感想や誤字報告ありがとうございます!
そんないつも親切な皆様のための数字言語講座~
①全ての数字キーの上に指を置きます。
②同時押しします。
③入力された数列がランダムっぽく見えるように数字を足し引きします。
④数字言語の完成です。
※下ネタ話注意報
「オレのお姉ちゃん――雲仙冥加は箱庭学園十三組のスタンダードモデルみたいなモンでよー。独自に開発した数字言語でしか喋らねーから、まず言葉が通じねー! 当然こっちの言葉も通じねーから黒神泣かせもいいトコだ。話したってわかんねーんだからよ。宇城も口先が通じないからやりにくいだろーな」
呼子の膝の上で冥利がそう言う。善吉と半袖が昼食を食べに食堂へ来たところ、ちょうど居合わせた冥利からそんな話を聞いたのだ。
「学校に来てるっていうアンタのお姉ちゃんってのは……なんだその、戦える奴なんですか?」
「んんー? ああ、そうだな。戦えるぜ、スゲー戦える。怪力無双の鉄球使いでよ。オレはケンカするたび泣かされてたな!」
善吉からすれば、めだかや奏丞と張り合った冥利がここまで言う相手なんて、ちょっと想像がつかない。怪力無双というほどだから、たぶん筋肉はムキムキなんだろう。絶対ヤベー奴だ。女やめてるタイプの。
「(こうしちゃいられないぜ。急いでめだかちゃんと奏丞探さねーと!)」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「4136、163735641?」
「(なんかヤベー奴に捕まった……)」
残念ながら善吉、間に合わず。奏丞は目の前で数字を羅列するヤツ、雲仙冥加を見ながら、内心帰りたい気持ちでいっぱいだった。相手はゴスロリっぽい服を着た小柄な少女だが、鎖付きの厳つい鉄球を手足に六個も下げている。その合計重量、実に600キロ。本当は発泡スチロールでした、というオチを期待したいところだが、廊下の引きずられた跡から見るに本物らしい。
「12415325865871608512(仮にこの世で一番強い奴がいたとして)、68874647184186464522(そいつが食中毒で死んだら料理を作ったコックが最強なのか)? 68764564162137468(核兵器を作れるような世界一の頭脳を持つ学者さんが)、3643543787678676187(意地悪クイズに答えられなければ出題者は宇宙一か)?」
「(実際に見てやっと思い出したけど、こいつは雲仙の姉だったはず。名前は忘れたが、確か引きこもりのおっぱい好きだったか……? 見てくれは美人なのになぁ……もったいねぇ)」
「……0912(まあ)、3543646542168768214141245(かように考えれば考えるほど最強の正体はわからないけれど)、364356468734313(とにかく私が目指すのはそれだ)。21412544657876546324『1332513』(そのためにはモルモット集団『
「何言ってんのかわかんねーんだよ日本語喋れ日本語」
「……244(ふん)。767565324428465(何を言いたいのかさっぱりだな)」
「今時一ヵ国語しか話せないようじゃ、社会に出て苦労するぞー」
「75127575452483421164(なんだか引きこもりの私をバカにしている気がするぞ)……! 7297(もっとも)、5734785762701152591126(壁のシミになれば喋ることもできなくなるがな)!」
「おわっ!?」
えげつない風切り音とともに、鉄球が迫る。奏丞はそれを後退することで回避した。
「あっぶね……けどリーチはわかりやすいぜ。距離を開けば避けられない攻撃じゃないな」
「4647(ほほう)、91233782915284(生意気にも避けるか)。665725612612561(だったらもう少し遊んでやろう)」
「さて、どーすっか?」
冥加は100キロもある鉄球を分銅鎖のようにブンブンと振り回し始める。奏丞としては、女子供にバキッとやるのは遠慮したいところだ。しかしどうにかしなくては話が終わらない……なのでここは一つ、とっておきの作戦を取ることにしようと思う。
「2948178(くらってくたばれ)! 2248576(宇城奏丞)!!」
「おーっと、そんな攻撃くらわねーぜ!」
再び距離を取って攻撃をかわした奏丞は、そのまま傍の窓を開けて外に飛び出した!
