オレンジファンタジー【完全版】   作:370mL

5 / 6
5話は、
本編約5万文字
あとがき・解説約1万文字
となっております。

あと早朝仕事前に投稿した後の同日昼頃に題名ミスに気がついていましたが、これはこれで面白いのでこのままにしておきます。


オレンジファンタジウー第5話

ここは普通の世界ではない。

 

まるでファンタジー世界。

空にドラゴンが普通に居るし、モンスターだって居る。

人々は魔法を使るし、獣人もいるし、

 

そう、ゲームでは割と有り触れた設定の世界だ。

 

そういう世界なのだ。

 

 

そしてここは喫茶店、ブルーベア。

営業時間中は必ずといって良いほど、ピアノの音と騒がしい人たちの声が絶えない。

 

今日も快晴であり、平和である。

 

 

「はずだったんだよwwwwww」

 

 

そう、今日は少し違っている。

正確に言うなれば、具体的に、昨日くらいから少し違っていた。

 

そして、あえて言おう。言わなくては。

はずだったんだよ、なんて、明らかに読者に向けて投げかけるような葉を発した者が、一体誰であるのかを。

草生やしてる奴、今作では該当者がたった1人だけなので絶対言わなくても誰か分かると思うけれども、でもあえて言おう。

 

バーロー=オイヨイヨである。

 

5話にして開幕の地の文にツッコミを入れるというような摩訶不思議な暴挙に出ている彼の格好は、場違いにも程がある真っ赤のタンクトップ。IKEMENってプリントされてるところが尚の事腹が立つ。

ズボンやブーツはそれなりにマッチしているかもしれないが、それにしたってこんな暑苦しそうな場所で防寒ブーツとは、結構な事である。

一応、作者がエクセルでキャラ別に入力しておいて絶賛放ったらかし中の設定資料では、彼のオールバックにされている髪の色は枯草色、らしい。

これは、常々青々しい草を生やしまくってるオイヨイヨに対する揶揄、なのだろうか。俺なりのギャグ、なのだろうか。

過去の俺、やるじゃない。細かいじゃない。クスッとくるじゃない。

 

まあ置いといて。

 

 

「ったくw」

 

 

ため息の代わりにか、そんな風に悪態を如何にもそれっぽく表した発言を吐いてから、彼は歩き出した。

 

ここは森の奥深く。それも相当に広大な森。樹海。

日本何個分だろうかってくらい広大な土地だったりする。真剣に、5~10個分くらいかなあ。

つまりオイヨイヨ、現在進行形で最高に最悪な場所にて遭難しているのだが、問題はそれだけではない。

ここ一帯は尋常ではない強さを誇る魔物や未知の生物、未知の植物から有毒なキノコ、カブトムシからクワガタまで盛りだくさんの森で、まあようするに、めっちゃ危険な場所なのである。

いかにオイヨイヨでも普通に死ぬ恐れがあるような、そんな場所。デンジャー。そしてサバイバー。

 

ここは、通称“ゲジの森”。

 

別に、実際するゲジ科のあの足がいっぱいな虫からとっているワケではない。

そんな存在がこの森奥深くで群生していたら、それはそれでイヤな話だ。

作者的にゲジ様はGより苦手だし。いやそういう話ではなくてだ。

 

大昔、ここには「ゲイジ」という伝説的存在の人物が居て、その彼がここでリアルなモンスターハンターをしながらこの土地を開拓したのだという話。

ゲイジは皆から「ゲジ」と呼ばれた。

理由は原住民に対してゲイジ氏が「下知(げじ)を受けた者だ」と説明したから。

「ゲジとゲイジは似ている」とか言われ、そう呼ばれ続け、挙句は森の名前さえそれで統一されてしまったのだという。

一体誰の命令でこのゲジの森にゲイジさんがやって来たのかとか、そういう歴史的な経緯やら色々なんかは、ジョンあたりに聞けば詳しく教えてくれるだろう。今ここに居ないけど。

 

そう、ここまでは余談でしか無い。注釈ですら無い。

肝心なのは、どうしてオイヨイヨがこんな場所に居るか、である。

それを説明するためには、まずはオイヨイヨが何故こんな所でただ一人なのかより先に、昨日の段階で何があったのかから、説明しなくてはならないだろう。

 

今回は、紅蛇という存在が、ジョン達と完全な対立関係であると明確にされたあの第4話の比較的すぐ後。

作者があとがき解説に至るまで全体を通して気落ちしまくってた、テンションダダ下がりしてた、あの一件が巻き起こってから、たったの数日後のとあるお話から始めよう。

 

 

 

***

 

 

 

「ぎゃああああああああっ!ぎゃ!!」

 

「妖怪か何かかお前はwwwwwwwwww」

 

 

いつものようにオレンジジュースを飲んだ瞬間に叫びだしたのは、言わずもがなジョンである。

時刻は昼下がり。

特にする事のなかったジョン達は、喫茶店ブルーベアで暇を持て余している最中。

ジョンの何が凄いって、パトロールとか全然しない事だよね。

まあコイツがパトロールなんてしてたら、永遠に家に帰れなくなるからね。

大体全部手伝うか助けるかしちゃうから。しかもほぼ無償で。挙句、時間も問わない。

 

ともかく、こうして喫茶店に入り浸っている状態が、今日はずっと続いている。

というのも、鬼島十八郎からクエストを貰いそびれているからである。しかも喫茶店を訪れる者もそうそう居らず。

ならばオレンジジュース中毒者は、オレンジジュースを延々飲み続ける永久機関になるしか無く。

おかげでする事が皆無のミアも、随分と退屈そうにしていた。

喫茶店店主のブルーベアは、素知らぬ顔でグラスを磨き続けているし。

 

そろそろこの喫茶店、誰かどうにかしろマジで。

 

あ、ごめんなジョン、もう喋っていいよ。

 

 

「姐さんこれぇ!なんすかこれぇ!!」

 

「何か?」

 

「何かじゃないっすよ!!

 滅茶苦茶苦いっすよ!!」

 

「ああ、ごめんなさい。腐ってたかも」

 

「なんつーもん出してんすか!!!」

 

「ごもっともだろーがwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

 

一切悪びれた様子のないまま言葉だけで謝るのは、喫茶店店主、スタイル抜群のバーテンダー様である。

恐らくは確信犯だろう。絶対ワザとやってるだろう。違いない。

そんな光景を目の当たりにしておいて、他人事気取って笑っているのが、冒頭で遭難してるっぽいオイヨイヨ。

しかし彼も地味に、彼の目の前にあるコーヒーが大丈夫かどうかを調べている。

まあ、一度醤油飲まされそうになってたからね。そりゃツッコミもジョン寄りの意見になるよね。

 

いや腐ったモンだったり醤油だったり、割りと命に関わるからどれもこれも。

本当に酷いからマジでやめてあげなよブルーベア。ちょっとばかしやり過ぎだろ。

3話で毒混入させて主人公達にまんまと飲ませたピョン吉と、いまいちやってる事が変わらないだろこれじゃあ。少しは反省しろ。

 

 

「ぬぉ!せっかく掃除したのに汚すとは何事じゃい!!」

 

「うわ!まだいたのかよオッサン!!」

 

 

何時見ても目に悪い格好をした鬼島十八郎が、ジョンにつっかかりながら、同時につっかかれながらテキパキ掃除をこなしていく。

ピンクエプロンと違って、目にも留まらぬ早業であった。

ジョンに突っかかっている間に、ジョンがこぼした腐ったオレンジジュースなど跡形もないどころか、最初よりピカピカであった。

清掃のプロかお前は。ミアが退屈そうにするわけだわ。

結構ふてくされてるっぽいぞ。椅子にメイドさんが堂々と座ってサボってるぞ。

 

 

「やるじゃない、18番」

 

「ふ、まあな!」

 

「その調子で次、倉庫裏の荷物お願い」

 

「任せてくれえ!姐さんよお!」

 

 

名前を改造されて皆から十八番(おはこ)と呼ばれ続ける鬼島十八郎は、なんら抵抗する事も無くノリノリで清掃係をやっているのであった。

しかしこの輝かしいまでの彼の勇姿とは裏腹に、後々の待遇(というか出番率)が悪くなっていくなど、このときは、知る由がなかったのだった。(作者含む。)

 

 

「…最近私の影が薄い…、名前覚えやすいのに、何か薄い…」

 

「なーーっはっはっはっはっはっはwwwwwww」

 

 

喫茶店ブルーベアの萌え要素ことミア=ミアミスは、オイヨイヨとジョンが注文した品を配膳して回る以外に仕事が無い上、最近の出番不足にご不満を抱いているようだ。

思えば1話も中途半端な途中参戦であったし、2話もそれっぽく主人公達について行ったは良いものの、ちょこちょこ出た程度で終わり、3話はほぼお留守番でロクに何もしていなかったし、4話も冒頭と終わりの方に僅かに登場しただけ。

如何にもなヒロインポジションでありながら、発言数はブルーベアより明らかに少なく、というか3話から参戦の鬼島十八郎といい勝負の発言数な気がする。そして誰かとくっつく、カップルになる要素が皆無。

流石にこれは、うん、酷い待遇である。

逆に凄いよねここまで蔑ろにされてるヒロインって立場。

名前は覚えやすいかもだけど、すっげえ読みにくいんだよね。追い討ちかけるつもりは無いんだけども。

しかも今回も、出番は殆ど無かったりする。ミアに合掌。

 

あとオイヨイヨ、なんで爆笑してんの?

