目高箱と幽波紋!!   作:人参天国

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 主人公がいない方が話が進みますね。
 お前もう(主役の座から)降りろ。




第三十話:怒江の嫉妬

 

 

「ふぅー、ここまで来れば大丈夫か。ったくあの母親、どこまで子離れができないんだ!」

 

 善吉は一人、慌ただしく校内を走り回っていた。母親の追跡を逃れるためだ。

 球磨川の転校を知り、箱庭学園へ押しかけて来た人吉瞳四十二歳。四十二歳。

 母親が心療外科医として学校の保険医になるくらいだったらまだ、善吉も納得できただろう。

 しかしあろうことか! その母親は善吉と同じ一年一組に転校して来て、善吉の隣の席に座りやがったのだ!

 

「四十二歳の母親が同級生とかどんなギャグコメディだよ! しかも授業中も飯時も色々俺のミス指摘してくるしよぉ!

 超恥ずかしーよ俺! とんでもねーモンスターペアレントだぜ!」

 

 ということで、あれこれ構ってくる母親から必死に逃げているワケである。

 さて、そうして愚痴りながら校舎の曲がり角を曲がろうとした時だった。

 

「「あっ」」

 

 何の偶然か、それとも運命なのか。原作と同様、向こうから来た怒江とぶつかりそうになる。

 

「(やべえ、女の子にぶつかっちまう! なんとか避けねえと!)」

 

 咄嗟にそう思い、無理矢理体を捻ろうとして……善吉の身体が突然横に引っ張られた。

 引(・)っ(・)張(・)る(・)人(・)な(・)ん(・)て(・)ど(・)こ(・)に(・)も(・)な(・)い(・)の(・)に(・)。

 

「んげっ!?」

 

 地面に倒れ込む善吉。なんとか受け身は取れたが、乱暴に引っ張り倒されたような転倒になり悲鳴が漏れる。

 それを見た怒江が呆れたように善吉を見下ろした。

 

「もう、どこ見て走ってんの! 危うくぶつかるところだったわよ!」

「いてて……わ、悪かった。ぶつからなくて良かったよ。

 ってあれ、あんたその制服……箱庭学園の制服じゃない……よな?」

「そうよ? 私昨日付けで転校して来たの」

「……このタイミングで転校だって?」

「あーっ、いたーっ! 善吉くん見ぃーっけ!!

 もぉーっ! 一緒に帰ろうって言ってるのに何ちょこまか逃げてくれちゃってるのよ!」

「げっ、お母さん!? 完璧に撒いたと思ったのにもう追いついてきやがったか!」

「…………『善吉くん』?」

 

 この時、原作と違い怒江はめだか達から逃げるために慌てていたわけでもなく、ぶつかってこけたわけでもなく、善吉に一目惚れしたわけでもなくて……残念ながら冷静であった。

 故に、瞳が呼んだ名にも冷静に反応してしまった。

 

「ちょっと来なさい」

「えっ……あれっ!? 俺浮いてる!? なんかが襟首掴み上げてる!?」

「ちょっ……善吉くんっ!? いつの間に舞空術なんて覚えたの!?」

「覚えてねーよそんなのォ!?」

「『愛の腐花(ラブラフレシア)』ッ!!」

 

 怒江の出したスタンドが善吉を掴み上げているのだ!

 毒々しい紫色の、枯れ木のような見た目のスタンドだ。その配色だけでなく鋭い眼光を見れば、一発で『ヤバい』と直感できるだろう。女性らしいラインの体を隠すように巻き付いたツタは服のようでもあり、両手の甲あたりに集まったツタが形成している穴は砲(・)のようでもある。

 ……まあもっとも、その姿が見える人間はここにはいないが。

 

「口閉じてないと舌噛むわよ」

「はっ、はいいぃ~っ?!」

 

 ラブラフレシアが怒江と善吉を抱え、スタンドの脚力をもって校舎の屋上目掛けて飛び上がった!

