暗殺教室~想い~   作:Akila?

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渚のトラウマ

これは暗殺教室が始まって1ヶ月が経った位の話だ。

 

休み時間。

E組の生徒達は、仲の良い友達とお喋りしていた。

 

クラスの一員の中村も矢田や倉橋らと一緒だったのだが。

 

「ん……」

そこで中村はふと、クラスメートの潮田渚を見た。

 

青い長髪を、ピックテールの様に結んだ少年。

茅野達とお喋りして、口が動く度に結んだ髪もピョコピョコと揺れる。

 

「…そーだ」

イタズラを思い付いた様な顔。

矢田達は、またか…と呆れた視線を向ける。

 

そんな彼女達を尻目に、中村はそーっと渚の背後に忍び寄る。

 

(ムフフ…せー、のっ!)

 

「渚くーん!!」「っ!!?」

中村は結ばれた二つの房を両手で掴んだのだ。

 

イタズラ成功!と上機嫌になっていると、

渚の様子がおかしいことに気付く。

 

「…………」「な、渚?」

顔をうつめて動かない。

強く持ちすぎたかと思ったが、勿論軽く持っただけなので痛くは無い筈。

 

しかし彼は何の反応も無いのだ。

 

「「渚?」」 「渚君?」

茅野や杉野、カルマも異変に気付き渚に近寄る。

中村は只呆然と、渚の髪を持ったまま彼を見つめた。

 

……その行動がまたいけなかった

 

 

「ん?」

カルマが渚の顔に耳を近付けた。

 

「どうしたんだ、カルマ?」

「いや…渚君なんか喋ってる?」

渚の口元を見ると、確かに動いていた。

 

全員渚の顔に耳を近付ける。

その光景に、クラスメート全員も気付いて、

いつの間にか人だかりが出来ていた。

 

「……い。」

渚は消え入りそうな声で、何かを呟いていた。

何を言ってるんだろう……?そう皆が思っていると、段々渚の声が大きくなり、何を言ってたのかが分かってくる。

 

「…なさい」「「「?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい……」「え?」

 

 

「ごめんなさい…ごめんなさい……」

渚は只只謝っていた。

誰に謝っているのかも不明だ。

まるで取りつかれたかの様に、謝っていた。

 

「な、渚!?」

茅野は彼の名を呼ぶが、渚は無反応。

 

それから全員が渚を呼ぶが、それにも反応しない。

 

騒ぎを聞き付け、殺せんせーや烏間、イリーナが駆けつける。

 

「どうしました皆さん!?」

殺せんせーが聞くと、磯貝が応えた。

 

「分からないんです…突然渚が……」

「渚君?」

殺せんせー達も渚に近寄り、異常を知る。

 

「ごめんなさい……」

渚はまだ謝っている。

そして烏間とカルマは気付いた。

 

普通人が何かに謝る時、申し訳無いと思い顔が暗くなるだろう。

それは嫌々謝っている時も同じだ。

 

しかし…渚は違った。

 

…何の感情も無いのだ。

目には精気が無く、声も無機質。

まるで…工場の流れ作業の様に、事務的に謝っていた。

 

「渚ぁ!!!」

茅野は今度は彼の両肩に手を置いた。

 

「…!……茅野?」

そこで渚は要約クラスメート達が傍にいることを理解した。

 

「大丈夫!?」茅野がそう聞くと

 

「…?……!!あっ…と……うん、大丈夫だよ

皆もなんか心配かけたみたいでごめん!!」

「あ、渚!?」

渚はそう言うと走って教室を出ていった。

 

「「「………………」」」

全員それを呆然と見ていた。

 

「…………」

しかし殺せんせーだけは、何かを感じた。

 

(あの反応……もしかして……)

 

 

 

 

 

 

「ハアハア……」

校舎裏。

渚はそこで息を荒げて立っていた。

 

(…どうしよ……よりにもよって全員に見られた……)

落ち込む渚に

 

「渚君」「っ!!」

後ろから声をかけられ振り向くと……

 

「殺せんせー……」殺せんせーが立っていた。

 

「…さっきは心配かけたようでごめんね?

もう大丈夫だから、教室に……」

「渚君」

 

ビクッとして見ると、殺せんせーは真剣な顔をしていた。

 

「な、何さ殺せんせー……?」

「…君は…もしかして……」

 

 

 

 

 

 

「何かトラウマを持っていますね?」

「!!」

「髪を触られる…いや、『捕まれる』事に。」

殺せんせーの言葉に、渚は顔を青くする。

 

「何か悩みがあるなら、先生に言ってくれませんか?」

「……」

 

「言えば案外悩みが軽くなるかもしれません……なので……」

「…て」

「え?」

 

 

「大丈夫だって、言ってるだろ!?」

「な、渚君?」

渚は怒気を含んだ声で叫んだ。

 

こんな渚を殺せんせーは始めて見るため、驚く。

 

結局そのまま渚は殺せんせーから離れていった。

その後も授業があったが、渚は何も話さず

周りも渚に声をかけられなかった。

 

 

 

 

 

 

それから更に数ヵ月。

それぞれ進路について気になり始めた頃、

学校に渚の母親がやって来た。

 

皆の印象は、綺麗だがキツそう。

 

母広海がやって来た理由は、渚をE組から出させて貰えるよう、頼むこと。

 

クラスメート達もその話が気になって、コソッと職員室の外から聞き耳をたてた。

 

最初は普通の会話だった。

しかし、殺せんせーが広海を誉め、息子さんもお母様に似たんですね……その言葉を言った時変化が起きた。

 

「女であれば、私の理想に出来たのに……」

最初、殺せんせー含め全員何を言ってるのか分からなかった。

 

しかし広海の熱弁がヒートアップしていき、全員が理解した。

 

渚が何故髪を伸ばしているのか。

 

この時、茅野は少し後悔した。

茅野は目立ちたくないから、渚の髪を結んだ。

彼が目立つように。

しかし広海の言葉だと、それにも怒った事が分かる。

 

渚は広海にヘアゴムをとられ、長髪が露になる。

 

 

「私の経験から申しますに……」

何言ってるのこの人…中村はそう思った。

 

確かに渚は中性的で、女に見える。

しかし女じゃない。

広海は、渚を女として見ているのだ。

 

「……そっか」

中村は気付いた。

数ヵ月前の渚の反応。

それは、渚が反応したから起きたのだ。

 

『髪を弄ばれる』行動に……

 

 

 

 

 

その後、中村は学園祭の途中で謝った。

まあ直ぐにからかったが……

中村は決めた。

 

もう渚の髪にちょっかいは出さないと。

 

 

そして渚と広海が和解し、本当の意味で家族になったのはこの後直ぐの話。

 

家族が下に戻ったのは……それもそう遠くない未來の話だ。

 

渚達親子は、暗殺を通じてその『幸せ』を再び取り戻す事が出来たのだ。

 

只産まれて来ただけで、幸福に道溢れていたあの日の『幸せ』を…………

 

 

 

 

そして渚は教師を目指す。

 

自分の一周目を、力強く生きることを決めたから……

 

たった一度きりの、自分自身の『道』を…………

 

 

 

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