人吉瞳の容姿が気になる人は原作を買おう!
人妻ロリBBAの下着姿が見られるのはコミックス八巻だぞ!
生徒会執行部がフラスコ計画を叩き潰した翌日のことである。
球磨川の転校を知った善吉の母親・人吉瞳が箱庭学園にやって来たのであった。
ちゃんちゃん。
「ぐあああああ!!」
「初っ端からうるさいよ善吉くん」
「あーあーすみませんねえお母さん! こんな恥ずかしい出来事はちゃんちゃんじゃ済まなくてねえ!?」
ここは生徒会室。
校内を歩き回っていた瞳を見つけた高貴が、名字を聞いて善吉のよく似た妹と勘違いして生徒会室に連れて来てしまったのだ。
まあ、勘違いするのも無理はない。なにせ小学校低学年と見紛うばかりの若々しさなのだから。波紋が使えてもこうはなるまい。
今はもがなが出したお茶を飲みながら、めだかと瞳で話し合っているところだった。
「なるほど、球磨川の転校を知って駆けつけてくれたのですか。善吉が話したとも思えませんが、彼に監視でもつけていたのですか?」
「そりゃーねー。なんたってあたしは病院に在職中、診察室で球磨川くんとは会ってるからねー。一度問診しただけだけれど、忘れられるわけがないよ。あんな大規模な
「そうですね。そもそも人吉先生はその時、球磨川を見逃した責任を感じて医局を辞したのでしたね……」
「そうなんだよねえ。そしてついでにもう一つ言うとさあ、実は球磨川くんだけじゃないのよ」
「……? 球磨川だけじゃない……?」
「うん。まさかと思って調べてみたら球磨川くんだけじゃなく、あたしが在職中個人的に目をつけていた
そして少なくともそのうち二人は球磨川くんに匹敵しかねない絶対値の持ち主」
「!!」
「あとは……」
「……あとは?」
「…………
「……?
「いえ、その子自身はとっても良い子なの。ちょーっと執着心が強いだけで。ただ……」
「…………」
「……これ、あくまで私の直感よ? 直感なんだけど……もしかしたら、事によっちゃあ球磨川くんよりヤバい子じゃないかって思えて仕方ないのよね」
「……何十万もの患者を診てきた心療外科医・人吉瞳先生の直感ほど信じられるものなど他にありませんよ。我々でも対抗が難しい相手なのですか?」
「この中でぶつけられるのは恐らくめだかちゃんしかいないわね。それでも厳しいかもしれない。万全を期すなら……ぜぇ~ったい奏丞くん」
「……もう私、宇城のことがよくわかんないよ」
「大丈夫だぜ喜界島。ああ見えて色々しでかしてるタイプのバカってわかってりゃいいから」
「それはもうわかってる……」
奏丞の話題を出したところで、瞳は生徒会室を見回した。
「ところで奏丞くんは? 確か一緒に仕事してるのよね。あっ、もしかして今まさに仕事中だったとか?」
「「「「…………」」」」
「……え、なにその無言」
「…………あやつは」
代表してめだかが口を開く。
「昨日の
「あらま。そんなに激戦だったのね」
「してしまいまして……」
「……、…………!? した!? 病院送りに!? どういうことよっ!?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方ここは
以前までは利用する生徒が真黒しかいなかったが、今は違う。
時計台地下に代わる新たな本拠地として、くじらといたみが軍艦塔を使い始めたのだ。
真黒としては長年会えなかった愛する妹が足繫く通ってくれて万々歳、望外の幸福を味わっているところ…………なんて呑気なことを言っている暇はない。
球磨川という驚異が現れた翌日である今日この日、真黒・くじら・いたみは三人集まり人知れず緊急会議を開いていた。
議長を務めるのはもちろん真黒だ。くじらといたみが深刻そうな顔をしているのを見ると、自分も同じ表情になっていることを自覚する。
そしてその表情通り、重々しい口調で真黒は口を開いた。
「――それでは第一回【くじらちゃんの恋路成就に係る緊急対策会議】を開始します。皆さんよろしくお願いします」
「「よろしくお願いします」」
ツッコミ不在の恐怖ッ!
球磨川の登場はまったく関係なかったッ!