 

「うわあああぁぁ……!?」

「善吉くーん!? し、しまった! あの子はまさか江迎ちゃん!? 昔見た彼女の過負荷(マイナス)じゃああんな超能力じみたことはできなかったはずなのに!? しかもあの様子はまずい! 急いで追わなきゃとんでもないことに――」

「『おや?』『おやおやおや?』『ひょっとして人吉先生ですか?』『これは奇遇ですねお久しぶりです!』」

「!?」

 

 善吉を追おうとした瞳の行く手を遮るように、偶然を装った球磨川が現れた。

 

「球磨川くん!?」

「『まさかこんなところで会えるなんて嬉しいなぁ!』

 『そうだ!』『僕帰りに本屋さんに寄ってエロ本を買おうと思ってたんですけど』『人吉先生』『よかったら選ぶのを手伝ってもらえませんか?』」

「……あーらデートのお誘い? こんなおばさんをからかうもんじゃないわよー球磨川くん!(くっ……助けに行くまでなんとか耐えてよ善吉くん!)」

 

 そうして人知れず瞳と球磨川が戦い始めた頃……校舎の屋上では。

 

「げっほ! ごっほ! し、死ぬかと思った! ジェットコースターの十倍こええ!?」

 

 何に掴まることもできず、両手両足をプラーンとさせて一気に飛び上がる羽目になったので無理もない。

 冷や汗をかいている善吉を、怒江は冷ややかに見ている。

 

「あんたが『人吉善吉』?」

「な、なんだよお前は!? 確かに俺が人吉善吉だけどよ!?」

「…………」

「……はッ!?」

 

 猛烈にイヤな気配がして、善吉は飛びのいた。特に何か理由があって、ということではない。ただ、直感的にそう感じただけだ。

 

「……やっぱり見えてはいない。でも、勘は良いようね」

 

 飛びのく直前まで、怒江のラブラフレシアが善吉の顔の真ん前で手のひらを広げていたのだ。

 即反応とはいかなかったが、スタンドが見えない人間としては破格の勘の良さと言えるだろう。

 

「単刀直入に聞くわ。奏丞くんとどんな関係なの?」

「またアイツ絡みかよォ!」

 

 『またとはなんだまたとは!』と善吉の心の中で奏丞が抗議しているが、それは無視した。

 

「地下じゃ随分親しげだったわよね……ちょーと馴れ馴れし過ぎないかしらぁ? 流石にそこまでとは聞いてないんだけど? まさか腐ってる? 腐ってるの? 腐ってるなら更に腐らせれば、きっとすぐ土に還ってくれるでしょう……」

「なんのことかはわからねーが……!」

 

 怒江が何者なのかは相変わらず善吉にはわかっていない。ただ、それ以外のことについてはかなりわかりやすい状況だ。

 それは命の危険がすぐそこまで迫っているということと……

 

「(奏丞(アイツ)は変な女に好かれやすいからなぁ……!)」

 

 まあ、そういうことなのだろう。

 そしてなんの冗談か、この女は善吉と奏丞の関係性を疑っているのだ。何がどーしてそんな考えに至ったのかはわからないが、そんなことは考えるだけで身の毛がよだつ……!

 しかしそうなると、重要になるのはどう弁明するかだ。

 耳障りのいい言葉でこの場を凌ぐことはできるかもしれないが……そんな考えは善吉の主義に反する。

 

「(コイツの勘違いは冗談にもならねーし弁明しないといけねーが……適当なウソで俺とアイツの仲を誤魔化したりはしねェ! 痩せても枯れても漢善吉、人様に自慢できないような関係は何一つ存在しないぜ!)」

 

 だからこそ、善吉は怒江にきっぱりと言い放つ!

 

「奏丞は俺の大親友だ!! 十三年前に出会ってからずーっと付き合いのある、自慢のダチだぜ!!」

 

 怒江に気圧されることなく、堂々と!

 

「…………大、親友?」

「おう!」

「十三年前からの付き合い……!?」

「そうだぜ!」

「……うふ、うふふふふふ」

「!」

 

 不気味に笑い出した怒江に、善吉が身構える。

 

「言いたいことはそれで全部かしらぁ? それじゃあ『大親友さん』には色々と喋ってもらいましょうね……!」

「……! 上等だ! かかってきやがれ!!」

 

 相手は十中八九球磨川の関係者だ。勝負すればどうなるか……善吉は結果を薄々察しつつも、それでも吠えてみせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――善吉くん生きてるッ!?」

 

 球磨川を振り切った瞳が、屋上に駆け込んだ。

 

 ――せめて、失ったのが手足の二本三本であれば命だけは助けられる。それでも最悪は……

 

 そんな悲壮な覚悟でやって来た瞳は、予想以上の光景を目の当たりにする。

 

「――それでアイツ、激辛たこ焼き当たったせいで次の日トイレに籠りっぱなしになっちまってよ! そりゃもー笑えるほどげっそりしてたぜ」

「えーそうなの? トイレの話は手紙に書いてくれてなかったよー!」

「カッコつけなとこあるし、あんまり情けない話は女子にできなかったんだろ? 間違いないね!」

「もーしょうがないなあ奏丞くんはっ! そんなに私には格好つけたかったのね! まあ男の子だし、女の子に見栄くらい張りたいものよね! うふふふふ!」

 

 ――なんか五体満足で、和気あいあいと話してるー!?

