目高箱と幽波紋!!   作:人参天国

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 贅沢は言わないからあと五千兆回ちょうだい?♡


 オヤ……? スタンドチートがこねぇな。設定放棄かな?



第二十一話:自動操縦

 

 

 フラスコ計画の研究所は時計塔の地下にある。

 治外法権を謳うそこへ入るには、ゾルディック家のごとく『試しの門』……ではなく『拒絶の扉』と呼ばれる試練を突破しなければならない。0から9までの数字を用いた六桁の暗証番号を一発で当てる必要があるのだ。正否に関わらず暗証番号は入力する度に変更されるので、異常(アブノーマル)以外の人間では何度試したところで扉は開かないだろう。

 異常(アブノーマル)たるめだかはともかく、普通(ノーマル)である善吉と、不知火からのタレコミで事情を知って二人を追いかけて来た特別(スペシャル)の高貴、もがながこの試練を突破することは不可能に思えたが――

 

「――ま! 電子錠なんか、門がぶっ壊れてしまえば暗証番号も鍵も意味がないわけだ!」

「……へへっ、『元・破壊臣』とは名ばかりのスマートじゃない突破方法でしたね」

「(門の先が治外法権だったら門の外はまだ校内なんじゃ……? 器物損壊で弁償しろって言われても絶対無関係を徹しよう」

 

 その門も、高貴が滅茶苦茶に破壊してこじ開けてしまったわけで。

 めだか、善吉、高貴、もがなの生徒会執行部メンバーと、興味本位で付いて来た門番の双子・対馬兄弟は現在地下一階の研究所を歩いているところだった。

 女子二名が張り切って先陣を切っている中、集団の後ろにいた善吉に高貴が話しかける。

 

「しかし人吉クン。宇城クンがこの場にいないのはどういう了見だい? 彼は絶対いるものと予想していたが」

「あー……どうにもややこしい話がありそうですが、フラスコ計画関係者の誰かがアイツが来れないように手を回してるみたいなんです。もしかしたらこのまま合流できない可能性もありますね」

「なんだと? 敵は俺たち全員をまとめて返り討ちにするものと思ってたけど……火種を残すようなやり方はどこか妙だな。単に勝率を上げるためというわけではないのか?」

「おっ、さすが鋭いですね。めだかちゃんも害意ある暗躍とはあまり思えないみたいです。下手人もほぼほぼ見当がついてます」

「そういうことならまあいいだろう。来たがりはする性格だろうし、全てが解決した後で悔しがる彼を揶揄ってやるとしよう」

「趣味が悪いですよ……と言いたいところですが、アイツの前でドヤ顔してやるのは面白そうですね。そんときゃ俺も呼んでくださいよ」

「ふっ、いいだろう。彼もイイ性格の友人を持ったものだ」

 

 高貴が笑い、しかしつぎの瞬間には改めて気を引き締めた表情で言う。

 

「ならばついでに言っておくが、次に『十三組の十三人(サーティン・パーティ)』の連中と遭遇したら、俺はまず出合いがしらに一発ぶん殴るつもりでいる」

「……随分と乱暴な発想ですね。マジで破壊臣時代に逆戻りですか?」

「そう思われても仕方がないかな。しかし考えてもみろ人吉クン。風紀委員長・雲仙冥利を相手に後手を踏んだばかりに俺達はめだかさんに戦いを任せてしまった(茶々を入れていた彼はどうでもいいとして)。あんな情けない思いをするのは二度とごめんだ!