ああ、これくらいの事が面白可笑しく思えるくらいに暇なだけか。

 

 

「そーだ!黒板使おう!」

 

「はあ?www」

 

 

ジョンは急に立ち上がり、腐ったオレンジジュースが半分ほど残っているそれを片手に、黒板を無理やり引っ張り出す。

本当の意味で要らない備品なのだが、時折ジョンがこうして無理に活用しようとしてくるのである。おかげで捨てる事が出来ない。

 

ジョンは不器用に文字を書き記していく。

右手にジュースを持って、左手にチョーク。

流石に両手利きではないようで、結果として、チョークはたかだか数文字を書き記す為だけに2本程折れた。その都度新しいのを取り出すジョン。

ブルーベアもオイヨイヨもミアも毎度思う。

「せめて、新しいのでわざわざ頑張らず、ぶち折ったヤツ使えよ」

と。なんか凄く勿体無いので。

まあ、全然使ってない黒板とチョークなので、その勿体無い概念が通用して良いのかは、別問題として。

 

 

「じゃーん!!」

 

 

黒板にデカデカと、そして線こそは随分細々しく書かれたその言葉は、恐らく『傷心旅行』と書きたかったのであろう、『場心族行』だった。

あえてその誤字には誰も触れてやらない。

そして字、滅茶苦茶汚い。わざとなのかそういう馬鹿っぽい演出なのか左手だった所為なのか、いまいち判別できない。

でもとりあえずギリギリ読めるのだった。

 

 

「傷心旅行?誰の?」

 

 

ブルーベアがあえて問うのだが、予想外の答えが返ってくる。

 

 

「ミアの!!」

 

「えっ!?」

 

 

ジョンも先日酷い目にあったばかりだというのに、何故かミアが主役へと登りつめている。意味不明にもスポットライトは、彼女に浴びせられていた。

 

恐らくジョン的には、別に傷心旅行でなくてもいいのだろう。

気分的にただなんとなく程度に旅行してみたいだけなのだ。

慰安旅行だろうが傷心旅行だろうが関係なく、旅行でパーッとやりたいのだ。気分転換したいのだ。

 

そういう意味ではこれもまた、ジョンの傷心旅行となるのだろう。

 

あと大それて語る必然性こそない事だが、こうして喫茶店面々で旅行をするというのは、初の試みだったりする。

ミアや鬼島とで行くのが初めてなのは勿論のこと、ブルーベアやジョンやオイヨイヨ、奥に居るピアノ幼女の4名は、旅行目的で共に行動を取った事は一度も無い。

精々ジョンとオイヨイヨが仕事で出張するくらいの物。それを旅行としてしまうのは、作者的にはかなりの抵抗がある。

少なくともここ1年ほどはブルーベアも旅行していないしで、羽根を伸ばせるいい機会とも言えるか。

 

またこの面々、意外に乗り気。

ピアノ幼女は相変わらずピアノを弾いてばかりで参加の意思は皆無だったが、ブルーベアですら身を乗り出しているくらいだった。

 

 

「何処に行くんだよww

 金は?ww

 なんかのツアーに参加すんのか?ww」

 

「決めてない!」

 

「おもいっきり思いつきじゃねぇかよwwwwwwwwww」

 

 

オイヨイヨはコーヒーを片手におもいっきり笑っている。

結果、コーヒーがおもいっきり足にひっくり返ってしまっていた。

 

 

「あっちぃいいい!!!!wwwww」

 

 

そしておもいっきり叫んでいた。

 

 

「ぬおあっ!お前もか馬鹿者めが!!」

 

 

清掃員に任せれば最早何でも解決である。

 

 

「でも金あるし!!」

 

「それ俺が前渡した金だろーがwwwwwwww

 いやどう使おうが勝手だけどよwwwwwwwwwww」

 

 

江戸っ子は宵越しの銭は持たぬってやつか。

そりゃまた随分と気前も景気も良い、爽快な使いっぷり。

まあ、たまにはのんびりしといでよ。

ジョン、お前は特に、休養が必要だと思うよ。

作者は現在とんでもなくお前に感情移入してるよ。

 

 

「そうねえ…」

 

 

ブルーベアが、何処からか取り出したのかも知れない旅行ツアーパンフレットを片手に持って、色々模索している様子。

ちなみにブルーベアはそれなりに旅行好きで、喫茶店ブルーベアにてジョンとオイヨイヨが入り浸る前まではそこそこの頻度でお出かけをしていた。

しかしそれも当然。

若くして彼女は(フライ・パンケーキが家だと仮定するならば)家出少女になったのだ。

逃げ回るというよりは、世界を見て回り続けていた彼女。そらもう旅行が好きで当たり前みたいな所。

きっと一人の時間はこうして旅行者向けのパンフレットをお取り寄せし、パラパラ眺めて悶々していたに違いない。

実際、ブルーベアはさらさらとページをめくりながら、何かを探しているのだ。

恐らくつい最近に見た記憶を頼りに、目的のものを選びだそうとしている。

 

約10秒の沈黙。

ブルーベア、顔を上げる。

そして勢い良くパンフレットを広げて、皆に見せつけてくれた。

 

 

「…これ、どう?」

 

「ん?ww」

 

 

ミアも鬼島もジョンもオイヨイヨも、そのページを眺める為に近づいた。

ピアノの音は相変わらず楽しげな音色である。

 

 

「飛行戦艦ヤマトwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

 

なんか予想していたより酷い内容っぽい。

お前らー、とりあえず旅行は中止なー。

作者である俺が真っ当な行き先を考えてやるから、ちょっと一度中止なー。

 

 

「なにそれ!かっけえ!!」

 

「でしょ?」

 

「でしょ?じゃねーよwwwwwwwww

 お前ら分かってんのかwwwww

 日本って舞台はこの世界には存在してねーんだぞwwwwwwww

 何なんだよ飛行戦艦ヤマトってwwwwwww

 どっからサルベージして改造したってんだよwwwwwwwwwwwwwww」

 

 

おうオイヨイヨ、言ってやれ言ってやれ。

お前だけが多分マトモだよ。他の奴ら、興味津々で特に問題視してる顔じゃねーもん。

名前はマトモじゃないけど、お前が頼みの綱だ。頑張れオイヨイヨ。

 

 

「まてオイヨーヨ!これ見ろ!」

 

「んだよww」

 

 

ジョンが指さす場所は、飛行戦艦ヤマトの全体図。

 

確かに何かしら、戦艦らしい戦艦のシルエットが見えるのだが、

大部分は明らかに飛行船そのもので、もはや戦艦をひっつけている意味を感じないデザインである。

いやそれどんだけでかい飛行船なんだよ。戦艦大和って全長200m超えてんだぞ?

艦これユーザーの結構な割合が正解するぞ大和の全長何mかなんて。イージー問題扱いだぞ多分。

 

 

「もうヤマト戦艦飛行船にしとけよwwwwwwwww

 戦艦でもヤマトでもねーわこんなもんwwwwwwww

 たーだの馬鹿でかい飛行船だろーがwwwwwwwwwwww」

 

「ヤマトばかにすんなよ!

 映画版凄いんだぞ!

 何かこう凄いんだぞ!イスカンドルに向かったヤマトはかっこいいんだぞ!」

 

「イスカンドルって何だよwwwwwwwww

 何処のドル紙幣通貨だよwwwwwwwwwwwww

 日本円にしていくらなんだよwwwwwwwwwwwwwwww」

 

 

そもそも映画版って何だ。どれの事だ。宇宙戦艦ヤマトの実写版の事か。それともアニメ映画か。もしくは戦艦大和の方の映画か。本気でどれだ。今更思い出せんわ馬鹿野郎。何年前に書いた話を加筆修正してると思ってんだ。

 

 

「落ち着きなさい、オイヨイヨ。

 どうあれ、羽根を伸ばすには持って来いだと思うわよ?

 よく見てったら。結構いい船旅になりそうじゃない?

 かなりの快速で、防御面も相当だから安心みたいだし、船の面積がとても広いから、それだけでも十分に退屈せず済みそう。

 食事もかなり良い物だって聞いてるし、眺めは最高なんだって。

 見てよ、この小さな写真からでも分かってしまう絶景。

 こんな絶景、通常の飛空艇や飛行船では絶対に味わえないわよ?

