本編約5万文字
あとがき・解説約1万5千文字
となっております。
ここは普通の世界ではない。
まるでファンタジー世界。
空にドラゴンが普通に居るし、モンスターだって居る。
人々は魔法を使るし、獣人もいるし、
そう、ゲームでは割と有り触れた設定の世界だ。
そういう世界なのだ。
そしてここは喫茶店、ブルーベア。
営業時間中は必ずといって良いほど、ピアノの音と騒がしい人たちの声が絶えない。
今日も快晴であり、平和である。
「ぎゃああああああああああああああああああ!!」
この作品をここまで読んでくれている人達にならば、もう何も言わなくても分かる事だろう。
もはやお決まりになりつつある開幕の叫び声であるし、この出だしに対して説明する事そのものが野暮と言うものだ。
だがそれでもあえて言おう。
ジョン・オ・ラルクの叫びである。
「ブルーベアww今度は何を入れたんだwwwwwww」
このような事態は凡そ予測できていたオイヨイヨは、コーヒーを片手に質問を投げかける。
投げかけられた相手は、実に美人。
ナチュラルブラウンの髪を後ろで結んだ、実に見事なポニーテイル。
男性用バーテンダーの格好である事で、よりそのたわわな胸部や腰のラインが強調されており、男性どころか女性の目をも奪う美貌。
そしてそんな美しさが勿体ないような、そうでもないような。
目の前のグラスをただただ磨くバーテンダーとしての作業に明け暮れるお姉さん。
年齢も不明、本名も不明。
いまだ未婚である。
そんな彼女はそっけない態度のままにグラスを置いて、こう言い放つ。
「何も入れていないわよ」
「は?w」
ブルーベアが何かをやらかしたと思い込んでいたオイヨイヨだけに、呆気にとられる形となった。
しかしよくよく考えれば分かる事がある。
よほどの事態でもない限り、ジョンはこの後すぐに叫びまわってはブルーベアに苦情なり怒鳴りつけたりする、という一通りの流れを忠実に遂行するのだ。
しかし今日はまだそれが無い。
それどころかジョンは今、静かなものである。
それはオイヨイヨにとってすればある意味で衝撃的。
1度限りはジョンは無敵なのだ。2度目は死ぬにしても。
そんな空気を読まずなのか、それとも興味が無いのか、ピアノの音だけは一切調子を崩すことなく聞こえてきていた。
「…ジョン、おい、どうした」
オイヨイヨもあまりの事態に困惑していた。
仮に常識人がここに居たとしても、ジョンの反応の無さに困惑する事だろう。
しかし生憎、それはそれは寂しい事に、客は彼ら以外誰も居ないのだ。
いやそんなことよりも。
オイヨイヨは席から立ち上がり、ジョンヘと近づく。
ジョンは机に突っ伏したまま動かない様子なので、無理に身体を仰向けにしてその状態を確認する。
無理やり目を開け、確認。
次に呼吸を確認。
最後に脈をとり、一応なのか、胸に耳を当てて確認していた。
ジョンの叫び声に駆けつけてやってきたメイド服の女の子、この喫茶店の萌え要素ことミア=ミアミスは、その場の深刻的な雰囲気を早期の段階で察し、口に手を当てて動揺を隠せず居る。
そしてオイヨイヨはとうとう、首を横に振った。
なんとおふざけでも何でもなく、本当に、死んでいるらしい。
開幕から主人公、死んじゃったらしい。
遺言が、ぎゃあああ、らしい。
「…毒が、盛られていたのか…?」
オイヨイヨは恐る恐る、ジョンが飲んでいたジョッキを片手に確認するも、
流石にそう分かりやすく痕跡が見つかる物でもなかった。
「でも、グラスは今磨き終わったものを…っは!」
ブルーベアが状況把握にと語ったその瞬間、可能性が見出された。
仮に誰かがジョンを殺害する為に毒を盛るにしてもだ。彼女が拭き終えてすぐのグラスに毒を盛るのは、極端に言って相当に難しい。というより、タイミングが無い。
なら、その磨いた物、彼女がその手に持つ布巾に毒が仕込まれていたならばどうだろうか、と。
「いや待てブルーベア、俺のコーヒーがそうではないと言っている」
「…そ、そうだったわね」
そう、その説は通らない。
オイヨイヨはジョンと同時刻にここへ来た。
そしてほとんど同時刻に、飲み物は口にしたのだ。
オイヨイヨの片手にあるそのマグカップも、ジョンのジョッキ同様、今し方に磨いて渡した物。
にも関わらずそれを飲み、何ら変化の無いオイヨイヨ。
つまり、別の方法で毒が混入されたのだ。
「…オレンジジュースに入っていたってことは、考えられないか」
オイヨイヨは至って平静に言う。
しかし、一番に動揺しているのはオイヨイヨだった。
思考を凝らす。
もし容疑者をあげるならば……、そしてその容疑者の中で最も犯行が容易いのは……。
まるでフラグかのように作者がやけに描写していた、喫茶店ブルーベア店主のブルーベアが、可能性として非常に高い。
ブルーベアには、何時でも毒を盛るタイミングがあった。少なくとも他の誰よりも、その機会が多くある人物。
彼女は飲み物を提供した人物。毒を混入するだけならば何時でも出来る。出来た。昨日に準備する事だって出来た。
堂々とオイヨイヨやジョンの前で当たり前のように毒を盛るという真似をもやってしまう度胸がある彼女であるし、それくらい堂々ではないとむしろ怪しまれるくらいのものだろう。
しかし、動機が無い。
またそもそもジョンとオイヨイヨは良い金づるであり、何より殺害を目論んでいたにせよ、「ジョンだけを殺し、オイヨイヨを殺さない」のには何のメリットもない。
殺すならば二人を同時に殺害するだろう。その方が危険が無い。確実でもある。
そもそもこんな雑な犯行をブルーベアがするワケもない。いかにも入念さに欠けるだろう。
寧ろこの場合、ブルーベアを嵌めようとしている誰かが居る、とした方が、説得力が出てくるくらいである。
そうなってくると次に怪しくなってくるのは、オイヨイヨ。
実を言えば彼には動機がある。残念ながら、動機がある。
なのだがこれも却下していい。
オイヨイヨに動機があったとしても、それを封殺するだけの理由や約束事が、ジョンとオイヨイヨとの間に存在していた。
この約束事に関してはまた後日語る機会がある為にここではあえて省くが、とにかくそんな約束事は、そんじょそこらの契約などよりもよほど信頼における物であった。
「…ごめんなさい、わ、分からない……」
「い、い、今すぐ電話だ!!CABINに!!」
「わ、わかったわわわ、わ、えっと、え!?どこに電話だっけ!?」
「CABINだCABIN!!」
「もももも、もしもし、CABINの特設“質問何でも答えますセンター”ですか!?」
「そっちの窓口じゃねぇよwwwwwwwwwwwwwwwwww」
あまりに動揺するブルーベアが面白かったのか、現在の状況を捨て置いてまで笑うオイヨイヨ。
お前ら実は真面目に対処する気ないだろ。
と、いきなりジョンが立ち上がった。
その様に腰を抜かすのはミア、あまりの突然さに驚き固まるのがブルーベアにオイヨイヨ。
そして、こんな状況下でも優雅にピアノを弾く女の子。
シュール以外の何物でもない光景だった。
「…んんんんんんんんんんんめぇえええええええええ!!!!
姐さん!もう一杯!!」
オイヨイヨがそばにあった椅子を蹴飛ばし、ジョンの顔へクリーンヒットさせる。
そのあまりもの衝撃に、ジョンはイナバウワーのポーズになる。
と、そんなオイヨイヨに対し椅子を投げる人物がいた。
ブルーベアである。
投じられた椅子によって盛大に転びながら大ダメージを受けるオイヨイヨ。
「んなにすんだよ!!www」
的確にも頭に椅子の角が当たり、それはまず間違いなく劇的な痛さだったと思うのだが、オイヨイヨはいつもの調子で受け答えをしている。
まあ、お前が受けたのは椅子だったけどな。
答えてはいるかもしれないが、全然堪えてないみたいだな。
お前ら本当、人間じゃねえよ。
「ウチの備品を雑に扱わないでちょうだい。
私の身体同然なのよ、その椅子は」
「その“身体同然”の椅子をお前も投げてきただろーがwwwwwwwwwww」
「鉄拳よ」
「木製だろーがwwwwwwwwwwwwwww」
ジョンが先ほどまでマジで心肺停止にあった事などお構いなしに言い合う二人。
ミアはまだ腰が抜けており、しかも突然の事態についていけていなかった。
「はいジョン、もう一杯よ…。
って、毒入ってるかも…」
「ありがと姐さん!」
「あ!」
ふといつものノリで提供してしまったオレンジジュースを引っ込めようと、脊髄反射的にブルーベアはそれを行った。
だが用意されたオレンジジュースをまるで奪い取るかのように、ジョンはブルーベアのその手から軽々と受け取ってみせ、一気飲みを開始した。
毒じゃないにせよ、何か変なものが混入しているかもしれない事には変わりがない。
ブルーベアはジョンのその行動を、ただただ唖然と見つめて固まっていた。
「んっぷっはぁ!!」
だがジョンは、至って健康的な肌色を保っている。
一気飲みまでしておいて、先ほどの心肺停止に類する反応すら微塵も無い。
脳みそまで筋肉で出来てるでろうジョンの事だから、毒をものの数分で打ち負かした挙句、ワクチンでも作ったのではなかろうか。
オイヨイヨがジョンの元へ歩いていき、肩に手を置く。
「どーしたんだオイヨーヨ」
「お前…もしかして…」
何故か涙しているオイヨイヨ。
ワケの分からない展開。
何時になくハイペースだなあと、他人事だった故に他人事風にミアは思った。
「オレンジジュース、美味いか?」
「おう!めっちゃめちゃ美味い!!」
オイヨイヨは、元気いっぱいのジョンのそんな返事に、うんうんと何度も首肯きながら、静かにその場を離れる。
そうして、冷めてしまったであろうコーヒーを静かに飲み始めるのだ。
涙は止まらない。止まってくれないでいる。
「どういうことか説明してもらおうかしら、オイヨイヨ」
「ああ」
と、どこから引き出したのか、オイヨイヨは黒板を取り出す。
かなり状態のいい黒板である。
ミアもその存在を今まで知らなかった備品だった。
「ジョンは来る日来る日と色々と変な物を混ぜられたオレンジジュースを飲み続けていた」
黒板に触れる事をしないオイヨイヨ。
そのままバーのカウンターに手を置いて、深刻そうな表情で喋り続ける。
「今まではその不味かったり、酷かったりするオレンジジュースではない何かを飲んでから、普通のオレンジジュースがやってくる。
故にそれはジョンにとって、口直しになっていたんだ」
「……」
「なのに今日は一発目で普通のオレンジジュースにありつけて…、コイツ、それで一瞬、喜びのあまりに……」
「…ッ。
私、彼に辛い思いを…させていたなんて…」
黒板は出しただけらしい。
ミアは無視して掃除をすることにした。
腰が抜けたとか描写してたが別にそんな事もなかったらしい。
いやいや。
心肺停止するほど喜ぶって何だよ。
お前らなんか可怪しいって思わないのか。
あとブルーベアに至ってはそれ、お前が言ったらダメだろ。
ダメじゃないけどもっと反省しろよ。オオゴトだぞ。
と、どうでもいい寸劇を終えたブルーベアとオイヨイヨは、いつも通りの風景に溶け込んでいく。
いつも通りの日常。
先ほどの事態さえも日常に過ぎなかった。
いやいや。一時的にとはいえ、心肺停止を日常茶飯事みたいな扱いは不味いだろ。
え、それもアリなの?アリな世界なのここ?
お前達は日常的に心肺停止に陥るジョンを見てるの?
日常的に心臓が止まるヤツと一緒に仕事したり、一緒に過ごしたりしてんの?
俺なら逆に心臓止まりそうになるくらいの衝撃を受けるよ絶対。心臓に悪いよ間違いなく。
ここで店の入り口に備え付けられている鐘が鳴った。
ミアだけがその音を聞きつけ、景気のいい挨拶を繰り出す。
しかしこれもいつもの事だろうか。
何か物々しい一人の男が、店内に入ってきた。
マントで全身を覆い隠すような恰好。
まるで入り口を塞ぐようにその人物は立っている。
ブルーベアもこれにはあきれ果てる。
とはいえ、ここで対応を間違えれば面倒な事になるのを彼女は理解していた。
それくらいの事は、簡単に直感出来た。
「いらっしゃい。今日は特にサービスはやってないわ。メニューから好きな物を…」
男は銃を取り出す。そのマントみたいな中でも納まるのか怪しい程大きな物。
それは正確に言うなれば、重機関銃という代物だった。
どうやら背後に隠していたようで、それを軽々と振り回して構え、独特の音を打ち鳴らしてから、
その銃口が、ジョンへと向く。
「それまでよ」
何時銃撃戦が始まっても全く可怪しくないこのタイミングであったが、
機関銃を持った男の首元には、うっすらと銀色に輝く刃が添えられていた。
やろうものなら首を簡単に刎ね飛ばせるだろう。あえて刎ねなかっただけだ。
男は即座に諦めたようで、銃をその場に降ろす。
その刃、刃物、正しくは太刀を添えた人物は、店主のブルーベアだった。
「まったくwwwいっつもそれで止めろってのwwwww」
「うるさいわね。面倒事の火種は貴方達なのに、何で私が」
「姐さんカッケー!!ヒューヒュー!!」
「うるさい。私は喫茶店ブルーベアを守っただけ。あんたを守ったワケではないの。
守るまでもなく貴方なら避け切るでしょう?」
「まーねー」
流石に心臓止まっても平然としている男とその相方である。度胸の方も凄いし、場慣れしているという事か。常識離れしているとも言える。
そのジョンとオイヨイヨは、男の肩を掴んですぐさま地面へと顔を乱暴に押し付ける。
ブルーベアも一応考慮して、その刀を危険が無いように移動。
そして本当に何処にあったのか、ジョンのどこかから紐をスルスルと取り出すオイヨイヨ。
見事なまでに紐で完全に固定され、身動き一つ取れない状態にしてしまった。
盗人とかを捕まえる為のロープなのだろうかそれ。
「さーて、吐いてもらおうか?w
誰の命令で動いてるとかw目的とかwww」
「そーそー、俺たち正義の味方だから、正直に言えば逃がしてもやるぜ」
「たださwww
嘘吐きやがったら前歯程度じゃ済まさねえから、慎重に喋れよ」
脅し上手のオイヨイヨ。
頼りにならないジョン。
とはいえこの二人、昔はそれなりに地獄のような環境で過ごしていたのもあり、二人ともこういう事態には慣れてきっている。脅しもそりゃ上手である。
ジョンの脅しに至っては冗談抜きで滅茶苦茶に怖いのだが、最近はそれを発動する機会もない。
基本はオイヨイヨが程度をわきまえた上で率先して行ってくれるからである。
しかもなんか、笑っちゃっていいのかそうでないのか、脅しに簡単に屈して喋り始める男がそこで寝転がっていた。
「…暗殺目標は、喫茶店ブルーベアの店長、元、殺し屋……、幻影殺しの
そこに居る2名の情報も掴んでいた…、先にお前たちを潰した方がより効率的だろうと思っていたが…、
ど、毒が効かないとはピョン…」
「やっぱ毒入ってたんじゃねーかよ何ピンピンしてんだよボケwww」
「いて!」
オイヨイヨ、相手の語尾がアホらしい事よりも、ジョンにツッコミを入れる。
オイヨイヨの中でジョンの方がそのアホらしい語尾より優先順位は高かったようだ。
まあ、無論だけども、スルーしてたじゃねーかお前。
「バーロー=オイヨイヨ、貴様もそうだぞピョン…」
「お前俺よりぴんぴんしてたじゃねーか!」
「あた!wwだって俺毒効かねーってことすっかり忘れてたんだよwwしゃーねーだろーがwwwwww」
そんな馬鹿っぽい雰囲気の中、平静でいられなかったのはブルーベアだった。
名指しまでされてしまえば当然、他人事ではない。心当たりもあった。
しかも毒は確かに仕込まれていたというのだ。
ジョンやオイヨイヨが最初の犠牲者でなければ、それこそブルーベアかミアが先に何かを口にしていれば、
死者が出ていただろう。
「布巾全てに仕込んだの?」
「ふ…馬鹿が。
コイツラが異常じゃなければ、殺していたのはおま」
「よせ!ブルーベア!!」
語っている最中、その手の太刀が男の眼先に突き刺さる。
床の破片さえ飛ぶこともなく、綺麗に突き刺さっていた。
ブルーベアの見幕は、真剣そのもの。
男の目前に刺さっているそれもある意味真剣なだけに、冗談ではない程迫真した威圧を放っている。
殺す気満々だったのだろう。
オイヨイヨの声が無かったら、殺していただろう。
そうとしか思えない程、ブルーベアのその双眸は鋭かった。
「言っていい事と悪い事の区別ぐらいつけなさいよ…ッ!」
「……おい、お前のお頭様はどこに居るんだ?」
オイヨイヨがあえてブルーベアに質問するも、答えになっていない答えが返ってくる。
「場所なら知っている。
私を捕えそびれたアイツがまさか、今頃になって私を消そうとするなんて…」
「おい、ブルーベア?」
ブルーベアは太刀を抜き取っては鞘に収め、そのまま倉庫奥へと消える。
酷い雰囲気だけが、この場に残っていた。
「…おっかねーのに手を出しちまったな、あんたらw」
オイヨイヨが、拘束され身動きの取れない男へと言う。
ヘラヘラ笑っているが、オイヨイヨ自身も笑える状況下ではなかったらしく、冷や汗がひとつ頬を流れていった。
