『無音』   作:閏 冬月

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第31小節 彩りの葉は散り際を奏でる

旧空音 いろは宅、現陽友 彩葉宅にて、静かに二人が作戦を実行段階へと移そうとしていた。

 

「蒼月さん、今回のいろはさんの考えた作戦においての大きな障害って何だと思います?」

 

陽友 彩葉は、緊張の糸は張られてあるのかと心配してしまうほどに、いつも通りの声色で尋ねる。

 

「そんなもの、紫さんと博麗 霊夢以外何があるって言うんだ?」

 

裏で何が行われているか知らない蒼月 空はある程度の緊張感を持っていた。その返答に対して、彩葉はそっかと、短く返すだけだった。

 

「博麗神社の正面から行くよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「蒼月さん、多分これ、霊夢さんいないよね?」

 

博麗神社へと向かう階段の途中、いつも感じる安心するような気配はない。

それを聞いて、蒼月さんは遠くを見つめるように目線を上へと上げた。白狼天狗の1人の能力に千里眼の能力の持ち主がいたらしい。それの能力の模倣だ。

蒼月さんの能力は能力の模倣。オリジナルには精度で負けるものの、それを同時に何個も模倣することが出来るため、能力だけの勝負になれば負けるということは有り得ないらしい。

 

「マジで、いねえのか」

 

それであるならば好都合なことこの上ない。私たちにとって、大きな障害の1つがこの場にいないというのは、作戦の遂行に大きく影響する。

 

「そろそろ、頂点」

 

数日とはかなり短い時間ではあったが、なんとなくでもこの蒼月さんの人間性というか妖怪性というのは分かっている。今現在やらねばならないことを最大限重視し、それに対して真摯に取り組む。今回の件で最も信用出来る妖怪なのだろう。

 

憎いほどに青く澄んだ空に、舞い上がる紅葉。彼女には悪いけれど、これは私たちが今やらなければならないこと。どんなに頑張って避けたって、これが私に与えられた使命。いろはさんに与えられた、1つの使命。

 

「あ、彩葉! と……、誰?」

「蒼月 空。妖怪だ」

 

その言葉を言い終わるよりも早く、桜花は蒼月さんへと飛びかかっていた。

 

「彩葉は、私が守るんだっ!」

 

 

 

 

 

 

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「以上だ。僕的には桜花の能力の暴走を止めるための話にはならないと思うんだが、霊夢、君にとってはどうなんだい?」

「ええ、とっても為にならない話だったわ」

 

嫌味を言う程度には余裕がある。

霖之助の話は桜花のためになるかと聞かれれば、おそらくそんなことはない。しかし、ある程度の知識を持っていれば、それが何らかの形で役に立つこともあるかもしれない。

 

「ありがとうね、霖之助さん。また来るときは桜花も連れて来るから」

 

「次なんて、ないわよ」

 

その言葉は霊夢にとっては嫌というほど聞き慣れた声であった。

カランカランという香霖堂に客が来たことを知らせる鈴が鳴った次の瞬間には博麗 霊夢はスキマに呑み込まれていた。

 

「どうしたのよ、紫。構ってほしいの?」

「そんなこと、あるわけないじゃない」

 

漸く姿を見せた八雲 紫は、殺気に満ち溢れていた。

 

「殺す気で来ないと、死ぬわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

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10分、たった10分だというのに、桜花は息も絶え絶えになっていた。それに対して、蒼月 空はまだまだ余裕がありそうに見える。

 

「能力使わずに、肉弾戦で勝てるとでも思ってんのか?」

「うるさい! お前なんかに彩葉を殺させるもんか! 私が彩葉を守るんだ!」

 

いつも左腕につけている腕輪のようなものはない。その腕輪は、桜花の能力を強制的に押さえつける封印。それがない現状、桜花の能力の妖怪の力の一側面を扱う能力は使おうとすれば、自らを妖怪化させてしまうようなものとなる。

 

「陽友 彩葉から能力の内容を聞いたが、お前の能力は、俺の能力の完全劣化だ」

「そんなもの、やってみないと分からないっ!」

 

博麗神社の中心に、禍々しい気配が渦巻く。確かに作戦通りには進んでいる。進んでいるのだけれども。

 

桜花は激痛に耐えているのか、歯を食いしばって叫びたいのを抑えている。

 

蒼月 空が合図を出す前に、私は桜花のところへと走り出していた。

 

「あんたにこの力、受け止めれる?」

 

ただ力任せに振り抜いた右ストレート。それが蒼月 空へと届く直前、何かを貫き、拳の勢いを殺した。

その勢いを殺した存在を確かめるために、ゆっくりと見上げると、その存在は。

 

「彩葉…………」

 

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