目高箱と幽波紋!!   作:人参天国

19 / 36


 こんなエタり野郎に温かい言葉をありがとうございます。
 この作品の半分は皆さんの優しさで、もう半分は『これがやりたかっただけだろ!』でできております。



第十九話:アヌビス神

 

 

「……アヌビス神ン~~? 大層な名前だが神を名乗るにゃ大分こすっからいヤツだな。まるで宗像に取り憑いてるみたいだが……つまりはいいとこ悪霊じゃねーか」

「ふん。『暗殺』をかろうじて躱したようだが、随分と調子に乗っているな」

 

 高千穂は距離を保ったままゆっくりと歩きながら、アヌビス神と名乗るソイツを観察する。

 『十三組の十三人(サーティン・パーティ)』きっての道化、『狭き門(ラビットラビリンス)行橋(ゆくはし)未造(みぞう)の特技の様に変身である可能性もあったが、見る限りではやはり身体は宗像本人の物といった感じだ。

 思考する高千穂を尻目にアヌビス神は刀を振るい、足首に巻き付いてた服の袖をスパリと断ち切った。

 

「あっ、テメー俺の一張羅を!」

「怒ったか! そらっ、返してやるぞッ!」

「むっ!?」

 

 アヌビス神が刀の切っ先に服をひっかけ、高千穂の視界を覆うように投げつけた!

 

「貴様の自動操縦(オートパイロット)は見えねば反応できまいッ! 今度の剣速はさっきの『接触反射』でも避けられんぞッ!」

 

 アヌビス神が服の陰から突っ込み、それごと高千穂を切り裂くべく刀を振り上げる。

 確かにアヌビス神が見えなければ反射のしようがない。このままでは高千穂は間違いなく切り裂かれておしまいだ。

 

 ――故に高千穂は焦ることなく、服の陰にいるアヌビス神のこめかみを蹴りぬいて吹っ飛ばした。

 

「ぐわあッ! にゃ、にゃにィ~~!?」

「確かアヌビスはジャッカル顔のエジプト神だったよなぁ~。イヌのくせに猿知恵とはギャグセンスあるじゃねぇか!

 お前の攻撃が俺から見えねーってことは、お前からも俺の攻撃が見えなかったようだな!」

「馬鹿な、何故反応できたのだ!」

「けっ! 直接は見えなくてもよ~、校舎の窓に『向こう側』がよーく映ってたぜスカタン!」

「窓ガラスに映った鏡像を見て反射的に攻撃したのか?! 味な真似を……!」

 

 素早く服を拾って着直した高千穂は、しかし言葉と裏腹に冷や汗を垂らしている。

 

「(()()が浅い! なんだコイツ、俺のハイキックがこめかみに触れた瞬間に体をひねってやがる! 反応速度が自動操縦(オートパイロット)並だ!

 素早さを覚えたとか抜かしてたな、ただ取り憑くだけの異常(アブノーマル)じゃねえのか?!)」

 

 高千穂は周囲に気を配るが、やはり他の気配はない。奏丞がいつ乱入して来てもいいように警戒を怠っていないのだが、今のやり取りのスキを突かないということは、まさか近くにいないのか?

 いや、()()()()()()()()

 

「(このスキルは強力すぎる! 超短時間で別人格を植え付けて宗像の体を乗っ取った挙句に強化するだと? 同じことができる都城の異常(アブノーマル)ですら新しい人格の植え付けには数十分はかかるはず!

 考えられるのは近くで宇城が異常(アブノーマル)を行使し続けているって可能性だ! 近距離型の能力として制約があるってんなら、この馬鹿げた力にもまだ納得ができるぜ)」

「いかんな。せっかく奏丞に任されたというのに、遊んで負けたとなると面目が立たん」

「……なに、任されただと?」

「いかにも! この場はこのアヌビス神が預かっているゥ! 奏丞は貴様の相手などしている暇はなあ~~~~い!」

「んなバカな?!」

 

 それはつまり、奏丞は既にこの場にいないということだった。

 

「近くにいるんだろ?! 他にどこへ行くってんだよ!」

「我が本体はいたって普通の生徒。貴様らと違って登校どころか授業も免除されていない」

「! ま、まさか俺達を直接相手していないのは……」

「わからんか? ――『授業に遅れるから』だ」

「……ザケンな、そんなはずがねぇ!」

 