「マジだよマジ、姐さんマジだよ。俺たちが馬鹿言ったら殺されちまうよ」
「馬鹿言ってんのはお前だけだろ馬鹿野郎wwwww
俺を毎度毎度その巻き込み添えサラダみたいな扱いやめろ馬鹿wwwwwwwww」
こんな状況下でもいつも通りの二人だったが、
空気はいつまでも淀んだままだった。
いつの間にかピアノの少女も消えている。
空気を察して帰ったか、ピアノを聞く気分では流石に無くなったか、下手すれば事が起こる直前には帰っていた可能性さえある。
どれにせよ、どうやって、どこからこの喫茶店を出たのかは、何時も何時も不明である。
「急用が出来た。ジュースもコーヒーも今回ばかりはタダにしてあげる。
好きなだけ飲んでなさい。
料理はミアに頼めば、そこそこの物は期待できるから」
いきなり奥から姿を現し、急に語り始めてはすぐに喋り終えるブルーベアは、何とも薄着だった。
いつものキッチリしたバーテンダーの服装からは想像が出来ない程、今風の女の子を思わせる。
いや、イマドキとは言えないか。
しかしいつもよりは断然女であることを強調されている。
迷彩柄のタンクトップ。
へそは丸出し。
ズボンは丈夫そうなジーンズ。
腰には、そんな女の子らしさをぶち壊すかのような太刀が一本。
綺麗な装飾を施された日本刀風の鞘は、思う以上に長い。
先ほどまで使っていたものとは別。これが彼女の本命なのだろう。
腰には小さなポーチまでおまけつき。
ハートマークの可愛いポーチだ。
いつものブルーベアがハートをイメージさせないため、かなりのギャップが存在していた。
ちなみにジョンもオイヨイヨも、この装備、武器を携えたブルーベアを見るのは初めて。
何時も、バーテンダーの彼女なのだ。出かける時でさえ。
ミアもどことなく動揺しており、掛ける言葉も見つからないでいるようだった。
「安心して。ざっと1000人殺すだけよ」
「恐ぇよw」
ツッコミを入れるオイヨイヨも今回ばかりはマジに引いていた。
今のブルーベアならやりかねないという気しかせず、発言を間違えればその前にコチラの首が飛ばされるのではという、意味不明な恐怖を覚えている。
だがそれくらいに、今のブルーベアの精神状態は不安定に見えた。
放っておくワケにはいかないだろう。流石に。それも正義の味方が。
「施錠よろしく、ミア」
「え、あ、はい…」
たったそれだけを言い残し、ブルーベアは喫茶店を出ていく。
カランカランと言う、いつもの虚しい音が鳴り響く。
ピアノの音が無いからだろうか。
今回はやたらと耳に残る。
そんな中、いつもは影の薄い時計が今になって、存在感をアピールしていた。
「…オレンジジュース」
「コーヒー」
「え!?」
いつもならば二人はこの段階で、ブルーベアを追いかけ始めている頃合いだろう。
ついで程度に、勝手な勝負を始めるのが常だ。
しかし、あろうことか飲み物を注文してきている。
ミアとしては、これ以上に驚く事は無い。
失望するとかそんな事の前に、ただひたすら驚愕していた。
「っふっはっは…いい判断だと俺は思うピョン…。
葡萄色を追いかけた所で、死人が増えるだけだピョン。敵味方両方なピョン。
そして間違いなく、っておい!ピョン」
二人は飲み物注文の間、武器を携えていく。
結局、追いかける気満々らしい。
かと思えば準備を終えるとすぐさま椅子に腰かける。
オイヨイヨはいつもより比較的装備万全。
ジョンは相変わらずのゴチャゴチャ具合。
ちなみにオイヨイヨは、全てにおいてと言っていいほどツッコミを最低1回は入れるのだが、ピョンピョンとか言っている痛い子は無視され続けている。
変な判断基準だけど、よっぽどムカついているから無視してるのかもしれない。
実にシュールな時間が過ぎていく。
床ではマントの男がロープで縛られては寝転がっていて、客の2名は武装万全でカウンターの椅子に腰掛けてただ待っている。
ミアも間違いなく新しい布巾を取り出して、グラスとマグカップを磨き直している。
何から何まで、どこかズレている。
「オレンジジュースと、コーヒーです」
「あんがと」
「あんがとw」
そういってミアが用意した物を受けとってすぐ一気に飲み干す二人。
カップとジョッキを勢いよく机に叩きつけ、立ち上がる。
しかしながらやけに急ぎ足。急いでいる。
「
「いいぜwやってみろっつーのwww
俺のよゆー勝ちだなwwwww」
そして今回は、合図無しに出かけていく。
頼もしげに鳴り響く鐘の音にも聞こえたが、結局降りてくるのは静寂である。
…ミアはそんな空気を異様に捉えていた。
二人も余裕が無いのかもしれないと、そう思えた。そう見えた。
「…あのー…」
男に声を掛けるミア。
重機関銃を持ち込んできているのもあるが、それ以前に変な男であるため、恐る恐る近寄っていく。
「とりあえず、CABINの人に受け渡しますね?」
流石に諦めていたらしい。
何も答えず、そこに横たわったままの男。
オイヨイヨの縛り方がどんなものかはともかく、隠されていたであろう武器の類もしっかり没収しているのだろう。
ミア一人に任せてもなんら問題がないようにしてくれているのだ。
それに、外に潜伏している可能性のある他の敵もまた、現在排除中だと考えられる。
そこにまたもや来客である。
「おーいーっすーーーー、元気してるー?」
「あ、CABINの社長さん、お久しぶりです」
これまた狙ったかのように来るCABIN社長。
いつもの黒スーツに黒いグラサン。
うるさいくらいの大きな声。
これほどの人物でありながら、なんと誰も連れずに単独でやって来ているらしかった。
今まで喫茶店ブルーベアには来た試しがない男であるが、恐らくはジョンとオイヨイヨコンビが目的で話に来たのだろう。
先日の一件もあって、接触は図りやすい。
だが残念ながら、入れ違いである。
見事なくらいに綺麗な入れ違いである。
「おーおー、嬢ちゃん一人かいな。
世も荒れてますなー。うんうん。あかんなぁマジで。
で、アイツらー、どこ行ってん?」
「その…」
ミアは起こったことをなるべく簡単に説明していく。
時々ピョンピョン男が無意味にも優しく補足を入れてくれる。
ピョンピョン男、もしかしてミアが気に入ったのか、ただただ放置され過ぎて辛くなって喋りたくなったのか、それは定かではない。
そして事態を凡そ把握した社長は、サングラスを外して言う。
妙に深刻そうな表情をしていた。
「…そらアカンわ。
ワイん所でさえ人員何人失うか分からんからって冷戦状態にある場所と戦う気かいな」
「…はい?」
「死なず生きて帰ってくるとエエけど…」
その社長の見せる灰色の目は、サングラス越しに窓の外を眺めている。
しかしその瞳が一体何を映しているのか、ミアには全然わからなかった。
***
「さて、ブルーベアがどういう階級にいたかは分からず終いだが、
都合良くか悪くか、今まさに、情報を仕入れる事に成功したってわけだ、ジャック」
「マジかオイヨーヨ!」
オイヨイヨは草を生やさずに、わりかし真面目に話をし始める。
ジョンの理解力は果てしなく低いため、分かるように頑張って説明してくれようとしているのだろう。
内容もかなり相応に難しい事。だからこその集中。
ジョンも真顔である。
「…性質は悪い。
相手はどうも、空飛ぶパンケーキが相手なんだ」
「…え、パンが相手なのか!?」
「通称だけどなw
間抜けな名前だと思うのは分かるんだが、フラップジャック?っつーヘンテコ戦闘機からとってるって話だな」
「…ん。フライング・フラップジャック」
「そうそうw
低空のみならず、かなり高い所まで飛行できる事を実現した、高性能のプロペラ飛行機だ。
今じゃ魔法の発展とか、コスト的な問題とか、実用性だとかで完全に御蔵入りしちまってる。
戦争兵器だわな要するに。
その分野でも出遅れして御蔵行きになったわけだが、ありゃあ今でも驚異だ。現役には届かねえって言われてやがるが、とんでもねえシロモンだ。
無論この組織、っつーか軍事国家っつーか。
そのフライングなんたらを、いくつか知らんが結構な数を所持してるって話だぜ」
プロペラ機としてのフライング・フラップジャックの正式名称は、XF5U。
形状が円盤状であった為に、フライング・パンケーキとも呼ばれている。
我々の世界に存在・実在した代物ではあったが、ジェットエンジンの開発によって、生産中止。テスト飛行をする事さえなく、試作機1機とその後に完成された1機はスクラップ、いわゆる解体されてしまった。
しかしこの円盤状という特性によって強固である為、通常用いられる方法では破壊が困難であった。
この形状によるメリットの性能の完璧さを、スクラップ作業過程において証明してしまったという、面白い話が実際に残っている。
そもそもこの世界にプロペラ機なんてあるのか、と問われれば、あって当然と言う他にない。
この世界は、いつどの時代を参照しても、基本的には戦争を行っていた。
そうなれば兵器関係、どうあがいても発展してしまうもので。
だが大抵の場合、領土から領土の距離がかなり存在する。
その上で都市等は基本的に城郭都市である為、陸路から攻める事は困難を極めている。
またとある都合で海路はロクに使えない為、そうともなれば発展せざるを得ないのが、飛行機という存在である。
ある意味で選択肢が一つしかなかったのである。
事実ここ数十年で航空機は、とてつもない発展を遂げている。
だがプロペラ機は御蔵入りされた。
我々の世界においてジェット機という次世代を担う新しい動力が登場した事でプロペラ機の開発が無くなったのと同様、
魔法といった物をこれ以上なく上手く組み込まれた次世代型の動力機の登場が、今回で言うフライング・フラップジャックの出番の機械を、完全に奪ってしまったのである。
しかしなんと皮肉か。
時代遅れだとして誰も扱う事のないような古い兵器を扱う事で成り立つ軍事国家が存在するというのだから。
それも侮れないほどに脅威的だというのだから、始末におえない。
「んー、なるほど、分からんぞオイヨーヨ」
「なんでだよ分かれよwwwwwww
簡単に言えば俺達の相手は、クソつえー飛行機、兵器の名前がそのまんま敵さんの団体名ってこったよwww」
「最初からそう言えよな!」
「悪かったよww
んで、ついでの話だ。
喫茶店に乗り込んできた奴の機関銃の名前なんだが、MG08の…18、知ってるか?」
「知ってる」
「だろーな。
ありゃあ使い勝手の悪そうな機関銃でかなり古い。
軽量型の地面固定可能自動機関銃としては名高いもんだ。
あれを開発した奴は英雄だろうし、逆に、悪魔なんだろうぜ」
それは一体、誰に対する皮肉なのだろうか。
とかそれっぽく議論に持ち込んでもいいのだが、ここは自重しておこう。
結果論をとやかく言うのは簡単である。その一報で、最適解は存在しないと思われる。
「まあともかく、そういった古い武器を専門に扱うのには意味があってな。
これは超シンプルだぜ?それでいてすげー理にかなってやがる。
敵味方が錯誤するこの世の中、悪い話が、古い武器の方が作りやすいんだよ。
俺達が扱うような剣やナイフよりは難易度が高いが、ただの一般人にさえ扱おうと思えば扱える武器が、中古の兵器ってわけだ。
最新武器製造はそれなりに勉強した技術者が必要だが、古い分は当時の職人を雇えばいい。最新でない分、新人にもどうにか作れるだろうよ。
魔法と武器にも戦争法か何かで規制があるこの世界、過激な兵器は製造も使用も所持も禁止って表で騒いてる世界政府。
そんな古くて要らないと世界政府が禁止したに等しい知識を、再利用ってわけだ。
ま、そんなとこだよ、簡単に言えばな。
ひょっとしなくてもこの手の話は、テメーのが詳しいだろうけどよ」
「…」
「どうも無印猟団が結構前に、なんか折り合いがつかなかったか何かで、大体1万のほか組織と結託、大群組んでパンケーキ相手に攻撃を仕掛けた事があるらしいんだが、見事大敗だとよ。
通称空飛ぶパンケーキ、正式名称は『フライパンケーキ』。
この組織の人数は、呆気にとられる程多いっちゃ多い。1万前後だっけか」
「全体では3万人前後、兵力・兵隊数は3000前後、程度だったと思う」
「非戦闘員含んでたった3万で、猟団相手にほぼ無傷で余裕勝ちしてんのかよ……。
流石はCABINも猟団も手出しできない程の兵器と軍事力に資金を持った、独立軍事国家ってか?
まあ猟団の支部本部全部集めちまえば話は別なんだろうが…、パンケーキは支部が無い分、本部は異常なまでの強固さを誇ってるって事だわな。
楽に陥落出来る程落ちぶれちゃいない城、文字通り難攻不落だろうよ」
「…何のために」
ジョンのこの「何のために」は、何が目的で軍事力を持った組織が生まれてしまったのか…を問いたいらしかった。
オイヨイヨはそれをすぐに理解し、それなりの答えを吐き出す。
「さあな、分かりゃしねーよ。苦労もしねえ。
まあ、CABINや猟団や色々がギスギスして争ってる間にその規模を拡大して、で漁夫の利を得て、軍事帝国でも築こうって魂胆だったんじゃねーか?
今じゃ戦争は音沙汰無しになっちまって焦ってる頃合いなのかもな。
もしくは暇を持て余してやがるんだろうぜ。
じゃなきゃ、ブルーベアとでよく分からん事をやっちゃいないだろ」
「……」
ジョンは唇を噛み締める。
彼らは戦争やそれらに近い物を、もしくはそれ以上の地獄を、幾多も体験している。
ハッキリ言ってこの手の話、ジョンにとっては筆舌に尽くしがたい思いがこみ上げてくるのだ。
いくら考えても仕方がない事は分かっているのに、「何のために」と言ってしまうくらいに。
だって、地獄だったのだから。
彼らが見てきた世界は、地獄でしかなかったから。
「…まあ、落ち着けよ。
暴れられられねーだろ?」
「…そうだな。その通りだ。
で、俺たちはなんで紐で縛られてるんだ?オイヨーヨ」
「それはお前が後先考えずパンケーキ目掛けて突っ込んで行くもんだから説明して止めてやろうとしてやってたのに結局理解しやがらなかったお前の所為だろうがwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
盛大に馬鹿だった。
「はあ!?なんでそういう重要な事を後回しに言うんだよ!!」
「お前がロクに話聞かないから!
いやwwwお前の理解力があまりにたらねーからだろーがwwwwwwwww
俺は最初っからそう言ってたんだよ!!!wwwwwwwwwwww」
今更背景の描写を始めさせてもらうが、ここは牢屋である。
ついでに言うと、距離的な関係もあって、日を既に跨いでいる。今昼ごろ。
オイヨイヨもジョンも武器を奪われ、拘束までされ、銃を持った見張り2名がそこに居るという最悪の状況下、ダラダラと会話を進めていたのである。
まさにここが目的のフライパンケーキなのだが、お見事なまでの流れで、驚きの速さ。
開幕早々、更には早朝に捕まっているのだ。
いやいや、いくらなんでも馬鹿過ぎるだろ。馬鹿展開にも程があるだろ。
牢屋前の見張りも随分呆れているらしく、かなりダラダラしていた。
黙れと言っても聞かない上に、手足縛られ身動きの取れない二人は銃を構えられてもビビらないし、仮に威嚇射撃してもビビらないだろうしで、もう放置決め込まれているのである。
ご存知の通り、オイヨイヨもジョンも超が付く程の有名人。
その実力は計り知れない、ワケではない。噂話や伝説を持つ彼らの実力は折り紙つきなのである。
しかし、あまりにもその噂と目の前の存在がなんかイメージとでさえ違うため、もはや見張り達も「その情報は何かの間違いではないのか、もしくはこの二人は別人なんじゃないか」と思い始めている始末である。
最初こそ異常なまでに警戒しまくっていた2名の見張りだったであろうに、今ではコーヒーブレイクするまでに落ち着き払っていた。
そりゃこんな馬鹿っぽい二人が、世界中に名を轟かせる奴らとは到底思えないよね。
拍子抜けもいいところって言葉がここまでピッタリな奴ら、そう居ないよね。
端的に言って間抜けだよね。
「…ところでさオイヨーヨ」
「んあ?ww」
自分達の事であるにも関わらず間抜け過ぎる無様さにオイヨイヨはまだ笑っていたが、ジョンの方はいたって真面目に話しかけてきていた。
流石にオイヨイヨもすぐに落ち着きを取り戻す。
今日のジョン、間抜けなんだけどもちょっとカッコいい。
「エビイロ…だっけ。
俺そんな名前聞いたことないぞ。
有名人ってわけでもないのかな」
「…ああ。俺も聞いたことが一度もない。
ブルーベアの本気は俺も見た事は無いし、どっかの殺し屋って話も情報も、それらしい事一切何も残っちゃいなかったはずだ。
だいたい1年前か2年前に好奇心で調べてた事があってな。
だが素性は不明の年齢不明、名前まで不明と来た。
不明尽くしだ。履歴書の9割は空欄状態だよ。
もし殺し屋エビイロってのがこのフライパンケーキでは有り触れてる名前ってんなら、それこそよっぽどだな。
存在を知られちまう前に全部殺してるってこったぜ?
