『無音』   作:閏 冬月

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どうも、お久しぶりです。

今回から『無音』2章
その音は受け継がれる

やっていきますよ!


第2章 その音は受け継がれる
第1小節 その音は生まれ変わる


人里の中央近く。

そこに、新しき命が生まれようとしている。

 

「生まれた!」

 

そうして、父親は生まれた赤児を抱き上げた。

 

「見ろ。これが俺たちの子供だ」

「ハァ…ハァ…。 可愛いわね」

 

この命、魂の色が見える者なら一目で分かるだろう。

 

「女の子だ。名前は前に決めていたものでいいよな」

「ええ」

「この子の名前は、陽友 彩葉だ」

 

彼女は、とある処刑人によって魂の審判を見逃され、この幻想郷に転生した。

 

この魂の前世の名は、『空音 いろは』だ。

 

 

 

___________________

 

 

 

 

「お母さん、遊びに行ってくるね!」

「彩葉、1つだけ約束して」

「何?」

「神社には行かないこと、約束出来る?」

「なんで?」

「あそこは妖怪の住まう神社だからよ」

 

違う。違うよ。お母さん。

あそこは私にとっても、他の人たちにとっても大切な場所なんだよ。

 

 

 

___________________

 

 

 

 

「あっついー!!」

 

私は博麗神社への道を進んでいる。

神社は山の中にあるため、傾斜がきっつい。

真夏の太陽が私を焦がそうとしていた。

山というのに、1つも休憩ポイントがないのは厳しい。

今度、霊夢さんに言ってみよっかな〜。

 

「は〜。もっと近くにあったら参拝客も増えると思うんだけどなぁ」

 

7割がた私情を挟んでいます。

 

「やっほー」

 

声がした。

周りには誰もいない。

山から?いいや、違う。

空からだ。

 

上を見上げると、目と鼻の先に人がいた。

そして当然、私は後ろに倒れた。

 

「ちょっ、桜花。どいて、動けない」

「アッハハ!」

 

私の上に降りてきたのは、博麗桜花。

次の博麗の巫女だ。

数少ない私の友達だ。というよりかは同年代の数少ない友達といった方が正しいような気がする。

 

「桜花、ほんとにどいて、重い」

「いーやーだー」

 

子どもっぽすぎるのが欠点だけど。

 

「だって彩葉遅いんだもん。だから待ちきれなくて迎えに来ちゃった」

「うっ」

 

遅い。まさに図星だ。

だけど、だってじゃないでしょだってじゃ。

どくのか嫌な理由が遅いからは、理由として間違っているだろう。

 

「分かった。遅かった私が悪かったから、ほら。どいて?」

 

なんで私が謝っているのだろう。

謝るのは私の頭上に着陸した桜花のはずだ。

 

「うん!いいよー!」

 

桜花は私のお腹の上から退き、ぱんぱんと砂を払っている。

私もそうする。

 

「さ!行こ!」

 

桜花は何かから逃げるように、私の手を引っ張ってくる。

 

「痛い痛い!」

 

桜花の細腕になぜこんなに力があるのだろう。

そんなことを考えていると、ヌゥッと空間から手が出てきた。

 

「桜花〜?どこに行くというのかしら?」

 

その声の主は、八雲 紫という名の妖怪だ。

妖怪のくせに博麗の巫女に色んなことを教えている。

 

「さ。修行の時間よ」

「嫌!紫の修行嫌い!ついでに紫も嫌い!」

 

そう、桜花は紫に言い放った。

 

「行こ、彩葉」

 

そのあとの紫の様子は、まるで孫に嫌われ絶望の淵に追いやられたおばあちゃんのような雰囲気を醸し出していた。

そして、私は誰にも聞こえない程度で紫おばあちゃん…。と呟いてから、桜花の後を追った。

 

 


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