 高千穂はアヌビス神をその場に残し、五階建ての校舎の外壁を一気に駆け登る。原作では善吉もできた外壁登りは、『十三組の十三人(サーティン・パーティ)』たる高千穂にも容易いことだ。

 屋上に到着した高千穂は一年生の教室棟側の柵に駆け寄り、奏丞の姿を探す。

 

「…………い、いた! あれは宇城だ!」

 

 教室棟の廊下を歩く奏丞の背中が見えた。先ほどまで背負っていた冥加の姿はどこにもないが、そんなことはどうでもいい。問題なのは。

 

「だがおかしい、と……遠すぎる! 五十メートル以上離れてるぞッ! どんどん離れていくッ! 人格の乗っ取りは『遠隔操作』!? バカな! あのスキルで遠隔操作なんてありえないッ!」

「動揺が見えるぞ高千穂仕種ッ!」

「!!」

 

 振り向けば、高千穂を追って来たアヌビス神が刀を振り下ろしていた。

 高千穂は身を反らしてかろうじて躱したが。

 

「ウシャア――――!!」

「うおおおお――ッ!!」

 

 アヌビス神が凄まじいパワーで刀を振り回す。

 容易く躱せていたはずのその攻撃が、今は手足で弾いてようやく防御できている状態だ。

 

「こ……このスピードま……まずいッ! だんだん速くなる! 俺の動きを学習してるのか?! 時間をかけるのはヤバい!」

「どうした、眠っちまったか高千穂ォ!」

「(そして執拗に刀で攻撃してくるのはなんだ?! 宗像が暗器を身にまとっていることは知っているはず! なのに他の武器を使わない理由は!?

 体の乗っ取り、刀へのこだわり……!)」

「くたばれィ! 高千穂ォ!」

「おおおおおお!!」

 

 ポケットに手を突っ込んだ高千穂は中のものを掴み、アヌビス神に向かって投げつけた! その小さな球状の粒は……

 

「ムゥッ、これはBB弾?! 罠に使った物を抜け目なくくすねていたのか!」

「俺の自動操縦(オートパイロット)を覚えたなら! 弱点もそのまま覚えてるよなァ!」

 

 高千穂の自動操縦(オートパイロット)であれば回避しきれないBB弾をも反射的に避けようとしてしまい、機能不全を起こす。

 そのスキを狙おうと、アヌビス神の持つ刀目掛けて高千穂はキックを放つが……しかし希望に反してアヌビス神は容易く右肩で受け止めてみせた。

 右肩の暗器の留め具がその衝撃で壊れたのか、アヌビス神の右腕の袖口からバラバラと暗器がこぼれ落ちてくる。

 

「なっ、反応するだと?!」

「話を聞いていないようだなァ? 俺は素早さを覚えたのだ! 貴様の欠陥スキルなど、もとより覚える価値はないわ!」

「け、欠陥だとォ?!」

「だが、ここらでとどめの、とっておきのダメ押しというやつを出してやる!」

 

 アヌビス神は暗器という()()の外れた右肩をこれ見よがしに回して見せた。

 

「右肩が羽毛のように軽くなったぞ。そういえばこんな手もあったな……?」

「!!」

「ゾッとしたようだな! 行くぞ、暗器・解!」

「させるかァァァ!」

 

 身体に纏った無数の暗器を外した時の宗像のスピードは高千穂もよく知っていた。

 暗器を外させまいと必死に攻撃を仕掛ける高千穂だが、アヌビス神はいとも容易くそれを捌く。既に高千穂の反応速度を超えつつあった。

 追い打ちをかける様にアヌビス神が左腕を振るうと、それだけで重りとなっていた暗器が袖口から飛び出して来る。避け切れなかった刃物が高千穂の皮膚を切り裂いた。

 

「『惨殺』というやつだ! ウッシャアアアアアア――ッ」

「(畜生、防御しきれねぇ! このままだと()られる! やはりおかしい、刀を手放すより、肩への被弾を選ぶなんて!)」

「このアヌビス神! ただの人間ごときには絶対に、絶対に絶対に絶っ~~~~~~~~~~対に! 負けなあああああああいィィィ」

 

 一刀ごとに速く、重くなる攻撃に、高千穂の体はその度に傷を作っていく。致命傷を受けないので既に精一杯だが……しかし。それでもなお、高千穂は諦めていない。

 

「(欠陥スキルだとォ!? クソ、確かに『必ず避けちまう』のは欠陥だよ! だが、それでも! だからこそ俺の自動操縦(オートパイロット)はッ!)」

「胴がガラあきになったぜ――ッ!!」

「ガッ、ゴブッ?!」

 

 アヌビス神の攻撃が高千穂の腹部を突き抜けた。串刺しだ。

 高千穂の腹と口から生暖かい血が漏れ出る。

 

「やったッ! 勝ったッ! 仕留めたッ! このアヌビス神が…………むっ、抜けないっ?」

「け……欠陥も、弱点も……逆境も! 全部飛び越えてやるぜッ……!」

 

 高千穂は敢えて攻撃を避けず、しかし重要な臓器の位置だけは反射で避けて見せたのだ!