 俺は生徒会唯一の二年生として一年生(きみたち)を守る義務がある。鬼が出ようと蛇が出ようと、鬼と思われようと蛇と思われようと俺は一切躊躇しない!」

「……カッ、余計なお世話ですよ阿久根先輩。つーかアンタ一人にそんな汚れ(カッコイイ)役やらせません。クールに女子を守るのは俺の仕事です」

「そうかいそうかい。じゃあどっちが先に一発入れるか競争だね♪ まあそれはそれでいいとして……」

 

 高貴はなぜかくっついて来た対馬兄弟に目を向ける。

 

「君たちはなんで付いて来てるんだい? 門番の仕事があるだろ?」

「「きみ達が扉ブッ壊したから門番の仕事がなくなったんだろーが!」」

「ふむ……貴様らこの研究所へ入ったことは?」

「え? ないよそんなこと」

「僕達ぐらいの異常者(アブノーマル)じゃ扉に拒絶されちゃうからね」

「暇つぶし程度で付いて来たなら早く帰りたまえ。土壇場で足を引っ張るつもりならここで叩いてもいいんだぞ」

「「むっ……」」

「そう脅すものではない阿久根書記。既に帰りたくても帰れないのではないか?」

「え? どういうことめだかちゃん?」

 

 めだかは手に持った扇子でビッ! と一点を指し示す。その先にあったのは、薄っすらと壁にあった亀裂だ。

 

「どうも私達はさっきから同じルートをぐるぐる回っておるようだぞ」

「あ! 確かにそこの壁の亀裂見覚えがある!!」

「クスクス! その通りだよ! きみ達は今回っていて」

「きみ達は今迷っているのさ!」

「でもエラソーに言って一緒に迷ってるよね」

「「ほっとけ!」」

「でもなんでこんな入り組んだ作りになってるんだろ。やっぱり侵入者対策とか?」

「というよりこれはあれだな。ほれ、理科の実験でよく使われるマウス用の迷路という感じだな」

「あーあれね。カッ! つまり施設自体が壮大な実験器具ってワケだ。どうしようが試されることには違いねえってか。

 ……そうだめだかちゃん、()()()が使えるんじゃないか?」

「昔兄貴の指導で奏丞と三人で遠大な迷路を突破した時のことだな。まああの時は不意にやったせいで真横にいた奏丞が気絶し、なーぜーかー迷路が消えてしまった*1ので未遂になったが」

「……あの手? いったい何のことなの?」

「この手のことだ」

「みんな、すぐに壁際に避けて耳と目を塞いで口を開けるんだ!」

「なっ、なんだそれは。これから大爆発でも起こるのかい?」

「似たようなもんですよ!」

 

 善吉の指示で全員がその時に備える。

 めだかがスッと両手を広げ……思いっきりその手のひらを打ち合わせた!

 

バッシィィイン!!!

 

「…………よし、今のでこのフロアの構造は概ね把握できた」

「……っく~、トラウマが刺激されるぜ……! コーモリや潜水艦みてーな人体ソナー!」

「音の反射で迷路の構造を調べたのか!? 流石めだかさんと言いたいところだが……信じ難いな! 人体がこんな音を出せるものなのか!?」

「あわわわ……心臓止まるかと思った……!!」

「落ち着け貴様達。敵を前に冷静さを欠いてはいかん」

「「「「「!!?」」」」」

「……トレビアン! ここ最初のフロアだから色んな奴が通っていくんだけどよ。そんな方法で迷路をクリアした奴はいなかったぜ! しかもちゃっかり俺のことまで気付いちまってよ」

 

 その白衣の男を見た瞬間、善吉と高貴が無言で殴りかかった。

 

「折角視察に来たんだ、ゆっくり見学していけや」

「「ハッ!?」」

「……え、いつの間に?!」

 

 しかしそんな二人の攻撃をすり抜け、傍にいたもがなに気付かれることもなく、いつの間にか男がめだかの前で話しかけている。

 

「理事長からもオマエラを歓迎するよう言われてんだよ」

「歓迎? 実験の間違いであろう。貴様の顔にも見覚えはあるぞ。理事長室で私にちょっかいを出そうとしていた男だな」

「ちょっかい? ちょっかいっつーのは……おっと。ほほーやるねぇ」

 

 挨拶代わりとばかりにめだかの髪留めと眼鏡を掠め取ろうとした男は、しかしめだかに牽制されて奪いそこなう。今のめだかは理事長室で見た時よりも更に『できる』ようになっているワケだ。

 

