『無音』   作:閏 冬月

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どうも、お久しぶりでございます。
今回から2〜4話に分けて、異変回となります。
それでは、ごゆるりとお過ごし下さい。


第16小節 時繰異変 1拍

「あ、やっと起きた〜」

 

「うん、おはよう」

 

「長いこと眠っていたね。まあ、今は起きたから大丈夫」

 

「そ!私が君を起こしたのは、あの計画、もう出来るよ」

「君を否定した幻想郷をぶっ壊そうか」

 

 

 

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博麗神社裏山、彩葉宅

 

私、陽友彩葉は自分の部屋で寝ようとしていた。

しかし、眠気が全くない。こういう日はいつも何をしていたんだったろう。

多分、日記をつけていたと思う。

そのことを思い出したら、机の下にある日記帳を取り出した。

そして、日記帳を開けると、違和感を感じた。

今日って、いつだっけ。何月何日だっけ。

日記の最後の日を見ても、日にちは書いていなかった。

日記の内容を読むと、そこには過去の私の悲痛な叫びが書かれていた。

 

『今日は何度も繰り返されてる。お願い、桜花や霊夢さんに伝えて……。』

 

どういうことなのだろう。私はいつから、今日が繰り返されてることに気づいたんだ?それに繰り返されてるなら、私は気づかないはず。

そう考えた私は、その叫びに答えないで、日記帳を閉じた。

 

 

 

 

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「ん?」

 

私の友達である博麗 桜花が後ろに振り向いた。

 

「どうしたの?桜花?」

「いや、…誰かに見られてるような気がして」

「紫さんかもね」

 

私は過半数本気でそう言った。

桜花は妖怪に好かれる体質があるらしく、よく妖怪に付きまとわれている。そんな桜花が警戒するとしたら、八雲 紫以外にいない。

 

「紫…なのかな?紫だったらいいんだけど」

 

私は首を傾けた。

よく意味が分からなかったからだ。

 

「桜花〜。ちょっと来てほしいんだけど」

 

霊夢さんは現在、お勝手で私の分までの昼食に用意してくれている。

最近は霊夢さんに借りを作ってばかりだ。

いつかこの借りは絶対に返さないと。

 

「はーい」

 

桜花は霊夢さんのいるお勝手へと向かって行った。

 

 

 

「いやぁ、意外と簡単に引っかかってくれたね」

 

目の前に、見たことのない妖怪が現れた。

私は当然、妖怪に対抗する力はない。

だから、慌てて社務所の扉に隠れた。

 

「大丈夫大丈夫。なーんにもしようと思ってないって。だから、怯えなくても大丈夫。幻想郷のルール上、神社の境内では妖怪は人間を襲っちゃいけないし」

 

そんなことがあったのか。

初めて知った。

それなら、もっと参拝客が増えてもいいだろうに。

 

そうじゃなくて!

 

目の前の妖怪は何をするかは分からない。

兎に角、ここは桜花か霊夢さんが来るまで待っておくことが得策だろう。

 

「今さ。博麗の巫女が来るまで待っておこう。的なこと、考えてなかった?」

「!?」

「あっはは!大当たり!私、エスパーにでもなったのかな!」

 

考えが読まれた。

いや、妖怪がここでは人間を襲えない以上、ここを離れることはできない。

 

「ざんねーん。ここには来れないように細工してるから、もう、ここは境内じゃない」

 

妖怪はさっきまでの陽気な声から一転、冷たいナイフのような突き刺す声に変わった。

そして、一歩ずつ私に近づいて来る。

 

「あのさ。私たちって異変、起こしてるんだよね。だからその異変に気付いてる君は邪魔なんだよ。気付くことができるだけでも凄いよ。そこまで、綿密に計画を練った異変だから。君さ。仲間にならない?」

 

気付く?どういうことなのだろう。

私は頭が悪い。頭が悪いなりに考えて、出した答えを発した。

 

「嫌だよ……。異変ってことは悪いことしているんでしょ?諦めなよ、そんなこと……」

 

「ハァ。君、頭悪いんだね。私たちは悪いことはしてない。悪いのはこの幻想郷なんだよ。ねえ、君は本当に気付いていないの?」

 

「君が元々何をしていたのかは知っているはずだよね?君自身じゃなくて、君の根っこの方にある魂のことぐらいはさ」

 

「……いろはさんのこと?」

 

「そうそう、大正解大正解!けど、その魂胆が眠ってる状態じゃあ話にならないしなぁ」

 

手首を回しながら近づいてくる。一歩一歩、確実に。

逃げようとしても、足がガクガクと震えて一切動かない。

それに動いたとしても、逃げきれる訳がない。ここは境内ではない。博麗神社の領域ではない。

つまりは、この妖怪の領域と同意義だ。

自分の領域で、自分に都合が悪いように設定するような馬鹿は妖精や桜花でもしない。

 

「まあ、魂胆と話す手段は後で考えるとして。

とりあえず、眠って?」

 

お腹の真ん中辺りからドスッと重い衝撃が伝わった。

 

おう、か…!

 

そして、私の視界はどんどんと暗くなっていった。


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