 

 それにほら、飛行船の方はともかく、ホワイン島に2泊3日なのよ。

 ホワイン島知ってるでしょ?南国よ南国。白い砂浜に透き通る海。想像するだけで、楽しくならない?

 それに、家族として偽ってツアー参加すれば、多少経費は浮きそうだし……」

 

 

最後の最後で何言ってやがんだ許されるわけねーだろそんな事が。

 

 

「誰が父母役で誰が子供役だよwwwww」

 

 

問題はそっちじゃねーよオイヨイヨ。

 

 

「私が母で、オイヨイヨが父」

 

「待てやwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

「えー!?じゃあワシはお爺ちゃん役ぅう!!?」

 

「いいえ、十八番は留守番よ」

 

「そっ、えええええっ!!!?

 そ、まず頭数に入ってすら、えええええええええ!!!?」

 

「ミアとジョンは養子として来た娘設定で」

 

「なんで自分と大差無い年頃のヤツらを俺が養子養女に招き入れたっつー無茶な設定考えてやがんだよwwwwwwwwwwwwww

 どんな家族だよwwwwwwwwwwwwwww

 どんな暗躍したことやらかしてる危なっかしい家族なんだよオイwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

 

そんなこんなでツアー予約を済まし、鬼島を置いてけぼりにして店を臨時休業決定。

2泊3日のホワイン島旅行、飛行戦艦ヤマトによる優雅な旅を満喫する準備を万端に整えたのであった。

かなりの滑り込み乗車だったらしく、いや多分これも鬼島あたりが無理に押し通したんじゃないだろうか、度重なる暗躍の末、数日中には船に乗り込み成功。

この5話はこのまま優雅な旅行、いわゆる水着回、お風呂回などと言われるような、最高のイベント回へと昇華。

 

するはずだった。

 

作者的には本当はそうであってくれた方が良かったっていうか嬉しかったのだが、生憎なことにこれは漫画ではなく小説である。つまり水着回が妙に虚しくなるだけだった。描写割愛するだろうし。

更には作者が、一っ向に挿絵を挿入する意欲が(原案の方では全く)無く、挙句の果てが「エロいボディラインよくわかんね」というような、男の絵描きにあるまじき弱点をお持ちなのだ。

男というのは、いや男に限らないのだが、こう、絵師や絵描きというのは、自分の願望に素直で、自分の思う理想を投影する例が割りと多かったりする。

だからコミケでも同人作家の結構な数が、エローい物を販売しているワケであるからして。(まあエロはよく売れるっていう理由もあるんだろうけど。)

つまりそれって、それってまさに、作者はじゃあガチのホモなんですか?と、そんな質問飛び交いそうな説明文になってしまっているワケだが、決してそんなことはない。

少なくともガチなホモではないし、いやいや、ささやかなホモでもない。1mmもホモーい要素はない。そう信じたいし、そうであってもらわないと作者が盛大に困る。

ハッテン場だろうが正念場だろうが殺人現場だろうが、大抵の人間が出来ることならこれらの遭遇こそご勘弁願いたい次第だろうと思うし、そもそもだ、そういうBLピンク、作者はこれを深い理由もなくブルーピンクと読んでいるのだが、些細なことでも正直勘弁して欲しい。見たくないし聞きたくもない。(別にこれは15話へのフラグのつもりではなかった。)

かといって作者、これまた意味不明な話なのだが、女の人にあんまり興味もなくって、こう、エロティックなことよりも、こうして普通な感じというか、あの、何っていうのかな。

ともかくただ可愛いかったり格好良かったり楽しげな感じの絵を描いたり小説書いたりするのが好きなのであって。

 

ああでも、時々ね、ほら、時々はね、どうしても胸元に目がいっちゃうのは、あーほら、やっぱ男の性といいますか。

言い訳がましいことこの上ないのですが、やっぱそっち系のノンケ側なので、勘弁して下さい。

 

(過去の俺は一体何と戦っていたんだろう。)

 

 

随分と話が(作者の所為で勝手に)それたので、路線修復といこうか。

 

期待胸高まる展開を前提にしていたかはともかく、飛行戦艦ヤマトに乗り込んだメンバー達。

目的地の場所が結構な距離だったりするので、飛行戦艦は長らく空を旅する事となっていた。具体的に言って、片道丸々3日くらい。

当然、補給や点検等が必要であるし、あくまで飛行戦艦ヤマトは世界を一周(正確には半周ちょっと)する形。今回のホワイン島の一件は、それに便乗しての(、より正しく言えば、飛行戦艦ヤマトの移動経路を利用しての)ツアーだったりするので、結構な頻度で大きな街などにその足を下ろすというタイムロスが発生する。

また、ホワイン島の2泊3日は別計算とする。

ということは、1週間以上もの長旅か。世界一周とは、傷心旅行っぽくていいね随分。ブルーベアがこだわるのも納得だ。

 

と、呑気に過ごしていられれば良かったのだが、不幸な出来事が起こったのである。

不幸っていうか、不注意でしかなかったんだけどもね。

ジョンがいつもの調子で騒いでいて、それは勿論お巫山戯程度、お遊びのつもりだったのだろうけれど、あろうことかオイヨイヨはその騒ぎの結果、遥か上空から地面へ向かって真っ逆さまの事態に。

何といえばいいのか。

兎に角不幸な事故……ではないよね。ジョンが全部悪い。

もしかして本気で殺すつもりで突き落としたんじゃなかろうな。

 

てかオイヨイヨ、なんで生きてるし。

パラシュート無しで降りたんだろ?普通じゃねーぞお前。

でもないか。魔法得意だもんなオイヨイヨ。それにジョンに合わせる都合、風魔法は特に色々知ってるだろうし。

それでも落下に対してほぼ動転せず、的確な判断と冷静な対応を成し遂げたからこそ、無傷なんだろうから、やっぱ変だよお前。変じゃないなら変態の部類だよ。

 

 

ちなみにホワイン島とゲジの森は、場所が結構違っている。世界地図上では割りと近いけど、距離的には結構な物。

どれくらいかって言うと、多分、5,000kmくらいかなあ…?北海道から沖縄の端と端を直線で繋いで大雑把に2,500kmほどだから、結構な距離だね。

ゲジの森は、飛行戦艦ヤマトの途中経路。ゲジの森の上空を通過している最中にオイヨイヨが落下したという事には間違いは無い。

まあ距離関係も酷いけど、とにかく最悪なのは、ゲジの森のおおよそ中心部に落ちちゃったという事実の方。

脱出しようものなら、超人のオイヨイヨでも1週間は掛かると思われる。

すっごい広いし、迷うだろうし、でも頑張ってくれオイヨイヨ。

あとでジョンを全力でぶん殴っていいから。

 

 

 

***

 

 

 

とか言う感じにサバイバル生活始めてもよかったのだが、そうもいかなかった。

別にサバイバルっぽい事は多少なりともするのだが、ともかくもう一つだけ、語る必要がある。

ジョンの悪意の有無はともかく、オイヨイヨがゲジの森にこうしてやって来てしまったのは限りなく偶然である。

こんな場所に降り立ったのが偶然にもオイヨイヨで本当に良かったという話も出来るが。

 

これまた悲しい事。もしくは皮肉。

オイヨイヨもまた、戦場で生きていた男。

ジョンのように使命感かで戦っていたワケではなく、戦争加担も微妙な所。

しかし全く関与がなかったと言ったらそれは嘘になる、程度には加担していた。

 

このゲジの森は、厄介な場所である事を幾らか説明したと思う。

そんな場所に例えば敵が潜伏したならば、さてどんなことが巻き起こるか。

想像力を働かせれば働かせる程、凄まじく不毛な戦闘が行われる事を、理解いただけるだろう。

 

 

そしてそれは実際に行われ、そこにオイヨイヨも居た。

 

 

その敵は、無印猟団にとって邪魔な存在達だった。

結果として、かなりの人数を動員して、ゲリラ戦は行われた。

それがかれこれ、2年と少し前の話。

 

 

「…懐かしいなあ。

 ぜーんぶ、殺したんだったか」

 

 

オイヨイヨは空を見上げる。

木々の数があまりにも多すぎて、太陽光も空の色も、断片としてでしか拝むことは出来ない。

しかしここは昔からそうだった。この通りの風景しか見えなかった。

だから、すべてが懐かしいとそう思う事が出来た。

短い滞在期間だったにも関わらず、そう思えるくらいに濃厚な時間を過ごした。

 

 

過ごすことを強制させられたのだ。

 

 

ここは当時、ある意味で戦場だった。

本来2つの勢力がぶつかり合うだけの戦場。

だがここにはモンスターが、自然が、数えるだけでも嫌になるくらいに様々な弊害達が彼らを阻み、邪魔をした。命も奪っていった。

 