「なるほど。相手にとって不足はねーな。

 ところで、宇城はどうしたんだ? アイツの姿が見えないが」

「なんだ、この場にいない男が気になるか?」

「おうよ! 覚えがないんだが状況的にどうやら昨日返り討ちにされちまったみたいでよ。あんまり悔しいんでリベンジしたいところだったんだ。しかもお恥ずかしいことに二人がかりで返り討ちだぜ! 相方も俺ほど悔しがってなさそうな顔してっけど、実際に顔を合わせたらどうなるかはお察しだな」

「ほほう、二人がかりというのは初耳だな。あやつの秘密主義にも困ったものだ」

「(あんの馬鹿、さてはよっぽどな外道戦法とったから大手を振って俺たちに打ち明けられなかったな?)」

 

 善吉は昨日奏丞が不審な態度をとって口を割らなかった理由に気づく。

 男はゴンと拳を撃ち合わせて言った。

 

「そんな醜態を晒しておいてこんな紹介をするのもなんだが、俺は『十三組の十三人(サーティン・パーティ)』最強の男、棘毛布(ハードラッピング)の高千穂仕種。戦闘化学担当だ! クラスは三年十三組!

 宇城にもリベンジしたかったがお前はお前で研究対象! ここを通りたくば俺に実験(たお)されてからにしろ!」

「……よかろう。高千穂三年生。貴様の実験に協力してやる。私も丁度、ヴァージョンアップした私を試してみたかったところだ!」

 

 白衣を脱ぎ捨てた高千穂を見て、めだかも白衣姿から一瞬でいつもの制服へと着替えた。

 そんな早着替えができるなら普段からそうしろ!! と善吉は思ったがめだかと高千穂が互いに真剣な表情なので、口から出そうな言葉をなんとか飲み込む。

 

「トレビアン! さっすが完全生徒会長! 気風のいい女じゃねえかよこの野郎!

 なら、まずは教えといてやるぜ。このネックストラップの先についているUSBメモリ。このちっぽけな記録媒体にフラスコ計画における俺のこれまでの研究成果がすべて詰まっている」

「!!」

「わかりやすいだろ? 聞けばお前フラスコ計画を潰しに来たそうじゃねーか。ならば俺からこいつを力ずくで奪えばお前の目的は十三分の一! 達成されるってわけだ」

「わざわざ持ってきてくれたのか? 状況が簡単になりこちらとしては鴨が葱を背負って来てくれたようなものだが、意図が読めんのは少し怖いな」

「なぁーに、お前は平和主義者だって触れ込みだからよ。後で言い訳できねえよう戦う理由を作ってやっただけだよ。

 それにそして、力ずくが簡単だと思ったら大間違いだ!」

「……同感だな」

 

 高千穂がボクシングスタイルで構えるのを見て、めだかもそれに応えて同じ構えを取った。善吉から見れば珍しい光景だ。

 

「(めだかちゃんが構えた! 珍しいな、それだけマジってことかよ。それにあの野郎、ボクシングで戦うのか? 構えはそうだが()()()()()()()()()()()、気を付けろよめだかちゃん!)」

「ほーう、一糸の乱れもないいい立ち姿だ。素晴らしいな」

「…………」

「(いや、素晴らしいっつーより凄まじいんだよな。そのバランスは十五歳やそこらで辿り着ける領域じゃねーんだよ)」

「最上級生の貴様に敬意を表して先手は譲ろう。来い」

「そうかい? じゃあお言葉に甘えて――」

 

 その瞬間を善吉達は認識することができなかった。高千穂が一瞬で距離を詰め、めだかの顔面に膝蹴りを放ったのだ。ボクシングと見せかけてキックボクシングという不意打ちだったが、それ以上に高千穂のスキル『自動操縦(オートパイロット)』は常人の意識の隙を突く。

 だが、そんな攻撃にもめだかは反応してみせた。

 首を傾げて膝蹴りを回避し、高千穂の胸元のUSBメモリに手を伸ばしたのだ。

 

「なッ!?」

 

 そしてUSBメモリを掴み取り、チェーンを引き千切って奪ってみせた。

 