それも全部だ。今まで例外なく、標的にされた奴らも側近も通行人も警備も何もかもを欺くか抹殺してやがる。
外に情報が出てきてないのは、ソレ以外に考えられねえよ」
既に博学っぽい発言を多々してしまっているジョンだが、そんなジョンであってさえ全く知らない人物らしい。
とはいえ心当たりが無いワケでもなかったりする。
オイヨイヨが言うように、暗殺者としての腕前が常軌を逸している存在ならば、その名前が世に広まっていないのも当然といえば当然。
目撃者を生み出さずして暗殺を成功させ続けていれば、そうなる理屈である。
そしてそれに該当しそうな噂、または伝説的存在が、確かに居た。
今より約10年程前から3年程前という、かなり限定的な期間において存在した伝説的な暗殺者。
通称を「アサシンゴースト」。もしくは「幻影殺し」と呼ばれている。
正体不明の暗殺者故に関与したであろう殺害件数自体は明確には分かっていないが、最低でも200人弱は固いと言われている。
比較的大きく、それでいて鋭利な刃物類でかなり派手に暗殺をする一方で、その気配に誰もが気がつく事はなく、痕跡も残さず。故にゴースト。
加えて、様々なトラップやトラップ魔法、影武者といった存在による弊害にさえ難なく対処し、間違える事無く確実に事を成す。故に幻影殺し。
こうして当てはめてみれば、ある程度合致する。
鋭利な刃物類が太刀、喫茶店にてピョン男の背後を一瞬で取ったあの動き。
また過去の素性がスッポリどこにあるのかさえ分かっていないという事実。
正体不明の幻影殺しが、喫茶店店主のブルーベアであっても不可思議ではない、気もしてくる。
「なあ、あんた!殺し屋エビイロって知ってるか!?」
ジョンが2名に聞く。
「あんた達」と言わないあたり馬鹿っぽい感が全面に押し出されているが、見張りの二人は特に何も思わないようで、素直に反応してくれた。
「エビ?知らないな。なんだその間抜けな名前。
お前たち、その人を探しにこんなところへ抜けぬけとやってきたのか?」
「ちげーだろどう見たってwwwwwwwwwww」
「いやあ…、あんまりに間抜けな登場だって聞いたもんだから…」
ジョンが特攻しつつ、その隣でオイヨイヨは説明・説得。
この様を間抜けと言わず何と言えばいいだろうか。
勇ましい事はいい事かも知れないが、とりあえず愚かだっただろう。今回の場合は特に。
「どうやら組織内でも素性を知ってる奴は珍しいようだなw」
「……」
そのようにオイヨイヨが意見をまとめていると、男達は逆に質問してくる。
気は緩みきっているようで、お気軽な感じである。
捕虜を見張っているという事実さえ忘れていそうである。
「アンタらは超危険人物って聞いてるんだが、実際の所はどうなんだ?」
「俺らの名前知ってるだろwwwwwwwwwwwwww
最初の警戒心どうしたんだよ仕事しろよwwwwwwwwwwwwwwww」
「いや…、なんか、さ」
「言い切れよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
オイヨイヨはもはや笑いっぱなしである。
ジョンは座ったまま真顔で考え事をしている為、一切のリアクションをしなかった。
見張り2名はそんなよく分からない様に変な意味で呆気にとられ、コーヒーを飲み進める事を選ぶ。
まあ馬鹿笑いしてるか馬鹿言ってるかしかしてない捕虜相手にいつまでも気を張っても居られなかったという事である。
しかしそれがこの見張り達の最大の失態となる。
それも大失態である。
「…ジョン、そろそろ行くかw」
「おう」
見張りの油断が行動を遅らせた。瞬時に行動出来なかった。
ブチブチという音が聞こえた見張り達は、何が起こったのかさえ分からぬままにコーヒー片手に牢獄内を見た。
いつもの彼らならばこの異様な音が聞こえた段階で、即座に銃を手に取り構える事が出来ただろう。
致命的なミスだった。
何から何まで失敗だった。
そもそもの話、こんな牢獄程度にこの二人を押し込めたくらいの事で止められるワケが無かったのだ。
紐を馬鹿力で引きちぎった二人は、勢いよく牢獄の鉄を掴み、凄い勢いで捻じ曲げ広げ始めた。
呆気にとられ続けていた2名も流石に事だと理解し、コーヒーを勢い良く投げ捨て、壁に立てかけていた銃を手に取った。
しかし遅すぎた。あまりにも遅かった。
「ばーかwwww」
「くらえ!」
二人の移動速度は凄まじく、と言うよりも脱獄があまりな速度過ぎて、2名の見張りは声を上げることなく気絶させられてしまう。
紐を引きちぎり、牢獄を脱出、見張りを殴打で気絶させるまで僅か5秒。
ジョンなんて気絶している見張りを更に蹴飛ばしていた。
見張りの2名が目を覚ますのは、全てが終わってからになるだろう。
ある意味では上司が悪い。
二人のステータスやスキルをせめて確認しておくべきだった。
そうすればもっとお誂え向きの牢獄に押し込める事が出来ていただろうに。
まあそれでもこの二人は割りと難なく脱出しただろうけども。
「さーてw
武器武器www」
「俺の武器どこだ!」
「あっちの方だ確かwww」
二人は牢獄の立ち並ぶ(って表現でいいのか?)廊下を走り、倉庫を発見。
それは牢獄の入り口付近に存在しており、ジョン達が捕まった時に武器防具を奪われた場所でもあった。
そこを蹴破って中に侵入し、全てのものがある事を確認。
元よりジョン達を殺す気がなかったのだ。
事が済めば開放する気満々であった。
そう、彼らを殺すのは少々不味い。知名度の関係、かなり不味かった。
なにせジョンはCABINの、オイヨイヨは無印猟団の元関係者。
二人を始末する事で、この大組織2つがどんなリアクションを起こすか分からない以上、釈放する以外の手立ては無い。
だが問題は、ジョン達にとって、事が済んで貰っては困るという事。
事が済むとは、ブルーベアの死である。
それだけは是が非でも避けなければならないのだ。
全てを装着するまでの時間は10秒にも満たない。
無論装備の数を考えても分かる通りオイヨイヨの方が早く済んだが、そんなものは1秒や2秒の差に留まる。
それだけ二人は、不測の事態に慣れ切っていた。
そして駆け出す。
目的は頭目。
先に倒した方が勝ち。
二人の勝負はここに来ても変更無し。
「ブルーベアはまだここに来てないらしいなwwww」
「わっかんねえ」
「まーなw
殺し屋エビイロが想定外の化け物なら、侵入して尚気付かれてないだけだろうからなwwwwww」
二人は階段を目指す。
ただし、別に牢獄が地下だったというワケではない。
彼らは最上階を目指しているのだ。
凡そオイヨイヨもジョンも、連れられていく際にその内部の様子をバレない程度に観察していた。
それこそジョンはただ暴れる子どものようにしか見えず、オイヨイヨも変な奴にしか見えない程に笑いながらだった為、しかも捕まるまでがこれ以上無く呆気なさ過ぎた為、要注意人物とまで言われるこの馬鹿二名を本当の意味で誰も警戒すらしていなかったのだ。
まさかあんな馬鹿をやっている間に色々見られていたとは思わないだろう。
外観から内装の一部を見て、どうして最上階までの道筋を計算していると思うだろう。
この二人は場慣れしている以上に、並外れている。
しかしながら現在、結構当てずっぽうで先を突き進んでいた。
そりゃ流石に地図を見ていたワケではないのだ。色々と無理はある。
そもそもここの構造は割りと複雑。階段がいちいち遠かった。これは他勢力の制圧行動を遅らせる為の構造体にほかならない。
というか、牢獄を脱した二人がこんな堂々をやっていて、いつまでも敵が気付かないはずもなく。
「っげww」
6階くらいに差し掛かった時、いきなり階段の目の前に敵が出現した。
だがどれも武器の種類に統一性が無い。
共通するのは、その武器が古いと言う事だけ。
だがその全ては銃火器。これは恐るべき事態である。
通常、銃火器関係は弾数の問題で、何処へ行っても使用頻度は極めて低くなりがち。
特に街から街へと移動する者達がこれらの装備を選ぶ事が少ない。モンスターを討伐する者達が拳銃を持っている可能性など皆無に等しい。
如何に安定的かつ高威力を誇る武器とはいえ、弾数が尽きたならば攻撃手段を失う。この世界でそれは致命的である。
が、ここは軍事国家の本拠地。
弾数を気にして銃火器の使用を渋る必要性が無い。
元より建物内部は、この手の武器の有効度が高かった。
敵は銃を乱射。
それこそ当たればラッキー程度の武器の使い方。要するには行く手を阻むのが目的。
オイヨイヨはジョンに体当たりするようにそれを上手く避ける。
ジョンも回避を開始していたのだが、結果的にオイヨイヨに吹き飛ばされる形になっていた。
「いってーなっ!」
「うっせえww
蜂の巣よりマシだろーがww」
オイヨイヨはどこから取り出したのか、手榴弾を投げた。
そして二人はささっと下へ逃げていく。
下にも敵はいたのだが、包囲が間に合わなかったらしい。
何より突如Uターンしてくるとは思っていなかったのもあるだろう。準備が整っていなかった敵達は、ジョンが手早く呆気なくなぎ倒していく。
無論手榴弾は、弾が飛び交う中へと投げ込まれる形であった。
時間差はほぼ無く、炸裂音を下層にまで轟かせた。
ただの手榴弾ではなく、寧ろそれは爆弾の一種だったらしい。結果、轟音と共に階段は一部崩壊した。
火災報知器も即座に鳴り出し、スプリンクラーから水が噴射開始。
当然敵もその事態に酷く混乱している様子だったが、依然止むことのない銃撃音。
銃が水に濡れたところで大した意味は無い。原理上特殊な物以外は、真空でも撃つことが可能である。
と、そんな最中に、彼らの足元が急に吹き飛ぶ。
「やりぃww」
「行くぜオイヨイヨ!」
とんでもなく卑怯な手口だったが、オイヨイヨは時間を見計らって下の階から天井めがけ手榴弾モドキを投げたのだ。
観察していて気が付いた落とし穴。
無理やり増築したであろう階段付近は結構雑な作りだったために、足元が簡単に吹き飛ぶ程度の耐久度しかなかったようである。
とはいえそもそもそんな高威力の爆弾物をすぐ真上で爆発させておいてジョン達が無事なのは結構あり得ないと思うのだが、そのへんはオイヨイヨの魔法のおかげで無事。完全な無傷のままだった。
銃撃で阻むどころではない事態に敵兵は完全に混乱中。二人はこの機を逃すまいとそのまま勢いよく飛び上がり、上の階へ移動開始。
若干崩れた階段も安全そうな場所まで一気にジャンプし、どんどん上へと進んでいった。
一旦崩されると対応するまでに時間が掛かる。おかげで途中で多少の敵が現れてもジョンが持ち前の瞬発力ある攻撃をぶちかまし、気絶させていけた。
あまりに敵が銃を構え打ち続けているようであれば、オイヨイヨの手榴弾モドキが火を噴く戦法。
かなり順調に歩を進めていく。
だがあまり長引くと、対応され始めるだろう。
出来れば早く頭目の顔を拝みたい所だが。
「な、何階あるんだよここwwww」
「100階くらいだ!」
「根拠無くあてずっぽうを言うなwwwwwwwwwwww」
馬鹿を言い続けるジョンだが、オイヨイヨも馬鹿をやり続けている。
それほどまでに好調に上り進めていた。
先に言っておくが100階も無い。20階くらいである。
ついでに、現在15階と言ったところか。
だが、それもここで阻まれる事となる。
「おおっとこっからは通行止めぜよー?」
鉄でも切り裂くかのような音が、突然鳴り響く。
ジョンとオイヨイヨはその音と声に反応し、それぞれ左右にバラけて、何かを避ける。
途端に凄まじい破壊音。何かを弾くか叩くような音が連続して耳に入ってくる。
見てみれば、二人が居た場所はおろか、かなり広範囲が穴だらけになっていた。
「…M61A2ってさ、肩に背負うもんだっけかw」
出てきたのは体の大きな男。ガタイも良い。身長は190cmと言った具合。
右肩に馬鹿のようにデカい機関銃、見た目だけで言えばそれはガトリング砲だが、正確にはバルカン砲である。
これをガトリング砲と言ってしまうと、航空機動隊に鉄拳を食らうこと必至。
肩には作ったのか、モーターを乗せれるようになっているベルトか革の装備かを用意し、装着している。
恐らく冷却材もその間に挟んでいる。同時に簡単に固定出来るように、ジョイント部分らしきギミックもあるのだが、二人からは見えない。既に合体済みだからである。
普通軽々持てるものではないのだが、その男の筋肉は見るからに凄まじい。
黒のタンクトップ故に腕の筋肉の凄さは見る物を恐怖させてしまうくらいの物。まるで丸太のような腕。
例え全部で90kg近くあるそのバルカン砲を軽々持っていても、どこもおかしくは見えないくらいには、筋骨隆々なのであった。
まあ普通に考えて、常識的に考えて、どんだけ筋骨隆々でもガトリング砲を右肩に乗せるという行動自体、絶対と言っていい程に無理があるんだけども、その辺りはもう何と言いますか、ええ。
理屈の方は深く考えないで頂こうか。
「BOSSに会いたきゃ俺を倒さなけりゃ始まらんぜよ。
しかし、俺だけじゃない。
至る所に罠を仕掛けてある上に、増援は続々と。
簡単に抜けれるとは思わないことぜよ」
「ぜよぜようっせーよ!!」
「へっ!ww
今回はジョンに同意だなwwwwwwww」
と、いきなりにオイヨイヨが魔法を撃ち込む。不意打ち攻撃。
ほぼ回避不可能の雷。当然、意図してその男へ奔り、直撃。
正義の味方とはとても思えない卑怯な戦法であった。
しかし、相手は効いている素振りを見せなかった。
間違いなく直撃したし、魔法の威力もかなり高い物。ただの魔防力で凌ぎ切ったにしては、あからさまに無傷。
オイヨイヨはそれを見てヘラヘラ笑っていたが、現状は尋常ではない。
「はっはっは!馬鹿か貴様は!
こういうもん扱って生き残るには、魔法っつーのは重要な要素ぜよ!?」
「っちwww
自慢げに言いやがってwwww」
「オイヨイヨ!アイツの肩の装着具が原因だ!」
「……するってーと、土か風属性の防具かww
おいジョンテメーの所為で対策されてんじゃねーかwww」
「しらねえし!」
属性防具という代物は、この世界では幅広い形で存在している。
この世界には、通常属性の火、水、風、土。上位属性の光、闇、幻。そして無の8つが存在する。
それぞれの弱点を並べると、火→水→土→風→火…。光→闇→幻→光…。無は弱点も特攻も無い。
『火は水を奪い、水は土を溶かし、土は風を止め、風は火を乱す』
『光は闇を照らし真実を知らしめよう。
しかし真実を幻す力に勝る事はなく、
嘘をも覆う闇は真実を隠してしまうのだ。
故に無の力程に確かな物もない』
魔導師ギルドの最も基本的な教え。
雷は本質的には風属性に該当する為、土属性を多く持つ防具や魔法を前にした場合、弱化もしくは無力化させられてしまう。
また同じ属性同士であった場合も、弱点属性程ではないにせよ打ち消し合い、弱化し合う。
ジョンの見立てが正しいならば、あの肩の装着具には風属性か土属性が宿っているか、もしくは即席対応の為に事前に属性付与魔法を使用していた可能性がある。
実際、用意するのは簡単。なぜならば特にジョンの能力が雷である事は、世界中に取っては周知の事実。
何らおかしな事は無い。対策しない方がどうかしている。
相手は“あの”ジョン・オ・ラルクなのだから。
一方でオイヨイヨに対する対策は万全ではなさそうである。
実のところバーロー・オイヨイヨは、……分かるだろうか。
こんなアホみたいな偽名名乗っているヤツ、知らんのであった。
とはいえジョンとコンビを組んでいる万能魔法アタッカーとしては知られているし、主に雷魔法を使う事もよく知られている。
逆に言えば、元猟団幹部であるという事実はいまいち知られていなかったりする。
という事は、この二人が捕まった時、警戒されていたのはジョン・オ・ラルクのみだったという事。
オイヨイヨ、幸か不幸か、眼中に無し扱い。
これはある意味での伏線。後々効いてくる伏線である。
と、バルカン砲のトリガーを引く大男。
そのまま何故かジョン達には銃口を向けずに、地面に向けて意味不明にも弾丸を埋め込み続ける。
なんと、魔方陣を描き出したのだ。
そしてオイヨイヨは驚愕した。
魔方陣が機関銃で描ける、という所ではない。
問題は、その魔法内容だった。
「ジョン!エントランスだ!」
「見りゃ分かる!!」
意外にもジョンもそれを一瞬で悟り、青ざめている。
流石に伊達でこの世界で生き残ってきた者達ではない。
その魔法の効果をよく知っているし、理解しているし、その上で憶測し、恐怖出来る。
無知であったならば、簡単なくらいにその魔法の餌食になっていただろう。
エントランスとは、そのままの意味で「入口」「玄関」のこと。
しかしその効果と意味は、もはや異なっている。
エントランス魔方陣は幾らでも設置でき、指定された場所へ送る事が可能。
その指定場所は1つのみであり、あらかじめ指定場所に専用の魔方陣を書き込んでおく必要がある。当然だが距離にも制限が存在する。
そして、何より発動条件が至って簡単。エントランスの魔法陣(構成として、外枠部分と内枠部分があるのだが、その内枠部分)に触れた者を強制的にワープさせるのだ。
何よりこれが凶悪な点は、発動者がMPを消費するのではなく、転送されてしまう者がMPを強制的に消費させられてしまう点。
すなわち対象がMP不足でもない限りは必ず発動する上、術を設置さえしてしまえば、理屈上は無限に転送が可能なのである。もはや重力の存在しないブラックホールである。
元々は空き巣対策のため、文字通り空き巣を「玄関」へとリバースする為に開発した魔法だったので「エントランス」という名前。
だがあまりに使い勝手が良さ過ぎて、悪用され放題の魔法の一つ。
例えば強力な魔物の巣窟へ強制転移させられる…なんて事もできちゃうくらいに凶悪。何なら地雷原のど真ん中にワープさせる事だって出来るし、落とし穴の途中に飛ばされてそのまま即死コース、なんて事も。
ただし、この魔方陣の外側に触れたくらいでは発動しない事は幸いである。
つまりよほど追いつめられたり、捕まえられて投げ込まれたりでもしない限りは無害。
引力でもあればこれ以上無く厄介だっただろう。が、もし引力あったらちょっとした間違いから術者もろとも転送コースになりかねないので、無い方がある意味安全なのだろう。
しかし大問題。
ジョンやオイヨイヨを突然その銃口が狙いを定めたかと思えば、エントランスを描き出し、気がつけば横薙ぎに弾丸が飛んできて、知らぬ間にまたエントランスが出来上がり、の繰り返し。
周りを見わたしてみれば、エントランスがそこら中に設置されて終わっていた。
バルカン砲を軽々と振り回す大男を相手、ジョン達は手も足も出ていなかった。
せめてもの救いが、そのバルカン砲の盾の役割を担ってくれる大きな柱が至る所にある事。
その事実だけを見ると、この大男、待ち構える場所を間違えているのではないかと思わないでもないのだが……。
「これだけじゃないぜよ!!」
男は更に大きな魔方陣を描く。それはエントランスとは完全に別物。
その出だしだけでオイヨイヨは解析。理解。大声で叫ぶ。
「バキュームクリーナーか…ッ!!」
「マジかよ!」
それは一定時間、生き物無機物も何も問わずして、その魔法陣へと強制的に集める風系の魔法。これこそ引力、というよりは吸引。
当然のように、魔法を発動した大男はその影響を受けていない様子。本来ならばそのバルカン砲の男も魔法の影響を受ける筈だが、そんな素振りは一切ない。
恐らくかなり改良されたバキュームクリーナーなのだろう。
何よりこれは不味い。不味すぎる。
二人は勢いよくそこへ飛び込む。
そう、飛び込んだ。
エントランス自体は至る所に設置されている。そのため、下手に動くとバキュームクリーナーによって足元を取られたり、何でもかんでも吸引するが為に破片や様々な物体と衝突、結果として吹き飛ばされてエントランスに触れてしまう恐れがある。
ならばいっその事、エントランスの設置しようがないバキュームクリーナーの中心部分に行ってしまい、事前に準備されているであろう他の罠やエントランスに触れてしまう可能性を最小限にまで抑える為であった。
とはいえ現状を打破したワケではない。打破どころか、相手の思惑の一つにまんまと乗っかっただけ。
結局呆気無く吸い込まれ、挙句はあらゆる物に苛まれ続ける立ち位置に立たされた。
そこへ、新たにその辺に魔方陣を設置し終えたバルカン砲の弾が飛んでくるのだ。
無論バルカン砲の弾丸速度は恐ろしく速い。そのため、バキュームクリーナー程度の吸引力の影響はほぼ受けない。それだけがせめてもの幸い。
吸引力の結果、バルカン砲の命中精度がこれ以上なく上がってくれていたならば、ジョン達は既に蜂の巣になっていた事だろう。
とはいえ元より大男の精度は頭がおかしい程に良い。
なにせ相当な重さであって恐ろしいくらいの反動が発生するバルカン砲を使って、当たり前のように魔法陣を設置するような化け物である。
何より威力が桁違い。バキュームクリーナーによって集められた瓦礫程度、粉微塵に粉砕、貫通する。
バルカン砲、舐めてはならない。
威力も当然恐ろしいが、その連射力は尋常ではないのだ。
生身で一発受けようものなら、常人ならば人体真っ二つになる。なにせ数十発で装甲車を爆破させてしまう威力なのだ。
なまじ化け物じみているジョン達の防御力を持ってしても、その事実は恐らく変わるまい。
「得意、
ジョンが弧を描きながら武器を振りかざし、弾丸を切り裂き弾き落としていく。
だが流石のジョンも体勢を維持しにくいバキュームクリーナーの中心地とあっては、弾丸弾きは困難を極める。結局1発2発とジョンとオイヨイヨを掠め続け、ジョンは不意に体制を崩す。
その瞬間にやって来た瓦礫がジョンに命中。これ以上なく軽々しく、木の葉のように突き飛ばされてしまっていた。
結果、他のバキュームクリーナーの影響で、ワケの分からない軌道を描きながらジョンは宙を舞っている。
非常に不味い状況。ジョンすら苦悶の表情で手足をバタバタさせていた。
「ほれ!」
オイヨイヨが上手くロープを投げる。それにジョンがハッキリと反応、ロープを握りしめて、どうにか留まる。
そのまま剣を地面に突き立て、それを捨てながらに、どうにか無理やり帰ってくる。
ジョン、あのままではエントランスに触れてしまう所だった。
危機一髪。間一髪とも。どうにかこうにかギリギリの復帰を果たす。
しかし状況はどんどん悪くなっていく。
大男の追撃が止まない限り、二人は消耗し続けるだろう。
それくらいにこの場は完成し切っていた。
しかもこの大男、馬鹿ではない。
バルカン砲の弾数、そして銃身部分の寿命、発生する熱量をしっかり管理。
決着を急がず、しかし的確なタイミングで撃ち込んで来ている。
つまり、大男は無闇矢鱈に連射しないのだ。
バルカン砲を撃ち続けていればほぼ確実に相手を仕留められるとは思われるが、用心深い。だから必要最小限の使い方をし続けている。
この大男にとっての絶対的な勝利のビジョンは、二人をエントランスに追い込む様なのだろう。
実際このままではジョン達は、エントランスの餌食になると思われる。
バルカン砲が弾切れになったり破損してしまうような失態を描くよりも、確実に、堅実的に攻めてきている。
そう、脅威なのはバルカン砲の破壊力だけではない。
寧ろこの大男が扱っているからこそ。おかげで付け入る隙も無い。
絶体絶命。
「ほれほれ、最初の余裕はどうしたぜよ!?」
言われるがまま。実際このままでは埒があかない。
ここでジョンとオイヨイヨ、無理やりに移動を開始。
いつまでもあの場に居ては、何も解決しない。もはや一か八かの策に出る他に無かった。
オイヨイヨ、魔法による反撃を開始するも、これは全くの無駄に終わる。
凄まじく荒れ狂う力場の中では集中など出来るワケもなく、また焦りから魔法陣もガタガタ。そんな状況下ではロクな魔法を放てるワケもない、という理由もあったが、何より相手が上手であった。そういったがむしゃらの反撃など、予測の範疇だったのだ。
オイヨイヨがこの時に放った魔法攻撃は、無数の瓦礫を利用して、弾丸のように飛ばして攻撃するという物。属性はそれだけで土とはなる。
だが相手は地面に対し、足で魔法陣を描き、防壁を作って難なく防御されてしまっていた。
元よりバキュームクリーナーの位置取り的にオイヨイヨの魔法の威力(速度)は減衰させられざるを得なかった。挙句、質量的に見ても壁と瓦礫では、歴然とした差。同じ土属性であれば、その質量の多い方が当然勝つ。至極当然の結果。
しかもその防壁に魔方陣を描き出すのが大男。
気がついた時には、オイヨイヨと全く同じ系統の魔法、ただしえげつないくらいの量のお返しが飛んできている始末。
どう考えても、状況は更に悪化していた。
「っくそ」
オイヨイヨは当たり前、ジョンさえも範囲内。それほどに無茶苦茶な量。そしてバキュームクリーナーによる軌道の変動。瓦礫同士の衝突によって更にそれは複雑さを増す。
まさに岩の散弾。ホーミング性能まで備えているというのだから、本格的に笑えない。
ある意味ではガトリングやのバルカンやのよりも驚異的広範囲の攻撃に、オイヨイヨもジョンも余裕を失くし切る。
「得意、
得意、
「ったく…」
ジョンは持ち前の剣技でどうにか回避。
オイヨイヨは瞬発的な脚力と洞察力のみでギリギリの回避。
とはいえ、全てを交わす事は不可能。
二人のダメージは蓄積。体力も随分削られてしまっている。
だが休む暇などありはしない。
大男は次々と防壁を設置しながら、幾度となくその攻撃を連打。
加えてバルカン砲も火を噴き散らし、縦横無尽に二人を襲う。
ちょっとまってこの大男強すぎじゃね?
