突然だが私は転生者である。
頭おかしんじゃねーの大丈夫?? 病院いく?? とおっしゃる方もいるかもしれない。私の頭がおかしいのなら、その方が正直私も救いがあった。寧ろそうであって欲しかった。だが残念ながら事実である。
生前の私は平成の世に生きる20代前半の女だった。至って一般的な生活を送っていた筈なのに前世の記憶をもって転生とはこれいかに。
まあ、まだただの転生ならそれでよかった。いや、よくないけれど“まだ”マシだったのだ。
何故か転生した先が大正時代初期だったんですけど。しかも女の象徴である胸がフライアウェイした上に、股間に汚ねぇバベルの塔が合体してしまったんですけど。
つまるところ世界各国がバチってる時に転生タイムスリップし、男性になりました!ハッハッハッハッ……………笑えねぇよ!!!!!!
第一次世界大戦は私が子供の頃に終結したが、次に来るであろう第二次世界大戦がやばい。このままいくと私が二十代ぐらいにモロかぶりする。ちなみに今世の私の性別は男である。此処まで言えば分かるな?
出兵まったなし!!!!!
平和ボケしまくった平成人が軍人になるとかどう足掻いても無理。そもそも『天皇陛下万歳』という帝国主義が身に合わない。一応は日本人だったので天皇に対する敬意もあるが、こちとら民主主義で徹底彫り込み教育された人間だからな…。民主主義にも悪いところがあるとは分かっているけれども…。
どうしたらいいのか、ない頭を悩ませて悩ませて考えたのは『政府に金を握らせて出兵拒否したらいいんじゃね? 会社の社長なってガッポガッポ金を稼いでやるわァアアアア』である。我ながら頭が足りていない。
転生者のアドバンテージを生かして赤ん坊の頃から必死に勉強した。海外逃亡も視野に入れていたため、英語、フランス語、スペイン語、ロシア語は話せるようになる為に喉が枯れるまで練習。
生きるためにありとあらゆるものに手を伸ばし、文字通り本が擦り切れるまで読み込んで習得した。
自分は決して賢い人間ではない。ちょっとしたミスで死ぬ。しかもこの世界は人種差別なんのそのな世界。学がなければ死ぬ。
苦手なコミュニケーションを駆使して人脈を築きつつ、なんとか大学卒業。今迄の経験を生かして一旗揚げてやる!!!と意気込んでいた時。気配を全く感じさせないまま、背広を着た一人の紳士が近寄ってきた。杖をつきながら彼は私にこう言ったのだ。
「――――――試験を受けてみないか」
お前の望むものをやろう。可能性をくれてやる。そう不敵な笑みを浮かべながら、日時と場所を伝えて颯爽と去っていった。
いつもの私なら紳士であろうとも、不審者な男の戯言など完全無視を決めていた筈だ。だがこの時ばかりは「典型的な天皇陛下万歳の演技を見破られた?!」という事実に驚愕しつつ「お金をガッポガッポ稼ぎたいという考えもばれた…? エッ、非国民として見られてる…?」と思ってしまってブルブルと震えた。
あ…これ行かないとシメられるわ。
そう思った私は慌ててその試験に臨んだ。けどその試験の内容がおかしい。暗闇の中ラジオを解体して、また同じ形に戻してみろと言われたり、今迄歩いてきた道のりの歩数は? などと問われたりした。更には真冬の海での着衣水泳。死ぬわ。
いやいやいや無理だから!!!! 死ぬから!!!!!一般人できないから!!!! やっぱり非国民として見られてる?! シメられるの私?! だって明らか一緒に試験に臨んだ人たちの数どんどん減ってるもんな! 絶対これ出来なかったらシメられるんだ!!
前世の変な方向にオタクだった友人から無理やり覚えさせられたラジオ解体技術や、他の前世の友人とのスパイごっこしていた経験が役立ち、なんとか数々の試験を突破していった私。最終的には私を含めて計9人となり、その9人は私に試験を受けないかと話を持ちかけてきた紳士――――…結城中佐によってスパイ育成されることとなった。D機関というスパイ組織の中で。
……なんでやねんんんんん!!!!!!
気づけよ私!!!!! どうして最後の最後でしか気がつけないんだ私!!!!! 非国民として罰せられるなら普通牢屋行きだろう馬鹿野郎!!!!! こんな訳わからない試験をさせられてる時点で察せよ自分!!!!
しかもここジョーカー・ゲームの世界じゃねーかよ! 結城中佐とスパイ、更にはD機関ときたらジョーカー・ゲームの世界以外にありえない! 他の私ってばタイムスリップじゃなくて異世界トリップしてたのかよ!!
