早苗さんの押し売りにも似た宗教勧誘を断り、そして魔理沙さんの箒に乗せてもらうことで、私は博麗神社に辿り着いた。
神社の鳥居を潜ると、空っぽのお賽銭箱の上に座っている小さな影が見えた。
桜花?と思ったけれど、桜花にはあんなに大きな角を持っていない。
ならば、誰なんだろう。
「おーい、霊夢ー!帰ってきたぞ!」
そう叫んだ小さな影は私の方へと近づいて来た。
妖怪だということはすぐにわかるのだが、なんの妖怪か解らない。というか、私よりも小さい?10歳児に負ける身長って…。
「お前が陽友 彩葉か?」
「あ、はい。幻想郷最弱にして幻想郷きっての平和主「長い」え……」
初めてそんなこと言われた。
とりあえず、簡略化しよう。
「はい。私が陽友 彩葉です」
結構、簡略化出来た。
これからはこの名乗り方でやろう。
そう、心に決めた私だった。
「今日は彩葉、お前の引越し祝いの宴会だ!」
「え、宴会……」
「ん?なんだか嫌そうだなぁ。宴会ほどこの世で素晴らしいものは無いと思うんだがなあ」
偏見しかない価値観を晒していく妖怪。
そして、この妖怪は腰に常備していたのか瓢箪からお酒を飲み始めた。
もし、この妖怪の言う通り、宴会だと言うのなら今からお酒を飲んで大丈夫なのだろうか。
「あの、あなたの名前は何ですか?」
「んぐっ?プハッ。他人に名前を聞いておいて私が言わないのは、鬼として恥ずべき行為だったね。私は伊吹 萃香。よろしくな!」
鬼と言ったこの少女にも似た妖怪に対して、私は早くも畏れを抱いていた。
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「ん、酒があんまり減ってないな。どうした?彩葉」
「いや…。私ってまだ10歳ですよ?未成年がお酒を飲んで良いんですか?」
「大丈夫だ!ほら、桜花だって飲んでるだろ?」
確かに、魔理沙さんの言う通り、萃香とかいう妖怪に勧められて、鬼殺しと呼ばれるアルコール度数が物凄く高いお酒を大きめの盃で呷っていた。
明日の桜花は静かになるだろうな。二日酔いで。
「多分明日は楽になるんだろうね」
「ん?どういう意味だ?」
「そのままの意味です」
あの鬼は宴会とは言っていたが、ここにいるのは私と桜花と魔理沙さんと霊夢さんと萃香っていう鬼だけだ。
宴会と呼ぶには、あまりにも人数が少ないような気がする。
そして、私はお酒に弱いことが分かった。
霊夢さん曰く、アルコール度数の低いお酒。
それでも匂いだけで酔いそうになっていた。
「彩葉ぁ。膝貸して」
ベロンベロンに酔った桜花が私に近づいてきた。
2m弱でもお酒臭い。
「桜花、私の半径3m以内に近寄らないでね」
「えー」
魔理沙さんは似たような経験があるのか、私から目を逸らしていた。
最近魔理沙ばっかり書いているような気がします…。