「ぜーよぜよぜよぜよ!」
「どんな笑い方だよ馬鹿wwwwwwwwwwwww」
どんな状況でもツッコミは忘れないオイヨイヨ。
「くっそお、しゃーねえ!
オイヨーヨ!!」
「無理言うな!
こんな状態で設置なんて出来るわけねーだろ!!」
「っく…役にたたねえヤツだな!!」
「お前の方が役にたってねーんだよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
どんな状況でもツッコミは忘れないオイヨイヨ。
「どうでもいいぜよ。
正直、ここまで持ったことが奇跡的ぜよ?」
「るせえよwww」
更に続く追撃。
バルカン砲は魔方陣を組み上げていく。
また次なる別系統の魔法陣でも組み上げようとしている。
だが失策。ここに来て失策。
大男は違和感に気が付き、バルカン砲を一旦止め、防壁へ身を潜めつつ観察を始めた。
どうやらバキュームクリーナーの1つが、機能停止している様子だったからだ。
「むう、魔方陣無力化ぜよか」
「なんかちょっとずつ語尾の使い方間違ってんぞお前wwwwwwwwwwww」
それは徐々にではあったが、バルカンにより生成された魔方陣をオイヨイヨがどうにかこうにか解体していたのだった。
魔方陣はその形、バランスに大きく左右される。
先ほどのオイヨイヨの魔法が威力を出しきれなかったのと同様の理屈。
魔法陣に不純物のある状態…、簡単に言えば今回の場合、どうでもいい文字の羅列の追加、ただのしょうもない傷などが、その魔法陣の機能を狂わせてしまうのである。
元よりバルカン砲の弾痕で魔法陣を描く行為自体が、魔法の質を落としていた。なにせ綺麗な魔法陣は、どう考えてもバルカン砲では描ききれない。無理がある。
故に通常よりも解体は簡単。弾痕故に足で踏んで消したり出来ないという点を考えれば全然簡単でもないような気もするが、しかし無力化に必要な条件は酷く簡素化していた。
大男が知らぬ間にオイヨイヨ、何度も何度もバキュームクリーナーの魔法陣に対して電撃を食らわせ、一部を欠損させることに見事成功していた。
オイヨイヨがその作業をせっせとしている事に気が付かなかった理由は、大男の前に何度も設置した防壁の所為。
防壁こそは、防御を兼ね備え、攻撃も兼ね備えた高等な戦術に間違いない。
しかし防壁が視覚を奪い、攻撃の為にと防壁に対して魔法陣を描く行為そのものが、視野を酷く狭める要因に成って果てていたのである。
だがこれも多少意表を突いた程度に終わる。
やはり弾痕で魔法陣を描くという戦法は強力が過ぎていた。
オイヨイヨが現状で魔法陣を破壊する時間内に、大男は2つも3つも量産出来る状況にある。
一歩進んでも、三歩も四歩も後退させられるのだ。これを覆せない限り、無意味どころか悪手。
極めて冷静な大男には、この程度のハッタリは効果が無かった。
「しかし関係ないぜよ。
どれだけ足掻こうが、時間の無駄無駄ぁ!!ぜよ!!」
「っち!」
流石にツッコミそびれるオイヨイヨ。
バルカン砲による狙撃はあいも変わらず。
だが至る所に事前に設置されていた魔法陣が、今更に発動されていく。
ジョン、オイヨイヨ、驚愕。
四方八方から無尽蔵に降り注ぐ瓦礫達。正面からは弾丸。背後にはバキュームクリーナー。そして、どこに逃げようにもエントランスの山。
八方塞がり。死角無し。
恐らくこの状態が完成形。
これまでの闘争が、ただのお遊びだった気分にさせられた。
だがこれが現実。事実。
彼らが直面した危機。
飛び交う弾丸と瓦礫の群れ。
これを避けろと言うのは無理があるという結論だけが、叩き売りされていた。
正しく言い直すならば、叩きだされるのだ。答えも、ジョンも。
「っぐ!ぉぇ…」
「ジョン!!」
弾丸が足を掠めたその瞬間、ジョンに2撃の岩が襲いかかった。
そのまま吹き飛ばされ、あろうことかエントランスの魔法へとその手を付けてしまっていた。
瞬間、彼の姿は消えてなくなる。
転移魔法がしっかりと発動してしまっていた。
オイヨイヨは一瞬だが悔やむ。
もう少し自分が早く動けていれば、ジョンに何かしらのチャンスを与えられたかもしれないのに、と。
だがそんな感傷は無意味。
死ぬ恐れがある今、後悔をしたところで遅い所の騒ぎではない。
己の命が危ういのだ。誰かを気遣っている場合では少なくとも無い。
「アイツ死んだな。
BOSSのお気に入りの魔物たちの餌食になるぜよ。
3秒と持たないぜよ?」
「……」
オイヨイヨは立ち止まる。
その奇怪な行動に違和感を感じる大男だったが、迷わず引き金を引いた。
何より無数の瓦礫や岩が飛び交っている最中なのだ。
止まるなどただの自殺行為。
戦意喪失したのだろうと、大男がそう捉えるのも無理は無かった。
が、しかし、異様な光景を目の当たりにする事となった。
何故か弾丸が空中で止まり、呆気無く地面へと転がっていく。
それどころか設置した魔法陣が、いきなりに機能停止に追いやられた。
例外なく全てが、止まった。
その勢いも、発動も、全てが力無く終わった。
「な、…何ぜよッ!?」
続けてバルカン砲の引き金を握るも、弾は出てこない。
いいや、その原因は、すぐに解ける。
出てこないのではない。
“引き金を引けてない”のだ。
「こ、氷!?
さっきまで貴様は雷を撃ってたぜよ!?
何故今更になって氷ぜよ!?」
トリガーどころかバルカン砲が、凍結していた。
しかもただ凍結しているだけの事でもない。
もっと不味い。明らかに不味い状況にある。
どれだけ強く握りしめても、トリガーは一向に動かない。
大男の馬鹿力ならば簡単にトリガーがポキリと折れてしまいかねないくらいに力を込めてみても、微動だにしない。
おびただしい熱量を放出していた筈のそれは、今では冷気を漂わせているばかり。
「ばーかw」
ゆっくり歩み寄るオイヨイヨ。
そしてあろうことか、ジョンが転送させられてしまったエントランスの魔法陣を力強く踏みつける。
しかし、彼は転送されない。
魔法陣は何ら損傷を受けていないのに、何故か発動しない。
そもそも触れてすらいないバキュームクリーナーや、瓦礫を撒き散らす魔法陣すら無力化されているのだ。
エントランスがこれで発動したらしたで、逆に変ではある。
「ど、どういう原理で…」
「俺の能力だな。俺はちみっと特殊でよ。特殊製っつーか。
俺以外の魔法発動を、多少なりだが任意で、無効化する事が出来る。
それは発動後も同じだ。
大魔法であってさえ、俺に対しては完全に無意味になる。
つってもこれ、馬鹿みてーに疲れるんだけどな」
「……?」
「なあ、俺の名前を知ってるか?」
「し、知らんぜよ!
貴様の名前なんぞ!!」
答えた瞬間、バルカン砲の銃身がパキリと高い音を立てて、目に見える形で氷で覆われる。
大男は焦りに焦り、そのバルカン砲のトリガーを引こうと必死に手を動かした。
つもりだったが、もはやそんな行動すら出来なくなっていた。
「う、うわぁ!?」
もはや手まで完全に凍り付いていたから。
オイヨイヨは迫る。
追い詰めるように、迫る。
冷たい微笑みをたたえながら。ニヒルな笑みを携えながら。
絶対零度の殺意を静かに垂れ流しながら。
「おいおい、冗談だろ。俺の名前を知らないってのか?」
「…はあ…来るな…!」
「んじゃあヒントだ。
猟団の元幹部で、氷使いの、ほらあの、絶対零度の。
これで分かるか?」
「…猟団…?」
「くく、今頃ジョンも大喜びだろうぜ?
俺にまで被害与えかねないような攻撃を繰り出せない状況だったからな。
要するに全力も出せないままに戦ってたんだよアイツ。
知ってるよなあ?
アイツの攻撃は所構わず殲滅だ。敵味方ぜーんぶ殺しちまう。
だからアイツは“死神”って呼ばれてる。不吉の象徴みてーな野郎だ。
だから俺の魔法陣に依存しないと、そのあたりぜーんぶ真っ黒焦げなんだ。
俺も助かってるぜ。雷を無力化しちまったら、いくらアイツでも今のは無理だ。死にはしなかっただろうが、大怪我は絶対に避けられなかっただろーな。
なんたって俺は“悪魔”だぜ?誰彼構わず命を刈り取る死神よりよっぽど性質が悪い。
いやあ、足手まといが居なくなってすっきりだわ。思う存分やりたい放題だ。
俺の能力も割りと“無差別”なんでな。アイツ邪魔で邪魔で本気で鬱陶しかったんだよ」
「お、お前、まさか…!」
「ほい、時間切れ」
呆気ない結末。
大男は身動きさえできぬまま、全てを氷漬けにされた。
何が起きたか分からぬままに、凍っている。純度の高い、透明な氷の中に閉じ込められている。
「聞こえてるか?
別に殺しゃしねーよ。
殺しをやらかすとあの馬鹿が本気でうるせーんでな。
ついでにこれも勝負やってんだよ。
殺さず無力化した回数で競い合い中だ。
今のところ俺が負けてるんで、とりあえず俺の稼ぎ点にでもなっといてくれ」
と、ここでオイヨイヨの冷笑は消える。
何時もの彼からは想像も出来ない程、冷たい表情ではあったが。
「はあ…、とはいえジョンは生きてるか怪しい所だな…。
ゴキブリ並みの生命力でもさすがに場所がわるけりゃあ…ww」
徐々に何時もの彼に戻っていく。
なんかジョンに死んで欲しいのか欲しくないのかよく分からない発言でもある。
「何故貴方がここに居るの」
だが、そんなオイヨイヨの冷たい言葉の終わりと、背後から唐突にやって来た冷たい刀身が彼の頬に張り付くまでの瞬間は、ほぼ同時だった。
オイヨイヨにはその声の主が誰だかが分かる。
敵ではない。寧ろ味方だ。
「ようw遅かったなブルーベアww」
「……」
不機嫌そうに睨むブルーベアだったが、太刀をすぐに鞘へ納めてくれる。
オイヨイヨは相変わらずヘラヘラと笑っていたが、心底度肝を抜かれていた。
全く背後からの気配に気が付けなかった。
音もなく忍び寄り、呆気無く太刀を添えるなど、異常。
特に若干ながら殺気立っているオイヨイヨの背後を取るのは、至難の業。神業。
それを容易に成し遂げているのは、真後ろに居るブルーベアである。
卑怯とも言えるような脅威の能力を持つオイヨイヨを、今の瞬間に、呆気無く殺せたのだ。このブルーベアならば簡単に。
今のは間違いなく一撃必殺が可能だった。オイヨイヨですら実力を発揮する間もなく死亡していただろう。
仮に本当にオイヨイヨがブルーベアの標的だったとしたならば、本気で刹那の間に全てが終わっていた。
これだけの実力の持ち主ならば、名前が表だって広まっていなかったのも首肯ける。
流石にジョンを欺くのは難しいかも知れないが、それでも彼女ならばジョン相手ですら暗殺を易易と成功させかねないなと、そう思わされるくらいには説得力のある実演行動だった。
彼の頬には、一筋の汗が流れていた。
「…バルカン砲の武藤程度を相手に、随分ボロボロね」
どうやらブルーベアはこの大男の名前を知っているらしい。
しかしオイヨイヨは全く気にしない。
バルカン砲の武藤と言えば確かに有名人の部類だが、そんな事はどうでもいいのだ。
「うっせーwww
ジョンか俺単体だったら一瞬で終わってるっつーのwwwwwww」
「…なぜ、来てしまったの……」
ブルーベアは、酷く弱々しい声色でそう言った。
いつものダルそうなくせにどことなく凛としたバーテンダーのブルーベアは、今はここには居ない。
居るのは一人の女性。とっても美人で、しかし冷たくて、悲しくて、哀れな女性ただ一人。
そんなブルーベアの発言を聞いていたオイヨイヨは、
既に階段の中間まで走っていた。
「あ!ちょっと!!聞きなさい!!」
「走りながらでいいだろwwwwwwwwwwwww」
完全にブルーベアを馬鹿にしている態度のオイヨイヨ。
怒りを露わにするブルーベアは、すぐさま追いつき軽く頭をどついた。
それでも走る事を止めないオイヨイヨ。
ヘラヘラ笑っていた。いつも通りに。
「貴方達はいつもそう!
他人の迷惑を考えないし、人の都合も考えない!」
「なはははははははwwwwwwww
そのとーり過ぎて何もいえねーなwwwwww」
「わ、笑うな!
私は真面目に話を!!」
珍しく顔を真っ赤にしているブルーベア。
なんだそんな顔も出来るんじゃないかとオイヨイヨは思いながらも、ようやく答えを返す。
だがトラップを警戒する必要性は無い。
それらしい物は何処にも無かったから。
それどころか敵の姿すら見えない。
「正義の味方ってさ…、どういうもんかジョンに聞いた事があるか?」
それはまるで独り言でも呟くように、少し小さな声だった。
一方で訊かれた側のブルーベアは、何も言わなかった。
いいや、言えなかったのかもしれない。
そんなブルーベアに対して全くの配慮も無しに言葉を続けるオイヨイヨ。
追撃や増援はまだ来ないのか、それともこれも罠の一貫なのか。
少なくとも今は、オイヨイヨとブルーベアの足音だけが響いていた。
本当ならばここには、もう一人居た筈だった。
ジョン=オ=ラルク。
彼は今となっては生死不明。
せっかくブルーベアを見つけたというのに、なんて運の悪いヤツだとオイヨイヨは恐らくそう思っているだろう。
だがそれでいいとも思うし、そうでなくてはならないとも思うのである。
「ヤツなりの正義の味方の在り方。
誰でも彼でも彼女でも、助けを乞われたら助けるんだーって言ってた。
って、これはお前も知ってるわなw
だが、それだけじゃないんだとも言ってたんだよ」
「……」
「っと、ここ多分BOSS部屋だぜ。
俺は特攻するつもりだが、お前は?」
二人は立ち止まる。
如何にもな扉の前で、仲良く肩をほんの少し上下させながら。
異様に静かだった。
ブルーベアは、今ここに居ないジョンの事を気にしている。
何故居ないのかは、あの魔方陣の跡を見ればすぐに分かった事。ブルーベアはバルカン砲の武藤と呼ばれている大男の戦闘スタイルを知っているのだから、分からない筈もない。
どこかに転送されたのは間違いない事であり、今、今まさに死にもの狂いで戦っている最中かも知れない。
下手すると、死んだかもしれない。
そんな可能性を感じて、考えて、辛そうな表情をする。
綺麗な顔が台無しっすよ、姐さん。
そんな事を言ってくれる彼がここに居てくれたら、それだけで元気が出るだろうに。
これでは自分がジョンを殺してしまったような物じゃないかと、後悔に苛まれている。
だが一方オイヨイヨは、いつもの調子を一切崩さなかった。
なぜならば、硬い信頼があったから。
相性の悪い二人組、お互いの能力を制限しなくてはならない、まさに不効率の二人。
しかし、それでもそれなりの期間共に歩んできたコンビ。
信頼は易々折れたりしない。
完璧で完全なコンビだ。
お互いに死ねない理由がある。
それだけでいい。
たったそれっぽっちだけで、きっと生きていると信じられる。
例えその信頼関係が、酷くイビツでどうしようもなく間違えているのだとしても。
「……この中に私は突入して、親玉を潰す。
首を刎ねれば全ては一瞬よ。皆怖気づいて何もできなくなる。すべてが終わる。
貴方はここに居なさい。
ここからは、私が全てにケリを付けるわ」
「ばーかww
お前はヴァカかwwwwヴァーカwww」
馬鹿呼ばわりが限度を過ぎたようで、ブルーベアからゲンコツを食らうオイヨイヨ。
「…死ぬ?」
挙句は太刀まで向けられていた。
もう馬鹿なのはオイヨイヨの方である馬鹿野郎め。
「けっこーですww
つーか、寧ろその言葉、俺が言ってやろうか?
死ぬ気満々じゃねーかよ、お前」
「……」
オイヨイヨの華麗な(?)対応に、口ごもるのはブルーベアだった。
だって、当たり前の事だったから。
ブルーベアにだって本当は、分かっていた事だったから。
いくら徒党を組んでいるとはいえ、所詮は烏合の衆。それがこのフライパンケーキ。
寄せ集めで武器を製造し、寄せ集めで人員を構成し、寄せ集めで物資を、資金を。
それはこの軍事国家の人間達の意識もそう。
全てが寄せ集めで出来た城。頑丈だが、酷く脆い要塞。
頭目が沈んだところでその暴挙に歯止めが掛かるワケは無い。
目の前で頭目が死んで、どうして皆が諦め腕を下ろすというのか。
きっと振り上げるだろう。ブルーベアを殺す為に。復讐の為に。
終わりを告げる筈が無い。
頭目が死ねば次に新しい顔を納めれば済む話。
某アニメでもそれは当たり前のように行われている。
だが欲望が渦巻くこの場所ならば、泥沼の闘争の果てに強欲な者が新たな王になるだろう。
正義の味方、優しい王様、白馬の王子さま、付き従うに値する若旦那。
居ない居ない。
出てくるワケがない。
卑怯なヤツが生き残るのだから。
そう。
全てを殺す以外にこれだけの組織を、無力化する術はない。
「…でも」
ならどうすればいい。
彼らの刺客にいつまでも怯えて過ごせとでも言うのか。
そうして誰かが巻き添えて死んだら、何と詫びればいいというのか。
私は悪くない。そう言い張って逃げ続ける毎日を送ればいいというのか。
ブルーベアはそう思う。思うからこそ、怖くて、だからこうして。
「悪いな俺急停止できねえんだよwwwwwwwwwwww」
結局空気読んでくれないオイヨイヨであった。
見てみれば、大きく足を掲げながら、その手に手榴弾モドキを大量に用意していた。
制止する間も無い。事はもう始まっているのと同じだったから。
そのままオイヨイヨは勢いよく扉を蹴飛ばして開け、そのまま中へ大量の手榴弾モドキを投げ入れた。
相手も流石にここまで来ると思っていなかったのか、銃弾がお返しされる事も無く。
とんでもない轟音と共に土煙が舞い上がり、窓か蛍光灯かのガラスが散々割れて飛び散る。
何より部屋の中はボロボロのガタガタになっているだろう。
というかさっきからお前、やること成すことが卑怯過ぎやしないか。
「バーロー=オイヨイヨ様だwwwwwwwwwwwwww
てめーらのヘッド刈り取りに来てやったぜえ!?wwwwwwwwwwwww」
もうただただ悪役っぽく入室していくオイヨイヨ。やめろお前酷い名前だけど一応主人公だろ。
それに対し、ブルーベアはかなり早い動きで駆け抜ける。
恐らく勝手に乱入してくれたオイヨイヨに呆れきっていて、殴ったり蹴ったり文句を言ったりするのも面倒くさくなっていたのだろうが、何よりも、怒る暇もありはしないのだ。
我武者羅なのか計画していた通りなのか、進んでいくのがブルーベア。
実際に、現状は絶好のチャンス。
混乱に乗じて相手を仕留められる最高のタイミング。
ブルーベアの判断は恐ろしく早い。早すぎる。
伊達に伝説の暗殺者ではないという事である。
部屋は手榴弾モドキ、もはや爆弾だが、その影響で土埃というか煙が凄く充満している。
おかげ様で視界が悪い。が、それは相手も同じ事だろう。
とりあえず部屋が広いのか狭いのか、それすら分からないのは結構問題だと思うが。
勿論、オイヨイヨもブルーベアも分かっている。
これは何かの罠だ。
敵がいつまでたっても行動を起こさないのだ。罠以外に何があるというのか。
それにブルーベア、入室してから即座に色々を把握していた。
誰かが居る様子が無い。
この部屋に、誰もいない。
経験則が、そんな結論を叩き出す。
そして、今更に本能の警笛が鳴る。
ここに居たら不味い。そんな直感が働く。
「…!?」
オイヨイヨも出鱈目に突き進んでいたが、突然の急ブレーキ。
その行動は、直感や予感によって咄嗟に出た物、ではなく。
それは、視界の悪さから足元への不安を抱いていたオイヨイヨだからこそ気がつけた事実・情報。
こんな状況でさも当然のように走り回っているブルーベアの方が可怪しいといえば可怪しいのだが、それは置いておく。
オイヨイヨはとにかく足元をひたすら気にしていた。転びそうに何度かなったから。自然と目線も地面に多く向かうだろう。
そうであったからこそ気がつけた。
あろうことか視界の悪いこの場において、視覚によって答えに至ったのだ。
今の今まで気が付きもしなかった。
足元に魔力で形成された魔方陣が、薄っすらと発光しながらそこにある。
いくら爆発物を投げ入れようとも破壊不能の魔法陣。あざ笑うでもなく、すまし顔でそこに停滞。
オイヨイヨの爆発物投下は、完全に失策。おかげで気付くのが酷く遅れてしまった。
「ブルーベア!!!
