目高箱と幽波紋!!   作:人参天国

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みんな大好き裸エプロン先輩のご登場です。




第二十七話:思い出させてあげる

 

 

 都城との戦いの後。

 一々関連データの削除を行うのが面倒になった生徒会一行(奏丞含む)は、地下十三階のスパコンを破壊し尽くすことで地下研究所を文字通り叩き潰した後、地下入口へ戻るために直通エレベーターに全員で乗り込むのであった。

 ちなみにエレベーターに乗る際のパスワードを入力したのはめだかだ。

 文字無制限のそれを当然のように解いているのを見ると携帯のパスワードなんか無いも同然。善吉が彼氏になれた時に隠し事しにくそうだなあ、と他人事のように奏丞は思うのであった。

 

「ところで! すまんが都城三年生。あと一回だけ……『言葉の重み』を使ってもらうぞ。一階で戦っている連中を制圧するためにだ。貴様も知っているだろうが、雲仙二年生は途中で戦いをやめるようなタイプではないのでな」

「……ああ、そうだな。『裏の六人(プラスシックス)』も止めてやらねばならんし、よかろう。普通なる俺が承ったよ」

「いや、戦いはもう終わってますよ、都城先輩」

「ん? なんだ、そうなのか宇城。……お前が悠長にしているなら、おそらく六人(シックス)の負けということか」

「まあそうっすね」

「マジかよ! そりゃよかった! 流石雲仙先輩達だな!」

 

 めだかの方針は戦い終われば恨みっこ無し。奏丞もそれに則り、不満はあるものの都城のことは先輩呼びにしている。

 そんな奏丞の言葉に善吉だけでなく他の面々も気が緩んだ様子だったが……

 

「さーて、気をしっかり持てよ皆」

「……え?」

()()()()がいるぞ」

 

 エレベーターの扉が開く。

 そこに転がっていたのは裏の六人(プラスシックス)の面々だけだ。負け犬軍団の姿はなく、奏丞が察知する限りでは気絶した鬼瀬と冥加を、冥利と鍋島が背負って地下に向かう階段に逃げていた。

 奏丞が介入した影響で原作の時より早く裏の六人(プラスシックス)戦のカタがつき、冥利達(と、ついでに戦闘に参加しなかった対馬兄弟)が離れる時間ができたのだ。

 だが、だからといって安心することはできない。

 

「貴様は……!?」

 

 めだかがその男を見て驚愕する。

 気絶した裏の六人(プラスシックス)達を、まるで汚く触り難い物のように極太の螺子でつっついている、人畜無害な表情を装った学ラン男は、気心の知れた友人のごとくめだかに話しかけた。

 誰もが総毛立つような悍ましい雰囲気を携えて。

 

「『あれあれ生徒会長さんじゃーん?』『見なよこの不良同士の抗争を!』『イヤだねぇこーやって暴力で解決しようとする学生で溢れてる学校なんて』『せっかく遠路はるばるやって来たっていうのに(ぼか)ぁガッカリだよ』『この治安の悪さは生徒会長さんの怠慢じゃな~い?』」

 

 それはまあ、半分くらいはそう。

 

球磨川(くまがわ)……(みそぎ)っ……!! 貴様なぜここに!?」

「『いいや違う』『僕は球磨川禊じゃない』『彼の双子の弟の球磨川(そそぎ)だ』」

「!?」

「『なーんてね嘘嘘っ!』『引っかかったあ?』『だいじょーぶ正解正解っ!』『あってるよ大正解!』『そーです僕が球磨川禊で――っす!』『久しぶりだねめだかちゃんっ!』」

「……いつだって縋りつきたくなるような嘘をつくよな貴様は……!!」

「…………善ちゃん」

 

 くじらの視線の先で、善吉がガタガタと震えながら身をすくめていた。中学生の頃のトラウマが呼び起されているのだ。

 球磨川はそんな善吉をにこやかに見つめている。

 

「『やあ善吉ちゃん』『君も相変わらずそうで安心したよ!』『どうしたのかなそんなに縮こまっちゃって』『まるで身長が縮んだみたいだよ?』『なんだか中学生の頃を思い出しちゃうね!』」

「(……なんだよ、球磨川が目の前にいるってのに! どうしてブルってんだよ俺の身体!! 今まで死に物狂いで俺が俺を鍛えてきたのは! この時! この瞬間のためじゃねーのかよ! 俺はめだかちゃんを守らなきゃ)(バシンッ!)ってえ!?」