え、無理無理無理無理。あんな超人軍団の一員としてスパイ活動とか無理以外の何者でもない。
だって考えてみてくれ。私はあくまで前世のアドバンテージがあるだけなのだ。
「おっま、今迄歩いた道のりの歩数や部屋の内装を記憶しておけるのは人間じゃねぇからな!」と机ドンする人がいるだろうが、これのも前世の友人とスパイ遊びのお陰でできたようなものだ。そのスパイごっこは小学校から大学までやっていたぐらいなのだから出来て当然だろう。年季が違うんだよ年季が。いい年してアホな遊びをしていた自覚はあります。
だが“他の奴ら”…原作でのD機関メンバーは違う。
正真正銘の天才。頭のネジが一本外れている超人様である。私が数十年かかってようやく出来ることを、たかだか数ヶ月でやってのけてしまう本物のハイスペック人間。
溢れんばかりの「これくらい自分に出来て当然」という自負心の塊。ある意味で人でなしであり、自分しか信じてないゆえに最強。スリルを求め、死と生の瀬戸際でのゲームを楽しんでいる。そんなビックリ人間ショーチームなのだ。
こいつらに混ざってスパイとか無理だから。私はぶっちゃけ自負心なんてもってないから。できれば平穏な人生送りたいから。
でもなあ…辞表出したくても結城中佐が怖すぎて出せないYO!!!!
魔王と言われてるだけある凄みよ。目を合わしただけで震え上がるからね。結城中佐マジ結城中佐。流石は作中屈指の最強黒幕キャラである。
もういっそ「実は…私の心は女なんです!!!!」とでも言うか?? 実際本当だし。結城中佐は「女は感情で人を殺すからスパイに向かん」とおっしゃる方だから、私の心が女だと知れれば…!!!!!
いや駄目だな。絶対「貴様は何を言っている?」とか言われて減給されそう。ただでさえ此処での癒しは給料だけだというのに。癒しが金とかこれいかに。荒みすぎだろ私。
というかオカマだと思われたら社会的に死ぬわ。その上、他のメンバーにバレたら、からかわれるどころの話ではない。マジで致命的なミスである。てか内部事情知りまくった奴を辞めさせるわけにもいかないよね。
…ああもうなんでこんな時代、こんな場所に産まれちゃったかなあ…!
ハアと小さくため息を零す。すると隣から肘をテーブルについた田崎が意外そうに此方に目を向けた。ああいっけね。私は内心舌打ちを零す。
「ため息をつくなんて珍しいな、藤原」
「たまにはため息をつきたくもなるさ。…ーーーー福本、水一杯貰っていいか?」
「ああ、待ってろ」
男のくせにやたら割烹着が似合う福本が、コップを取り出して水を注ぐ。私は礼を言ってから受け取り、静かに飲み干した。
余談だが『藤原』という名前は私の偽名である。普通だし、中々にいい名前だと案外気に入っています。
まあ、それよりも問題は目の前の奴らだ。私の前では今、原作メンバーである神永、甘利、三好、波多野、実井が『ジョーカーゲーム』を行っている。ちなみに田崎、福本、小田切、私は横でタバコを吸ったり、読書をしていた。
あのジョーカーゲームを見れるなんて…! と最初は感動したが、このゲームはただのゲームではない。表向きはポーカーと称している『ジョーカーゲーム』。その実態は周りの観客を買収して味方につけたり、嘘のサインを送って場を掻き乱すといった、勝つためならなんでもござれな神経を磨り潰すゲームなのだ。
最初の内はなんとかついていけたが、今はもう無理。サインとか多様化しすぎてついていけない。見るだけにとどめている現状である。自分無能すぎワロタ。
正直、これがわからない時点で本気でスパイやっていけるのか悩んでる。絶対本番になったら死ぬやつじゃん。私はどうすれば…。
水を飲んだまま悶々と考えていると、ゲームをしている三好と目があった。トントンとテーブルを叩いてるので何かサインを送っているのだろうが、ごめん分からん。多分、頼まれているサインなんだろうが…。
(というか昼間っから神経を磨り潰すゲームやめろよな…次講義あるんだぞ…!)
