い!」

 

やめてください。死んでしまいます。

魔法の森には、キノコの胞子が充満している。

その胞子で魔法使いとしての資質を高めるそうだが、多分私には出来そうにない。

 

「それこそ、丁重にお断りします」

「えー。お前が魔法使いになったら面白そうだったのになぁ」

 

魔理沙さんは露骨に不機嫌な声を出した。

私は魔法使いにはなれない。一度、紅魔館に住んでいるパチュリー・ノーレッジさんに(魔理沙さんが半強制的に)魔力を見てもらったが、ミジンコほどの魔力も無かったらしい。

 

「お!守矢神社が見えて来たぞ!」

 

やっと?と思いながら見上げると、太陽が沈みながら明るく、守矢神社を照らしていた。

博麗神社と比べてとても大きい守矢神社の社がとても神々しく見えた。

境内へと続く階段を登っていると、後ろから強い風が私を押し上げるように吹いた。

登るのが、一気に楽になる。

 

「おい!早苗!何してんだ!」

「魔理沙さんはスパルタすぎなんですよ」

 

そう言ったのは、守矢神社の巫女であり、現人神である東風谷 早苗さんだった。

早苗さんは奇跡を起こす能力を持っていて、それで風を起こしたのだろうか?いいや、違う。

早苗さんの起こす風はあんなにムラはない。

ここは妖怪の山。風を起こすことのできる妖怪といえば、

 

「それに、さっきのは私ではありません」

「なら誰なんだよ」

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!幻想郷の伝統ブン屋こと、清く正しい射命丸です!」

 

天狗がいる。

ムラのある風は烏天狗しか起こせないと思う。

草むらから出てきた文さんは、びっくりした魔理沙さんに回し蹴りを喰らっていた。

 

「グエッ。何するんですか!」

「あ、文か。すまんすまん」

「その一言で済んだら世の中に警察はいらないのですよ」

「それを言うのなら、博麗の巫女。じゃないのか?」

「幻想郷では、確かにそれが1番、的を射ていますね」

 

2人は仲良さそうに笑っていた。

この場面を桜花が見ていたら、嫉妬してそうだなぁ。

そんなことを考えつつ、下山を始めようとすると、辺りは完全に真っ暗になっていた。

 

「今、帰るのはやめておきましょう。今日は私から言っておくので、泊まっていってください」

 

人を救う者として、100点満点の答えが早苗さんの口から出た。

是非とも、桜花や霊夢さんは見習ってほしい。

これこそが真の人を救う者だ。

 

「あ、その代わりに守矢神社のことを信仰してくださいね」

 

前言撤回、全然人を救う者じゃなかった。

恩を売って、自分の宗教に入れようとする犯罪者に近い何かだった。

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