本当にお待たせいたしました。
『無音』の2話をご覧ください。
私は気がついたら、周りが白い不思議な場所にいた。
先ほどまで、私は確か台所に立っていたはずだ。
不思議な場所とは言っているが、何故か既視感があった。
「どこなんだろう。ここ」
私は何となくそんなことを呟いてみた。
意味があるかどうか聞かれたら、確実に意味はないと答える。ただ、ここに私だけなのかを確認するための作業だとも言えた。
『解ってるくせに』
どこからか声が聞こえた。その声は酷く聞き憶えがあった。それもそうだ。生まれたときからずっと聞き続けてきた声、私自身の声だ。
白い空間に更に白く眩い光を放つ物体が収束し、人の形を象ってゆく。
「解らないよ。ここってどこなの?」
『解らないのならそれでいい。解ったらここに来れないし』
何なのそれ?
そう思う私もいたが、この答えに対してなるほど、と納得している私もいる。
ここはそういった空間。そう推測するとここはどこなのか、なんとなくだが、当たりをつけることは出来た。
『何個、いや1個だけでいいか。聞きたいことが1つだけある』
「その前に私が聞きたいんだけど。君は誰なの?」
『その答えを知る必要は今はない。どうせ、ここから出るときにいやというほどに気付くんだし』
「そう、なんだ。それはそれでいいや」
考えることに対しての疲労が溜まってきた。
私がこの場所に対して、推測したのは夢。ここは夢なのではないか。そして、私は誰かと対話しているということ。対話している相手は誰か。それは何も推測が立たない。
『一つだけ聞きたいんだ。君は、自分の役目を理解しているの?』
「役割?そんなの分からないよ。けれども、霊夢や魔理沙、他のみんなと一緒にいることが出来る。それだけで、私は楽しいと思っている。結構簡単に言うと、私の役目なんて今は分からない。だから、みんなと一緒にいるために生きてるんだ」
これは、私にとっての心の底からの回答だった。
霊夢とか魔理沙とかみんなと一緒にいるのが楽しいと感じている。
私がそういうと、光は不満げな表情を見せた。
『ふーん?まぁ、近々君の役目を嫌という程思い知らされるときが来るよ。君はそれでも、笑ってみんなと楽しく生きていられるかな?』
その声はとても不満そうだった。なぜ、知らないのか。そうでも言いたいのだろう。
「……その時はその時だよ。けれど、生きていられると思う。私が諦めない限りはね」
我ながら恥ずかしい言葉だ。
『あ、そうそう、最後に一つだけ聞きたいけど、あの音はまだ残ってるのかな?』
「当然、残ってるに決まってるよ。あれは私だけじゃなくて、幻想郷にとって大切な音だから」
『それじゃあ、その時が来たらまた会うことになるんだろうね。それまで、暫しのお別れかな』
「けど、私はもう会いたくないね。君とは」
「「じゃあね。空音いろは」」
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目を覚ましたら、いつもの自分の家の中にいた。
ベッドの上ではなく、キッチンに立っていた。
「さっきのは……夢?」
立ったまま眠っていたとは私のことであるが、器用なものだと、笑いがこみ上げてきた。
しかし、さっきのは何だったのだろう。
思い出そうとしても、白く靄がかかったようにぼやけていく。
突然、胸の奥から吐き気がした。
キッチンで吐く訳にもいかず、急いで外に出て、吐くとある程度はスッキリした。口の中にはなんとも言えない苦味は残ってはいるが。
木々の葉の隙間から漏れ出る、月の光は暗くはなっているものの、新月になれば漆黒の闇となる、裏山を照らしていた。
そして、夢の中で言われた言葉の中で朧気だが、まだ覚えているものを否定するように自分の存在を確かめる。
私はここにいる。私は今を生きている。私は私なんだ。
たったそれだけでいいんだ。みんなと笑って生きていられるなら、それだけでいいんだ。
折角なのだから、この心情が音に表わそうと思い、私は家の中に入った。
私は今の生き方を選んだ。今まで通りの生き方、今までと何も変わらない生き方を選んだ。
その後に、嫌というほど理解させられることになる、私の役目を解らないままに。
フラグは立てときました。
後々の展開に期待しておいてください。
また、会えたら嬉しいです。