「ふふ、危ない危ない。まともに受けたら首から上が吹っ飛んでいたな。しかし確かに先手は譲ったぞ」

「空前絶後!! この女! 俺の不意打ちに反応した上に反撃までしやがった?!」

 

 むしろ当たると思っていた高千穂こそが不意を突かれた。

 めだかが問題なく対応したのを見て、よっしゃ! と善吉は拳を握る。

 

「先ほど二人の攻撃を躱した様子、今の距離の詰め方。その身のこなしにはやはり覚えがあると思ったが、そういうことか。カラクリはずばり反射神経!」

「……へっ、その口ぶり、マジで初見ってわけじゃあないようだな。まさか俺の自動操縦(オートパイロット)と似た様なスキルを持つ奴を見たことがあんのか?」

「ほう、それをスキルと呼んでいるのか。あやつのとは趣が少々違うようだが……それはそれとして、()()()()()()()()()()()()()

「ああ……?」

「めだかちゃん! 反射神経ってどういうことなの?!」

「反射神経って……熱いモンに触ったら考える前に手ェ離しちまうとか、砂埃に思わず目を閉じちまうとかああいう本能的な回避行動のことか?」

「そう。奴の動作の素早さ、隙のなさは反射神経の鋭敏さによるものだ! しかもこの男の場合、自発的に反射神経を働かせておる」

「……なるほど、常人と違って動作に思考が介在しないから、スタートダッシュの速さが違う。道理で不意を突かれるような感覚があるわけですね」

「……ふーん、俺のスキルを早くも見抜くたぁ流石の化け物具合じゃねーの。だが……」

 

 何か妙だ、と高千穂は感じ取った。

 USBメモリを奪い取られたのはいい。この僅かな攻防でスキルを見破られたのも、まあいい。

 しかし、先ほどのめだかの回避。覚えがあるという発言。

 いつ? 誰が? どこで?

 

「(試してみるか)」

 

 高千穂が先ほど脱ぎ捨てた白衣を無言で拾うのをめだかは静かに見ていた。そして……

 

「…………そらよっ」

「…………」

 

 そして、拾った白衣をめだかに投げつけるのもまた、めだかは同じように見ていた。

 

「なにっ、ヤツめ目くらましを?!」

「危ないめだかちゃん!」

 

 高貴ともがなが叫んだ。

 

「ふッ!」

 

 高千穂はめだかの顔面を蹴り砕くべく、白衣越しに蹴りを放つ。

 しかしめだかに足が触れたと思った瞬間、めだかは顔を捻って完全に蹴りを受け流していた。

 想像通りであり、高千穂にも覚えがあるその動きは。

 

「……ヒュー、間違いねえ。今のは『接触反射』!! まさかとは思ったが覚えってのは自分のことか! テメェも俺と同じ反射神経を持ってんのか!」

「おや、バレてしまったな。流石本家本元は誤魔化せないようだ」

「抜かしやがれ! 生来の反射神経ってんならお前も本家本元だろ!」

「いや? 私のこれは()()()だ」

「なっ」

「どうしても鬼ごっこで捕まえたい男がいてな。十一年程前、()()()()()()()()()()

「十一ッ……四歳!? お前みたいな幼稚園児がどこにいるよ!」

「なに、世界を何度も救う嵐の様な五歳児もいるのだ。これくらい可愛いものだろう」

「アニメと現実をごっちゃにしてんじゃねー!」

 

 無茶苦茶なことを言うヤツだ。百歩譲ってこの際年齢はどうでもよく、何歳であっても身に付けたくて身に付けられる能力ではない。

 

「恐るべき学習(モデリング)能力の高さだな。反射だけにミラーマッチになるとは予想外にもほどがあるぜ」

「……そう言う割には余裕があるな、高千穂三年生。研究データもいただいたことだし、我々もこのまま次の階層へ進みたいところだが」

 

 驚きはしたが……意外にも高千穂の表情に焦りはなく、めだかも警戒は緩めない。

 高千穂はポケットから、めだかが奪ったUSBメモリよりも大きいメモリを取り出し、改めて首にかけた。

 

