『無音』   作:閏 冬月

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休符 昔も今も思いは変わらず

「うぅ……寒い……」

 

何というか、とにかく寒い。

私、陽友 彩葉は現自宅でこたつに入っていた。

こたつと言っても、テーブルに掛け布団を挟んだものになる。河童の電力はこんな山奥まで届かないのだ。

河童の人に言って、電力を届けることが出来るようにしようかな……。

 

「彩葉ー!!あけおめー!」

「………寒いからドア閉めて」

 

バタンと桜花がドアを閉める音。

ズズズと私が温かいお茶を啜る音。

 

「何やってんの?」

「寒いからくるまってんの」

 

そう言いながら、桜花もこたつに入りに来た。

何のためにこの子は来たのだろう。新年になっているというのに。

霊夢さんは今頃大忙しなんだろうなぁ。

 

そんなことを考えながら、私はテーブルの上にある蜜柑の皮を剥き始める。

少し傷のあるほうが甘いとかなんとか。

 

「あっ!そうだ!」

 

桜花は急に声を張り上げた。

私としてはいつまであれば、びっくりするようなものであるのだが、今は驚きもしないし、感じもしない。

剥き終わった蜜柑の実を1つ取り、食べようとした瞬間、腕を引っ張られた。

 

「彩葉を誘えってお母さんに言われてるんだった!」

「なんのために?」

「金づるとして扱うために」

 

ついに断言してしまったよこの娘。

 

桜花の力には抗うことも出来ず、ズルズルと家の外へと引き摺られて行くのであった。

 

 

 

 

 

______________

 

 

 

 

 

 

「お賽銭、入れるよね!」

「まだ早いまだ早い」

 

桜花はルンルン気分でそんなことを言ってくる。

金づるを確保出来たのだ。それは大層喜ばしいのだろう。

ただ、私もそうやすやすと大金をお賽銭という名の博麗一族の生命線に打ち込むわけにはいかない。

桜花に引き摺られる前に屋台で出来るだけ浪費してやろうではないか。

小さいが、今の非力な私に出来る桜花への必死の抵抗である。

 

「ねえねえ!綿菓子あるよ!彩葉、一緒に食べよ!」

 

………浪費させられる羽目になりそうだ。

小さなガマ口財布をぎゅっと握りしめて、桜花に引き摺られた。

なんというか今回、引き摺られている場面、多くない?

 

「嬢ちゃんたち、一つでいいかい?」

「うん!」

「じゃあ200円だ」

「彩葉、払って」

 

桜花に言われるがまま、財布から200円を取り出し、店主に渡す。

 

「毎度あり!」

 

そう言う店主の視線がなんだかむず痒いものだったのでそそくさと離れることにした。

それにしても、初詣というだけあっていつもであれば閑散としている博麗神社も今は人でごった返している。

しかし、どうしても通らない場所がある。それは倉庫辺り。

その辺りはとても涼しく、人があまり寄らない。

静かに食べるのであれば、そこ以上にいい場所はない。

 

「桜花、聞きたかったんだけど、なんで一つにしたの?」

「ん? 別にいいじゃん。それか私と一緒に一つのものを食べるの嫌いなの?」

 

遥か頭上から生暖かい視線がある。

ここには一輪の百合の花は咲かないのでご期待の方はお帰り下さい。

 

「彩葉ー、全部食べちゃうよー」

「いやちょっと待って早くない?」

 

 

 

 

 

 

 

_______________

 

 

 

 

 

 

 

本殿へと到着。桜花は霊夢さんに仕事があると呼ばれたため、ここにはいない。

5円玉を取り出し、お賽銭箱へと放り投げようとした時、手を止められた。

右腕が人にぶつかったのだ。

 

「あっ、すみません!」

「いや、気にすることはないぜって彩葉か。お前も初詣か?」

 

そのぶつけてしまった人はまさかの魔理沙さんであった。

和装を着ていたので、私としては驚きだ。

 

「もう少し近づいてから投げたほうがいいぜ。私も過去に何回か外したことがあるからな」

 

なんだか、意外な言葉だった。

魔理沙さんは初詣とかは行かずに、魔法の研究とかに集中しているようなイメージがあったからだ。

 

「こうして並んでいるとさ、あいつといた時思い出すんだよな」

 

あいつ。

それは私の中にいる空音 いろは。

私と接する魔理沙さんは、どこか遠くを懐かしそうに見つめながら話す。

 

「そういや、あいつ、守矢でなんて願ったんだろうな」

「そんなの……私に分かるわけないじゃないですか」

「ハハッ!そうだな」

 

ある程度近づいたところで、5円玉を賽銭箱に向かって放り投げた。

 

二礼二拍手

 

 

そして、神様へ感謝を述べて、願って、

 

 

 

一礼

 

 

「彩葉、なんて願ったんだ?」

「叶わなくなるのに、言うわけないじゃないですか」

「あいつと同じこと言ってるな!」

 

その言葉はとても、嬉しかった。

私の目標は彼女なのだ。

 

私の願いは、あの人と同じ、

 

 

 

 

 

みんなとまだまだ一緒にいたいので、この縁が切れないようにして下さい。






あけましておめでとうございます。今年も今年でやって行きますので、お付き合い頂けると嬉しいです。
最近、書いていなさすぎたので、違和感を感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、段々とでも勘を取り戻していきます。

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