「成就にあたっての第一歩目。まずは明確な目標を定めていこう。それじゃあくじらちゃん、君は最終的に奏丞くんとどうなりたい?」
「部屋に監禁してグチャグチャにブチ犯してやりてえ」
「ストーップ!! 録音止めて古賀ちゃん!」
「…………(ドン引き)」
一発目から会議が躍り始めたようだった。
「なんてはしたないことをブッ込むんだ妹よ! 言うに事を欠いて最終目標がそれなのかい?!」
「ああ悪い、そうじゃねーや」
「ほっ、よかった」
「体格差で逆転されてこっちがブチ犯されることになるのが最終的な目標だな」
「古賀ちゃん、くじらちゃんが変な音出してるから頭叩いて!」
「うおおお斜め四十五度ォ!」
「あいてェ――――ッ!? なにすんだよいたみちゃん!?」
「くじらちゃんが馬鹿言うからでしょー!」
ばちこーん、とくじらの頭が良い音を立てた。中身が詰まっていないのかもしれない。
ちなみに関係ない話だが、くじらといたみは互いに下の名前で呼ぶことにしたようだった。
「昨日まではそこまでおっぴろげじゃなかったでしょ?! 変にマゾッ気まで出しちゃって! どーしちゃったのよ!」
「し、仕方ねーだろ! 昨日からアイツのこと考えたらムラムラすんだよ!」
「くっそぅくじらちゃんをこんなにしやがって! 脳みそコンガリ焼き過ぎて有害物質出てるじゃないか!
いいかいくじらちゃん! この際君の言う最終的な目標は百歩譲って目をつぶる! でも感情がどうあれ君達はまだ学生だ! もう少し段階を踏んで清い交際から始めていくんだ! あんまりガツガツ行くと引かれちゃうぞ! 僕達みたいに!」
「えー……」
「なんでも言うこと聞くって昨日言ったでしょっ!」
「わ、わかったよぉ……」
「……ちなみにデートできたとして最初はどこに行きたい?」
「当然のこと! すかさずホテルに突撃すべし!」
「…………(ばちこーん)」
「んぎゃあ!?」
「あ、ごめんね。また変な音出してたから」
「なんか冷たくない!?」
元気な姿さえ見られれば満足……とは長年思っていたが、元気を通り越してこんな壊れた姿を見ることになるとは、と真黒はため息をつく。
「くじらちゃん。恋する女の子に残酷なことを言うようだけど、僕の調べでは彼は肉食系よりお淑やかな子を好みそうな傾向がある。くじらちゃんの行動力は確かに武器だけど、急いては事を仕損じる。まずは徐々に彼に意識させるよう、着実に事を進めるんだ」
「で、でもよー……俺がちょっとヌード見せてもあんまり反応してくれてなかったし……」
「それ、私が一緒にいた時のことじゃないよね……? 私が見てる横でくじらちゃんの唐突な着替えシーンに反応されたって困ってたと思うんだけど……」
「これも僕調べだけど彼は普通にくじらちゃんの身体をエッチだと思ってるみたいだから、そこは安心していいよ」
「え、マジ? なんだよあのムッツリ野郎。しょうがね~なぁ~」
「照れ顔も可愛いと思うし、こーゆー所を宇城くんに見せていけばいいのに……彼の前では変に見栄張るからアピールができてないんだよ……」
「本当に頼りにしてるよ古賀さん。くじらちゃんの未来は僕達にかかっていると言っていい。本当に、頼りにしてるよ……」
くねくねもじもじとするくじらを見て、今度は二人でため息をついた。もうなんでもいいからさっさとくっついてほしいところだ。
「とはいえさっきは着実になんて言ったものの、決して無限に時間があるわけじゃないんだ。これからしっかりアピールしていかないと、万が一奏丞くん好みのお淑やかな子が現れたりしたらどうなるか――」
コンコンコン。
部屋のドアがノックされた。
「? はーいどちらさまかな?」
『……あの~、旧校舎管理人の黒神真黒さんはこちらにおられますかあー?』
「……黒神真黒は僕だけど……?」
『あー! いたいたよかったあー!』
ドアを開けて入って来た女子生徒は、三人とも見覚えがない。
それもそのはず、見れば城砦女学院の制服をキッチリまとった他校の生徒だったからだ。
頭に大きなリボンを付けた、見た目は普通の女の子に見えるが、しかし。
「えーっと私、昨日付けでこの学園に転校して来た者なんですけどおー。マイナス十三組は新設のクラスだから新しく教室を作らなきゃダメらしいんですよぉー。
だから管理人さん、この旧校舎――軍艦塔に空き教室があったら譲ってもらえますぅー?