「……よ~う、球磨川先輩」

「なっ!?」

 

 善吉の背中が勢い良く叩かれたと思ったら、奏丞が球磨川の前に進み出た。

 

「だから、お前が前に出たらこいつら鍛えた意味ってもんが……」

 

 くじらが額を押さえて小声でぼやいているが、奏丞は聞こえないフリをした。

 

「『ん~?』『君はだぁれかなぁ?』『君みたいな不良っぽい人とは一切関わり合いのない健全な学生生活を送って来たから』『ちょーっと今まで眼中になかったかも!』『知り合いだったらごめんねー?』」

 

 球磨川は奏丞のことを忘れたのだろうか? しかし奏丞の方はよく覚えている。

 十三年前、奏丞が二歳の頃に箱庭病院で出会ったことを。

 そして、家族に害が及ぶかもしれないと思いヘブンズ・ドアーで球磨川に『命令』を書き込んだことを。

 

【宇城奏丞とその身内に攻撃する事はできない

 ↑

 この決まりはなくさないしなくさせない】

 

「奏丞、なんで」

「善吉よゥ。ブルってようがビビってようが、やるべきことに変わりはねーだろ」

「!!」

「『なになにいきなりカッコイイ台詞言うじゃん』『まさかその年で中二病なの?』『うわーリアルで見るとキッツいなあー!』『そういう見苦しいのはネット小説の中だけにしてよねー』」

「…………へっ、その通りだな」

「『あれ、善吉ちゃんもそう思うー?』『やっぱり僕達気が合うね!』」

「ああ、気が合うぜ球磨川」

「『……んん~?』」

 

 善吉が奏丞の隣に進み出て来たのを、球磨川が意外そうに見つめる。

 恐れを抑え潰すように拳を握りしめながら、善吉は敢えてニヤリと笑った。

 

「今俺のやるべきことは、球磨川。ビビろうが逃げ出したかろうが」

「『…………』」

()()()()の前に出て! カッコイイ台詞を吐いてカッコつけるってことだぜ!!」

「…………善吉」

「『……君はどうやら良くない影響を受けたみたいだね』『友達は選んだ方がよかったんじゃない?』」

 

 高貴ともがなが善吉の発言に『えっ?!』と思いめだかを見ると……驚いた様子もなく、むしろ安らいだかのような顔で善吉を見つめていた。彼らからするとこの反応はかなり予想外だ。

 そんな中で、圧のあるうすら笑いで見つめてくる球磨川に対し、奏丞は。

 

「イエーイ。球磨川先輩見てるぅ~? あんたの知ってた善吉はもういませ~ん。完全に俺が染めちゃいました~」

「『――――』」

 

 善吉の肩に手を回して、まさかの挑発!

 

「カッ! 泣く子も憧れる人吉善吉サマが誰に染まるって!? 俺のデビル通り越してサタンめいたカッコよさに影響されてんのはオメーの方だよ!」

「あ~ん? こわーい先輩に睨まれて震えてたクセによく言うぜ! あんな情けねー姿、千年の恋も冷めらァ!」

「『……あーあ』『僕知―らない』『だって僕は悪くない』『これは本当に』」

「「……?」」

 

 胸ポケットのあたりを押さえながら、球磨川は嘯いた。

 

「『でも?』『言葉だけの奴は結局カッコ悪いし』『キャラとして人気も出ないんだよね~』」

「「……ハッ!?」」

「『男ぶっておきながら』『守るべき女の子はこんなにボロボロじゃないか』」

 

 アホなことを言い合っている奏丞と善吉の傍をいつの間にやら球磨川が通り抜け、もがなの前に立っていた。

 球磨川の言う通り、もがなは地下十二階で行橋と戦った時に負傷しているが……

 

「『こーゆーのは!』(むにゅっ)」

「!? なっ、なにするの!」

「『おっと!』『やっぱり男として見逃せないよね!』」

「……あれっ、身体も制服も傷が治ってる!?」

 

 突然球磨川に胸を鷲掴まれ、もがながそれを振りほどいたと思ったら既に傷が癒えていた。

 これぞ球磨川の恐るべきスキル。現実(すべて)虚構(なかったこと)にする『大噓憑き(オールフィクション)』の力だ。もがなの負傷を虚構(なかったこと)にしたのだ。

 