戦場で間違いはない。

最も適した言葉で表現をするならば。

 

 

罠、だろうか。

 

 

「…弾痕。

 こりゃあん時で間違いねえな。意外にハッキリ残るもんだな。

 んでこっちの方は、百足の仕業だな。ヒデェもんだ。ズッタズタじゃねーか。

 それでも、炎を放って動きまわるような馬鹿じゃなくて助かったw」

 

 

森の木々を、地面を、軽やかにひょいひょいと移動しながら、オイヨイヨは過去を擬似的に体験していく。

確かにここは、懐かしの土地。そしてオイヨイヨからすれば、二度と踏み入れる資格のない場所。それも激戦区の付近だったようだ。

 

ひどい話だろうとも。この土地とは無関係の者達が、散々やらかして、散々やらかされて。

生き残ることに全身全霊を注がなくてはならない場所で。

 

そう、百足侍もその通りだった。誰もがここでは人間だった。

大部隊とは言っても、連携の取れていない大人数で。

裏切りもあったし、手違いもあっただろう。少なくとも殆どが協力的から遠く、無用な犠牲が数多く発生した。

 

手足が動かなくなっても動いていなくては何も安全ではなかった。

何者かの気配が無くても一切安心できなかった。

耳元で直径9mmの穴が出来あがる音が聞こえた所で、気にしてもいられない。

手持ちの武器がどんな状況なのかすらよく分かっていないのにそれを振るって、走って、跳躍して、息を吸って吐いて吐き出して。

頭の先からつま先まで全ての筋肉を動かして、それでどうにか生きていた。生きている事を体感出来た。

 

どうにか自分が生きているんだと、やっと、体感出来た。

 

思い起こすだけでぞっとする。

オイヨイヨが知っている中でも相当な記憶。色濃い記憶。

 

それがあろうことにも再びここに足を踏み入れちまいやがってと。

そんな風にオイヨイヨは思い、呆れ、笑った。乾いた笑いを上げた。

踏み入る事すら困難な森の奥深くであるにも関わらず、空からのご入場とあらば一切防ぎきれていないという事実が、妙に可笑しかった。

 

と、異様に開けた場所に出る。

 

ここもまた、見覚えのある風景。

そして、見に覚えもあった。

 

 

「……あー、こりゃあ…、俺の仕業だな」

 

 

まるでマスターソードでも刺さってそうなくらい、開けた場所。

そこだけ太陽光が降り注いでいて、綺麗でもあって、異質感をありありと見せつけていた。

 

半径約10mの範囲において、例外なく白くなり果てた木々や地面。

まるでセメントか何かのような色、彫刻が置かれているかのような、世界。

このゲジの森に群生する、如何に強力な植物さえ、そこを拒絶して根を下ろすことをしていなかった。

木々は触れても特に崩れたりはせず、太陽光に照らされた程度にあたたまっているし、影は影で冷たく。

 

オイヨイヨの能力は通常はただの氷の技なのだが、極度を極めた状況下で放つとなると、すべてを凍らせる事が出来る。

極端に言えば、時を止めてしまえるのだ。

彼が通った後は、その全てが例外なく凍てつき、生命体にはとても住めないような世界が広がる事となる。

 

 

こうなるのだ。本気を出してしまうと。

 

 

幸い、ここに人の形や動物の形が残っていないので、この攻撃による被害者は皆無だった、という事になるか。

それでも植物の今後にすら影響を与えているので、被害が無かったと言うのは疑問である。

何せ2年、2年という期間を経てもこの有様なのだ。普通では無いだろう。

 

 

「……ん?」

 

 

オイヨイヨが後ろを見る。

理由は簡単。気配がしたからだ。

少なくともここには人は居ないだろう。しかし動物かモンスターは普通に生息している。

一方で、殺気らしい物を感じ取れなかったが為に、オイヨイヨの振り返りは余裕を持って行われる事となった。

 

だが、そこには誰かが居た。

おかげで、オイヨイヨはかえって驚くことが出来ないままにそれを見つめる。

 

この森は危険区域。

確かに海辺の方にはゲイジタウンという町があり、そこには人がそれなりに住んでいるとは聞く。

にしたってここはそのゲイジタウンから、どれだけ少なく見積もっても1,000kmは離れている。

つまるところオイヨイヨが落下して見えた限り、ここはゲジの森のほぼ中心部であって、どれだけ間違えてもゲイジタウンの人間と接触する可能性が皆無の地点だった。

落下しながらよくそんなことまで把握してるなって言いたくもなるがともかく。

 

誰も居る筈がない。

そのはずだった。

なのでオイヨイヨが、その存在を幽霊かなにかと勘違いするのも別に変でないだろう。

寧ろ幽霊だと言われた方が納得出来てしまうような場所だった。

それくらいに、意味不明な出来事。しかし目先の存在が生きているか死んでいるかなんて、オイヨイヨに限って見間違えるワケもなく。

 

それでも、茶色のローブ、頭も覆えるタイプのそれを使って全身を覆い隠しているその誰かが、そこに立っているのは可怪しい以外に語れないのだった。

 

ローブはかなり痛んでいるようで、合間から見える褐色の足は、妙に艶かしくも見える。さほど長くない足でもある。

いや、細身、なのだろうか。少なくとも身長はかなり低そうだが。

そんな細身に似合わない、ゴツゴツしたブーツを履き、微妙にスパッツのような何かも見える。

ともなれば女性だろう。女性というよりは、少女か。身長150cm前後の、小柄な少女。

 

 

その少女は、オイヨイヨに近寄るでもなく微妙な距離感のままにコチラを見つめている様子だったが、突然に頭のローブを下ろす。

 

 

「何してる……ナ」

 

「…………」

 

 

黒い髪。褐色の肌。

その瞳の琥珀色。

 

オイヨイヨは、彼女の事をハッキリと覚えていた。

忘れられるワケもない。

なにせこの戦場における思い出の半分以上が、彼女の事なのだから。

 

オイヨイヨ達含めてわずかの人間が生き延びる事に成功して、少しして発覚した事。

まさにこの少女が、無印猟団にとっての敵陣営に何らかの働きかけを行っていたという事実が発覚したのだった。

手順は単純明快。ゲジの森の奥深くにまで無印猟団の大部隊を誘導させたのだ。罠に嵌めるが如く。

 

そして誘導完了した後、この少女は動き出した。

だが、たった1人でだ。

罠らしい罠などロクに設置せず、ただただ誘導に使った部隊すらも見捨てて、ひたすら目に入った無印猟団の人間を片っ端から始末するという、脳筋がやりそうな方法を取ったのだ。

 

にも関わらず、縦横無尽かつ冷酷非情的に、無印猟団を相手に殺戮の限りを尽くした。

当時のオイヨイヨと対等以上…、いいや、オイヨイヨや百足侍すら簡単に退け、この地獄のような環境の中、戦火の中を思うがまま、思いのままに蹂躙した、伝説的暗殺者。

 

 

「…涅色(くりいろ)の殺し屋、シュバルツ…、シュバルツ・アハト…!!」

 

 

それが少女の名前。

彼女は今から約3年程前に、突如として現れた殺しの天才。

何故か無印猟団を標的としており、それから1年もの間、凄腕ばかりの無印猟団を相手に恐るべき戦果を上げに上げた。

特に入り組んだ場所、今回の舞台であるゲジの森のような場所が特に得意らしく、一度彼女のテリトリーに入ると、まず逃げ切る事も不可能。

やっとのこさ見つけた出口よりも先に、あの世に到着している。

絶好の隠れ場所に身を潜めて早3年目の者達も、この付近に大勢居るだろう。

 

では一体何故、無印猟団がこれほどまでに脅威的な彼女を1年もの間、放ったらかしにしていたのか。

実際は放ったらかしにしていたのではない。抵抗が無意味だったのだ。

 

彼女が常々何処に潜伏しているのかも調査不可能。

何せ彼女は宿に泊まる事も、武器屋に寄る事も、料理屋に寄る事もせず、ひたすら息を潜め、潜めて潜めて、最高に最悪のタイミングで襲いかかってくるのだ。豹のように。

罠に嵌める為にと様々な用意をしてもすぐに勘付かれて逃げられるし、逃走経路も洗い出せはしないし、何より真っ向勝負であってすら歯が立たない程に彼女は強かった。

つまりは対策も何もなく、どうしようもなかったのである。

何より、無印猟団本部に対して攻撃を一度たりとも仕掛けてこなかったのは、大きい。

絶対に彼女は、圧倒的不利な場所に足を踏み入れたりしなかった。見極める力はあからさまに卓越していた。

 