部屋全体に魔方陣が!!!」
「な、」
そう言い放った瞬間、部屋は大爆発した。
嵐のように炎が巻き上がり、部屋の温度を瞬時に上昇させる。しかも炎は何秒間も継続。最初の爆発物による土煙も、部屋全体も、空気さえも燃やし尽くす。
普通、こともあろうにBOSSの部屋にてこんな大それた魔法が設置されているなどと、誰もが思うまい。
もう一階下や、もっと下でならあり得るかもしれないが、ここは正真正銘、BOSSの部屋なのだ。
王様が敵兵を王室にまでおびき寄せて爆発物で一網打尽にする、くらいにあり得ない。あってはならないだろう。
しかしそれこそ先入観だ。
してやられているのは、オイヨイヨとブルーベア。
現に、モロにその衝撃を受けてしまっている。
ワケでもなかった。
オイヨイヨの所為で脱出が遅れたとも言えるが、視界が悪くなった事で相手も発動タイミングを図りそびれていただろう。
二人が部屋に侵入したか否かを、相手も相手で判断する方法は無かったのだ。
実際オイヨイヨ、大間違いは犯していない。
オイヨイヨの大声が聞こえたからこそ発動させたであろうこの爆発魔法だが、叫ぶ前にオイヨイヨはしっかりと準備をしたのだ。偶然によって発生した時間を正しく利用出来ていた。
オイヨイヨの判断が遅ければ二人とも、今頃は黒焦げだっただろう。
オイヨイヨはブルーベアの声を頼りに、魔方陣を展開。
それは咄嗟にではなく、しかと考えて選んだ氷の防壁魔法。
おかげで爆発前に空気をある程度保守出来たし、灼熱さえもどうにか凌ぎ切れていた。
恐らく、ただの防壁を選んでいたら、二人は死んでいただろう。
お得意の氷を選んだだけとはいえ、それは偶然だったとは思うがそれでも、二人は無傷で済んでいた。
そのうち大型の爆発魔法は消沈。勢いを失って静かになる。
だが、今はまだ解除出来ない。
氷が見る見る溶けているので時間の問題には変わりは無いだろうが、まだ早い。
今の爆発によって、この部屋全体は空気がかなり薄くなっている事が予想される。
正しくは酸素が不足し、一方で有毒な一酸化炭素が部屋中を蔓延っているのだ。
故にあたりで燃え盛り始めているであろう火の手は見た目は弱々しく、しかし黒い煙ばかりが充満していた。
これは、完全な不完全燃焼状態。最も危険な状態。
ここに新鮮な空気を送入した場合、酸素を得た高温の一酸化炭素が爆発的な科学反応を起こすのだ。
これをよく「フラッシュバック現象」だったり「フラッシュオーバー現象」だったりと間違われる事が多いのだが、正確には「バックドラフト現象」である。
とはいえこの部屋は状況が少し違っていた。
高みから世界を見渡せる感じの窓ガラスは今の爆発で盛大に割れ、酸素は随時入ってきているだろうし、黒煙も空に向かって吐き出されている最中だろう。
所詮、二人の位置が悪すぎるだけ。ほんの少しだけバックドラフト現象の小規模版が巻き起こる可能性がある程度である。
だが問題なのは、一酸化炭素そのもの。
もしかすると知らない人も多いかもしれないが、これの毒性は馬鹿にならない程に強い。
血液の中にある、体内に酸素を供給する役割を担っているヘモグロビン。
これを遥かに上回る程に一酸化炭素は酸素結合性が強く、大量に吸引してしまうと、即刻酸欠を起こす。それどころか、体中の酸素を奪える限りで奪っていくのだ。
それ故に気絶はまず免れず、最終的には窒息に近い形で死亡、もしくは残り火から発生する再燃火災または火災そのものに焼かれて死亡することとなる。
仮に生き延びたとしても、長い酸欠状態を強いられる為に障害が残る事もある。
無論だが、これは吸引しなければ安全というワケではない。
肌も呼吸をしているのだし、侵入経路は様々ある。
長時間そこに留まれば何らかの悪影響があるだろう。
「……っち!」
オイヨイヨは氷の中から敵を探す。
しかし見つけられなかった。
黒煙にまみれて何も見えないのだから当たり前ではあるが。
しかも判断は比較的早かった。索敵は数秒にとどめ、そのまま息を多量に吸い込み、氷から離脱していた。
大袈裟にもガラスの割れるような音が響き渡る。
そしてすぐさまブルーベアの所へ駆け寄り、ジェスチャーで脱出を促した。
ブルーベアもしっかりと理解し、氷を突き破り飛び出した瞬間、
ブルーベアの横腹辺りへ弾丸が一発命中。それは、貫通していった。
「ブル…ッ!?」
オイヨイヨは叫びかけたが、即座に口を閉じた。
今は何であれ酸素を無駄に出来ない。
しかしそれはブルーベアも同じ。
痛みを堪えて倒れている最中でも、ブルーベアは息をしっかり止めていた。
幸い、撃たれた箇所は致命傷とは程遠い。
内蔵に当たる事も無く、肉の部分を通り過ぎていっただけに留まっていた。
だが焦ったのだろう。オイヨイヨは魔法を多大に展開開始。
氷の柱を幾多も精製し、一本道を完成させる。二人が侵入した入り口までの経路。
しかしこれは苦し紛れ。所詮時間稼ぎ。これで弾丸を防ぐのは流石に耐久度的に無理があった。
それでも言ってもいられないのだ。無いよりマシだった。
そのままオイヨイヨ、ブルーベアが撃たれた箇所を凍らせ、そのまま肩を持って脱出を試み始めた。
「そこまでだ」
今まで一体何処に隠れていたのやら、二人の行く手を塞ぐようにしながら、ガスマスクを装着している兵士たちが現れる。
あいも変わらず統一性があるのかないのかハッキリしない武装。銃火器。
痛みを堪えているブルーベアの冷や汗は一層強くなったし、オイヨイヨなんて苦虫を噛み潰したような顔で、彼らを睨んで止まっていた。
ここで換気扇が発動。煙が勢い良く晴れていく。また同時進行で消化活動も行われているらしい。
この日のためだけに防火剤を多量に用意していたのだろう。部屋の中でも盛んに燃えている箇所はごく一部。大抵は黒く変色する程度に終わっている。
代わりに煙が出やすい物などを部屋の至る所に置いていたようだった。
包囲されて少しすると、煙の大半は部屋の外に追い出されて終わった。
そしてオイヨイヨ、部屋の広さに驚愕する。
まるでホール。一体何百人と入る事が出来るんだと思うくらいに広い場所であった。
それも今では無残な姿だが。
「…ブルーベア、もうよさそうだぞ」
「っぷはっ……うぐッ……!」
ブルーベアは息を吐き出して、やっと呻いた。
いくら致命傷にはなっていないとはいえ、痛いものは痛い。
下手に貫通せずに残留していなくて良かったと言えばそうなのだが、ブルーベアにそんな話をした所で何の解決にもなるまい。
オイヨイヨはざっと敵の数を把握し、逃げられないと判断する。
この場にいる全員を殺す事は難しくないが、その後の逃走劇を考えると頭が痛くなった。
総勢3000名の兵力。加えて銃火器という武装。更には車両も数多く持つフライパンケーキ。
単独で逃げ出しても手厳しい話なのに、ブルーベアを抱えて逃げ切ると言うのは無茶も甚だしい話。
現状は諦めたフリをしておいて、それらしいタイミングが来たら隙を作って逃げ出すしかない。
逃げきれる可能性など僅かではあるが、それに縋るしか道もなかった。
「くくっはっははは!
貴様は元猟団の…いや、今はバーロー=オイヨイヨだったか?」
「そういうあんたは?」
凄く鬱陶しい程低い声。
凄く鬱陶しい程豪華な黒服の男。
凄く鬱陶しいが割りと良い体格。
凄く鬱陶しい白髪、言っても伝わらないかもしれないが、鬱陶しいU字型のハゲ。他はなんか鬱陶しいくらいに微妙な長さ。
凄く鬱陶しい程の葉巻を突然口に咥える男。
なんか鬱陶しい顔。年齢が50歳か60歳かよく分からないが、鬱陶しい顔。
片手にはそれこそ銃火器としては古い部類に当たる、ワルサーP38を構えていた。
どうやらブルーベアを撃ちぬいた銃は、これ。
視界が悪いなんて物じゃないあの状況下で、恐らくは音だけを頼りに当てたのだろう。
そう考えると、凄く鬱陶しいくらいに銃の腕前は確かなようだった。
「ワシはフライドチキンの」
「許可なくボケボケすんな。
今のお前に対してはツッコむ事さえやりたかねーんだ。
俺は今、相当に機嫌が悪い。最高に虫の居所が悪い」
「クックッハッハッハ!!
まあいいだろう。何を勇ましく言った所でお前達は終わりだからな。
ワシはフライパンケーキのトップ、
ふっふ、葡萄色 真美、よく抜け抜けと戻ってきたな」
「……うるさいわよ…、ッ…!…あんたの首…!!」
「よせ、ブルーベア」
既に動くことさえままならないブルーベア。
何よりも、相手を挑発をする行為は自らの死を早めるだけという愚行であった。
あとオイヨイヨとブルーベアはかなり近接している。
オイヨイヨが肩を持ってやっているので、こう、密着もしている。いやらしい。
ここで別視点で見ると、ブルーベアが挑発をすることはつまり、オイヨイヨにとっても命の危機とも取れる。
それだけの理由でブルーベアを制したのかも知れないが、なんかそれはロマンチックではないので却下。
気遣って止めてあげたんだよ。きっと。
いやそうだろう。オイヨイヨがそこまで薄情なら、疾うの昔にブルーベアを置いて逃げ出していた筈だ。
「くっくっく、威勢だけは昔のままか。
それより何故今頃になって…のほうが気になるだろう?」
「……」
「なーに、簡単な事だ。
危険因子は危険因子。しかしお前はただでさえ強い。
ならば、油断したころに狩るのが一番だ。
そう、お前の弱点を知っている我々だからこそ、用意出来た。
お前は魔力探知や観察眼に優れてはいたが、それらを消し去られるとまるで対応出来ない。
結局、まんまとこの部屋に入り込み、難は凌いだようだが爆発によって身動きを封じられたのだ。
全てはこの時の為に、この部屋まで犠牲にするような真似まで、ふふ、流石のお前にも予想出来なかっただろう。
くくっ!しかし、お前はそもそも愚かだったのだ。
あの日、逃げ出したお前をある程度の追撃で留め、まるで“取り逃がした”かのようにふるまうのは、苦労したぞ」
「…意味が分からないわ」
「例えばそう、ジョン=オ=ラルク。
例えばそう、バーロー=オイヨイヨ。
例えばそう、ミア=ミアミス」
「!!!?」
「そうだよ!!」
マントを翻すかのように、羽織っている黒の豪華なコートを勢いよく振るいながら背を向ける。
「ぜーんぶ貴様に!
貴様の大事な人間が死んでいく様を見てもらう為に!
私に逆らった事を盛大に後悔させながらしかし懺悔する暇も与えず!!
そうだ!!それだけのためだよ!!他にあるかあ!?」
鬼島は再び振り返り、オイヨイヨとブルーベアの顔を拝む。
ブルーベアは絶望と怒り、後悔、それらを混同した表情を浮かべながら動揺しきっていた。
しかしこの鬼島、随分ノリノリである。
そしてもう一つ異様な光景がある事をここで説明しておこうか。
オイヨイヨはこの期に及んでなお、ニヤニヤとしていたのだ。
鬼島はその様子に一瞬不快を感じたらしいが、すぐにまた鬱陶しい程悪役な顔で笑いを返す。
「…ふ、まあいい。
次に死ぬのは猟団の、お前だ。
スクリーン!!」
大声でスクリーンを用意させる鬼島。
天井からでかでかとしたスクリーンが降りてくる。
これまた行動理念が酷く分かりやすい。
ジョンが転移させられた先と、喫茶店ブルーベアの現在の様子を映す魂胆なのだ。
手が込んでいるというか、にも関わらずちゃっちいと言うか。
しかもテレビのリモコンで鬼島が頑張って操作していた。
金掛けてるのか掛けてないのかとりあえず大爆発魔法使ったのになんで無事だったんだよ炎は格納されてたから無事だったで通してもいいかも知れんけど熱でイカれるだろ如何にテレビでも。
「はっはっは!
っはあ!?」
勝手に騒いで勝手に驚いているのは、鬼島だけだった。
いや勿論の事、フライパンケーキの兵隊達も動揺の声を上げているが、一番うるさいのは鬼島だった。
恐らく魔物が居たであろう薄暗い特殊な部屋が映っているが、何もありはしない。
しいて言えば大型のモンスターが頻繁に暴れて付けられた傷跡が部屋中に目立って残っていたが、それもまとめて黒焦げと化している。
また、壁に出来た馬鹿でかい穴が目立っていた。
強度的にはモンスターが脱出出来ない程に堅牢な物、だと思うのだが。
あとカメラがなんでそんな惨状の中で機能できてんの?
ジョンの技って電撃だよね?機械とか特に被害受けやすい筈だよね?精密機械だぞ。
「どどど、ど、どういう事だ!!」
いや本当にどういう事なんだ、ではあるのだが。
ポチポチとリモコンを操作する鬼島。
次に映し出されるのは、喫茶店ブルーベアである。
そこにはカメラが映ったと気がついて手を振るCABIN社長の顔ドアップ。
誰かが持ち込んだであろうカメラを移動させているのはその社長なのだろう。
そのまますぐに、拿捕された兵隊たちが映し出される。
喫茶店は一切の無事のようで、そもそも戦闘があったかどうかさえ怪しい。
ミアもすぐに映り込み、呑気に手を振っていた。
そして、お店の入り口に掛かっているクローズの看板をひっくり返し、オープンに。
それをちょんちょん突っついて、微笑んでいる。
早く帰って来いだとさ。ブルーベアさん。
「…あんがー…」
言葉だけで表現すると実にアホな感じだが、実際アホ面している。
開いた口がふさがらずな様でありつつ、ありがちな間抜け声をあげていた。
この男は真正の阿呆である。
いや、見事。ここまで来るとあっぱれだった。
「なーっはははははははははwwwwwwwwwwwwwwwww」
「良かった…、ミア…」
オイヨイヨは開幕から今までいつも通りの反応である。
とはいえブルーベアは今になってやっと、本当に安心しきった顔をしていた。
そんな表情も、喫茶店ブルーベアでは一生拝めない物だったかもしれない。
何時ものツンとした態度、凛とした表情、吐き出される毒舌。それが喫茶店のブルーベア。
こんな所で偽らない表情を垣間見せる事への良し悪しは問えないが、でも良かったなと、隣に言えるオイヨイヨは堂々と言い張れるだろう。そう言い張ってしまえばいい。
だがその役目は、担うに相応しいヤツが担うべき。
そう考えているオイヨイヨは、あえてここでは何も言わないのだ。
「ええい!コイツラを始末しろお!!」
何もかも遅い段階で今更そんな事を言い出す鬼島。
随分怒り心頭のようで、思考回路もグジャグジャらしい。
周りの兵隊も困惑しながら銃火器を構えるが、
「それより逃げた方がいいぞー?
BOSSさんが飼ってた化け物を恐らく一瞬で倒した奴が、ここにもうすぐ来るからなww」
オイヨイヨの言葉に、動揺の声が一挙に広まった。
ひどい話、発言力が逆転していた。優劣が覆されていた。
実際に鬼島は間抜けな程の醜態を、今の短い間に2度も曝していたのだ。
そもそも鬼島よりもオイヨイヨの言葉の方が、現実味が強かった。危機感を煽るには充分にも程があった。
一度だけ映っていたあの化け物部屋の惨状は、この場に居る全員の動揺を駆り立て騒ぎたてるだけの威力を持っていたのだ。
化け物がどんなものか全く知る由もないオイヨイヨではあったが、きっととんでもない強さのモンスターが居たのだろう。
さもなくばこれ程に動揺しているワケがない。
間違いなく、ジョンもこれで死んだだろうと誰もが確信するほどに恐ろしいモンスターが、あの部屋には居たのだ。
それを難なく倒した上、当たり前のように脱出しているらしいジョンが怖くない筈がなく。
そんなヤツが今すぐここに来るぞと言われて、動じないワケがなく。
「さて、ブルーベア、部屋の隅だ隅。
移動しないと巻き込まれるぜ?w」
「え、ええ」
二人が移動を開始する。
悠長だった。
しかし自信に満ち溢れていた。
勝ちを確信している様だった。
それをひたすら眺める一同だったが、1人が銃器を捨てて逃げ出すと、連鎖した。
1名を除いて皆が順番に、しかし全力で逃げ始めたのだ。
大混乱、大乱雑。
どこからやって来るって言われたら、下からやって来るのだ。
早く行かなくてはジョンによって逃げ道を防がれるのだ。
だから全員慌てた。慌てふためいた。
流石は烏合の衆。蜘蛛の子を散らすような無様さである。
「とまれぇッ!!!」
鬼島の怒声が、この広い広い部屋に響き渡る。
ただし、それは仲間達に言った言葉ではない。
確実にオイヨイヨとブルーベアへ放った言葉だ。
その手には、ワナワナと震えている可哀そうなワルサーP38。
このまま鬼島を更に動揺させてしまうと、手違いでも感情的にでも撃たれてしまう可能性があるのだが、包囲されている状況よりも現時点の状況のほうが対処しやすかった。
オイヨイヨは、今の現状の方が全然楽。たったひとりが銃を構えていた所で、バルカン砲の武藤程に苦戦するくらいに追いつめられる心配も無いのである。
しかしまあ、いともたやすく好転したものだ。
一つの国に対して3人で攻め込んでおいて、もう王手とは。
つくづくご都合主義的展開ではあるが、仕方もない話。
兵力恐らく3000人前後?
足りない足りない。足りるはずがない。
最低でも100倍は連れてこないことには始まらないのだ。
ジョン・オ・ラルクという男は、主人公にあるまじき過去を持つ男なのだから。
「お前は移動してもしなくてももう遅いぜ?