次の講義は結城中佐直々の講義である。無理難題を吹っかけてくるから本当にやめて欲しい講義ナンバーワンだ。意識を多様化するとか意味わかんねーから。自白剤訓練も意味わかんねーから。
私が内心でうなり声をあげていると、横から小田切が「藤原は次のゲームに参加しないのか?」と聞いてきたので私は表情が引きつりそうになった。しねーよ。したくもねーよ。なんとか表に出さないように努めて口を開く。
「私はあまりゲームが得意じゃないんでね」
「またまた」
「これでも本当のことなんだけどなあ…。正直ついていくのがやっとだよ」
小さくそう零すと小田切が「ご冗談を」と呆れた声を出した。肩をすくめる欧米風の動作付きである。嘘じゃないんだけど。本気の心の叫びなんだけど。信じてくれなくてツライ。
あまりのストレスに胃が再び痛くなってきたので、講義前にトイレに行こうと立ち上がる。その瞬間ふと床に目線を落とした。
アッ、波多野のカードが机の下に落ちてるじゃん。落としちゃったのかな? と思ったので立ち上がるついでに拾い、私は波多野の袖にスリの要領でカードをサッと入れた。これでよし。波多野はプライド高いから、カード落としたとなると恥ずかしがりそうだからなあ…これでいいだろ。
「ちょっと厠いってくる」
「ん〜」
ヒラヒラと手を振りながら扉を開けたその時、私は知らなかったのだ。
波多野が不敵に笑みを浮かべたことも、波多野がこう言ったことも。
「フラッシュ」
波多野はカードを机に叩きつけ、勝利の言葉を宣言した。
♂♀
厠に行っていたら講義の時間になっていた為、慌てて教室に入った。すると何故か波多野から「ほい」と手荒げに私のお気に入りの銘柄のタバコを渡してきたんだけど。エッ…なんで? お前たちから無償の施しを受けるとか恐怖以外の何物でもないんだけど。後から何か請求されそうで怖い。
さらには三好からは「一本取られましたね」と肩をすくめて言われて更に恐怖を感じた。何が?! 一本取ったって何を?! 知らないうちに私ってば三好に喧嘩売ってた?!
あまりの訳が分からなさに私は小さく笑みを浮かべるだけにとどめた。余計なことを言えば墓穴掘るに決まってるからな。何も言わないのが吉である。私偉い。
そんな恐怖を含む戸惑いも結城中佐が入ってきてからは一瞬で空気が変わった。流石は魔王。
今日はどんな無理難題吹っかけてくる…? と恐々した様子で窺っていたら、今回は「すり変わる人になりきってみよう」というまだマシな内容だった。その人物の経歴、癖、仕草、言動などをコピーしきり、成りきれということ。
よく考えたらマシじゃなかった。覚えるの辛すぎ。
各自に成りきる架空の人物の書類が配られたのだが、私が成りきる人物を見て思わず固まった。書類を見た瞬間、咄嗟に結城中佐を見てしまったほどだ。ちなみに睨まれたのでサッと書類に目線を戻した。ツライ。
(何故に私が成りきる人物が…女性…)
エッ私の思惑が結城中佐にバレてる?! 何それ怖い。作中、結城中佐は何でも知ってる感ハンパなかったが、現実でもそうなのか。というかこれは「例えお前の心が女性でも逃さんぞォ」という心の表れ? いや、脅し? 結城中佐怖すぎかよ。
私の今世の身長は162cm。男性の癖に身長低ッ?! って思ったやつ校舎裏な。これでもこの時代の成人男性の平均身長だし、同僚の波多野も同じ身長だから!!!!
じゃなくてだな!!!! だから女性役まわされたのか??? 身長の低さゆえに?? と思った時期もありましたが、同じ身長の波多野は男性役だった。イジメかよ。その事実を知った神永と波多野には大爆笑された。イジメかよ(二度目)。
ムカついたので生前のメイクテクニックを駆使して見返してやると思った。プライドは高くないが、こうも身長言われると腹立つ。
結城中佐から教わったコピーの仕方などを頭に叩き込み、なんとかその女性を模範してみせる。何故か化粧道具や衣服も頂いたのでそれを着込み、生前のメイクテクニックを駆使させていただいた。
ちなみに一人一人別室でそれを行い、その後そのままの状態で講義を受けるとのことなので俄然やる気が湧く。
あまりにメイクが楽しすぎて気合が入り、講義室に入室した際にメンバーから「まじかよ」という顔をされたので正直どうしようかと思った。
やばいこいつガチモンのオカマだと思われた? 周りの顔が唖然としてんぞ。だけど結城中佐はニヤリと笑ってんぞ。なにこのカオス。
私はその焦りを隠すように小さく笑ってみせる。私のコピーした女の人の設定は華族のご婦人。所謂、金持ち貴族の嫋やかな女性である。
「あらあら、どうしましたの? 早くお席に着いた方が良いのではなくて?」
「こりゃあ、こんな綺麗なご婦人に言われたのなら席に着かざるを得ませんなあ!」