このゲジの森においても恐るべき被害者が出た。

戦闘経験豊富な500人以上が投入されたにも関わらず、生き残ったのは半数にも満たない、150名程度。

たったひとりの少女を相手に、300名以上が死亡する事態。

勿論ゲジの森のモンスターや自然にやられてしまったり、相打ちを誘発させて回っての戦果ではあるだろう。だがそれにしても、である。

如何に化け物であったかを語る必要がないくらいに、列記とした化け物だった。

実際、オイヨイヨや百足侍のような幹部ですら呆気無くやられていたりする上、オイヨイヨや百足も散り散りに逃亡してなんとか生き残ったような物だった。

ある意味それすら奇跡みたいな物だった。それくらいの相手である。

 

だが、何故かどういうワケか、シュバルツ・アハトはこの一件以降、行方不明となる。

モンスターにやられたのではないか、誰かが討ち取ったのではないかとする意見も出たが、誰も首を縦に振らなかった。

 

彼女ほどの化け物が、それ程度で死ぬワケがないと皆が信じていた。

それくらいに恐るべき存在という認識で定着していたのだ。

それから彼女の動向はパタリと途絶えた今でも、皆、彼女の再来を怯えて過ごしている。

 

オイヨイヨですらそうだった。

死んだ筈は無いと思ってた。

 

しかし、ここで出会うとも思って居なかっただけに、及び腰である。

なのだが、展開は予想外を突き進み始める

 

 

「貴殿、(せつ)を……、知っておいでるの…ナ?」

 

 

もう既に変だろう。色々。

察しの良い読者が予想する通りの事が起こっているのである。

いや分かんねーよって思う読者の方も、割りとすぐにご理解頂けるだろう。

 

理解頂けないとするならば、彼女の一人称だろう。

自らの事を拙って言う子、ロクに見た試しがないぞ俺。

強いて言えば全く忍ばない事で有名な不破刃っていう忍者が(ry

 

 

「知らねーヤツがいねぇだろーが。

 忘れもしねえ。

 忘れられるワケがねえ!

 

 それとも俺は忘れたってかよw」

 

 

逃げる準備し始めているオイヨイヨ。

一発何かを放ってから、のつもりで居るようだが、まあ成功はすまい。

“現状”の彼女でも、それを交わすのは容易な事だろうから。

 

 

「…実はナ…、

 ここ数年、拙は“記憶喪失”…ナ」

 

「……は?」

 

 

まあ、信じられんわな普通。

それこそ罠を疑うわな。

 

 

「何かも分からず倒れておってナ。

 何も分からん…のナ。

 拙、貴殿と会えた…ナ。

 拙を知る者と、初めて会えた。

 

 教えてくれ…ナ。拙が何物なのかを…ナ」

 

 

そう言ってものすごい勢いで近づいてきては、ものすごい勢いでオイヨイヨの手を取り、非常に可愛い顔が台無しの無表情で、オイヨイヨを見つめる。

もはや意味が分からなさすぎて思考停止していたのか、蛇に睨まれた蛙の如く、及び腰で何歩も逃げたにも関わらず手を呆気無く取られて身動き一つ出来なくなってしまうオイヨイヨだったが、

 

 

「…お、おう。まず手を離せw」

 

 

などと余裕ぶった台詞を吐き出しながら、超考える。考え続ける。

 

彼女の言葉を鵜呑みにするならば、あの戦闘の最中、天変地異級の何かが巻き起こった事で何かしらの強いショックを受け、記憶喪失になってしまったという事になる。

ちなみに、オイヨイヨが彼女の言葉を鵜呑みにした理由は、今、刺されなかったから、だった。

動転しすぎていて中々にいい度胸の確認方法というか。いやオイヨイヨ、うん、よく逃げ出さなかったなお前本当。

 

あとよくよく考えれば、語尾にあたかも無理やりくっついている違和感まみれの「ナ」というこの語尾は、シュバルツという名前の彼女には無い特徴だったのをオイヨイヨは記憶している。

過去の彼女はよく喋る方であり、表情豊かで、無邪気で、子ども的で、しかし有り余る程には残虐的で。なので今の喋り方も違和感である。

勿論、喋り方はなんとなく程度に名残は無くもないのだが、「拙」という一人称でもなかった筈だと、オイヨイヨは思う。「私」だったと記憶していた。

というか、少なくともここまで無防備そうな子ではなかったし、

 

 

「…手を離したかと思えば何やってんだ?w」

 

「このキノコ、食べられる。ナ。美味しいナ」

 

「……そうかよww」

 

 

元々これくらいの野生児だったのかどうかまでは流石に分からなかったが、間違いなく、ここまでの馬鹿でなかったのは、オイヨイヨの記憶が確かなら確かである。

彼女の代わり映えを見ていると、自らの記憶すら疑わしく思えてならなかった。

とりあえず混乱していた。

 

どうあれ、だ。

 

 

「こりゃ、メンドーなことになっちまったっぽいな……w」

 

 

オイヨイヨにとっては誠に不本意かとは思うが、オレンジファンタジーでは初の、オイヨイヨの完全独断主人公回、はじまりはじまり、である。

 

なっげえプロローグだなあ……。

 

 

 

***

 

 

 

オイヨイヨはそのままシュバルツに案内されるがまま、住処と称する一軒家にご招待された。

その一軒家がまたまた奇抜なのか奇抜ではないのか、木の上に建築された、子ども心をくすぐる、所謂アレ。秘密基地的なアレである。

しかしあろうことか、ハシゴらしいものは設置されていない。壁もロクに無い。屋根は無論、無い。

一見眺め良さそうな設計だが、眺め自体は中々に悪そうだった。木々の中に隠れるようにしてそれが存在している。

防衛と隠蔽の面では、かなり有効ではあるだろう。事実、長年住み続けているようだった。

 

少女が1人でこれを作り上げ、今の今まで住んでいるというのだから恐ろしい話。

戦闘能力も大概っぽいのに、サバイバル能力まで高いとあっては、無印猟団が総力を上げても彼女の住居やら潜伏場所やらを特定出来ないワケである。

 

あと読み返していてちょっと足りないと思ったので、補足。

まだ家には到着していない。ご招待されたとか書いてあるけど、まだ招き入れられては居ない。

オイヨイヨはまだ、その外観を眺めている段階である。

すぐ上にはハシゴがないとか書いてあるが、つまりこれ、どうやって登るんだよ、と思っている最中なのである。

 

どう登るかは、シュバルツさんがこれから実践してくれる。

 

 

「ついて来るといい…ナ」

 

「願望俺に語ってんじゃねぇよwwww

 たくwww

 ……ターザンかお前は!www」

 

 

シュバルツさん、ピョンピョンといろいろな場所に跳躍し、軽やかにご帰宅。

普通の人でも入れる家の設計にしとけよ頼むから。

 

とはいえオイヨイヨも並大抵の運動神経はしていないので、その家に潜り込むのに大した苦労こそしなかった。

勿論、シュバルツが跳んでいく場所が的確だったのもある。かなり安定的に跳躍が可能だった

こんな入り組んだジャングル地帯では、奥行きも足場も把握しずらい物。シュバルツの先導が無かったら、オイヨイヨもかなり苦戦した事だろう。

 

そのまま二人は微妙な広さの足場に腰を下ろす。

必要最低限の構成。

雑多な寝床と、何かの薬の調合の痕跡と、簡易な料理場。

水も、自作の桶かである程度保存しているようだった。

よくよく見れば保存食関係も万全。食器もそれっぽく作られており、いくつも置かれている。

 

記憶が無くなっているとは言っても、全てが消え失せているワケではないようだった。

 

まあそうでなくては、この森で生きてはいけなかっただろう。

聞いた限りの情報では、シュバルツ・アハトはあの一件以降、ずっとここに住んでいる様子。

知識も経験も皆無だったならば、いくらシュバルツでも死んでいたに違いあるまい。

 

だが良し悪しは問えなかった。

シュバルツの年齢を詳しく知っているワケではないが、オイヨイヨとそれほど変わらない筈である。

見てくれは小学生くらいの感じではあるものの、14か、15の筈。

そんな少女がこんな場所で生きているというのは、流石にどうかとは思う。

思うが、しかし記憶を失っていなかったら居なかったで、死ぬまで無印猟団を攻撃し続けていた事だろう。

目の前のオイヨイヨも“元”猟団幹部というだけで十分に攻撃対象。

記憶を失っているからこそ、こうしてのんびりお話が出来る状態にあるのだ。

 

まあだからってオイヨイヨ、すげー度胸だとは思うよ俺。

数年前にマジで殺そうとしてきてた相手を目の前にして、よくもまあお招きされてホイホイと家に行こうと思ったな。

思ったどころか、入っちゃってるからね。相手の寝床にやって来ちゃってるからね。

色々な意味で不味いからねこれ。俺にとっても心臓に悪いからねこれ。

このお話、健全に行きたいからね。出来れば健全で押し通したいからね。だからNGだからね?分かってるよね?