 これまでは選んで避けることができず、ともすればスキルに振り回されていたとすら言えるが、この土壇場で高千穂はスキルを『生まれて初めて』使いこなして見せたのだ!

 

「どりゃああああ!」

「しまっ――」

 

 高千穂の膝蹴りを手に受け、アヌビス神はついに刀を手放した。

 

「おの、れ、高千穂…………」

「…………いい加減、気安く呼ぶんじゃねーよ」

 

 あれだけ暴れていたのが嘘だったかのように、アヌビス神が倒れ込んで静かになった。それを見届けた高千穂は深々と腹に刺さった刀を抜き取り、遠くに投げ捨てる。

 

「はあ~……つまり呪いの妖刀的なヤツか? 刀を媒介に使うスキルってんならまだ、かろうじてこの無法さも納得できるが……いや、人様の腹に風穴開けといて納得もクソもねーな。急所は避けたし、名瀬に縫ってもらわねーと……さて」

 

 倒れ込んだ宗像の体を起こして揺する。いささか乱暴な揺すり方になったが、今は余裕がない。

 

「起きろ宗像。そらそらそら」

「う…………ああ、悪い、手間をかけた」

「なんだ、覚えてんのか?」

「ああ、悪い夢を見てい――」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「があっ……?!!」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それだけでなく、また今の衝撃で留め具が外れたのかいくつかの暗器が宗像の服から落ちて来る。

 

「早……な、ぜ…………」

「あからさま過ぎんだよ、呪いの妖刀なんてな」

 

 不意を突いた、今の高千穂にできる()()のクリーンヒットだ。

 アヌビス神が崩れ落ちる。今の一撃が確実に意識を飛ばした自信が高千穂にはあった。

 

「刀はブラフだな。仮に『物を経由して操る』能力だとして、俺なら本命は絶対に表に出さねぇ。身に着けたナイフなり弾なりを媒介にするだろうな。

 何にせよ、体の意識がなくなっちまえば操るも何もないだろ。そして……」

 

 いよいよ限界を迎えた高千穂も座り込んだ。

 

「『お前がそうすると予想して反射的に動いた』。触れてからじゃねぇ、見てからでもねぇ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。名付けて『自動操縦(オートパイロット)予想空路(フライング)』! 今の俺の最速だぜ。

 ……考える前に動けるのがウリの自動操縦(オートパイロット)が、まさか考えてから動いた方が早いなんてな。これより速くなられるともうどうにもならねえが……おかげさまで、俺もちっとは成長できたようだぜ」

 

 あとは宗像を拘束して洗脳を解かないといけないが、流石に連れて帰る余裕はない。

 名瀬に迎えを寄越すよう連絡すべく、高千穂は携帯電話を取り出した。

 

「あー、暗器の回収もしなきゃなのか。メンドくせぇ、古賀に来てもらえりゃ後は全部……」

 

 今の屋上には色々とぶちまけられている。よくもまあこうも持ち歩いていたものだと、知っていても感心してしまう。

 刀、ナイフ、槍、槌、鞭、銃、火炎放射器、ロケット砲、ピンの抜けた閃光手榴弾…………閃光手榴弾?

 

「!!!?」

 

 高千穂は反射的に目を閉じ、耳を塞いだ。直後の閃光と爆音。しかし……

 

「がぁ……!?」

 

 至近距離で爆発した閃光手榴弾はまぶたを貫くし、手で耳を塞ごうと鼓膜を震わせる。その程度で防げる()()ではない。

 目と耳を失い朦朧とする高千穂の前に気配があったが、当然高千穂はその姿が見えないし、声も聞こえない。

 

「……座り込んでしまえば体をひねって背を向けることもできなかったろう」

 

 それは紛れもなく、宗像の身体を乗っ取ったアヌビス神だった。

 

「なん……で……!」

「さっきとは質問者が逆になったようだな。聞こえていないだろうが答えてやる!