アイツはしつけーからなw」
「黙れ黙れだまれぇ!!!!」
そう言っている最中に凍らされている拳銃と手。
そんな事実に気が付くのも、あと1分くらい先だろうか。
下手すると、気が付かずに終わる可能性さえある。
冷静で居られる時間は彼には無い。追い詰められた王様程に不格好な輩も居ない。
少なくともこのような醜態を晒す鬼島に、王の器は無いだろう。
オイヨイヨはそんな無様を眺めているだけでも充分に楽しんでいた。
しかしブルーベアは理解できないでいた。
現状は確かに安全に等しい。鬼島の手が凍っているのだ。今彼らの命を危機に貶める要因は、今のところ一つ足りともこの場には存在していない。
しかし、ここまでオイヨイヨが楽観的になる意味が分からないでいた。
つまるところ結局、一体ん愛がブルーベアには分からなかったのか、という話だが。
これは酷く変な話でもある。逆に我々には理解出来ないような疑問である。
言語化するならこんな具合だろうか。
何故、命がけの闘争を経ておいて、ほぼ終わったとはいえこの段階にて、オイヨイヨが笑っているのか……、だ。
これは仕方のない事。
なにせ彼女はずっとずっと、笑うことを知らなかった。
戦場において、戦いの場において、暗殺家業において……。
全てにおいて彼女は、ここまで大笑いをしたことが無い。
当たり前である。する方が可怪しい。していたら狂人であろう。
だからこの場でも彼女は酷く冷静であったし、少なからず笑うという選択肢は無かった。存在していない。
人の命を奪う可能性のある、もしくはそれを確実に行うつもりで行動を起こした彼女。
下手すれば自分さえ死ぬかもしれないくらいの事件への関与。暗殺の実行。
実際に開幕時点で、喫茶店ブルーベアに居た人達は巻き込まれてしまっていたし、ジョンとオイヨイヨが下手な行動を取った事で二人して死にかけていた。
それどころかこうして危機的状況に追い込まれ、先程まで死にかけていたのだ。殺される寸前だったのだ。
何か一つズレていたら、誰かが確実に死んでいたのだ。
それを余すこと無く体感したばかりの後で、何故、どうして笑っていられるのか。
彼女には理解出来なかった。
意味が全然分からなかった。
目の前で鬼島十八郎が一人で阿波踊りしていた所で、何も面白い事なんてありはしないのに。
そんな気持ちを乗せた表情をオイヨイヨに向け続けていた。
不安そうな表情でもあった。
動揺を禁じ得ない表情でもあった。
不平不満をぶつけたそうな表情にも似ている。
しかしそれは言葉ではない。無言では言葉になっていない。
だから勢いでも力強さでも説得力でも、オイヨイヨの言葉に勝る事は無かった。
「ブルーベア」
「…ぁ…ぇ…」
理解出来ず困惑するブルーベアにオイヨイヨは、話しかけた。
なんかちょっと良いムードと言えばそうも見えなくないが、恐らくお互いにそういう気は一切ないだろう。
そこに居るのは被害者の女性であって、そこに居るのは正義の味方の相方である。
そしてこれから遅れてやって来るであろう馬鹿野郎は、……さて、何だろうか。
「正義の味方ってのはよ、色々厄介な制約を持ってんだw」
「……?」
「助けてって…言えばいい。
アイツはすっ飛んでくるぞ。
それこそ、本当の意味でな。
ほら……」
オイヨイヨがブルーべアへ、催促する。
無論彼女は本来、そんなことを言うようなキャラではない。
だが、確かに心が揺れていた。動き始めていた。
どうしようもないくらいに、本性が現れ始めていた。本音が溢れ出しそうになっていた。
ジョンは凄まじい人間だ。もはや人間なのかさえ疑わしいくらいに。
それ故に大真面目なジョンの信頼は何処へ行っても厚く、仕事も馬鹿みたいにしっかりとこなす。
そしてジョンは、本当に何時でもいろんな意味でも、絶対に、
誰もを裏切らない。
そして見捨てない。
だから彼は、彼女が呼べば必ずやって来る。
「たすけて…」
「……それでもあいつは飛んでくるだろうな。
だけど、アイツは何時でも言ってるだろ?
“助けてーって声に反応して駆け出す”ってよ。
それじゃあ遅いだろって思わなくもないんだがwwww
アイツはマジだぜ?
それでも間に合うくらいに、アイツの移動速度は速いんだよな。
それに、弱い声より大きい声で呼ばれた方が、アイツ喜ぶぜ?
根本的には単純馬鹿だからなw」
「たす…、けて……」
「……」
ブルーベアは、泣きだしてしまう。
それはジョンへの信頼、オイヨイヨへの信頼、友情、腐れ縁、今までの行動、結果、全てにおいて、ジョンとオイヨイヨの二人に関する事が、心を開かせた結果だったのかもしれない。
本音がこぼれ落ち始める。
心の中身が、音に変わっていく。
辛さや悲しさが、嬉しさが、涙に成って頬をつたう。
「もう…やだ…。
もうやだよ…、
誰も殺したくない……、もう、追われるのも…、も、う、誰かを傷つけるのも…っ!
たすけて…、助けて…、誰か…、ジョン…ッ」
「貴様ら何を悠長に!!」
「叫べ、叫べ叫べ叫べ、
んなんでアイツがすっ飛んで来るかよ!
もっともっと、簡単な言葉だけでいいんだよ!!
アイツは単純じゃねーと全然理解しねえ!!
そんくらいにはマジモンのバカだぞ!!?
だから、ただ一言叫べ!!!
ブルーベアッ!!!!」
「助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!!!」
その大声がどのくらいの範囲まで届いたかは、定かではない。
こんなもの、広い広いこの部屋の隅々まで響き渡っているかさえ怪しいくらいの物だ。
空に叫べば簡単に掻き消えただろうし、海に叫べば波音に全てを掻っ攫われただろうし、山に叫んだ所でやまびこになってそれで終わり。
少なくともこんな場所で叫んだ所で、黒くなったこの部屋の更に下、ずっとずっと下に居ると思われるジョンにまで届くワケは無かった。
だが関係は無い。
彼には距離など関係ない。
「奥義!雷剣天空波!!!!!」
ブルーベアが叫んだ後、助けを求めたすぐ後、鬼島の足元からメリメリという音が聞こえ始める。
まるで地震のような振動が強くなり始める。同時にリズミカルに聞こえる音もし始める。
それは最も下の階から徐々に、いいや、ものすごい速度で何かが上ってくる音。
階段なんてまどろっこしい物など使わず、全てを破壊しながら、登ってくる音。
「なははははははwww
いい感じの声だったwwwwww
いいもん見れた気がするwwwwwwwwwwwwwwwww
そうそう、途中だったなww
正義の味方に憧れてやがるアイツだがよ、正義の味方たらしめる要因っつーか、条件?w
そういう物にこういう、なんつーか当たり前にも程がある項目追加してやがんだよww」
「う、うわわわ、わ、な、何だ、だ、な、あぁ、ああ、あ!?」
そして勢いよく盛り上がる地面。鬼島の足元付近は盛大に膨らむようにせり上がっている。
恐らく様々な物体達が、下からどんどん上へ投げ込まれるように吹き飛ばされてきているのだろう。
玉突き事故を起こす床のその的確な膨らみ方は、ジョンが鬼島を完全に捉えている証拠なのかどうなのか。
そしてまもなく、盛り上がるどころか突き破られて炸裂。
岩が多量に亀裂を生じ、とうとうすべてが吹き飛ばされた。
「…………ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああ!!!」
ジョンが馬鹿でかいモンスターを剣で突き刺したままに登ってきたようで、そのまま鬼島をモンスターもろとも天井へと叩き潰す形となった。
ジョンならば確かに鬼島目掛けて攻撃を仕掛けるのは難しくない事だが、流石に今のは何というか、偶然だろう。
大急ぎでやって来たら偶然鬼島を押しつぶしただけにも見えた。
だが、これぞまさに天誅。
奇跡的な確率が成せる、ジョンの見事な一撃であった。
つかこれ鬼島、死んでない?
「“人を助ける仕事だけど、恩を必ず返すのも立派な仕事。それが多分、仲間ってことだ!”ってさww」
「………」
巨大なモンスターは天井に引っかかっていて、落ちてくる様子無し。
ジョンはそのモンスターに剣を突き刺したまま、自分だけ降りてくる。
流石に悪戦苦闘だったのか、武器は全部何処かに置き去りにしてしまったのか、今は一つも持ってはいない。
あとここまで酷くやられているモンスターだったが、どうやら死んではいないようだ。
無論モンスターは大怪我を負っているが、割愛。
戦闘描写、その姿形なんて一切語られることなく、モザイク状態で放置である。
見せ場無かったモンスターさんに合掌。そしてさようなら。
「誰かに呼ばれて何でも屋参上!!!
ボスはどこだ!ぶっ潰してやる!!」
「いや今まさにお前がぶっ潰したんだよwww」
「えええ!?
どこ!?もしかしてボスって虫!?」
「足元に居るワケねーだろ上だ上wwwwwwwww
モンスターの下敷き、いや、上付けか?wwwwwwwwww」
「俺すげぇ!!」
「まぐれだろーがwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
そんな馬鹿なやり取りに、ブルーベアはたまらなくなってしまったようで。
「ふふ、あはは…っ」
今まで聞いたことが無いくらいに明るい声で、愉快そうな声で、ブルーベアが笑ってしまっていた。
なんだか勢いで笑わされた感もあるが、コントやってた二人は顔を見合わせつつも、すぐに微笑んでブルーベアを見る。
「…あっ、姐さん!!
怪我してる上に泣いてるじゃないっすか!!!」
今更気がついたようで、そんなブルーベアに駆け寄るジョン。
オイヨイヨは黙ってその様を眺める。
いつもの嘲笑した物ではない。
それはただの微笑みであり、妙に大人びた物でもあり。
「うん…すん…、大丈夫…っ、
こんな怪我して…、まきこ、んで…、ごめんな、さい…っ!!」
「姐さん…」
「うぅ…うぅぅ…えぇぇん…」
気が抜けたのだろう。
ジョンもオイヨイヨも初めて見る、ブルーベアの泣き顔。
何度も言うが、いつもは気が強い上に発言もキツくて、態度も悪くて、まともに物が出てこない喫茶店、そのお店のマスター、もしくはバーテンダーの彼女。
とにもかくにも強くて、ひたすら正直で真っ直ぐで、だがどこかで自分を覆い隠していて、だから距離がどうしてもあって。
だからジョンは素直に嬉しいと思った。
だから彼女を無様だと笑ったりなんてしない。
そもそもこんな彼女をどこも変だと思わない。
らしくないなど、絶対に思いはしない。
人間なのだ。泣くくらい普通の事だ。
だから目一杯、泣けばいい。
「……姐さん、俺たちは正義の味方っすよ。
何でも屋だし。
誰でも彼でも彼女でも、助けを乞われたら助けます。
求められたら、何でもします。
だから、
助けてって、ただそれだけ言ってください。
もし滅茶苦茶強いのが相手になるとしても、そんなの関係ないっす。
絶対絶対、飛んでいく勢いで助けに行って、ぜーんぶやっつけますから!」
強がらず、助けて貰えばいい。
彼を信じてやればいい。
それだけで救われるのだから。
「…っ、うん…ぅん…、うん。
っく…うぅ…ひっく…。
ありがとう…っ」
涙を指先で拭いながら、笑顔でそう答えるブルーベア。
まだまだ解決しなくてはならない問題は数多くありそうだが、ひとまずは、これにて終了。
「さて今回の報酬は何でしょー?wwwww」
とはいかないらしい。
タイミングを見計らい、オイヨイヨがふざけ始めたのである。
空気を読んでいないのか、それとも寧ろ空気を読んでなのか。
一方でジョンは、そういったオイヨイヨの絶妙かつ微妙な配慮とは一切関係なく、暴走を開始。
意外にもブルーベアは、こんな局面でも変わらず二人のおふざけするなんて一面を知らなかった。
だからか、ほんの少し驚いている様子。
「そっかある意味仕事したんじゃん俺たち!!」
「今回のを仕事って言うのは結構違うと思うがwwwwwwww」
「姐さん!何くれるんすか!?」
「ちったあ落ち着け馬鹿wwwwwwww
せめてもう少しだけ順をおって発言しろwwwwwwwww」
ブルーベアは、ふっと微笑む。
「ふふふ、オレンジジュース、2Lなんてどう?」
「ぐっじょぶ!!」
「一生モンスターでも相手してろ脳みそスッカラカン野郎wwwwwwwwwwwww」
そんなオイヨイヨのツッコミに、皆が大笑いした。
正直言って面白味など皆無のどうしようもないツッコミだったが、それでもこの場にいる3名にはこれが本当に面白くて面白くて仕方がなくって。
そうして、後々やって来たCABINの大軍勢にすべてを任せ、3人仲良く彼らの街へと戻っていった。
帰路の途中、それこそ喫茶店ブルーベアに帰って疲れ果てて眠ってしまうその時まで、他愛のない会話をしながら本当によく笑っていた。眩しいくらいに。ブルーベアも。
こうして事件は、決して綺麗とはいかなかったがそれでも、しかと解決へと向かっていったのだ。
***
「フライパンケーキの壊滅…、ふーんw
こんな大事件を隠蔽もせず、一面に堂々と掲載してんのかすげーなww
先日起こったフライパンケーキ騒動では、CABINの活躍により…wwwwwwwwwwww
活躍により、危険度A-に怯える近隣の住民は歓喜にあふれ、パンケーキを食べた…ってどんな状況だよ新聞屋ふざけやがってwwwwwwwww」
次の日の早朝…にしては10時を回っているが、そんな時間にて新聞を広げて眺めているオイヨイヨがとにかくやかましい限りだった。
しかし、やかましくもなるだろう。
何せジョンとオイヨイヨ、ブルーベアの名前は見事掲載されておらず、全てはCABINの手柄のように書かれているのだ。
というか最後のパンケーキ食べたってくだりの意味がもう分からないよね。
記事書く時間はそれなりにあったと思うんだけど、新聞屋は一体何を思ってこんな記事を。
ここでグラスを磨くブルーベアは、これまた昨日までの陽気さが嘘だったかのように、何時もの調子で静かに反応する。
「CABINが上手くまとめてくれたようね。
変に名前が広まるのも嫌だったし、結構助かったかもしれないわ」
「CABINの名前が出てくりゃ、大抵の出来事に対して納得出来るって所が限りなく腑に落ちない所だけどなwwwwww」
なにはともあれ喫茶店はいつもの活気を……、と言っていいのだろうか。
今日は常連の中でも、ジョンとオイヨイヨしかいないのだが。
それでもいいか。とにかくいつも通りに戻りきっているのである。
今回の事件はCABIN社長の計らいにより、喫茶店ブルーベアは一切の被害を負うことは無く終わっている。
更にはミアが上手い事交渉したおかげで、防衛料金はタダにも終わっている。
その代わりに、新聞にてCABIN大活躍ニュースに成り果てているので、ある意味では割には合っていないような、そうでもないような。
なんというか、とことん良いとこ取りされまくってる状態ではあるが、何事もなく終わったならそれだけで良しとする他にないだろう。
騒ぎ立てても得も無し。突いて出てくるのはきっと、怖い怖い蜂さんである。
ちなみに喫茶店にCABIN社長を呼び出したのは、実はオイヨイヨである。
それこそピョンピョン言ってる変なヤツが大層な武器をこしらえてやって来たばかりの事。
ともあらばこれ以降も兵隊がやって来る恐れがあり、つまりミアに留守番を任せている間に何かあってはとっても困るので、オイヨイヨ、あろうことか社長に対して直接電話。
「仕事1個受けるからちょっと喫茶店ブルーベアまでお前が直接来いwwwwそれ条件wwwwwwwwww」と、わけのわからない事を供述しており。
胡散臭い話だなと社長は思っただろうが、しかし律儀にも喫茶店へと即刻(本当に間もなく)足を運んで来たのであった。
当然、何が起ころうが対処出来てしまえる社長。特に苦戦するでもなく、危なげなく非常事態にも簡単に対処を終えて、二人が帰るのを心待ちにしていた次第である。
これによってオイヨイヨとジョン、喫茶店に帰ったと思った矢先に怪我しているのに1つまた仕事をこなさせられる羽目にあい、今日も今日とて疲れが取れきれぬままに、喫茶店へとやって来てはダラダラしている具合である。
とはいっても、先も言った事と被るが、本来ならばジョンとオイヨイヨでは対処が難しかった部分などのほぼ全てをCABINがカバーしてくれているのだ。
CABINにとっては良い売名活動かつ最高の武勲まで難なく手に入ってラッキーな気分だっただろうが、ジョン達にとっての見返りも破格的なのである。
何より二人も、ブルーベアの事を思えば、多少の事は苦でもなかったのだった。
話は戻って新聞。
オイヨイヨ、突然立ち上がって驚愕の声を上げる。
「鬼島釈放…って、はあ!?wwwwww」
「ああ、知らなかったの?」
「おまwwww主犯がなんでしゃくほ…ちょwwwwww全wwww員wwwwかwwwwwwよwwwwwwwwwwww」
釈放とは、逮捕拘留されたりして自由を奪われた後に、許して自由にしてやる事。拘束を解いて自由にする事。である。
ちなみに豆知識として、
保釈とは、保証金・保釈金を納めさせて、勾留中(こうりゅう:逮捕されたもののまだ裁判判決が出されていない段階の者を収監する事。同じ読みの拘留は、裁判終わった後の刑罰としての収監の事なので別。)の者を一旦釈放する事。
検察側が事情聴取を、裁判官や弁護士等が話を聞く場合などに出頭を命令し、期日までにそれに応じる義務が発生し、これを無視すると保釈金は没収され、保釈も取り消し。再度収監。
当然次に保釈がまかり通っても、金額は跳ね上がっていると思われる。
またこの保釈金は通常、何も問題を起こさず裁判が終わった段階で返金される。
ねね、知ってた?
さなおは今の今までよく知らなかった^p^
あとがきの解説部分はこんな具合に豆知識的な内容も豊富なので、ぜひ見てね。
って話は置いといてだ。
どうやら頭目である鬼島十八郎は、保釈どころか完全に釈放されているっぽい。
それどころか他の幹部格の人物達すら例外なく解放しちゃってるらしい。
ここでブルーベア、ぶっちゃける。
「それ、今回の一件は、私がお願いしたのよ。
まさかこんなに早く処理しちゃうとは思わなかったけども」
「ブルーベアが釈放手伝ったのかwwwおまwwwwwwwwwwwwww」
「ええ。CABIN社長に頼んでみたら、これまたアッサリ承諾されちゃったのよ。
軍事国家として長らく活動を続けていた彼らのあっけない釈放は、近隣市民に動揺を与えるのではという話も色々されちゃったけど、えっと、何だったかしら。
確か、CABIN名物“地獄の授業”で校正をした、という感じの話にして丸く治める方式を取るって事になったみたい。
その地獄の授業、実在しないらしいんだけど、昔から都合よく使ってる所為で無意味に説得力高いんだって。後々問題になるケースが少ないらしくって。
早朝にCABINの特設“質問何でも答えますセンター”に問い合わせてみたら、社長が直接出てきて、そう聞かされたわ」
「それいいのか物語としてwwwww」
「通ったんだからいいんでしょう?」
その理屈はどうかと思うが。
と、入口の鐘が鳴る。
どうやら2名入ってきたらしい。
全く喋ってないジョンやミアすらそれに反応する。
「チーッスぜよ」
「う"ぃーっす」
そこにはただの一般人の格好をした鬼島十八郎と、バルカン砲の武藤の元気な姿が。
「おいなんでここに来てんだよwwwwwwwwwwwwwwwww」
「鬼島は雇った分。
武藤は元々、運送業なのよね。喫茶店ブルーベアの発注分は全部武藤が持ってきてくれてるのよ。
というか武藤はこの街に住んでるし、フライパンケーキには雇われていただけの傭兵みたいな人物なのよ」
「流石に意味分かんねーよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
オイヨイヨ草生やしすぎだけども、まあ草も生やしたくなるよね。
ここ1年と少しの間、武藤の存在を知らず過ごしてきたっていう事実の方が意味不明だもんね。
流石に無理ありすぎるだろこの設定。過去の俺はもう少し、勢い一発書きしてたにしても、もう少し配慮をさ。辻褄合わせをさ。
「ぜーよぜよ、いつもは裏口から入るんだぜよが今回は尺の都合、BOSSと一緒に入店ぜよ。
姐さん、今回の仕入れはどこに置いとくぜよよ?」
「いつもは倉庫に置いてもらってるけど、今回は都合上、そこに置いておいて頂戴。
いつも済まないわね」
「なーに、こっちが本職ぜよ」
「俺達はブルーベアと比較的仲がいいヤツでありながら商売付き合いのある男を相手に死にもの狂いで闘ってたのかよww
しかもなんだよこっちが本職ってのはwwwwwwwwwwwwwwwww」
手元が狂いまくっててロクにコーヒーも飲めなくなるオイヨイヨ。新聞もコーヒー飛び散って酷い有様。
ここでやっとミアが不安げに質問を投げかける。相手はブルーベア。
「あのー、雇った人ってもしかして、このお方ですか?」
見るからに悪役ヅラのおっさんっていうか、なんか凄い鬱陶しい見た目の奴が目の前に居るのだ。動揺もするだろう。
しかしブルーベアは何も思ってないかのように、淡々と説明する。
一応不安にならないように考慮してくれてる発言だったが、効果の程は微妙である。
「安心しなさい。
彼はただただ喫茶店の掃除をやってもらうだけの雑巾みたいな男だから」
「ぞ、雑巾んぅ?