 

 

「ふぃー、お前ずっとここ居るのか?w」

 

「そう…ナ」

 

「そうかy…ちょっと待ってくださいお嬢さん」

 

「何ナ?」

 

 

ローブを脱ぎだしたその時の姿は、まあオイヨイヨにとっても許容範囲であった。

ほぼ全身タイツというか、何かそういう危ない格好ではあるし、なんか色々破けてるが一応、一応程度に大丈夫だったのである。

そんな事で騒ぐような真似をしていた方がよっぽど問題というか、意識しすぎだろっていう話なので、スルーで結構だったのだが、しかし、今それさえ脱ぎだそうとしているのだった。

 

ある意味水着回や温泉回よりも特大のイベントである。

である、じゃなくって。

今俺そういうのはNGだって言ったよね?

 

 

「いやーね?w

 さーっすがにw

 お前貧相だしよww

 

 いやwwww

 見たくないですwwww」

 

「何が言いたい…ナ?」

 

「男の前で堂々脱ぐなっつってんだよ!!www

 お前は女である事実すら忘れたのか!!?wwww

 保険体育とか全部忘れちまったってのか!!??wwwwww」

 

 

そう言うと流石に脱ぐのはやめてくれるシュバルツだった。

しかし何故か急にオイヨイヨのアゴを結構強めに蹴り飛ばし、挙句、

「はい今すぐ食います。性的な意味じゃありません。食物連鎖的な意味です」

と言われても違和感のない、そんな感じでオイヨイヨに乗っかっていた。

 

いや、性的な意味でもそうなのだが、これ、健全なので。この小説健全なので。

あってもほっぺにチューしか作者は認めません!

 

 

「うっせえぞ作者wwwwwwwwww

 そう思うんならもうちょっと色々どーにかしやがれやwwwwwwwwwwwwwww」

 

「誰と話してる…ナ?」

 

「おめーもおめーだろーがwwwwwwwwwww

 さっさどけよ!!wwwwwwwwwwwww

 俺多分ジョンより人気あんだぞwwwwwwwwww

 本来人気あるべきジョンより人気あんだぞwwwwwwwwwwwww

 このまま人気大暴落したらどーしてくれんだよwwwwwwwwwwwwwwwww

 下手すりゃ俺ただのタラシ扱いじゃねーかよwwwwwwwwwwwwwww

 なんだよそれ!!wwww

 ボケに対するツッコミどころかところ構わずツッコミしてるみてーじゃねーかよwwwwwwwwwwwwww

 こういう風に思春期の子どもは連想ゲーム始めちゃうんだよwwwwwwwwwww

 お前の格好と俺の現状から読者がお猿さんに退化しちまうんだよwwwwwwwwwwww」

 

 

いやその辺は大丈夫。お前の人気もジョンの人気も気にしてる程無いから。

根本的にこの物語の知名度が絶望的だから。

お前らのイラスト描いてる人間、ほぼ俺のみだから。

 

 

「うっせーよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

「…ナ?」

 

「ナァッ!じゃねーっての!!ww

 割りと冗談じゃねえから!!ww

 一切冗談にもギャグにも成ってねーから!!wwww

 チワワっぽい子犬が震えてこっち見るような感じで言ってんじゃねえよwwwwwwwwww

 言っとくけどお前無表情過ぎて何か腹立つから!!wwwwwwwwww」

 

 

確かにこのままでは不味いんだけど、絵面だとかなり不味いんだけど、オイヨイヨのその態度を見るからに安心出来るよね。

拒絶感凄い上で、押しのけたりっていう乱暴さに打って出ない所とかね。

あと読者をお猿さんに退化させまいとするその助言も中々にいいよね。

これ、ある意味で読者を無理やり味方につけようとしてるんだよね。お猿さん云々という言葉を武器に。

 

お前結構冷静だな。恐れ入るわ。

 

 

「教えて欲しい…」

 

「語尾消して余計な誤解受ける発言増やしてんじゃねーよwwwwww」

 

「拙は、何者なの…ナ…?」

 

 

無意味に野生に目覚めた所為なのか、それともそれ以外の理由でなのか、シュバルツは真剣な眼差しだった。

心なしか眉間にシワが寄っており、無表情が崩れつつある。

そしてオイヨイヨも言葉では草生やし放題だが、汗塗れであった。

何せ、本気で抵抗しても勝てる気がしない相手に、マウントを取られているのだ。

相手の現在の記憶がどうであれ、過去に酷い目に合わされまくっているのは紛れもない事実。

少なくとも生きた心地がしていなかっただろう。

 

 

「いいからどけよw

 あいにく、俺はよく知らねえよw

 テメェとの記憶はいまいちよww」

 

 

様々な意味で面倒なので、とりあえずそう答えるオイヨイヨ。

すると少しの間を経て、シュバルツはオイヨイヨから少し離れた位置に腰掛けた。

所謂女の子座り。可愛らしい限り。

表情も無表情のそれに完全に戻っていた。

 

 

「そうなのか……ナ…」

 

「なんか紛らわしいなその語尾wwww

 自動で疑問形じゃねーかよwwww

 

 そうだ。お前、数字の7、ちょっと言ってみろよ」

 

「セブン…ナ?」

 

「英語でなく日本語のナナって言えやwww

 なんで途端に利口な回避してやがんだよwwww」

 

 

そりゃ悪意むき出しの問いかけだからだろ。

どっちに転んだってツッコミ入れる気なんだろどうせ。

 

 

「…ナナ」

 

「言えてるんじゃねーかよwwwwwwwwwwwwww」

 

 

それみたことか。

 

もはや女の子相手という考えが無いのか、オイヨイヨは思い切りにシュバルツを蹴飛ばす。随分過激なツッコミである。というか危険である。

一方、シュバルツは軽々しく吹き飛んだが、背中を打ち付けた先でも随分と平気そうにしていた。

まあ軽く蹴っ飛ばされたくらいでダメージを受けるほどにやわなら、伝説的な暗殺者などやっていられなかったか。

にしたって今のは酷いと思うけどな、俺は。

 

 

「ナ、という言葉を発したら、あとは自動でナナになる算段ナ」

 

「うっせーよ抗えよwwwwwwwww

 その語尾に抗ってみせろよwwwwwwwwwww

 受け入れ体制とってんじゃねーよwwwwwwwwwww

 臨機応変に語尾を一般的な会話で対応する手段を学んでんじゃねーよwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

「そうなんだナー」

 

「抗う方面を間違ってんじゃねーよwwwwwwwwwwwwwwwwww

 なんなんだよお前wwwww

 アレか!?裸の大将気取ってんのか!?wwww

 なんでそんな余計な事は覚えてる、つかなんで知ってんだよ一周して馬鹿かお前はwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

 

そんな風に騒がしくしながらも、適当に二人とも座り直している。

でもオイヨイヨは腹を抱えて笑っているのだった。

そんな様を不思議そうに見るのは、シュバルツ。

オイヨイヨはその視線に気づき、ふと、笑うのを辞めた。

ニヤニヤした口元はいつまでも変わらないのだが、笑っている場合ではない。

 

何から手を付けていけばいいのかも分かったものではないのだ。

 

下手に触れば何かを壊しそうで、下手に触れれば何かが起こりそうで。

場合によってはオイヨイヨ、ここで無残に殺されて終わりかねない。

目の前の少女は、起爆のタイミングも解除の方法も全くわからない時限爆弾みたいなもの。

だからといって放っておくのもどうかと思うし、放って置いた方が安全でもある。

 

いっそ全てを見なかったことにして、オイヨイヨ1名で脱出するのもアリだろう。選択としては。

それなりに適応出来ている彼女はこれ以降も何事もなく過ごせるだろうし、もし記憶が蘇ったとしても、その時はその時。

全てを運命に任せて流されるのも、また悪い選択ではない。

 

そうは思うのだが、オイヨイヨは酷く迷っていた。

 

 

「…俺はバーロー=オイヨイヨってんだ。

 で、俺が知ってるのは、お前が、シュバルツって事だけだ」

 

「拙の名前の前に、何かもう一個あった気がするナ。

 アナザー的なのがあった気がするのナ」

 

「テメーには元々アナザーもトゥギャザーもねーよw

 そもそもそんな事は忘れちまったなぁw

 俺はお前のと違ってよw

 突発性記憶喪失ってやつによくなるんだよwww

 発端はちょっとよwコーヒー飲み過ぎでよwww」

 

「こーひーナ?」

 

「苦くて黒くて毒々しい飲み物でよw

 それがまた飲み過ぎると体に悪いんだよw

 テメェが飲んだ日にゃあ今以上に体真っ黒になっちまうぜ?wwwww」

 

 

オイヨイヨってさ、開幕段階からずっと思ってたけど、もしかして嘘が下手?