「…………8(は)?」
一瞬思考停止したが、何をしているのか察した冥加は怒りのままに鉄球で窓を粉砕し、奏丞に怒鳴る。
「4136(お前)! 15759987430113(どういうつもりだァ)!!」
「お前の相手なんてしてやんねーよー! ほーらべろべろばー!」
「8(き)……8262(貴っ様ァ)、13291764(
あからさまな挑発だったが、それを見て我慢ならずに冥加も外へ飛び出した。
「76(うっ)、1534(暑い)……!」
途端に、むわっと押し寄せてくる熱気。空を見上げてみれば、太陽がギラギラと輝いている。
「3(た)、3561076325184(確かに今は七月で夏だが)、7667394521971564(今日はこんなに暑かったか)!?」
学校の敷地内を逃げ回る奏丞のスピードは大したことはない、冥加がちょっと頑張ればすぐに追いつけるだろう。だったらさっさと捕まえてしまおう。捕まえて、すり潰して、熱々のコンクリートの上で干してやる。自分はそれを冷房の効いた部屋でアイスドリンクを飲みながら眺めてやるのだ……!
そんな決意をしつつ、奏丞を追うのだが……なかなか追いつけない。奏丞が付かず離れずの距離をずっと保って逃げているのだ。
「8(はぁ)ー……! 8(はぁ)ー……!」
「ペースが遅れてるぞー! 運動不足かー!?」
「5(こ)、50746118235743637892(言葉が通じないからって好き勝手言ってるなお前)!?」
息が切れる。暑さを感じないかのように走る奏丞とは裏腹に、引きこもりだった冥加の体力はみるみるうちに削られていく。
「……7961(ああもう)! 4642417543495631(
暑さで熱すら帯びた鉄の錠を外そうとする冥加は、あることに気付く。
「…………5961(なんで)?!」
錠が外れない。
「47018356(そんなバカな)、170456864537(どれも開かない)! 074561374651(整備不良なわけが)……13754(いやまさか)!?」
冥加は熱射を放つ太陽を見る。
「7431603883561(弟から聞いたことがある)! 365347365416701932(猛暑日は熱を溜め込んだ鉄道のレールが歪んでしまうと)! 4475601『57234』(原因は『天候』だ)! 50417370589(レールは歪むのを考慮して作られるが)、0567166414(この錠は違う)! 7989(ああくそ)、971380489565431(内部が熱で変形してイカレてしまったんだ)!!」
「『ウェザー・リポート』! 気温を操作した! 鉄球を外された方が厄介そうなんでな。手を打たせてもらったぜ!」
冥加には言葉が通じないため、奏丞が何を言ったのかわからないし、まさか天候を操作しているなんてことも考えつかない。しかし、それでもわかっていることが一つある。
「引きこもりにこの状況は辛いだろ。『ハイウェイ・スター』使うよりは回りくどいが、このまま体力削ってやるぜ」
「……132915464(
「なにィ〜?!」
なんと冥加は、素手で次々と鉄の錠を引きちぎり始めたのだ。
「む、無茶苦茶だな!? 例えるなら! 知恵の輪ができなくてカンシャクを起こしたバカな怪力男という感じだ」
「342418(弟に勝る)、578124493(数少ない私の取り柄だ)! 54158291942584650377(お前の思惑など簡単に乗り越えてやるぞ)! 109(そして)、3684(最強に)……!」
「うおおお!?」
残った力を振り絞り、逃げる奏丞の背中に飛び掛かる。600キロの重りを外して身軽になった冥加はあっという間に距離を詰め、奏丞を馬乗りに押し倒した。
「いってー!?」
「8(はぁ)ー! 8(はぁ)ー! 3(つ)、3327146(捕まえたぞ)!」
「目が怖いよオネーサン!?」
「222(ふふふ)……7064(これで)、4138(お前を)! 413(お前)……8(を)……」
「おっ……とぉ」
倒れかかってきた冥加を、ウェザー・リポートが受け止める。
「……うーん、いろんな意味で大したやつだな」
奏丞は冥加を背負い直し、鉄球をスタンドで引きずりながら、その場を後にした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「……………………66(んんッ)」
サラサラと涼しい風が吹くのを感じ、冥加は目を覚ました。
「754(私は)、3568925(たしか熱中症で)……?」