 俺自身は網膜も鼓膜もない、精神エネルギーの姿(ビジョン)に過ぎん! だから動けるッ! 取り憑いた身体の脳が揺れようと、視界も音も奪われようと、俺自身に影響がなければ変わらず肉体を操作できるゥ~!」

 

 負傷を抱え、周囲の状況すら把握できない高千穂も、必死に身体を動かして目と耳の回復の時間を稼ごうするが、それで対応できるほどアヌビス神は甘くない。

 接触反射を狙おうにも、自動操縦(オートパイロット)は元々身体が万全だからこそ十全に機能する身体機能。満身創痍の今の高千穂では反射できる自信はこれっぽっちもなかった。

 

「身体の持ち主にちなんで教えてやろう! もっとも強い殺害方法とは! 『暗殺』でも『惨殺』でもない! こうして抵抗できない獲物をジックリと『屠殺』することだァ~~!」

「…………へっ、何言ってるか聞こえねぇよ……」

 

 その言葉を最後に高千穂の意識は落ちて行き――

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――はっ」

 

 目が覚めた時、高千穂は仰向けに寝転がって青い空を見上げていた。

 身体を起こしてみると、すぐ傍に宗像が同じく寝転がっていることに気づく。

 周囲を見ると柵に囲まれているが、ここはどこかの校舎の屋上だろうか。

 

「……あっれぇ? 俺、なんでこんなとこで寝てんだっけ? 確か、宇城を追ってたはずなんだが……」

「…………ん、あれ、高千穂?」

「おう、おはようさん」

「……ここ、どこだい?」

「ちょい待ち……あー、周りを見るに、ここは部室棟だなあ」

「僕たち、確か宇城を追っていたはずだ。もしかして撃退されたか?」

「でも戦ったにしては身体に傷一つないぜ。なんか無くした物とかある?」

「………………暗器は全て揃ってるな。体調良いし、もう一度追うかい」

「……いや、今はやめておこうぜ。何か気味悪いぜ。何があったか、名瀬ならわかるかもしれねぇ」

「……賛成。そしたらひとまず時計塔に戻ろうか」

 

 屋上の出入り口に二人で歩いて行く。

 ふと、高千穂は何かが転がる、ごく小さな音を聞いた。

 視線を向けると、一粒の小さな玉が床を転がっている。

 

「(……BB弾? こんなとこでサバゲ部でも遊んでたのか?)」

 

 落ちていた物を偶然蹴ったのか。なんてことはないただのBB弾だった。

 そして、特に気になるような物でもない。対実弾訓練もしている高千穂からしてみれば、それは考えれられる限り最もくだらない道具の一つとすら言えるだろう。

 

「(弾速遅いし威力なんざカケラもないし……まっ、何の役にも立たねえ普通(ノーマル)なオモチャだな。こんなの撃ち合って一喜一憂してるなんざ、おめでたいもんだぜ)」

 

 そうして十秒後にはBB弾のことも忘れ、何事もなく高千穂たちは帰路についたのだった。

 

 

 

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 

「……んで、こーして俺は鉄球女を華麗に負かして保健室送りにしてやったってわけよ」

「ええ……まさかのマラソン勝負かよ。しかも相手めっちゃ重りのハンデ抱えてんじゃん。華麗どころか地味すぎる……ってか汚すぎる」

「あひゃひゃひゃ! それ割と暴力だかんね! 殴らなきゃ暴力じゃないってのはとんでもない間違いだよ似非紳士気取りー!」

「二人してボロクソ言うじゃんやめろよ……」

 

 ここは一年一組の教室。

 善吉は昼休み中ずっと冥加に追われる奏丞を探していたものの、結局見つからなかったところにシレッと奏丞が教室に現れたのだ。

 ホッとしつつも拍子抜けした善吉は、授業後に半袖と一緒に冥加とのバトルがどうなったかを聞き出していた。

 

「いや、一玉百キロの鉄球を手足一本で振り回してんだぞ。格闘戦なんかしてみろ、こっちの手足が引き千切られるわ。〇ボコップのTS転生体って言われても納得できるぞ」

「ぶっ、ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」

「おおよそ女子に使う形容じゃねーって! 不知火も爆笑しすぎ!