今のは超苦しいぞ。なんだよコーヒーの飲み過ぎで起こる突発性記憶喪失って。

じゃあ飲むなよって言われて終わるぞ。ブルーベアなら言うぞ。

そして二度とコーヒー出して貰えなくなるぞ。

 

 

「拙の体は、黒いのか…ナ?」

 

「手とか足とかは見えんだろーがwwww

 しゃーねぇwwwwほれ鏡かしてやるよwww」

 

 

携帯していた鏡を取り出すオイヨイヨ。

髪の毛ほったらかしで寝癖まみれのジョンと違い、オイヨイヨはワックスで毎日髪の毛をセットしているのだ。カチンコチンの髪の毛なのだ。

なので手鏡の一つくらい余裕で常備。ワックスも常備。クシだって常備。オサレー。

 

 

「……」

 

「どしたw」

 

「…拙…、湖に映る拙より、ハッキリ見える…。

 これが、拙の顔…」

 

「…なんだ、まともに顔も覚えてねーのか」

 

 

そのレベルで覚えていないらしい。

オイヨイヨが言うように、手足くらいは見れるにせよ、顔の方は流石に自然界では見ることは難しいだろう。

それでも水面に映る自らの顔を、今の今まで見たことがないとも思えないのだが。

 

いいや、違う。

何が違うかと言えば、根底から色々違う。

 

彼女も流石に自分の顔くらい何度か見たことがあるだろう。

そしてその時は何も思わなかったのだ。

だから認識はその程度。それで終わりだ。終わっている。

 

じゃあ今、何が違うか。

根底から違うこととは何か。

 

 

ここにオイヨイヨが居る事に他ならない。

 

 

「…覚えて…る…」

 

「……おい」

 

「思い出せそう…っ…、思い……だせそう……」

 

「…って!うぉいwwwwwwwwwwww

 何度俺に乗っかってんだよwwwwwwwwwwwww

 俺は遊具じゃねーんだよ!!!!wwwwwwwwwwwwwwww」

 

 

ツッコミも抵抗も一切無視し、シュバルツはオイヨイヨの顔面を両手でロック。

無表情なその双眸を見開き、オイヨイヨをガン見開始。

 

明らかだ。

オイヨイヨが居る事が、記憶を徐々に結びつけている。

彼が居るから、自らの顔を見た程度でこれほどまでに動転している。

 

だから、知っているのではなくて、覚えている。

 

彼女はそう言った。

 

だがしかし、そこで今は留まっている。

オイヨイヨの赤い目に対し、琥珀色の目を見開いて、そこから何かを覗き込もうと必死になっているが、

結局、見える景色は何もない。赤い瞳がそこで瞳孔を伸び縮みさせているだけだった。

 

 

「…んだよw」

 

「…………、拙は、貴殿に会った事が無いか…ナ…」

 

 

チグハグの記憶。

断片。破片。欠片。

もはや二人が森で出会ったときの会話など無関係。

今、彼女は何かを、何かを掴みかけている。

 

そして届かない。

あるのは嫌な予感と、恐ろしいと思われる記憶。

繋がってくれなかった。

あともう少しという所で。

もどかしいだけの感触の中で。

 

 

「…さーなw

 今俺現在進行形で突発的な記憶喪失なもんでwww」

 

「答えて…ナ…。

 真剣に、答えて…くれ…」

 

「………どけよw」

 

「………分かった…ナ」

 

 

限りなく取り乱していたシュバルツは、ため息混じりにそう返事する。

冷や汗もかてしまったようで、オイヨイヨを開放した後は女の子座りになってすぐ、(ひたい)を左手で(ぬぐ)う。

その横顔は酷く疲れを覚えている物だった。

少女の柔らかな輪郭が台無しなくらいに、重い何かを湛えている。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

オイヨイヨも起き上がり、それとなくシュバルツを観察してみる。

とりあえず言えるのは、記憶を取り戻したワケではないという事か。

鏡をまた手に取るシュバルツは、眉間をひそめながらにらめっこしているばかり。

 

 

オイヨイヨはどうするかを考える。

今が静かなうちに。

 

 

普通に思考するなら、このまま記憶なんて取り戻さないまま、普通の女の子として生活させてやったほうが、彼女にとっては少なからず幸せなのかも知れない……という考えに至るだろうか。

CABINの街まで連れて帰るか、付近の街に家を構えて適当に過ごさせるくらいが、それらしくコトは終われられる方法だ。

普通が幸せなのかと問われると、それはそれで悩ましい議題足り得るが、しかし、人殺しを続ける未来よりはずっとずっと、ずっと、幸せな事だと思いたい。

 

しかし彼女の異名は、世界中に轟いている。

故に、いつ命を狙われるか分かったものではない。

特に無印猟団関係者は、彼女を放っておかないだろう。

彼女が生きていると発覚したらそれだけで、全ては一気に動き出すだろう。

無論、彼女はすべてを忘れているワケでは無い。

運動能力も相当であるし、武器でも持たせてみたら当たり前のように扱い始めるかも知れない。

だから、そういう輩など、今の彼女でも簡単に撃退してしまうやもしれない。

 

だが、何も知らぬまま敵に追われる生活を、妥協できるだろうか。

そもそも、どうして命を狙われているのかも分からぬままに生きるなんて事が、人間には可能なのだろうか。

それはそれで生地獄なのではないだろうか。幸せとは程遠いのではないだろうか。

 

かといってだ。

思い出したら思い出したで、それもどうなのか。

彼女は再び人殺しの世界に身を投じるのだろうか。

復讐の哮りをあげながら、薄暗い世界へと。血なまぐさい世界へと。

 

こんなにも細身で、こんなにも幼くて、こんなにも可愛らしい少女が?

 

見れば見るほど無害。

すでにオイヨイヨが嫌になる程体感している。

確かに少し頭が可怪しいし、語尾も変だし、いきなり強烈なアプローチを仕掛けてくるし、野生児だし、すぐ脱ぎ始めるし、

でも命を取ろうという意思は全くそこには存在しないのだ。

そんな彼女がどうして命を狙われる必要性がある?

そりゃそうだ。命を奪っているのだ。狙う側が狙われる側になるもの当たり前だ。

 

でも、それでも。

何故これほどまでに理不尽を感じてしまうのだろうか。

所詮他人事だからだろうか。

それでもと、ひょっとすれば、もしかすれば、

 

悪い知人の影響だろうか。

 

 

「……、鏡返せ」

 

「ッナ!?」

 

「こりゃ俺のだ。貸してただけだっつーの。

 時間切れでーす」

 

「…む…むむ…」

 

「んぁ?ww

 『ナ』の次は『ム』で対抗ってか?wwwww

 変えりゃいいって問題じゃねーんだよwwwwww」

 

「なむ~……!」

 

「お経唱えてんじゃねーよwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

 

オイヨイヨは精一杯考えた。

精一杯考えて出した結論はこれだ。

 

記憶喪失したままで居てもらうことに決めた。

 

理不尽を思うも何も無い。

ただブルーベアを想起させられたのだ。

 

ブルーベアはやりたくもない事を、才能のまま行い続け、嫌になって逃げ出した。

それでも追われ、傷付き、あろうことかあの女性は、泣いてしまったのだ。

過去の素性もやった事もどうだっていい。

ブルーベアが今も快楽殺人者であるというのならば話は別だったが、そうではないのだ。

じゃあ彼女とシュバルツ、何が違うんだと。

只今も人殺しもモンスター殺しもやるときはやるオイヨイヨと比べれば至極真っ当じゃないかと。

 

極悪人ならもうここに居るんだと。

じゃあ小悪党くらい放っておけばいいのだ。

足を洗い、綺麗さっぱり過去を捨てて、それで終わりでいい。

我儘で自分勝手で厚顔無恥だと罵られるのは、自分だけでいい。

 

ブルーベアやシュバルツに降りかかるその全てを請け負ってやろう。いいや、請け負う義務がある。

 

それが正義の味方の在り方だと思っていたし、それがオイヨイヨの考えでもある。

 

シュバルツの一件は、喫茶店ブルーベアなりCABINなり、接点こそ持ち合わせが充実。

どうにでもなる。そう思った。

そう思わないと、なんだかやってられなかった。

 

 

「…お前らも、俺と同じように選ぶよな」

 

「…ナ?」

 

「んでもねーよww」

 

 

きっとそうするよ。

特にお前をこんな場所に突き落とした馬鹿あたりならな。

 

 

 

***

 

 

 

夜空は、このあたりでも随分高い場所に建設されている家であるのにまるで見えず、要するに四方八方は真っ暗闇だった。

光源は酷く弱々しい一つの光。松明。

常々は設置しないらしいのだが、オイヨイヨが夜遅くまで起きている事を考慮しての、シュバルツの設置。

しかし有った所で恐怖心を拭うには光源が足りず、結局オイヨイヨはそれを持て余している状態。

チリチリと、大きな蛾の命を何度か奪う程度の、その程度の代物。

 