「いやメンゴメンゴ。実はそれ偽物なのよ。こっちが本物! 俺の研究が十六ギガとかに収まるわけねーじゃん☆」

「……ふっふっふ。いいぞ、そうこなくてはな!」

 

 実力がありながらフカシもカタリも抜け目なく仕掛けてくるあたり、やはり油断ならない相手だが、そういう敵はめだかも歓迎するところ。

 しかし高千穂の能力のタネは既に割れた。

 

「だが貴様のスキルとやらの弱点の一つは既に見えたぞ。それほどの反射神経を持ちながら『メモリを奪い取ろうとした私の手を身を捩って躱すことができなかった』な。反射神経による動作中に別の反射神経を働かせることはできないと見たが、どうか?」

「……さーて、どうかな?」

「ならばその身体に直接聞いてみるとしようッ!!」

「?! 速い!」

 

 今度はめだかから高千穂の懐へ飛び込んだ。再びメモリを奪い取る……どころか、粉砕するような動きで何度も手足を振るう。

 しかも、恐ろしく速い。高千穂の素早さとは異なり、攻撃が純粋に、ただただ速い。それこそ殺す気か、というような連打に晒されて、高千穂は冷や汗を流しかろうじて反射神経で躱しつつも、どこか冷静な思考をしていた。

 

「反射神経の早さはスタートダッシュの早さ! しかしスタートダッシュが早くとも競争でバイクには勝てん! 早さが速さで上回られるならば、貴様はどうする?!」

「(……()()()()()()()()()()())」

 

 ――ずっと違和感があった。

 めだかの攻撃に、ということではない。

 

「(昨日から、なーんか俺自身にしっくりこないんだ)」

 

 キックボクシングで鍛えてきた高千穂でも、このめだかの様な速度は出せない。それくらい速い。必死で躱しているし間違いなくピンチのはずだが……どこか危機感が持てない。

 

「(いや、この化け物女がおっかないのはそうなんだけどよ。なんだよバイクって。俺は人間で十分だよ。

 でも人間じゃコイツに勝てないのか? 俺の自動操縦(オートパイロット)()()()()()()()()()()()?)」

 

 豪雨のような連打を、既に躱し切れなくなってきた。手足を使いようやくガードできる状態になっている。あれほど待ち望んだ、自分を殴れる初めての相手のはず。

 ……なのにこのシチュエーション、どこか()()()()()

 

「確かにバイクにムキになったって勝てないな」

「さっさと負けを認めればいいのにな」

 

 対馬兄弟の言葉に高千穂の何かが反応する。

 

「(……好き勝手言いやがる! 人間様がよぉ、バイクには勝てないだと?!)」

「さあどうする高千穂三年生!!」

「勝つ方法は二つあるぜェ――――ッ!!」

「なッ、奴は何を!?」

「気をつけろめだかちゃん!!」

 

 まるで攻撃を迎え入れるように、高千穂は両手を広げた。

 少し驚いためだかは、しかし間髪入れずにパンチする。

 

「追い抜かれる前にブッ壊すか! あるいはコイツだッ!」

 

 めだかの攻撃が高千穂に迫る。胸元のメモリ目がけて。()()()()()()()()()

 

自動操縦(オートパイロット)予想空路(フライング)ッ!!」

 

 既に高千穂はめだかの攻撃を予想し、カウンターを放っている! それは両手を使い、めだかの両耳を平手打ちする鼓膜潰し! 相手の予想動作に対して反射行動する、忘れたはずの高千穂の『最速』!

 

パァン!!!

 

 弾けるような凄まじい音が響いた。

 

「め、めだかちゃん!!?」

 

 善吉が悲鳴を上げる。他の面々も唖然としていた。あの勢いで両耳を打たれたならば、いくらめだかでも確実に鼓膜を失う。善吉の悲鳴も既に聞こえていないだろう。

 ……だがしかし。

 

「……善吉よ、そう心配そうな声をするな」

「! 聞こえてるのか?!」

「当然だ。幼馴染の声が届かないほど、私は薄情ではないぞ!」

「さ、流石めだかさん! あなたは鼓膜まで鍛え上げているのか?!」

「いや違うッ?! コイツは!」

 

 安堵する善吉達と違い、高千穂だけがそのことをとっくに気が付いていた。

 

「さっきの音は耳を打った音じゃねぇ! そんな、まさか! 黒神てめえ!!」

 

 それは間違いなく、()()()()()()()()()めだかの腕が空気の壁を越えた音!