 

「ぜ、善吉くん? 随分仲、よさそうね……?」

「あっ、お母さん! この子スゲーぞ! なんと奏丞と十三年間ずーっと文通してたんだってよ! カーッ! アイツもスミに置けねーな!」

「え、人吉くんのお母さん? どーもはじめまして~。江迎怒江と申しますぅー」

「こ、こんにちは。人吉瞳です。実ははじめましてじゃなくて……江迎ちゃんが二歳の頃に箱庭総合病院で問診させてもらったんだけど、覚えてるかしら……?」

「そーなんですか? ごめんなさい、全然覚えてませんねぇー」

「そ、そう……まあ十三年も前のことだしね……」

 

 わ、わからない。一体何がどうしてこうなったのか。さっきの様子だと絶対に死人が出ると思っていたのに。

 

「てっきり奏丞くんを人吉くんに寝取られたのかと思ったけど、勘違いで安心したわ~。十三年も一緒にいて大親友止まりなら何の障害にもならないわね!」

「善吉くんどういうこと!? 一人息子が男に走ってたのなら流石の私も口挟むわよ!?」

「俺だってイヤだわ!? 大親友止まりで十分だよ! 俺にはちゃんと好きな女の子がいんだよ!」

「えっ、だれだれ教えなさいよおー?! いや待ってそれってもしかして!?」

「うおっ!? 流石女子は恋バナの喰い付きすげェな!?」

 

 善吉が無事だったのは、返答の仕方が良かったおかげだった。奏丞と善吉の関係性が怒江の許容範囲内だったこともあるが、仮に誤魔化そうとしていたら怒江はそれを見抜き、善吉も今頃ただでは済んでいなかっただろう。誠実に答えたからこそ、二人は仲良くなれたのだ。

 とはいえ元々原作でも相性は良かったので、必然といえば必然の結果かもしれないが。

 

「あーでも、もし十三組の人ならまずいかもねぇー……球磨川さん、十三組の生徒(エリート)は皆殺しって言ってたし」

「「!?」」

 

 唐突に投げ込まれた爆弾発言に人吉親子が驚愕する。

 

「なんだ皆殺しって! そりゃどーいうこったよ!? それが球磨川の転校して来た理由なのか!?」

「江迎ちゃんもその計画に加担してるってこと?! なんでそんなことを!」

「球磨川さんには恩がありますのでぇ。その恩返しってところですねぇ」

「そんな……奏丞くんが聞いたら悲しむわよ!?」

「大丈夫ですよぉ」

「なにがっ……うっ!?」

 

 瞳は思わずたじろいだ。じっとりとした怒江のほほ笑みに。

 

「私達、わかり合ってるんですものぉ! 奏丞くんが何しようが私が何しようが互いに受け止めて受け止められるのが当たり前ですからねぇ! 彼の見栄が可愛く思えるように、私がちょーっとヤンチャしても彼はちゃあんと受け止めてよしよしってしてくれますから! だから私、なぁーんにも心配してませんし、球磨川さんへの恩返しも良いことしたってむしろ褒められちゃうでしょうね! 人吉くんも恋人になるならそういうフウに互いを受け入れ合えるような相手を見つけた方がいいわよ? まあ私達ほどラブラブな関係にはなれないでしょうけど、上ばっかり見てたらキリがないからね! あんまり私達を参考にしてたら自分とのギャップにがっかりしちゃうでしょうし、諦めるところは諦めた方がいいわよ? だけど何にしたってまずは私達のことよね。大親友の人吉くんならきっと私達を祝福してくれるでしょう? ゴールインしたら人吉くんにも友達枠でスピーチをお願いすると思うから、今のうちに祝辞の内容を考えておいてね。あんまり長々話されちゃうとせっかくの式がグダグダになるから、ちょうどいいのを頼むわよ!」