「『ところで真黒ちゃん』『君も怪我をしてるみたいだねえ』『なんならそれも僕が(なお)してあげようか?』」

「! ……遠慮しておくよ球磨川くん。これは僕が己の過ちに対して支払った代償であり、僕が己の罪に対して受けた罰なんだから」

「『うわあ格好いいー』『やっぱり取って付けたようなカッコ良さより断然格好いいね!』

 『けどごめーん』『もう(なお)しちゃった!』『思い入れとかー』『心がけとか誓いとかー』『僕そういうのよくわからないんだー』」

「……!?」

「『やあやあ高貴ちゃん挨拶が遅れちゃったね!』」

「(この球磨川って人…………()()()。なんとなくだけどどこか()()()……宇城に)」

 

 真黒や高貴にちょっかいをかけている球磨川を見て、もがなはそう感じた。

 

「(他人をあっという間に治しちゃうスキルも似てるけど、それ以上にスタンスというか…………とぼけたことを言ったり、誰かの思惑を台無しにしちゃうような感じが似てるんだ。

 宇城がそうする理由ははっきりわかってる。相手を自分のペースに引き込んで勝つためだ。だとしたらこの人は? ただ性格が悪いだけ? それとも……)」

 

 もしそうだとしたら。仮に宇城奏丞以上に()()()()仕掛けてくる相手だとしたら。

 球磨川禊はこれまで以上の難敵になるかもしれないと、もがなは予感する。

 

「……おい。それで私には何もないのか球磨川。折角の再会で折角の機会だ。私にも言いたいことがあるなら言っておけよ」

「『んー?』『僕がめだかちゃんに言いたいことねえ――』『別にないけど』」

「…………」

「『あー!』『ひょっとして勘違いしてる?』『僕が君達に会いに来たとか!』『ここで待ち伏せしてたとか!』『さ!』」

「ならばどうして貴様がここにいる。一体何をしにここに来たというのだ」

「『うんそうそうそれそれ!』『聞いてよめだかちゃん!』『僕は今とても困ってるんだ』『助けてよ!』

 『実は僕今日付けでこの箱庭学園に転校して来たんだ』『だから理事長にご挨拶に行かなきゃいけないんだけど道に迷っちゃってさ』『よかったら理事長室がどこにあるのか教えてくれない?』」

()()()()

「『……ふうん?』」

「貴様に言うことがなくても私には大いにある。案内してやるから、道すがら存分に話をしようではないか」

「『……そっか!』『ありがとう!』」

 

 それを聞いた球磨川はにっこりと笑った。

 

「『でもなんか気持ち悪いからやめておくよ!』『積極的な子は好きだけど』『そんなにアピールされるとむしろ引いちゃうよね!』『というかそんなに僕に気があったなんて』『ちょっと慎みが足りなくない?』」

「…………」

「『やっぱ理事長室は自分で探すよ』『自分のことは自分でやらなきゃダメだしね』」

 

 そう言ってめだかに背を向け、奏丞の横を通り抜けようとした――瞬間。

 球磨川はいつの間にか手に持っていた螺子を奏丞に突き刺そうとする。

 それは一瞬の不意打ちではあったが。

 

「『ありゃあ?』」

「…………」

 

 奏丞の手が球磨川の腕を掴んで止めていた。

 

「『ふーん普通に警戒してるね』『もしかして僕にした()()()()()暗示のこと忘れてた?』」

「へーえ、スタンドのこと知ってましたか。いや、『聞いてた』かな?

 暗示のことならちゃーんと覚えてますよ。ただあんたのことだから古臭い暗示なんざとっくに解いてるんじゃないかとも思ってただけっすよ。

 ちなみにどうやって解いたのかは聞かない方がいいっすか?」

「『えー僕の恥ずかし~い過去だしなあ』」

「……恥ずかしいィ?」

「『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』『いやーん恥ずかしい』」

「なるほど、球磨川先輩は無理矢理されたのが恥ずかしくも喜ばしかったと」

「『おいおい人をドMみたいに言うなよ』『こう見えて僕』『結構Sなんだぜ』」

「もう何の話だ貴様らは!」

「そりゃあ男同士の……なあ?」

「『あ、僕そっちのケはないんで』『馴れ馴れしく近寄らないでくれます?』」

「急に突き放すじゃん」

 