 

「音より速くガードしやがったのか! 音より速く、お前は動けるのか!!?」

「黒神ファントム()()()()()()()!! まさかこの手札を切らされるとは、追い詰められたものだ!」

 

 原作ではこの時点ではまだ使えていなかった、超スピード攻撃『黒神ファントム』の無反動版!

 どこかの誰かさんの及ぼした影響が、めだかを原作以上に強くしていた!

 

「そしてやはり本家本元は貴様だよ高千穂三年生!」

「なんだと!?」

「『予想反射』を思いつくまで、私は過剰反射神経を身に付けてから三日もかかったからな!」

「こッ……こんのバケモンがああああ!」

「ハァッ!」

「かっ……がはっ?!!」

 

 高千穂の反撃より早く、めだかの音速の拳が胸元に突き刺さる。

 高千穂の研究成果の全てを入れたメモリはあっけなく砕け散り、守る物はなくなってしまったが。

 

「ぐッ……ォオオオオオ自動操縦(オートパイロット)予想空路(フライング)ゥゥゥゥッ!!」

「ふふ、そうだな。諦められんな。壁があるなら越えてみたくなるものだよな」

 

 血反吐を吐きながら鬼気迫る表情で反撃してくる高千穂に対し、めだかはまるで受け入れるような優しい顔で。

 

「そらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらァッ!!(ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ)」

「ブゲ!! どげっ?!」

「「「「「容赦ねぇ――――――!!?」」」」」

 

 音速のラッシュで完膚なきまでに高千穂をぶっ飛ばした!

 

「ち、ちくしょう……め……」

「私も貴様と同じだ。()()()()()()()()()色々試行錯誤している。今のところ、バイクより速くなればバイクに勝てるのではないかと頑張っているところだよ」

「…………へへ……お前がバイクじゃ、なかったのかよ……速くないから、人間なんだっつーの……」

「うむ、そうだなその通りだ。そして貴様たちの目指す『完全な人間作り』もそういうことではないかな?」

「…………へっ…………」

「……気を失ったか。やれやれ、一戦一戦がこれでは先が」

「めだかちゃんやり過ぎ! ついに殺しちまったかと思ったぜ!?」

「うっ、これはひどい。原形を留めていられるほど鍛え上げていなければ……もしかすると彼は十三組の十三人(サーティン・パーティ)最硬の男でもあったのか……」

「ひいっ、こんなの治療費どれくらいになっちゃうの?! 私は一円たりとも出さないからね!?」

「貴様ら辛くも勝利した仲間へ他にかける言葉はないのか?!」

 

 苦しい戦い(めだか談)を制した生徒会執行部。

 だが、まだここは地下一階。ワンフロア目に過ぎない。最強の男を下したからといってこれから先が楽になるわけではなく、はたして彼らはこの先生き残れるのか――

 

 

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「――て感じだな。いやー記憶が消えてても消えないものがあるってわけだ。はいベストバウトけってーい(パチパチパチ)」

「いやいや拍手してる場合じゃないよ! なあにアレホントに名瀬ちゃんの妹なの?! 同じ血通ってるの?! 名瀬ちゃんの血の色は何色なのー!?」

「同じ血は通ってるけど一緒にはすんなよアレと! まったく最近の若者の人間離れには呆れたもんだぜ。なー奏丞?」

「…………」

「カハッ、面白れー顔。『納得したけど納得してない顔』選手権、優勝狙えるぜ。授業も一限目がとっくに始まっちまったがいいのかよ不良クン」

「……うるせーうるせー。どーせ俺は不良だから授業サボってテレビ見んだよ」

 