……あとついでに個人的な理由で人を探していまして~」
「「「!?」」」
マイナス十三組と聞いて三人とも身構える。
都城から受けた負傷が残っておらず、問題なく戦えるいたみはくじら(と、ついでに真黒)を守るように前に出た。
「マイナス十三組ね……ということは君、球磨川くんの関係者でしょ?」
「あらま、案の定物々しくなっちゃいましたかあー……まあ別に構いませんが。
それで、教室は譲っていただけますかあー?」
「……ああもちろんだよ! この校舎には空き教室なんて売る程あるからね♪ ご契約者様は君でいいのかな?」
「うふふふ。生徒が学校の物を勝手に売り買いなんてしたら大問題ですねぇー。
あっ、噂の『魔法使い』って呼び名はそういう悪い不動産運用的なぁ?」
「あーっと不名誉な烙印が押される前に自己紹介させてもらうよ!
知ってるようだが改めまして! 僕の名前は黒神真黒! 軍艦塔管理人にしてフラスコ計画元統括! かつて『
さあくじらちゃん古賀さん、君達も高らかに名乗ってあげなさい!!」
「…………*1」
「い……嫌だ! そんなノリで絶対に名乗りたくない!!*2」
「フッ、『
「「乗っかってきたあ!?」」
と、冗談のような話をしているが、真黒とくじらは今内心、強烈な違和感を怒江に感じている。
確かにそれはある。それもあるが……しかしどこか妙だ。
「(いたみちゃんを前にしてコイツ、全然身構えねえ。いたみちゃんの強さがわかってねーのか?
……いや、それはねえ。バリバリ改造人間のいたみちゃんの圧は凡人だって恐れ慄くぜ。
だとすれば身構えてないように見えるってだけで、飛び掛かられたって対応できる自信があるんだ。
だが、それ以上にあの目に違和感があるぜ。妙に冷静に俺達を見る目! なにか……
「…………まさかっ!?」
「……兄貴?」
「
「うーん? あなた『見えてない人』ですよねぇー?
……ああ! もしかして奏丞くんから私のこと聞いてましたあ? もー照れちゃうんだから! きっと私のことばっかりお話ししてたのよねそうですよね! 仕方ないなあやっぱり彼には私が付いていてあげないとー!」
「……てめぇは奏丞のなんだ?」
「あらあすっごい震え声。風邪でも引いてますぅ?
何って将来を誓い合った仲ですけど」
「………………………………」
真黒がそそくさとくじらから距離を取った。
発する殺気がただごとではないからだ。肉親の仇を目の前にしたってここまで殺意はないだろう。下手しなくても昨日の球磨川よりも怖いのでは……?
愛する妹とはいえ、真黒にも許容できることとできないことがあるのだ。
「そ、それじゃあ個人的な探し人っていうのはもしかして奏丞くんのことかな?」
「いいえ? ぜ~んぜん違います」
「……あれっ、違うの?」
「ええ。奏丞くんとは元々引かれ合う運命にありますので。わざわざ探さなくてもすぐに会えますぅー」
「………………………………」
「(ひ~! 今振り返りたくない! くじらちゃんをあんまり刺激しないで~!)」
「じゃあ誰を探してるって言うんだい?」
「人吉善吉とかいうタンカスです☆」
「な、なんだって? 善吉くんを!?」
「お兄さまお姉さま。今、私の幼馴染の名前が聞こえたようですが」
「「「「!」」」」
そう言って唐突に部屋に入って来たのはめだかだった。その後ろには高貴ともがなもいる。
球磨川対策の打ち合わせをしに軍艦塔を訪れ、偶然この状況に鉢合わせたのだ。
「あらあら、生徒会長さん登場ですかあ。しかも六対一。う~ん、囲まれちゃいましたねえー」
「……察するところ球磨川の関係者のようだな。新手の
「めだかちゃん!