「おりゃ(ピトッ)」
「にゃあっ!? 1839(冷たっ)!」
「おお、悲鳴は数字じゃねーのな」
声の方を向いてみれば、冷えたスポーツドリンクのボトルを冥加に差し出す奏丞がいた。周りを見てみると、ここが学校のどこかにある木陰なのだとわかる。
「ほら、水分補給しとけ」
「…………」
「ん」
冥加が無言でそれを受け取ると、奏丞は横に座って自分の分のドリンクを飲み始める。それを見た冥加も、貰ったドリンクをしばし見つめた後、飲んでみた。体が水分を欲していたからか、なんだかやけに美味しく感じた。
「…………5361(昔は)」
「…………」
「5361791(昔は私も)、74290180814519093451(ただのおっぱい星人だったんだ)」
「(何言ってんだコイツ)」
「87451608161476(日々いろんなおっぱいを研究し)、16805517(美乳化に勤しみ)、6891301135(たまに喧嘩を売ってくる弟を泣かせる日常)。3791594764(冥利はやんちゃだったが)、756048990811671534(AAカップのおっぱいがじゃれているのだと思えば苦ではなかったよ)」
「(わかんねーけどたぶん過去語りしてんだろーな。雲仙先輩の話とかかな)」
「88(はは)……48317(そう考えると)、31582248576(さしずめ宇城奏丞)。805114853(お前はHの巨乳といったところか)」
「(なんか儚げに笑ってる。こうしてみるとやっぱ美人ではあるんだよなぁ)」
「4534(でも)……」
冥加は読めるはずのない日本語のラベルをじっと見てみる。
「69318007821945551(世間の評価は言葉の通じない私より弟の方が良かった)。4417883519615684(弟は飛び級して私の先輩になってしまったよ)。86419841693(弟に劣る姉なのだと)、1084974135(随分ショックを受けたものだ)」
「…………」
「07834163517(私は最強になりたかった)。4617156745901635(誰からも認められる最強になって)、9561215679(弟よりも凄いとはっきりさせて)、1745659401073695(冥利の自慢の姉になりたくて)…………314317905631796(ついにノーマルに負けちゃった)……」
冥加は膝を抱えて丸くなってしまう。
「……673258963615941793650(お前も内心では冥利より大したことないって思ってるんだろう)? 5670319(結局私なんか)……」
「……えい(ピトッ)」
「きゃあ!?」
「何落ち込んでんだよ」
「4(お)、4136(お前)! 1351796(またやったなぁ)!?」
「お前が何を言ってんのかはさっぱりわからねーけど、そう悲観するこたねーだろ」
「6(や)、6134767565324428465(やっぱり何を言いたいのかさっぱりわからないけど)……」
「ありえねーほどの腕力もあるし、一から言語作っちまえるくらい頭も良いし」
「67043351946175(もしかして私を慰めてくれているのか)?」
奏丞は冥加にサムズアップする。
「結構根性も……あるみたいだしな」
「(74961852490(サムズアップしたぞ)!? 07367545186(まさか言葉が通じてるのか)!?)」
冥加は驚くが……まさかそんなはずはないと思い直す。会話だけで解読するなんて、冥利ぐらいにしかできないはずだ。
「07389226(まさかとは思うが)……67545186(言葉がわかるのか)……?」
「ま、世の中には人を巻き込んだり実験体扱いするのが得意な、お前以上にブッ飛んでる奴らがいるもんだよ」
やれやれ、と奏丞が首を振る。
「(470158236(首を横に振ってる)!? 145256136(これ完全に通じてるだろう)!? 6345(いやでも)、205784373(言葉は通じてないって)……8(ハッ)、073(まさか)!)」
「ん? どした?」
冥加と奏丞の目と目が合う。
「5981485523(大事なのは気持ちなんだな)! 61342248576(わかったよ宇城奏丞)!! 4134276(お前の意思が)! 652『373』14623『143』(『言葉』ではなく『心』で理解できた)!」
「おっ、もしかして俺が言いたいこと伝わってる? いやーやっぱ会話は言葉より気持ちが大事なんだな」