「なっ、なっ……!?」

「江迎ちゃん!」

「はい? なんです?」

 

 瞳は愛用している針と糸を取り出す。得意の縫(・)合(・)格闘技で使う、特別製の得物だ。

 

「そこまで言うならここで見逃すわけにはいかないわ! 球磨川くんの計画について知っていることは全部吐いてもらうわよ!」

「面倒って言ったらどうするんですぅ?」

「こうするわ!」

「ま、待てお母さん!?」

 

 怒江を拘束すべく、糸を通した何本もの針を投擲する。その針はコンクリートを容易く貫き、その糸は人を気安く縛れるほど頑丈だ。

 傍で見ていた善吉でも視認困難なくらい迅速な針攻撃に対し、怒江は。

 

「――遅すぎて蠅がたかりますよぉ~」

『シャアラララララララァッ!!』

 

 ラブラフレシアが全てを問題なく弾き飛ばす!

 

「なんですって!? 空中で弾いた!?」

「こっ、この感覚は! このスゴ味は! 奏丞と同じッ!?」

 

 棒立ちだったはずの怒江に攻撃が当たらない。だがそれだけではない。

 

「(こ、これは……!?)」

 

 瞳が弾かれた針を見ると、どれもグズグズに腐っているのだ!

 

「(間違いない、この腐食は確かに江迎ちゃんのスキルの効果! でもあくまで触れた物の腐食が彼女の過負荷(マイナス)だったはず! どういうこと!? 新しいスキルを得ていたの!? それともまさか……変質したの!?)」

「なんで今、子供に武器を向けたんです? これって暴力ですか? これって暴力ですよね?

 だったらこれは……正当防衛ですよねぇ?」

「! しまっ「江迎ッ!」善吉くん!?」

 

 母親を守るように、善吉が二人の間に割り込んだ。

 震えを抑え歯を食いしばって、怒江を睨みつける。

 

「……っ!」

「…………」

 

 しばし見つめ合った後……怒江は二人に背を向けた。

 

「……ちょっと驚かせただけよ。力ずくでどうこうできるなんて思われたくないから。あなた達に何かあったら、きっと奏丞くん悲しんじゃうわ」

「お、おい、どこ行くんだよ」

「帰るのよ。球磨川さんにも今日のこと報告しないといけないしね」

 

 歩いて行く先は屋上の出入り口……ではない。屋上の縁に向かって歩いている。

 

「……江迎ちゃん」

「…………なんですぅー?」

「無防備なあなたに武器を向けたことを謝らせて。……ごめんなさい。話し合いを真っ先に放棄するなんて、大人として恥ずべき行為だったわ」

「……ええ。話し合いで済むならそれが一番! 暴力なんて、良くないことですもんねぇ」

 

 そう言って、怒江は屋上から飛び降りた。

 ええっ、と善吉は思うものの、自殺のわけもない。心配するだけ無駄だろう。

 

「……お母さん、戻ろうぜ。今の情報を皆と共有しておきたい」

「そうね、そうしましょう。球磨川くんの目的もわかったし、今の江迎ちゃんがどれくらい危険なのかも少し見えて来たしね」

「……アイツ、危険なのかな?」

「……少なくとも、手当たり次第に壊しているわけじゃない。物も、人も。それが事実。

 だけど彼女の能力がわからない内に戦うのは危険。それも事実。

 ……どう対応するかは、今後の方針次第ね」

「……ああ、そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 ――さて、生徒会執行部のめだか、善吉、高貴、もがなに加え、真黒、くじら、いたみ、瞳が揃ったところで。

 

「えー、今日は色々と衝撃情報がありました。なので改めて、情報を整理してみたいと思います」

 

 共有された情報を箇条書きした黒板を、高貴が指示棒でピシッ、と指し示す。

 