勘弁して下さいよぉ…」
流石に言い過ぎだろブルーベア。
というか鬼島は鬼島でなんで既にお馴染み感を演出してんだよ。
ちょっと前まですげーノリノリで悪役やってただろ。
ギャップあり過ぎだろこの雑巾。
「うっわ、低い声が聞こえた瞬間、オレンジジュースが不味く…」
「ようやく喋ったかと思ったらお前はお前でひたすら飲み続けてたんかよwwwww」
疲れてるのか、元気が有り余っているのか。
と、ここでブルーベア、グラスを置いてバーカウンターを回って出てくる。
仕事中にカウンターを開ける事もあるし、飲み物を運んできてくれる事もあるので、別段珍しい事でもないが。
「まあまあ、これにて一件落着。
私はこの男を監視する役割でもあるし、立場はミアの方が上だから安心して?」
「途端に説明口調になっても締まりがつかねーだろうがこの展開じゃあwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「鬼島は貴方達の仕事を収集して提供する役割も担ってくれるわ。
ある意味で顔は広いし、それなりに期待できる仕事を持ってきてくれると思うわよ?
あと、ちょっとごめんなさいね」
そのままブルーベア、まずジョンに耳打ち……するのかと思ったら、頬にキスをする。
すぐに離れて今度はオイヨイヨにも頬にキス。
「って!あわわわわ姐さん!?」
顔を真っ赤にするジョンは、オレンジジュースを手放して立ち上がって動転。
一方でオイヨイヨは至っていつも通りの態度。ヘラヘラしているばかり。
そのままバーカウンターの内側に戻った彼女は、再びグラスを磨き始めた。
ちょっと最初と違うのは、少しだけ頬を赤くしていた事、だろうか。
「お礼…よ。
頼りにしてるわ。正義の味方、何でも屋のジョン=オ=ラルク」
「あ、え、任せてください!!」
おう、なんか頑張れよ。
「バーロー=オイヨイヨ」
「なははははははははははははwwwwwwwwww」
なにわろてんねん。
「鬼島、早くここ掃除」
「ワシの扱いなんか無駄に酷くないっすかあ!?」
人も増えて、少し違っている今日の始まり。
それもいつも通りに戻るのは、さほど時間はかからないのだった。
そしてここは喫茶店、ブルーベア。
営業時間中は必ずといって良いほど、ピアノの音と騒がしい人たちの声が絶えない。
今日も快晴であり、平和である。
***
【あとがき】
どうも、370mLです(´・ω・`)
第3話、如何だったでしょうか。
こうして見ると1話と2話がどんだけ問題作だったかがよくわかりますね。
この3話でも実在した戦闘機、銃器などを引用しまくっており、特にフライパンケーキの由来がプロペラの戦闘機の通称から引用するといういつも通りの遊び具合ですが、
イャンガ○ルガやらナイ○ボールを出してるよりも全然健全的なのは気のせいではない筈^p^
また今回はちょっと無理のある描写、難解な描写が多々あったと思います。
例えばバルカン砲。
これには様々な種類(正しくは派生)がありますが、今回登場した武藤が持っていたバルカン砲は、どれだけ軽く見積もっても90kgを超えています。
また反動もとんでもないので、仮に抱える事が出来ても、構えて撃つなんて事は不可能です物理的に。
そもそも戦車やら艦やらヘリやら戦闘機に取り付ける代物なので、分かりやすくトリガーがあるとは思えないし。
あと手榴弾の見た目をした爆弾の破壊力やら、バルカン砲で魔法陣を描くやら、もっと細かい事を言えばびっくりするくらいツッコミどころある回でしたねえへへぇ^p^
充分、分かっていただけていると思いますが、ブルーベア滅茶苦茶強いです。
通常の対人戦においてもかなり優位に事を運ぶだけの技術と実力を持っていますが、彼女に不意打ちさせたらまず対応出来ません。オイヨイヨが呆気無く背後を取られている時点でお察しです。
そしてそのバーロー・オイヨイヨ君ですが、彼もチートクラスで強いです。というか真っ向勝負で戦わせたらまず勝てるキャラ居ません。ジョンでも無理です^p^
無論それは彼、バーロー・オイヨイヨが自身の命をも賭けて戦う本気でならばの話ですが。
このあたりの能力の事は、6話くらいでやっと明かされる形となります。
ただしオイヨイヨの魔法陣無力化に関しては、さてどのくらいで明かされるんだっけか。
えっと、15話?^p^
あとビックリしたんですがね。
鬼島十八郎の設定が原案段階3話と現段階17話では随分な差を生じており、半ば別キャラみたいな状況になって果ててました。
370mLはそれを知っていて無視して設定を変え、しかも変えた後も原案3話は直さず放ったらかしていたのですが、
武藤一郎君の設定の事を全然覚えてなかったので、3話修正作業中に大笑いしました^p^
詳しくは下記のバルカン砲の武藤の項目を御覧ください^p^
さてさて実を言うとあまり書くこともありませんので、長くなりそうな解説文を書き進めていきましょうか。
・ブルーベア
本名、葡萄色真美。元フライパンケーキに飼われていた手駒の一つでありながら、史上最強の暗殺者、伝説の暗殺者、幻影殺しの異名を持っていた女性。
現在は喫茶店の店主であるが、バーとしての側面の強いお店である為か、バーテンダーの格好をしている。
ジョンや他の人物から姐さんと呼ばれている上、立ち振る舞いが酷く冷静だしとても大人びているので、若く見積もっても20歳前後だろうと読者は思っているかもしれないが、17歳である。超若い。
身長169cmであり、非常にスタイルの良い、バーテンダーの格好をした女性。巨乳。
髪の色はブラウン。驚くべきほど長いポニーテイル。髪を下ろせば身長とほぼ一緒という脅威的な髪の長さである。ポニーテイル状態ですらふくらはぎくらいまであるので、見ててかなり危なっかしい。
また本編でロクに触れられる事はないのだが、左利きである。太刀も特に描写していないが、左手で持って構えている。
彼女の暗殺の腕前は健在で、3話中でも、とんでもない強さを誇るオイヨイヨの背後すら呆気無く取るという人間離れした神業さえ軽くやってのけた程。
またその3話でのラフな格好は、後12話でもやってくれる。
逆に言えば彼女の私服姿はそれくらいレアである。あと私服姿にスカートは無い。
・ポニーテイル
正しくはポニーテールと表記。
毛先がポニー(肩までの高さが147cm以下の小型の馬のタイプ、総称)の尻尾のように垂れていることからこの名が付いた。
髪を後頭部の高い位置で一つにまとめて垂らした髪型であり、日本語ではかつて総髪(そうがみ)と呼ばれていた髪型のようだ。
髪を留める物さえあれば比較的簡単に準備・セット出来る髪型である為、女性がスポーツをする時に結われる。
またロングヘアでありながら顔の輪郭やうなじが露出する為、ショートヘアと似たような印象を他者に与える事も出来る、ってwikiに書いてある。
ちなみに日本でも総髪という通称が存在するように、またセットの簡単さもあって、かなり古来からこの髪型そのもの、もしくは類似した髪型は多く見られるが、世界や日本でこれが流行り始めたのは1950年頃らしい。バービー人形の髪型として広く知られていた。
また、括る位置が低い場合は一本結びであり、ポニーテールとは別物扱いとなるようだ。
また左右どちらかにテールを垂らした場合はサイドテール、もしくはサイドポニーと呼ばれ、これらの普及により、普通のポニーテールをシングルポニーと表記する場合もある。
・毒
概ね我々の世界での概念そのままの毒。
一応で状態異常の名称もあるが、今回は毒状態の更に上、生命活動停止という最上位の状態異常にジョンはなっていた。
そう、最上位の状態異常だったのに、遊んでいたのだ周りは。すげーわお前らの度胸。
・約束事
ジョンとオイヨイヨとの間にある、仕事上のパートナーとしての約束事、契約の事。
頻繁に勝負事を始めるのもこの一環であり、他にも様々な内容がある。
これらの内容が多少なりとも知れるのは、6話と7話と10話だろうか。
これらは道理からして酷く間違っている契約であって約束事である筈なのだが、どことなく友情も感じる事が出来る代物でもある。
・CABINの特設“質問何でも答えますセンター”
記念すべき1回目のオレンジファンタジーで登場したCABINの電話窓口。
どうでもいい質問にはどうでもいい返答をノリよく返すが、かなり精度の高く、信頼性のある情報を返してもくれる、優秀な窓口。
無論だが、シークレットな部分は答えてくれない。
場合によってはこの窓口から社長と電話出来るようで、今回3話の終わりでのブルーベアはそのような展開になったようだ。
・イナバウワー
正しい表記はイナバウアー。直せよさなお。
フィギュアスケートの技で、足を前後に開き、つま先を180度開いて真横に滑る技。
1950年代に活躍した旧西ドイツの女性フィギュアスケート選手、イナ・バウアーが開発したのでその名が冠されたらしい。
2006年のトリノオリンピックでは、フィギュアスケート・女子シングル競技において、日本人として初めて金メダルを獲得した荒川静香選手は、イナバウアーを得意技とし、そのトリノ五輪のフリースケーティング本番で、得点には本来大きく繋がらないながらに独特のイナバウアーを披露し、観衆の喝采を浴びた。
この演技で荒川静香選手はトリノオリンピックにおいて日本人選手唯一の金メダルを獲得し、日本中を沸かせたことから、「イナバウアー」は流行語となり、2006年の流行語大賞にも選ばれた。
ただしこれ370mLも今まで誤解していたが、荒川静香選手のイナバウアーは、上半身を大きく反らせる特徴的なイナバウアー。
あくまでも背中を大きく反らせてるのは荒川静香選手の特徴的な滑り方であって、イナバウアーに必須の体制ではない。
でもイナバウアーって言われたら、あの仰け反りを想像しちゃうよねどうしても。
・ワクチン
感染症の予防に用いる医薬品の事。
病原体から作られた無毒化あるいは弱毒カ化された抗原を投与することで、体内に病原体に対する抗体産生を促し、感染症に対する免疫を獲得する事が出来る。
ワクチンを発見したのはイギリスの医学者、エドワード・ジェンナー。
牛痘にかかった人間は天然痘に罹患しなくなる(または罹患しても軽症である)事に気付き、これにより天然痘ワクチンを発明した。
大きく生ワクチンと不活化ワクチンに分かれ、
生ワクチンは、毒性を弱めた微生物やウイルスを使用し、
不活化ワクチンは、化学処理などにより死んだウイルス、細菌、リケッチアを使用している物を指す。
日本は1980年代までワクチン先進国とされていたが、副作用による訴訟が相次ぎ、厚労省とメーカーが開発・販売に消極的になり、日本はワクチン後進国とされるようになった。
・黒板
全くもって意味を成していない、喫茶店ブルーベアに存在する備品。
本当の意味で要らない物であるが、ジョンが「それっぽい!」とかいって撤去を譲らない一品。
喫茶店ブルーベアが出来た際、業者がなんらかの理由で使っていたのかそうでないのか、ともかく何故か置いてあったらしい。
ちょうど黒板を格納出来そうな細い空間もあったので、そこにいつもはしまわれている。
・太刀
日本刀のうち刃長がおおむね2尺(約60cm)以上で、太刀緒を用いて腰から下げるかたちで佩用(はいよう、佩(は)くとも言う)するものを指す。
語源は、断ちから来ていると言われ、反りをもった日本刀を指し、古墳出土品や正倉院伝来品などの上古の直刀については「大刀」の字をあてて「たち」と読ませている。
馬上での戦いを想定して発展したものであるため、反りが強く長大な物が多いという特徴がある。また片手で扱う事を想定された物も数多い。
しかし後々、戦は足軽による集団戦が多くなり、これらの生産力は衰えを見せる事ともなる。
2尺以下(約60cm以下)を小太刀、2尺~3尺(約60~90cm)を太刀、3尺以上を野太刀と、現在ではおおまかには定義されている。
また足軽の武器として多く用いられるようになっていった打刀と呼ばれるタイプの刀とは別物とされながらも、これらの区別が難しい代物も多い。
余談だが12話くらいまで370mLは太刀と普通の刀との差を全然理解していなかった為、原案の3話では刀と簡単に表現していた。
刀ならまだ言い訳出来るけど、剣って表現してたりもしてた。ちゃんとしとけよさなお。
・幻影殺し
ブルーベア、もしくは葡萄色真美の字名、二つ名の事。お前の幻想をぶち壊云々のイマジンブレイカーとは無関係。他の別名に、「アサシンゴースト」もある。
限りなく伝説の暗殺者の通称でもあり、その暗殺者が起こしたと考えられている暗殺自体は少なく見積もっても200件は固とされている。
標的にされた相手は確実に殺害されており、様々なトラップや影武者も難なく交わされ、また目撃者すら生み出さないという手際の良さであった。
しかしながら完全完璧な暗殺であったが為に彼女の犯行である事は全く知られておらず、おかげでブルーベアは無名となっている。
・いつの間にかピアノの少女も消えている
開幕で機関銃を持ってきた男を紐で縛り上げた頃の、ピアノ少女の状態の事。
基本、ピアノ少女にとって不愉快な事があると出て行くパターンがほとんど。
そうでないならば仮に戦闘が巻き起ころうとも無視してピアノを弾いている。でも戦闘なんか開始されると気が散るので怒って帰ると思われる。
今回はブルーベアが殺気立っている(不穏な雰囲気になってしまった)事が酷く気に食わなかったらしい。
まあ、ピアノ少女はブルーベアをいたく気に入っているからね。いつもと違ったあの感じは正直に言って、見たくもなかっただろう。
・迷彩柄のタンクトップ
簡単に説明しちゃっているが、本当は、Uネックショート丈ベアトップキャミソール。定義上、タンクトップではない。似て非なる。
一般的な緑主体の迷彩柄で、肩紐はなんと取り外し可能タイプでもある。
内側にクッションカップが入っており、上から覗いたり、激しく動くと見えちゃうなんて事がないようになっている。まさか、ノーブラっすか。
そしてめっちゃ揺れる揺れる。うひょー。
それカップサイズ合ってないんじゃないのかな。買い直した方がよくないか?