 まあケガがないなら良かったよ。こっちもこっちでデビルヤベー奴に絡まれてたんだぜ」

「ほーん、どこのどなたさん?」

「三年の都城と行橋って先輩たち。特に都城がヤバい。めだかちゃん並に強そうでよ、蹴りかかった時に行橋に止められてなかったら俺死んでたかも……」

「やー、無事でよかったねぇ。あたしを逃がすために一人残った人吉の無事がわかるまで食断ち祈願した甲斐があったよ」

「お前は俺置いて無言で即逃げしたろ! しかも食断ち期間30分もねえし!」

「……不知火が30分食断ちってわりと異常事態では?」

「……それもそうだな。サンキュー不知火、おかげで助かったぜ」

「……なーんか釈然としないなー?☆」

「しかし実際のところ問題は何も解決しておらんし危機は去っていない。故に不知火同級生も食断ちするのであれば期限延長を頼むぞ」

「「「…………」」」

 

 半袖のポーズを真似ながらどこからか現れためだか。まあ、今更それに驚く三人でもない。

 奏丞と善吉につかつかと近づいて来ためだかは二人の肩に手を置き、

 

「さあ二人とも! 授業は終わったことだし、気は進まんが早速兄貴のところへ向かうぞ!」

「……ん? なんのことだ?」

「あ、悪い。奏丞にはまだ伝えてなかった。

 さっき話した都城は『フラスコ計画』なんて胡乱な計画に参加してるみたいでよ、何か知ってそうな真黒さんのとこに行って情報収集と、鍛え直してもらおうとしてんだ」

「うむ。雲仙二年生や都城三年生が関わっていたとなれば想定される面子も生半可ではあるまい。最近は事務作業続きで身体も鈍っていたところなので、我々もバージョンアップせねばならん!」

「会うだけならいいけど修行パートはめんどくせーなァ……」

「貴様はあの変態兄貴相手でもあまり物怖じせんな?」

「俺は結構好きだよあの人。芯があって良い人だし」

 

 まあその芯こそが変態的ではあるが。それでも奏丞はなんだかんだ面倒を見てもらっているため、言うほど嫌いにはなれないのだ。

 

「しかしこればっかりは奏丞の手も借りたいぜ! 重ねて言うけど今度の相手はマジでヤベェ! 得体が知れないって意味ではお前や不知火にも並ぶ!」

「もしかして俺達ディスられてる?」

「こんなに得体がオープンなあたしらとは似ても似つかない同姓同名の別人のことだろうね!」

「いろんな意味で今回は冗談じゃないからな! 都城なんか、アイツが『跪け』って言うだけで俺もめだかちゃんも跪いちまうんだぜ! 言葉だけで人を操れるなんて、冗談で済めばどんだけよかったか……」

「言葉に力があるのは結構なことだが、その力でもって人を思うがままに操ろうなど、言語道断。しかもより大きな屈辱を与える行動を強要するのだから、やれやれまったく気に入らない男だよ」

「…………そーだね」

「……待て奏丞、貴様今なぜ少し目をそらした? 我々の言葉のどこにやましさを感じた?!」

「お、お前ー! 今度はどこの誰に外道カマしやがった!? キリキリ吐け! さっきの昼休みもホントにマラソン勝負だけだったか?! 授業中一回トイレに行ってたことは関係あんのか?!」

「ち、違う! 俺は悪くねぇ! 何も悪くねえけど真黒さんとこに行ってくるぜお先に失礼!」

「「待たんかコラ!」」

「あひゃひゃひゃおっかしー! じゃあみんな頑張ってねー♪」

 

 原作で言うところの『十三組の十三人(サーティン・パーティ)編』がついに始まる。

 友人たちが無茶をし過ぎないよう奏丞も力を貸すつもりではある……が。

 

 

 

 

 

 

「――困るんだよなぁお前に本格参戦されちゃあ。この件は生徒会執行部に対応させる。お前は引っ込んでてもらうぜ」

「私じゃたぶんまだ止められないけどどーするの?」

「なあに決まってるだろ。バトル漫画じゃねえんだから懇切丁寧にお話しすンだよ。温和に親和に平和裏に(ニヤリ)」

「(笑顔こわっ……)」

 

 






『そうだ、もっと奏丞から秘密を抜き出してくれよ高千穂センパァイ!
 おいおい動きに追いつけなくなってんじゃんこりゃあ絶望だぜヒュー!』
「名瀬ちゃんうっさい」
『おっと悪い、バトルが俺好みでつい興奮しちまった♪』
「(あんたらお似合いだよ……)」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。