小太りの将校役のコピーを任された甘利が大きな声で笑ってみせる。もう甘利のフォローが優しすぎてツライ。流石は最年長なだけある。
横にいる神永に「いつのまにこんなメイク技術…」という目線を頂いたので私は咄嗟にあの言葉を発していた。某小さくなっても頭脳は同じな名探偵にでてくる彼女の言葉を、オカマ認定されたくないが故に言ってしまった。
「A secret makes a woman woman. 」
女は秘密を着飾って美しくなるのよ。
自分なに言ってんだ。今世の私は女じゃないんだぞ。寧ろオカマ認定されるやつ。苦笑いをこぼした神永を見てそう思った。
♂♀
『藤原』という男はおかしな人間である。『三好』という名を与えられた男は、藤原という同僚にそう結論を下している。
このD機関でスパイ育成プログラムを受けている人間達は、揃いも揃って自負心の塊だ。言動のちょっとずつに彼らの自信が見え隠れしているのが分かるほどである。だが、彼らにはその自信を持てるだけの能力があり、実行に移せるほどの有能さを持ち合わせていた。
だからこそ、その余りあるほどの自信が自分たちにはある。
だが藤原は“自負心”というものが全くもって見受けられない。
彼の言動の殆どが「自分は運がいい」「死ななかったのは運が良かった」だとか「皆のようにはいかないなあ…」などなど自分を貶す言葉である。演技ならそれでいい。そうやって味方である自分たちに植え付けていくのも策の一つである。敵を騙すのなら味方からとも言うからだ。
しかしこの男を観察しているうちに『この男は本気でそう思っているのでは』と思うようになった。
この男は非凡な才を持っている。自分たちと同じことができ、結城中佐の訓練を乗り越えていけるのだから当たり前だ。
だがこの藤原は中身は至って一般人に限りなく近い。
一般人と同じで面倒なことは全力で面倒くさがる上に、スリルなど全くもって求めてはいないようだった。平凡な生活を心より求めている。普段から面倒くさそうに中佐の講義を受けていることからもその事が窺える。
何故彼がこの機関に入ろうと思ったのか…正直、謎だ。それ程までに藤原は『平穏』を求めていた。この男はどうして機関に入ったのか。
その答えは直ぐに見つかった。この藤原という男、平凡な癖して平凡ではないからだ。
この機関に入る前から彼の思想は民主主義寄り。帝国主義が徹底した日本において珍しいほどの民主主義派だ。本当にどこでその考えが植え付けられたのかと、呆れたくらいの考えの持ち主だった。さらには卓越した技術。
つまり彼は『周りとあまりに違いすぎるが故に入らざるを得なくなった』のだ。自分と同じ人間を見て安心するために。
(哀れだ。藤原という男は哀れだ)
誰もが喉から手が出るほど欲しい有能さを持ちながらもそれを拒む。そんな人間ほど悲しいくらいに天才なのだ。藤原のように。
現に藤原の咄嗟の動きにメンバーがハッと驚かされるのも多い。例とするならば、先ほど行ったジョーカーゲームが挙げられるだろう。
藤原は滅多にジョーカーゲームに入ることはない。ノーマークの人間としてそこに存在する。所謂スリーパーのように沈黙を保つのだ。だが突然動き出し、ゲームに波紋を作り、掻き乱す。
その突然の動きを期待してメンバーは彼にサインを送ったり賄賂を渡したりするのだが、藤原は気分屋である。滅多に動かないので役に立たないのが大概だ。気にする方が負けである。故に先ほどのゲームで自分が藤原にサインを送ったのも、他のメンバーを欺くための偽のサインだった。
だが波多野は違ったらしい。彼は『今回藤原は自分の肩を持ってくれる』と確信して、フェイクではなく、本当のサインを藤原に送った。あの時藤原の手持ちの煙草が切れていたことに波多野は気が付いていたのだろう。それを見た藤原もこれ幸いと波多野にたかることに決めたに違いない。そうして藤原は波多野を勝たせるべく、ノーマークの立場を利用して皆を欺いた。
(藤原もD機関のメンバーの一人。常に沈黙を保っているとはいえ、侮ってはいけないな…)
だが、自分ならば次は見抜けるに決まっている。絶対に失敗したりなどしない。自分が他のメンバーより劣るなんてことはあり得ないのだから。本物顔負けの女装をする藤原を見つめながら、彼から勝利を奪うその時を想像して目を細めた。
…というかどこでそんなメイク技術身につけてきたんだこの人。藤原への謎がさらに深まった瞬間だった。
♂♀
さて、そんなこんなで私たちD機関の訓練生は訓練を終え、結城中佐から『任務』を渡されるようになってきた。本格的なスパイの任務である。いらないどころの話じゃない。
というか結城中佐は最近私に女装潜入捜査ばっかり回してくるのはなんなの?? イヤミなの?? 闇雲に私の正体バレてますよ宣言なの??