「…………、……ッ!?」
真黒が叫ぶ。
怒江に近づこうとしためだかは立ち止まり……瞬間、ブワリと汗が噴き出た。
真黒の言葉にくじらも真意に気付く。そのことが理解できたのは観察力に秀でた黒神兄妹だけだった。他の人間は何のことだかわかっていない。
だからこそ、黒神兄妹だけが、怒江に近寄ることがどれほど危険かもわかってしまった。
「……見覚えがあるぞ。その立ち姿、その目は……!」
「? アナタと会ったことありましたっけぇ?」
「いいや、貴様とは初見だよ。だが、私の友人が戦う時に、度々そういう『構えに見えない構え』をして、しかし非常に冷静な目で見てくる。そう、その目は……!」
「…………」
「
「間違いない、以前聞いたことがある! 彼はこの世でたった一人だけ、生来のスキルを改造して同じ能力者にした人がいると! きっと彼女がそうだ!」
「ま、まさかテメェ! 『スタンド使い』なのかッ!? 奏丞と同じ!?」
「あらー。あなた達はやっぱりスタンドのこと知ってたんですねえ。確か今はご家族を除けば知っているのは三人だったはずですけど」
「……ああ、きっと僕と
「そりゃあそうですよぉ! 彼と文通しているといろんなことを教えてくれましたから! スタンドのことでお世話になってるトレーナーさんのことや…………とっても頼りになるオ・ト・モ・ダ・チのこともね」
「…………(ブチッ)」
「「ひえっ……」」
「お、お姉さま……?」
真黒といたみが悲鳴を上げる。わりと空気を読めないめだかですら、くじらの様子に引いていた。
「お前によく合いそうな
「ん~、どうしましょっかねえー」
怒江がここに来る前、球磨川に言われたことを思い出す。
――『黒神めだかは化物だ』『黒神真黒は魔法使いで――』『阿久根高貴は旧破壊臣だ』『まあ怒江ちゃん』『君から教えてもらった能力を見るに』『
「仕方ない。ここは逃げちゃいますかー。
黒神真黒さん。教室が必要になったら連絡するので、明け渡す準備をしておいてくださいねぇ。人吉善吉は自力で探すことにしますぅー」
「待てっ! 貴様はなぜ善吉を狙う!?」
「テメェ逃がすと思ってるのかァ……?」
「……ばいばーいオトモダチさん! そのうち祝辞をお願いするだろうからよろしくね!」
「ッ!!(ブチブチブチッ)」
くじらは懐から取り出した大量のメスを全力で投げつける。
それをへらへらと見ていた怒江は、なんと立ったままの姿勢で突如床に沈み込み、そのまま姿を消してしまった。
メスは虚しく空を切り、壁に突き刺さった。
「えっ、床に潜った!?」
「いや……違う!」
全員で怒江がいたところを見ると、床に穴が開いていることがわかる。
異様なのはその破壊痕! まるで腐り落ちたかのようにグズグズになった穴のフチを見れば、まさか老朽化で偶然開いた穴とはとても思えない。
真黒がその痕跡を解析してみる。
「これは……ただ床が痛んでいるわけじゃないな。腐食している……どうやらちょうど人ひとり分の穴を開けて逃げたみたいだ」
「真黒さん。彼女の足が触れていた場所が腐ったということは、彼女は触れた物を腐らせるスキルを?」
「……いや、スキルより更に始末が悪いね。めだかちゃん。向かい合って彼女の能力の射程距離はわかったかい?」
「……いいえ。恐らく全員が既に、彼女の射程内に入ってしまっていたように思えます。なので限界点は……」
「やっぱりそうか。めだかちゃんでも四メートルは離れていたのに……もしかして彼女は近距離パワー型ではないのか……?」
「ねえ、『すたんど』ってなんのことなの? 異常や過負荷とは違うってこと? 宇城のよくわからない力もそれなの?」
「……そうだね。スタンド使いが敵に回った以上、隠している場合じゃないが……」
「まずは善吉だ! 急ぎあやつに危機を知らせなければ!」
めだか達が慌てているのを横目に、いたみが無言になっているくじらに話しかける。
「……くじらちゃん。その……」
「……ああ、わりーな。少し、取り乱した」
「ぜ、全然少しじゃなかったと思うけど……気にすることないよ。一番近くにいたのはくじらちゃんなんだからさっ! だから……」
「……いや、あのヤロー痛い所突いてやがる。『見えてない人』だと? クソが……確かに同じモノが見えてないのに、真に気持ちが通うことはねえ。その点では間違いなく、俺は奴に負けている」
「でもそれじゃあ……」
「
「!」
「それ以外は俺が勝ってるに決まってるぜ! だったらよォ!」
「く、くじらちゃん……?」
嗤っている。強烈な殺意はそのままに、怒江が消えていった穴を見つめながら、くじらが近寄り難い嗤いを浮かべている!
「見えて使えるようになりゃあ俺が最強ってことだよなあ!! テメェが誰に喧嘩売ったのか! 存分に
「「…………」」
――真黒といたみは顔を見合わせて思うのであった。
「「(…………全部
正解である。
逆花京院みたいな心境かな?
くじらちゃんはとっても健気なフレンズなんだね!