・丈夫そうなジーンズ
普通のレディースジーンズだが、膝下に厚手の布が縫い付けられている。
腰回りにシワが寄りまくってるので、多分そうとう動きやすい。
また彼女のブーツはレザー素材のロングブーツ。鉄心入り。CABINの支配するこの街には支店は無いが、ネフティス製品らしい。
・ハートマークの可愛いポーチ
これ表現ミス。正しくはハート型してるポーチ。腰に取り付ける事が出来る。おかげで太刀とよく喧嘩してる。
このポーチはメーカー「チャイルドポケット」と呼ばれる、女性向けの服屋さん、もしくはアクセサリ屋さんの商品。見た目の使い勝手の悪そうさに比べて使いやすい上、丈夫。積載限界1kg。
補足に補足。
バーロー=オイヨイヨは赤のタンクトップなのだが、その服には「IKEMEN」と印刷されている。
その服のメーカーは「イケメンズ」である。酷い。
・空飛ぶパンケーキ(フライパンケーキ)
実際の由来はXF5Uと言われるプロペラ機だが、今回は組織について解説。XF5UについてはXF5Uの項目参照。
愛称が「フライング・パンケーキ」や「フライング・フラップジャック」だが、今回は更に略され、フライパンケーキ。これが今回の舞台である軍事国家の名称となった。
軍事的規模は馬鹿にできず、やろうものなら国一つを落とす事ができる程の兵器を持ち合わせている。
支部は存在していないが、その縄張り自体はかなりの広さで、防壁から本部建設に至るまで堅牢。
かなり金をかけた軍事要塞であり、難攻不落。事実無印猟団率いる連合1万という兵力との全面衝突にさえ難なく耐え切る程。
フライパンケーキの人数も3万人を超えており、戦闘が可能な兵隊は約3千人。完全な独裁軍事国家。
またCABINや無印猟団、世界政府といった大きな組織とは基本的に交流も何もしておらず、鎖国スタイルを貫き通していた。
一昔前は他国や各地域に対して強気な態度、略奪めいた侵攻を繰り返していた。
それを束ねた鬼島十八郎も実は単独でもかなり強く、元よりカリスマ性もあり戦略家である。
3万と言う人間をここまで導くその能力は、異常であったと言える。
・XF5U
通称をフライング・パンケーキ。
アメリカ海軍の依頼でヴォート社とその技師en:Charles H. Zimmermanが設計・試作した艦上戦闘機である。
その円盤状の形状からFlying Pancake(フライング・パンケーキ)またはFlying Flapjack(フライング・フラップジャック)の愛称がつけられている。
何故この不可思議な形状なのかと言うと、円盤翼機は翼面積が広い為に高い揚力を得られるために失速し難く、広い速度範囲で飛行できるという特性があるからである。
つまるところプロペラ機にとっての新しい形、新しい挑戦であった。
しかしながら、テスト飛行すらする事無くして開発中止になった、いろいろな意味で幻の機体。
この形状自体が既に注目を浴びやすいというのに、一度も飛ばなかった、使用されなかったという事実がより多くの人の目を引き、ある意味では有名なのである。370mLも好きすぎて今回引用した。恐らく、数多くのファンが世界中に居ると思う。
生産中止が決まった大きな原因として、第二次世界大戦の終結、プロペラ開発が遅れに遅れ、結局それに圧されて生産が大幅に遅れてしまった事、ジェットエンジンの開発が成されてプロペラ機の重要度が落ちた事、プロペラが大きい為に前方に射出する強力な武装を設置しにくかったとこが大きく挙げられる。
とはいえプロペラ機としては(一人乗りだったし積載も結構ギリギリで様々な課題を抱えざるを得ない厳しい代物ではあったながらに)本当に高い性能を持っており、地上実験しか出来なかったが、高い水準と結果を叩き出している。
また試作機は生産中止決定によって即時解体されてしまったが、円盤翼機の利点である強固な機体構造であった為に、通常のスクラップ方法では破壊する事ができなかった。
よりにもよって解体する段階でこの機体のメリットを実証してしまったのである。
せめてこの世界では空を飛んで欲しくて登場させているので、随分遅くなったが、7話にて空を飛ぶ姿が確認出来る。色々無理やりだけども。
またこの世界では石油はクッソ高いので、この機体の燃料は固形魔力とガス燃料の混合タイプ。この世界の車なんかもガス燃料で動いている。
・MG08/18
MG08重機関は、ハイラム・マキシムが1884年に設計したマキシム機関銃を基に設計された、第一次世界大戦時のドイツ軍の標準的機関銃の派生の1つ。
MG08を軽量化したMG08/15を空冷化して、さらに軽量化(約15kg)を進めて戦場での機動力を高めたタイプが、MG08/18である。
実際に使われた兵器であり、当時の兵器としての殺傷力は極めて高かった。
また第二次世界大戦時には既に別の兵器に取って代わられていたが、新兵器の生産と供給が需要に追いつかなかった為に、新型兵器の生産力向上がなされるまでは一時的にこのMG08系等の兵器が引っぱり出される事もあった。
また一部の部隊はこれを使い続け、戦争末期には再び配備された例もあった。
あとこれを喫茶店でぶっ放そうとしてた男の名前はピョン吉。17話の段階でも再登場していないモブである。
・オイヨイヨの手榴弾
もう殆どただの爆弾。持ってるだけで充分に危ない代物。
仕入れ先はCABINの支配する街、南側方面、5丁目にある隠れた武器商人の店。
今回沢山の人間を吹き飛ばしまくっているが、オイヨイヨは魔法で上手く相手を保護し、怪我は多少させても酷い怪我を負うことは徹底的に避けさせていた。
そこまで器用な事出来るんならもうちょっと別の方法あったんじゃないだろうか。
・バルカン砲の武藤
本名、武藤一郎。意外に若くて、23歳。身長190cm。
ジョン達と同じく、CABINの支配する街に住まい、武藤運送有限会社の社長をやっている人物。
オレンジファンタジーの原文がそのまま置いてあるサイトの説明文では、「オレファン界のイチローですねと言われた事がある」とかいう意味不明な内容も確認出来る。
語尾に土佐弁っぽい感じの「ぜよ」を無理やりに付けたがるが、普通に喋る事も出来る。あとどこにも記載していないが、さなおの持っている資料上では、芋けんぴが好きな食べ物という設定になっている。
どういう経緯かはしらないが、副業としてフライパンケーキの傭兵として雇われており、運悪くジョンとオイヨイヨの行く手を阻むこととなりつつも、とんでもない実力を見せつけてくれた。
それと関係なく、武藤運送有限会社の彼は喫茶店ブルーベアにも荷物を運搬しており、ブルーベアとは比較的交流のある人物でもある。
3話以降は度々彼がちらっと登場したり、本編に大きく関わってくる事もある結構重要な人物。
車などの機械に強く、道具と材料さえあればある程度の修理が可能であり、例のフライング・フラップ・ジャックも操縦出来る。ちなみに嫁さんが居る。
そして3話の原案をもし読もうという猛者が居るのならば注意頂きたいのだが、
「出てきたのは割かし体の大きな男。身長は2m前後と言ったところだろう。
頭はバンダナで覆われているが、恐らくハゲ。
顎鬚が無駄に長めで、大よそ30cmくらいは蓄えられている。」
と表現が成されている。誰だよこいつ。
370mL、こんな表現をしている事を完全に忘れていて、全然見た目違うキャラ描いちゃってるから。本気で3話修正開始してからこの部分見つけるまで忘れてたから。
ちなみに現在のデザインは、髪型は角刈りで黒色、逆三角形な見た目、黒いタンクトップ姿、23歳にしては若干老け顔だけどなんだか柔らかい顔してて、ヒゲは生えてないしバンダナとかそもそも無い、という感じである。
ごめんね武藤、覚えてなくて。もう頭の中には大男って設定と、特殊な語尾だっていう設定しか残ってなかったんや……。
・M61A2
アメリカ合衆国のゼネラル・エレクトリック(GE)社が開発した20mmガトリング砲、M61系列、モデル。
その高性能さ故に様々な戦闘機、戦艦、対空自走砲、輸送車、軍用ヘリなどに現在でも採用されており、今もなお現役。
コードネームがローマ神話の火神、バルカンであったため、M61シリーズは全てにおいてバルカン砲と呼ばれる。
M61は、20mmのガトリング砲で、6本並べた砲身を反時計周りに回転させて連射を行う。
システム全体の重量は140-190kgあり、軽量化したM61A2でも96kgほどになる。
つまり今回登場したM61A2と呼ばれるものは相当に軽量化されたタイプ。M61に比べると耐久度が低いという欠点がある。
また発射速度は戦闘機に搭載する場合、毎分4,000発と6,000発の切り替え式となり、もしも分間6,000発で射撃する場合は、2トンもの反動が生じる事になる。
ガトリング砲は数秒(使われている物によっては1秒以下だが)の間、スペック通りの発射速度に到達しない。また射撃停止にも僅かな時間だが必要となる。
とはいえその信頼性の高さは折り紙つきで、M61における故障が発生する確率は100,000発に1回程度と言われている。また砲身寿命はおよそ12,000~18,000発、システム全体の寿命は150,000発程度である。
武藤一郎がこれを扱えている理由は、高等な風魔法による補助があるおかげである。まあ、もしそうじゃなかったら体吹き飛んでるどころか、死んでるよね反動で。
あと20mmの弾丸の威力だが、人間に文字通りで見た通りの風穴を開ける事が容易な程の凄い威力である。魔法陣描けねーよ流石にそれじゃあ。と思わなくもないが、まあ、その、うん。
・属性
この世界の魔法の定義、法則、基本に深く関与する項目。
『火は水を奪い、水は土を溶かし、土は風を止め、風は火を乱す』
『光は闇を照らし真実を知らしめよう。
しかし真実を
嘘をも覆う闇は真実を隠してしまうのだ。
故に無の力程に確かな物もない』
という魔導師ギルドの最も基本的な教えの通りの属性の流れ、法則。
ちなみに通常属性と言われる4属性は、この世界の物質は、火・空気(もしくは風)・水・土の4つの元素から構成されるとする思想、四元素からそのまま引用している。
しかし上位属性と呼ばれる3つ、光・闇・幻は370mLのオリジナル定義である。
ここに無を追加して8属性でこの世界は構成されている事となる。
弱点に関する内容も恐らく他とは真逆的な考え方で、火→水→土→風→火…、光→闇→幻→光…、という流れとなっている。ポケ○ンならヒ○カゲがゼニ○メに勝っちゃう感じ。逆だよね。
無とは、属性を持たない物理攻撃を主に言う。だが無属性の魔法も数多く存在する。
また上位属性の魔法は人間族や獣人族といった種族には素では扱えない。特殊なアイテムかマテリアルと呼ばれる宝石が必要となる。
・エントランス
そのままの意味ならば「入口」「玄関」のことだが、この世界ではこれも列記とした魔法。
指定場所用の魔法陣を「玄関」、そこへ転送するための魔法陣を「転送用」と区別して設置される。
今回は触れた者のMPを強制的に使用させて転送させるように設定されていたが、設置者のMPを使用して自動的に発動する、とする事も出来る。
ただしその場合、あまりに一気に転送をしまくるとMPが枯渇して死に至ることもあるので、予め使用回数を指定しておいたり、魔法陣を無力化する作業を行う必要がある。
加えて転送可能距離には絶対的な限界値が存在しており、半径200mまでが限界である。充分だけども。
またこの魔法は、空き巣に困っていたとある魔法使いが、文字通り空き巣を「玄関」へと転送させて追い出す為だけに開発した魔法である。
開発した人は多分、凄い魔法使いだったんだろうね。ここまで汎用性があるってことは、そういう事だろう。
・バキュームクリーナー
直訳して「掃除機」の事だが、これもまた列記とした魔法。
散らかるゴミを片つける名目で作られた代物だが、生物までも影響かにある上に、吸引するゴミの種類をほぼ指定出来ないという酷い問題があり、掃除用としては使い物にならない魔法。
武藤はこれをどうにかこうにか、設置者だけは影響を受けないようにと設定している。また吸引力もかなり強めに設定している。
しかし立ち位置によっては物が飛んできて被害を受けかねないという可能性もあるので、結局使いドコロは限られてくる。というかこれを戦闘で使用する奴、ひょっとするとこの世界では武藤ただ一人かも知れない。
・得意、小牙風剣
ジョンの技のひとつ。
小さめの剣を使い、斬りつける動作を素早く行う技。雷属性。(風属性。)
・得意、薙風
ジョンの技のひとつ。
大きめの剣の平たい部分を使って風を起こし、相手を吹き飛ばす。
ただし実質は風魔法攻撃であり、しかし斬撃性能を持っている。
・得意、円刃雷衝
ジョンの技のひとつ。
武器を問わず、360度、円を描くように振るい、雷と衝撃波をある一定の範囲で起こす防御技。
これ自体も相手に接近した状態ならば攻撃となるが、威力はさほど期待出来ない。
・ぜーよぜよぜよぜよ!
お前はケロロ軍曹に登場するキャラクターかよ。
・魔方陣無力化
魔法陣設置によって成立する魔法を無力化する行為、もしくはそれが起こる現象の事。
例えば地面に魔法陣を描いて発動させた場合、足で魔法陣の一部を消してしまうだけで無力化が成立する。
他にも魔法陣が何らかの現象で歪んでしまったり、特殊な能力、力場の発生で効力を発揮できない場合にもこの語は扱われる。
これを防ぐために魔力のみで魔法陣を描いたり、深く刻みつけて消えにくくする方法をとったりする事も多い。
もしくは魔法陣を本来必要とする魔法であっても、あえて描かずに発動させたりする事も可能。
ただしその場合、途轍もない集中力を必要とする。
・トリガーどころかバルカン砲が、凍結していた
オイヨイヨの持つ、非常に強力な特殊な能力。
これは6話にてやっと語られる事になるのだが、特異性質(ピニオン)と呼ばれるこの世界独自の先天性の能力である。
詳しくは6話あたりで語られるので割愛。
一応程度で語っておくと、彼の特異性質は「絶対零度」である。
・俺以外の魔法発動を、多少なりだが任意で、無効化する事が出来る
オイヨイヨの持つ、非常に強力かつ特殊な力の一端。
ネタバレすると、聖痕と言われる能力の、本当にほんの一端の使用。
詳しくは15話でその定義が語られる為、ここでは詳細を省く。
今のところ言えるのは、この聖痕の能力は、彼にしか扱えない上で聖痕としても最強であるという事、くらいか。
・死神
生命の死を司るとされる伝説上の神で、世界中に類似の伝説が存在する。
今回の場合は、ジョン・オ・ラルクに対する皮肉の通称、二つ名である。
恐らくこの世界で最も有名な男であるジョン・オ・ラルクの二つ名は、現在の家業や行動理念やふざけた態度や言動からは想像もできないが、「死神」である。
・悪魔
特定の宗教文化に根ざした悪しき超自然的存在や、悪を象徴する超越的存在をあらわす言葉。
今回の場合は、バーロー・オイヨイヨに対する皮肉の通称、二つ名の一部である。
その一端をほんの少し程度にこの3話でも垣間見せているが、酷く冷徹なこの男の本性こそが、その二つ名の由来であり、彼の能力もまたその由来である。
彼のフルの通称、そして彼の本名は、4話で明かされる事となる。乞うご期待である。
・頭目が死ねば次に新しい顔を納めれば済む話。
某アニメでもそれは当たり前のように行われている。
そんな生々しいアニメじゃないよね、アンパン○ンって。
・蛍光灯
放電で発生する紫外線を蛍光体に当てて可視光線に変換する光源であり、HCFL(hot cathode fluorescent lamp:熱陰極管)とも呼ばれる蛍光管を用いた光源や照明器具を指すことが多い。
最も広く使われているのは、電極をガラス管内に置き(内部電極型)、低圧水銀蒸気中のアーク放電による253.7nm線を使うものである。
ってwikiには書かれている。
なんでこれを解説文に置いてるんだよって思うかもしれないが、
この世界の技術基準が一応西暦1900年前後という設定なので、もしかして蛍光灯っぽい機材ってまだ無いかもしれない?と思って調べようと思った結果、370mLの独断で項目に追加している。
どうやら、1856年にドイツのガラス工(後に物理学者となる)のハインリッヒ・ガイスラーによって作られたガイスラー管が、蛍光灯の起源と考えられているらしい。
で、今ほどではなくとも蛍光灯と呼べそうな代物になったのは、1926年頃だろうか。
ドイツの発明家エトムント・ゲルマーのグループが、管内の圧力を上げ、蛍光粉末で覆うことで、放たれた紫外線を均一な白い光に変換することを提案。この発見によってゲルマーは一般に蛍光灯の発明者と認められている。
そして1937年、ゼネラル・エレクトリックが蛍光灯を発売開始。おおよそこれ以降に日本でも蛍光ランプが開発されており、実用化がなされたようだ。
つまり西暦1940年前後以降にようやく一般化が進んだようである。
となるとオレンジファンタジーではあまり一般には普及して無さそうな感じかな。まだ豆電球やらロウソクが主流の時代か。うーむ。今後は考慮しよう。
・フラッシュバック
心理現象においては、強いトラウマ体験(心的外傷)を受けた場合に、後になってその記憶が、突然かつ非常に鮮明に思い出されたり、同様に夢に見たりする現象。心的外傷後ストレス障害(PTSD)や急性ストレス障害の特徴的な症状のうちの1つ。
また麻薬などによって巻き起こされるフラッシュバックとは、幻覚剤によって体験した感覚が突如として再現されることらしい。
アメリカ精神医学会の『精神障害の診断と統計マニュアル』における正式な診断名は幻覚剤持続性知覚障害らしい。
なんだか不穏なので、この辺で終わらせておく。
・フラッシュオーバー
室内で火災による熱で可燃物が熱分解し、引火性のガスが発生して室内に充満した場合や天井の内装などに使われている可燃性素材が輻射熱などによって一気に発火した場合に生じる現象。
1,000℃を超える高温の環境が一気に広範囲に広がることから避難ができなくなるばかりか、消火も延焼を防ぐ対応しかできなくなり、全焼は必至。
あれ、これってもしかして、370mLまた間違えてる?ってちょっと思ったが、よく見ると間違えてなかった。
どうやら簡単に言うとこの現象は、素材として燃えやすい物が多量に使用されていたり、熱で燃えやすいガスみたいな物が発生したりして、とんでもなく広い範囲が一斉に発火してしまう現象。比較的近い発生基準を持つ現象として、粉じん爆発があるようだ。
確かにこれが発生すると避難はまず不可能だろうし、突入した消防隊員が犠牲となってしまうケースは、多いだろう。割りと洒落になっていなかった。
・バックドラフト
火災の現場で起きる爆発現象。
室内など密閉された空間で火災が生じ不完全燃焼によって火の勢いが衰え、可燃性の一酸化炭素ガスが溜まった状態の時に窓やドアを開くなどの行動をすると、熱された一酸化炭素に急速に酸素が取り込まれて結びつき、二酸化炭素への化学反応が急激に進み爆発を引き起こす。
たちまち火の海となる「フラッシュオーバー」とは違う現象。
こうして考えると鬼島達が起こしたのはフラッシュオーバーだったのだろうし、オイヨイヨが氷の中で危惧したのは確かに小規模のバックドラフトだったのだろうから、さなお、珍しく今回は間違えてなかったようだ。
しかしこの3つの用語、割りと洒落になってなくて泣きそう。
・ヘモグロビン
ヒトを含む全ての脊椎動物や一部のその他の動物の血液中に見られる赤血球の中に存在するタンパク質。
酸素分子と結合する性質を持ち、肺から全身へと酸素を運搬する役割を担っている。
赤色素であるヘムを持っているため赤色を帯びている。
ということは、血液が赤いのはこのヘモグロビンが多く存在するからなのだろう。
あと血液が空気にさらされると黒く変色するのは、酸化するから、なんだよね?(調べろよさなお何サボってんだ。
・一酸化炭素
炭素の酸化物の1種であり、常温・常圧で無色・無臭・可燃性の気体。一酸化炭素中毒の原因となる。
炭素や、それを含む有機物が燃焼すると二酸化炭素が発生するが、酸素の供給が不充分な環境で燃焼(不完全燃焼)が起こると一酸化炭素が発生する。さらに高温あるいは触媒存在下では C と CO2 とに分解(不均化)してしまう上、一酸化炭素自身も酸素の存在下で青い炎を上げて燃焼する。
ちなみに炎の色が青色っていうのは、完全燃焼の色だったと思うし、相当に高温である証拠、だったような。
ちなみに一酸化炭素は、酸素の約250倍も赤血球中のヘモグロビンと結合しやすい、って書かれているので、どうやら酸素と結合するのではなくって、ヘモグロビンと結合しちゃうんだね一酸化炭素って。結局ここで間違えてんじゃねーかさなお本編の文章今すぐ直してこいよ。(結局直さないまま放置するけども。)
ちなみにタバコにもこの一酸化炭素が含まれているらしいが、タバコ程度では流石に中毒にはならないようである。それでも体には悪いだろうこれは。
そういえば水タバコっていう代物あるけど、あれ、相当やばくないか?
・鬼島十八郎
凄く鬱陶しい、という言葉をところかまわず乱用することで、とりあえず鬱陶しいそうな印象を読者に与え付けられている、フライパンケーキの頭目であり創設者。
原案では30代~40代になっていたが、現在では50代~60代に変更されている。正確には52歳。
銃の腕前は本当に凄く、かなり頭の可怪しい精度をしている。
また魔法も相当の腕前をしており、とんでもない遠方距離(1kmとか2kmとかいう尋常ではない距離)から敵に魔法をぶち当てるなんて事も出来る程の命中精度を誇る。
また演説力や采配もずば抜けて優れており、流石は軍事国家の長を長らく務めた男だと言わざるをえないのは本当である。
しかし、今回は随分それっぽい悪役として登場しているが、実際には悪役に徹しきれる程に大層な男ではなかった。
そもそもジョン・オ・ラルクの名を間違いなく知っていたであろう鬼島はわざわざ喧嘩をふっかけるような真似をしでかしている。結果はある意味で見えていただろうに。おそらくはわざと。
彼は彼で限界だったのかもしれない。
本音では、死を期待していたのやもしれない。
陥落はそれほど、呆気なかった。
・ワルサーP38
ドイツの銃器メーカーであるカール・ワルサー(カール・ヴァルター:Carl Walther)社が開発した軍用自動式拳銃で、第二次世界大戦中にはドイツ陸軍に制式採用されている。
また、大人気をはくした、かのルパン三世が愛用している銃でもある。
9mm口径の約1kg、着弾数は8発。命中精度はかなりのものであり、非常に安全な代物でもあった。
だが戦争終盤頃だと整備不備や老朽化で酷い命中精度になって果てていた、という話も残っている。無論これはワルサーP38にのみ言えた事ではなく、どの銃でも整備や老朽化で命中精度は下がる。
今回鬼島が持っていたものは、軍用ミリタリー(ミリタリーモデル)と呼ばれる物で、紛失防止用ランヤード(ワイヤーや紐)を取り付ける部分のある物。特に性能に差は無い。
ワルサーP38の最大の欠点は、構造に若干の不備があり、発砲すると部品一部が外れてしまう可能性があった事。
ちなみにだが、ワルサーP38のドイツ語での発音は「ヴァルター=ペー=アハト・ウント・ドライスィヒ」である。超かっこいい。
・スクリーン
映写機やプロジェクターから投射される映像(映画など)を映し出す平面のこと。映写幕、銀幕、投射スクリーンともいう。
かつては映画作品のことを比喩的に「銀幕」と呼び、映画作品で著名な女優ともなると「銀幕のヒロイン」などと呼びならわした。「銀幕」の由来は、昔の映写幕は銀皮膜を塗っていたため、その名残から「銀幕」と呼ばれるようになった。
となると今回、映写機みたいな物も一緒に出てきてたのだろうか。それもモノクロ映像出力の、しかも大型のやつが。テレビではなくって。
・カメラがなんでそんな惨状の中で機能できてんの?
そもそも我々が想像する監視カメラ的なサイズだったかさえ不明。
でもリアルタイムに映し出してる点を考えると、ちょっとオーバーテクノロジー感あるだろうか。
特に喫茶店を映していた所なんて、ケーブルではなくって電波とかで送受信してる系っぽい?
まあ街と街などの距離感が凄まじいから、そういう機器が発達してても何処もおかしくないのか。
この世界には1990年代の携帯電話が存在している設定だし。
となるとテレビも、モノクロくらいのレベルならどうにかこうにか存在しそうだね。作中で一度もその存在を登場させた記憶ないけど。
・奥義、雷剣天空波
ジョンの奥義のひとつ。
上空へ向けての跳躍剣技。
雷属性をふんだんに利用した地面の破壊を行った後、その勢いに合わせて飛躍し、更に剣を数本使用して上空にある大きな物や天井全てを吹き飛ばす波動を生み出して上へと登っていく技。
しかも、障害物がなければ凡そ上空1500mまで登る事が理屈上可能でもある。
って書いてあるんだけど、流石に1.5kmは不味すぎだと思うので、10分の1である150mに変更させてください^p^
正直に言って、150mも跳躍出来たら充分凄いと思うので今後150mで統一します^p^
・釈放・保釈
割愛。
・CABIN名物“地獄の授業”
実在しない為に市民や他組織が勝手に想像するしか無い、恐るべき授業の事。
噂では死ぬよりも苦しい拷問を執り行い、対象を無力化した上で、社会的に更生させる処置とされている。
またこの授業を実際に受けたことがあると証言する者が過去に幾度と無く登場し、CABINの非道な行いを世に広めて批判活動する者達が結成されたケースも多い。
CABINはそんな活動を逆に利用し、ノーコメントを決め込む事で、あたかもその地獄の授業が存在しているかのような雰囲気を演出しつつ、やんわり否定もしている。
実際この手の詐欺、現実世界でも割りと多いからね。皆も注意してね。どこのどれとは言わないけれど。
以上で解説文終わり。
なんだか色々問題が今更に浮き彫りになりましたが、この辺で。
以上、370mLでした。