神永とカップルとして嫌々組んだ際に「性別間違えたんじゃないか?」とか言われた時の屈辱ね。やめろよな!!!!! 私は男です!!!!! だから女装なんてしたくないんだよ!!!! つらたん…。
あまりに女装調査まわされ過ぎて、普段も女装するようになったんだけど。というか結城中佐にできるだけ女装しとけって言われた。結城中佐なんで?! もう怖すぎワロタ。女性になれってか? 無理無理無理無理、私は男だよ! 出来れば男の格好したいよ!!!!!!
つーか周りのメンバーは自然に私を女として扱い、エスコートし始めるのだから手に負えないんだけど…。お前ら疑問持って!!!! ツッコんで!!!!!! 結城中佐に抗議して!!!
元女だった私からすれば女装なんてお手の物だけどさあ…。寧ろ楽すぎてやばい。でもね、今世の私からしたらやばくね? 結婚できなくね? 男子力より女子力上がってるんだけどどうしよう?
愛せないかもしれないけど、ちゃんと女性と結婚するつもりでいるんですよ私は!!!!!
そんなある日、私はいつもの談話室兼食堂の部屋に女装をしたまま入室した。そこにいたのは佐久間さん。私の心の良心、佐久間さんである。いやだって彼、まだ一般人寄りだもの。万年人間ビックリショーなD機関メンバーよりは遥かにマシ。ガチガチの帝国軍人さんだけども…。
佐久間さんは驚いたように目を見張り、こちらを振り向く。私は佐久間さんの行動に首を傾げた。
「まさかここには女性もいたのか」
「」
「どうかしたのか? …あっすまない名乗るのを忘れていたな。ここで働かせてもらっている佐久間という」
のんきに自己紹介し始める佐久間さんに一瞬息をするのを忘れた。あまりに不意打ちすぎて。
えっ…まさかの佐久間さん私だと気がついてない? 気がついてないなのか佐久間さん!!! 確かに講義中はちゃんと男装といてるけれど!!!! あっ違う男装じゃねぇ女装な!!!!!!! まだ汚ねぇバベルの塔は聳え立ってるよ見失うな自分!!!!
変装が見破られていないのに喜べばいいのか、私の男子力の低下を嘆けばいいのかわからなくなった。多分これは男子力の低下を嘆くべきである。男子として。スパイとしてはその変装技術の高さに喜べばいいのだろうが、個人的には認めたくなかった。私、今世、オトコノコ!!!
私はその場では仕方がなく「八重と申します。こちらにはお手伝いとして来ていますの」と苦しげに言うしかなかった。私の良心の佐久間さんに女装趣味だと思われたら死ねる。任務のためと言ったら信じてくれると思うけど、微妙な顔されそうなんだもん!!!!!
素直な佐久間さんは思った通り、八重である私の言葉を直ぐに信じてくれたので良かったと思う。その場では適当に話して逃げた。
が、後日D機関のメンバーが「佐久間さんが八重って女の人を探してるんだけどお前じゃね??」とか言ってきだした。更には女装を解いた男の私にまで佐久間さんが「八重という女性を知らないか」と聞いてくる始末。
あ…やばい佐久間さんこれ八重さん気になってる…? 何故? 女性がD機関にいたのが疑問に思ったのか? やばいやばいやばいやばい。
この時ばかりは必死で祈って、女装をできるだけするのをやめてた。だって何度も言うが女装趣味だと思われたくないし。私の心の良心までに女装のレッテル貼られたら泣く。
が、なんでかなーなんでまた会うのかなー…。女装姿で。少し嬉しそうな佐久間さんに思わず天を仰ぎたくなった。
佐久間さん多分探してくれたんだろうな。うれしそうな表情を浮かべる佐久間さんを見て、申し訳なさすぎて胃が痛くなってきた。避けててごめんなさい。女装ばれたくなかったの。一応男の尊厳として。佐久間さんにまで女装男子のレッテル貼られたらどうしたらいいのかわからない。これ任務です。前世女子でしたが、私の意志じゃあありません。任務なんです。
神は私を見捨てたのか…。泣きたい。
ジョーカー・ゲームのオリ主ものがないことに嘆いた結果、自家発電に至りました。pixivでも投稿済みです。
これからよろしくお願い致します。