 時計台地下四階の一角。ここは夭歌が学園中の監視カメラをチェックできる監視室だ。

 めだかと高千穂の戦いを夭歌、いたみ、そして奏丞の三人で観戦していたわけだが、奏丞はここに来てからずっと渋い顔をしている。

 

「……ったく、全部説明してやったろ。()()()()()()()()()()()()()()()()()。めだかと善ちゃんの因縁の相手の。()()()()()()()()()理事長が呼び寄せちまった。中学校でやり合ったって聞いたから情報は前々から集めてたが、ありゃマジでヤベェ。

 なんとか乗り越えてほしいとこだけど、あいつらは今、どーにも精神的にお前に頼ってる部分があってイマイチ不安だぜ。球磨川はあいつら自身が向き合わなきゃいけない相手だ。お前がいるからどうにかなるって考えじゃ困るんだよ。

 だからこそ、俺の目の届くこういうところでラスボス前のレベリングしてやってんだ。心配性なお前が出て行ったらお前が戦っちゃうだろ。経験値稼ぎの邪魔だ」

「し、心配なんてしてねーし? 邪魔なんてしないし?」

「拗ねんな拗ねんなカワイイ奴めチューしてほしいのか?」

「あーあーうるせーうるせー。わかったからちゃんとこうして大人しくしてるだろ」

「というか理事長も計画変更の判断が早すぎじゃない? 妹ちゃんが突入する前からフラスコ計画に参加させることを諦めてたんでしょ? せめて一戦二戦した後ならまだしも。これじゃぜーんぶ茶番だよ」

「なーに、茶番結構じゃねーか。用意された試練なんて実に教育機関らしいや。本人たちは真剣だし、なんならめだかも心変わりするかもしれないしな」

「……二人はいいのか? 結構フラスコ計画に気合入れてたんじゃねーのか?」

「「いや別に」」

 

 夭歌といたみが同時に応えた。

 

「私は名瀬ちゃんが興味あるって言うから付き合ってただけだし?」

「俺は単に他人のスキルとかを色々研究するのにちょうどよかったから参加しただけだし?」

「でもなんだかんだそのおかげで私の改良も進んだもんねー」

「その義理でフラスコ計画統括してっけど、まあ知りたいことはだいたい知れたもんねー」

「「ねー?」」

「まるで女子みたいなラスボスたちだな……」

「はあああああ? 私たち立派な女子なんですけど?!」

「しかもラスボスは球磨川つってんだろ!」

「いやアンタら怖いよ! 利用するだけ利用してポイのヤツじゃん! 立派なラスボスムーブだよ!」

 

 同じ夢を見た十三組の仲間同士の絆とかそういうものはまったくなかった。

 

「まったく、そもそも誰のせいで名瀬ちゃんが研究三昧なのかわか「さあ宗像先輩もバトり始めたし、俺たちも歓迎の準備をしに行くぜー」ムググ……」

 

 夭歌がいたみの口を押さえて引きずっていく。

 

「じゃ、そろそろ出番だから行くわ。古賀ちゃんのウォーミングアップもしておきたいし。

 授業出ないんならお前はここで留守番な。くれぐれも邪魔すんじゃねーぞ」

「…………」

「返事は?」

「……ワン」

「グッボーイ。あとでいい子いい子してやるぜ」

 

 そう言って夭歌といたみは部屋を出て行った。

 善吉と宗像の戦いも原作通り真黒の薦めで始まり、やがて善吉が()()()()()()勝利して見せる。

 めだかに劣らず、善吉も容赦なく宗像をボコボコにしているが、随分と強くなった。

 しかしまだまだ突破できた敵は二人だけで油断はできない。

 気張れよみんな……と思いながら、奏丞はその後もモニターを見続けていた。

 

 

 

*1
幻覚を見せるスタンド『ティナ―・サックス』を使い迷路を作っていた






奏丞「だいぶ迷ってんじゃんアゼルバイジャン」
善吉「どうすっかな~俺もな~」
めだか「あっ、そうだ(パァン!!)」
奏丞・善吉「「ヌッ!(鼓膜破壊)」」

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