 球磨川のことを知る者からは『あの球磨川』とこんな会話をするのを見て凄い目で見られているが、奏丞は気にしないことにする。

 球磨川は攻撃を諦めたように力を抜き、奏丞が手を放すとそのまま離れていった。

 

「『ま、そういうわけだから』『今まで会えなかった人達にも会えるようになったワケ!』『だから楽しみなんだー』『お世話になった君の家族や知り合いにも()()ができるのが』」

「やってみろよ」

「『…………』」

()()したいんだろ? やってみろよ」

「『……ま、その内ね!』」

 

 球磨川は奏丞達に背を向けた。

 

「! どこへ行く球磨川! 話は終わっておらんぞ!」

「『今日は転校したてでやることがてんこ盛りなんだ』『また今度暇な時間があったら構ってあげるよ』」

「……おい球磨川先輩」

「『なんだよしつこいなあ』」

「喜界島と真黒さんの傷を治してくれてサンキューな。特に真黒さんなんか、いくら治そうって言っても聞いてくれなくてよ」

「『…………』『君のそういう知ったフウな口ぶり』『僕は昔から気に入ってるよ♪』」

 

 そう言って球磨川はそのまま地下を去っていった。

 張りつめていた空気がようやく和らぐ。

 

「…………あー怖かっ「こんの大馬鹿者ォ!!」うげぇ――ッ」

 

 奏丞は背後からめだかに殴り倒された!

 

「どうしてああも挑発的な態度を取るのだ貴様は! 相手は球磨川だぞ! もっと慎重に動かんか!!(ゲシゲシゲシ)」

「このクソバカ度胸が! 俺たちゃお前と違って心臓に毛が生えてねーんだよ! それに合わせるこっちの身にもなりやがれ!(ゲシゲシゲシ)」

「球磨川さんが来るのを知ってたのか!? まさかさっき名瀬さんがこぼしてたのが俺達が大変な目にあった理由じゃなかろうな! 皆死ぬ思いで戦ったんだぞ!(ゲシゲシゲシ)」

「お前が前に出てどーすんだよ! 目立ちたいんだか目立ちたくないんだかはっきりしろ! いい加減首輪嵌めて飼ってやろうかこの野郎!(ゲシゲシゲシ)」

「名瀬ちゃん、さりげなく自分の願望を混ぜるのはやめとこーよ……」

「テメェあれはマジでヤバいヤツじゃねーか! 裏の六人(プラスシックス)とやりあった後であんなのと戦えるかよ! あと姉ちゃんのこと説明しろボケッ(ゲシゲシゲシ)」

「って雲仙先輩! 鍋島先輩! 無事だったんすね!(ゲシゲシゲシ)」

「やっほ♪ 雲仙くんの言う通りあんなんと連戦で()れんし、隠れて様子見とったんよ~」

「相変わらず抜け目がないですね猫美さん。お変わりないようで安心しましたよ(ゲシゲシゲシ)」

「げええ――っ!!」

 

 ――結局、皆の気が済むまで蹴られてボロボロになった奏丞は、裏の六人(プラスシックス)と同様に担架に乗せられて地下から出ることになるのでした。

 チャンチャン。

 

「う~~あんまりだぁ~~!」

 

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 理事長室にて転校の挨拶を済ませた球磨川。

 最後に理事長から『その場所』のことを聞き、彼は一人、そこへ向かっていた。

 

「『さーて』『その内とは言ったものの』『なんでも後回しにするようなことは良くないよね~』『やっぱり宿題も掃除も』『片づけられるうちに片づけないと!』」

 

 そんな独り言を吐きながら、球磨川はその部屋の前に立つのであった。

 

「『へー』『ここが賭博部の部室か~』『よーし早速()()をしていこう!』」

 

 






奏丞「お前ら過負荷のフットワーク軽すぎじゃねえ?」
球磨川「『その心は?』」
奏丞「理事長の連絡一つでその日中に転校して来るとか動きが早すぎだろ。移動とか手続きとか引っ越しとか色々大変だろ」
球磨川「『いいこと気が付くねえ奏丞ちゃん!』『それを説明するにはまず(作者が全部忘れた)迷い猫オーバーランルートの説明からする必要が――』」
奏丞「きっと理事長が事前に根回ししてたり金に物言わせたんだな間違いないってことでこの話題はおしまいだ!」

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