「9431566315(しかし猶更わからないぞ)。8481471156924303(私はお前にとったらメーワクな存在のハズだ)。965541465673242(どうしてそんな私を慰めてくれるんだ)……?」
「それでよ、めだかなんてこーんなちっちゃい時から色々としでかすヤツでよ……」
「…………!!? 2(そ)、264156716(その手の動きはッ)!?」
宙を撫でるように動く奏丞の手のひらを見て、冥加は全てを察した。
「26415671617081394676173(その手の動きは間違いなくBサイズのおっぱいを示すジェスチャー)! 6656719100814348(それはつまり私のおっぱいのことだ)! 2248576(宇城奏丞)、41376517081(お前の好みはBサイズのおっぱいなんだな)!?」
「話聞いて驚いてんのかな? 何て言ってるのか気になるなー」
「6(ま)、6159083(間違いない)! 570136973576(こいつ私に気があるんだ)!!」
冥加が両頬に手をやると、かつてないほど顔が熱くなってるのを感じた。木陰にいるのに、まるでまた炎天下に出て来たみたいだ。
「943(しかし)! 74390154989163(世間の男は巨乳好きばかりのはずじゃないのか)! 5792243(弟もそうだし)! 27378410081(なんで私のBおっぱいが)……」
「でなー、巻き込まれた善吉なんか大変な目にあって……あれいつだったかなァ」
人差し指を立ててフラフラと動かし、何かを思い出そうとしているようにも見える奏丞だが……生粋のおっぱい星人である冥加には何をしているのかわかる。
「222(そそそ)、23511658323947(その指先の動きは私の乳輪のサイズ)! 8641(そんな)、641358100815417843923(私のおっぱいは何から何までお前好みだってことなのか)!!?」
「そうそう、あいつの十二歳の誕生日の時だった!」
正解! とでも言うように、奏丞は冥加に指を向ける。
「8000000(はわわわわわわ)……」
「あれ、なんか顔赤いぞ。まさか、また熱中症ぶり返したんじゃねーだろうな……ウェザー・リポートのおかげで涼しいはずだけど」
「158722(困るぞ)! 623871336042497184965280994125(だって私は引きこもりで弟以下の女なんだぞ)!」
「そうかそうか、お前も大変だったんだな。よく頑張ったな。何言ってんのかわかんねーけど」
「!? 35(ちょ)、41319565986(お前なんか近いぞぉ)! 15343(離れろ)!」
「あ、悪い。なれなれしかったな。ちょっと待ってろ。なんか暑そうだし、濡れタオルでも持って来てやるよ」
「1(あっ)、24(いや)、143796057165651(別にどっか行けと言うほどでもなくて)……!」
冥加はどこかへ行こうとする奏丞を見て、思わず制服の裾を引っ張ってしまう。……100キロの鉄球を振り回せる腕力で。
「おわっ!?」
「!!!??!?!?」
――奏丞が(引っ張られたせいで)冥加に覆い被さってきた。
「777957423960741625541431691192765710734230956908134707228971699109162435940517565(そそそんな突然過ぎるこんな所でいくら心が通じたからってお前もっと段階踏んでから私のおっぱい味わえ冥利ごめんお姉ちゃんが先に)ーッ!!」
「すまん大丈夫か! わざとじゃないん……だ?」
「……………9(キュウ)」
「……し、死んでる」
雲仙冥加。恥ずか死により
「と冗談は置いといて……この状況」
突然顔を真っ赤にして挙動不審になった女子が、男に覆い被さられて早口で何かをまくし立てて気絶。
「なるほど……ラブコメ主人公かよガッデム」
知らない間に何かとんでもない勘違いをしている気がした奏丞は――冥加を保健室に送ってトンズラすることにしたのであった。
「……お、宇城はっけ~ん。いくぜ宗像」
「はぁ、仕方ない。早くビオトープで水遣りをしたいから……ここは『瞬殺』だ」
冥加「……594(冥利)、6704510751(私に言葉を教えてくれないか)?」
冥利「47(はあ)!? 145608937(どーしたよイキナリ)!」
冥加「2(ふ)……40713467167056(お姉ちゃんの方が早かったみたいだな)」
冥利「……9715474165(なんかわかんねーけどムカツク)」
冥加「169059074061(姉に対してその口はなんだ)!(ボカッ)」
冥利「いってー!(泣)」