「連中がことを起こす前にマイナス十三組――球磨川の目的がはっきりしたのは収穫です。

 『新設クラス用の教室確保』。そして『十三組全員の抹殺』。

 教室については真黒さんが軍艦塔……旧校舎教室の貸し出しを了承していましたが、その後彼らからの連絡はまだ来ていない状況です」

「もし旧校舎(ここ)の教室を使うなら彼らの監視はしやすくなる。不意に鉢合わせしたら大変だから、その分僕達がここを使いにくくなるだろうけどね」

「そして、もう一つの衝撃情報……真黒さん。宇城クンの能力は、異常(アブノーマル)とも過負荷(マイナス)とも違う能力とのことですが」

「そうだね。彼はスタンドと呼んでいる、まったく別種の能力だ。

 江迎ちゃんという彼と同じスタンド使いが敵になってしまった以上、皆の安全のために説明する必要がある。

 元々使う人間が二人しかいないから、秘密にしていた方が戦いで色々有利になるってことで、彼と相談して秘密を知る人間は最小限にしてたんだ。

 僕は彼のトレーナーをするにあたりスタンドのことを教えてもらっているから、本人以外で一番詳しいのは僕だろうね」

「…………フッ」

「(く、くじらちゃんがなんか不敵に笑ってる……? ここは怒ったりするんじゃないの……?)」

 

 真黒の『一番詳しい』という言葉に対し、くじらが予想外に冷静なので、いたみは逆にハラハラしてしまっていた。

 

「江迎ちゃんも本来は過負荷(マイナス)のスキルしか持っていなかったみたいだ。それを奏丞くんがスタンドに改造したのが確か十三年前……二人が出会った時らしい。

 過負荷(マイナス)は本人の精神に密接に関わる能力だ。そしてこの後説明するスタンドもまた、本人の精神力が全てという点で共通しているからこそ、スキルをスタンド化できたのかもしれないね」

「……気になることが山盛りですね。詳しく教えていただけますか?」

「もちろん。ただ、説明するなら僕よりも適役がいるよ」

「それって……」

 

 チラリと真黒が時計を見た。

 

「そろそろ来る頃だ…………ほら来たよ」

「(ガラッ)真黒さーん、入るっすよー…………あれ、何この空気」

 

 教室に入って来たのは、ようやく退院して来た全身包帯まみれの奏丞だった。真黒から『用事があるので来てほしい』と言われてノコノコやって来たのだ。

 部屋に入った瞬間、ジトっとした目線が集中する。奏丞が黒板を見れば……そこにはスタンドという文字が。

 

「……………………部屋間違えまし(ガッ)はわっ!?」

「まあ待て」

 

 めだかが音速で踏み込み、奏丞がそっ閉じしようとした扉に足を挟んだ。そのまま扉を強引に開け放ち、奏丞の肩に手を回す。

 めだかのおっぱいが体に当たっているが、皆の視線が痛くて生憎それどころではない。

 

「まあまあまあまあ怪我人はここに座れ」

 

 めだかが奏丞を椅子に座らせ、

 

「あらあらあらあら包帯の巻きが甘いからちょっと動かないでね♪」

 

 瞳が奏丞を椅子に縛り付け、

 

「さあさあさあさあ皆の前でスタンドのことを話してもらおっか☆」

 

 いたみがにっこり笑ってミニガンの銃口を奏丞に突きつけた。

 

「あわわわわわ……」

「宇城クン答えろよ」

 

 そして怯える奏丞に、高貴が。

 

「質問はすでに……『拷問』に変わっているんだぜ」

「ま、待ってくれェ! 俺の命はッ! この生徒会仲間の俺の命だけは助けてくれますよねェェェェ~~ッ」

『だめだ』

「ひいいいィィィッ!?」

 

 こうして奏丞はようやく、長年秘密にしていたスタンドのことを皆に話すことができたのであった。

 隠し事を打ち明けられてメデタシメデタシだね。

 

「最近碌な目にあってねェ~~~~!」

 

 






 スタンドについては基本原理・原則的なことを話したことにします。スタンドが精神エネルギーの塊だとか、スタンド使いは元々知る限りでは奏丞しかいないとか、色んな能力があるだとか。
 ただ、ちゃんと説明シーンを描写しようとしたらすんごく長くなるのでカット。要所要所で「そういえばアイツの話だとそうだったな」的な感じで既知情報扱いする予定です。

 また、各スタンドの詳しい能力までは話してないことにします。
 そんなことしてたら日が変わる、という言い訳もありますが……もっとも『重要な事』は! いいかい! もっとも『重要な事』は! 『あくまでスタンドに振り回される原作キャラ達を書く事』さ! 僕は理屈とか整合性とかそういったものを、これから乗り越える!!

 ……長年スタンドについて教えてもらえず自力で調査していたところに、成り行きとはいえ突然自分以外にもスタンドの秘密を全部バラされちゃったくじらの心境についてはたぶんその内語ります。
 一応悪いようにはなりませんよ~。

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