月の代役にすらなっていなかった。

 

 

…眠るシュバルツ。

まさに無防備で、しかも素っ裸である。

もちろん布団の代わりのタオルか布かで、バッチリR-15指定も必要のない格好である。

 

オイヨイヨももちろん手を出さない。

出してたらコイツ殺す。

作者権限で消す。

 

 

「出すか馬鹿w」

 

 

ともあれである。

 

この森の生態がある程度、オイヨイヨにも把握出来た。

この家、実は一見しただけではただの秘密基地的な家なのだが、結構よく考えられた設計をしていると言える。

 

ゲジの森のモンスター達は、どうも夜行性型が多いらしい。

その多くは昼間、岩陰や洞窟や背の高い雑草の中、自分で掘り返した穴などで過ごしているらしい。実際昼間にはロクに見かける事も無かった。遭遇も無かった。

現在では遠目から見える情景でも、かなりの数がワラワラと動いているのが分かる。あの日の頃のように。

 

ここも本来であれば、襲撃の対象になりうるだろう。今なんて松明まで有るので、良い的。格好の的。

地面に家を設置するよりは遥かにマシではあるにしても、危険性は高い。木の上であっても。

 

しかしこの木、他の木より断然高い。わざわざシュバルツが選んだのだろう。

つまり、飛び移るにしても家より上はありえない。他の木を伝ってここに侵入するのは不可能に近い。侵入経路は3つだけ。

1つは、シュバルツがオイヨイヨを招いた経路。複雑な経路。複雑故にこの経路を使われる可能性は著しく低い。

2つは、家のある木、その根本から一直線に登ってくる手段。もしくは他の木からこの木の中間地点くらいまでショートカットした上で、結局この木を登る手段だろう。この森、木登りが得意な種類は多いようだ。

3つが、木を切り倒して、寧ろ家に来ていただく手段になるか。

 

ただし、その家の構造が何より曲者である。

どうにも家の床に位置する場所、側面には、無数の木のトゲが設置されているのだ。追い打ちをかけるように鼠返し。

何度か攻撃を受けたような形跡こそあるのだが、やたら丈夫な床のようで、貫通攻撃には至っていない。というより、近寄る事すらためらわれるレベルで危険。

如何に知能のないモンスターでも、少しすれば近寄るだけ無駄であると理解することだろう。そういう家だ。

また丈夫さから3つ目の可能性も却下していいだろう。可能性が全くないとは言わないにせよ、近辺で一番に大きな木を倒すなんて真似がどれほど危険な事かくらいは承知のはず。

 

凄い話、シュバルツはあの日、約2年前のあの日、戦闘途中か帰る途中か、どうにせよ何れかのタイミングで記憶を失い、こうして身を守る事が可能な住処を構え、たった一人で、独りきりで、この森を生き抜いてきたというのだ。

その飛び抜けた彼女の逞しさを、暗い世界を眺めつつ、爽やかさとは程遠い生ぬるいそよ風を浴びながら、オイヨイヨは今更に理解していった。

 

オイヨイヨさえ既にそんな彼女の施しを受けている。

 

時折存在を耳にする事もあると思う。

亜熱帯地方に多い、ウマバエと言われる蝿が、このゲジの森にもいるのだ。

その名の通り、馬などに卵を産み付けるタイプ。そして種類によっては、人間もその対象に含む蝿が居るのである。

一応、この世界にしか存在しない種類で、正式名称をカノヨナウマバエ。シュバルツはこれらを「人食いバエ」と言い、揶揄し忌み嫌っているようであった。

だが忌み嫌うだけあり、これに寄生されると高熱を出してしまうらしい。

それだけでなく、嘔吐、吐き気、寄生された箇所に激しい痛みを伴い、死ぬ思いをする羽目にあうのだとか。

 

彼女はこの蝿に幾度と寄生されたことがあるようで、とにかく命に関わるという事から、急ぎ対策を探したようだ。

結果、ゲジの木と言われる、いわばこの地にしかない木の根の汁が嫌いである事実を発見。

それを塗りたくっておけば3日くらいは間違いなく安心して眠れるのだと、オイヨイヨに言葉足らずながら説明していた。

他にも色々を混ぜ込んだりした半透明のジェル状の液体を、木で作った入れ物に入れていた。

手間暇は掛かる筈だが、躊躇わずそれを彼に提供し、妙に満足げな表情だった。しかもHPをも回復するというような、傷薬としての効能まであったのだった。

 

だがこれが出来上がったのはしばらくしてからだったのだろう。

彼女の体には無数の小さな切り傷の痕が残っている。

つまりはそういう事らしい。

 

こんな森の奥深くでは、これが限界という事でもある。

 

 

「………森から出るには、せめて方角だが……」

 

 

さて、ご存知だろうか。

よく漫画やアニメや映画やドラマなどで、森ではコンパスが効かなくなるという描写を見かける事があると思う。

周囲に強力な磁場がどうのこうのとか、色々な理由をその際述べてくれる筈だ。

 

それ、大嘘である。

 

もちろん、本当にとんでもなく磁場の強い何かがそこにあるのであれば狂う可能性こそある。

例えば炭鉱や坑道と言った、金属が多量にあるそんな場所、岩が何らかの理由で強力な磁力を持っている場所、火山地帯などでは本当にそれが起こる事もある。

しかし世の中そんな場所はそう山ほどあるわけではない。山は沢山あれどもだ。もしくは狂うという大袈裟な表現をするに値しない誤差である場合の方が圧倒的に多い。

遭難するとコンパスが上手く機能しない場合なんていうのは大抵、コンパス自体が何かしらの原因で壊れているのが原因である。

より詳しく言うと、フレームが磁場を帯びちゃってる、軸部分が歪んでいる、コンパス自体が何らかの理由で磁力を完全に失っている、等の理由が主である。

つまり磁場でコンパスが云々は、漫画的、アニメ的、映画的、ドラマ的ご都合主義により頻繁に扱われる設定と断言していい。

中でも富士の樹海にてコンパスが狂って抜け出せなくなるという都市伝説が、このような勘違いを生み出したのだと思われる。

無論富士の樹海でも、コンパスが狂う事はほぼ無い。とはいえ1度2度くらい変化が生じる可能性もあるらしいので、丸っきり嘘ってワケでもない。この都市伝説は、噂の肥大化した産物なのだろう。

 

…まあ、コンパスがここでもおそらくほぼ狂わないとしたものとはいえ。

 

 

「おうよw俺コンパスなんか持ってねえよwwwwwwwww」

 

 

という有り様である。

まあそりゃそうなんだけども。

旅行に行くって言っても観光地に行くだけだったわけで、コンパス持ってたらそっちの方が変である。

何よりジョンが居ると、そもそもコンパス要らず。最悪地図が無くてもジョンが居るだけで全て解決しちゃうのだ。絶対記憶能力者なので。

寧ろジョンの近くに居たらコンパス壊れる。アイツの隣に居たらコンパスアイツしか指し示さない。お前はN極じゃないしS極じゃない。Q極の馬鹿だ。

 

何はともあれ。

それに森のどの位置かも分からぬ今、下手に動けば逆にお陀仏になるのは確かな事。

もはやジョン達に未来を託したい、期待したい所なのだが、助けに来るにしても、ジョンは絶対来ないだろう。オイヨイヨの事となると、そういう事を平然とする奴である。

精々ブルーベアが来てくれる可能性があるくらいだが、ブルーベア達があの飛行戦艦ヤマトでどういう経路を経て移動しているのかも分からないし、そもそも今どこにいるかも知れた事ではない。

助けに来てくれる意思が向こうにあったとしても、ここに到着するまで時間がかかるのは分かりきっている話だった。

 

ならばどうするべきだろう。

ここで数日過ごす分には、シュバルツが居る以上特に苦戦もしない。野宿にならず、食料にも困らず。待遇も良い。恵まれている。

 

それで根本的に、外部から助けが来る可能性は結局どれくらいだろうか。

ジョンやブルーベアのことだ。

「オイヨイヨなら上手くやるんじゃね?」

というような薄情を言っている頃かもしれない。

ホワイン島で何も気にせずバカンス満喫してる頃合いかもしれない。

優雅に青々しいドリンク片手に夜空を見上げてオイヨイヨの顔を浮かべている頃合いかもしれない。

いい感じにオチつけてる頃合いかもしれない。良いやつだったみたいに語っている可能性は否めない。

 

だがそれでいい。正解である。

オイヨイヨ、単独ならば上手くやっていた。

流石にこの森も様変わりしているが、なんとか生きて抜け出すくらいの事は出来る。出来てしまう。

1週間か2週間か後になってボロボロ姿で喫茶店ブルーベアのドアを蹴っ飛ばして入店するくらい、ワケもない事。

入れ違いが発生するくらいならば、オイヨイヨの事をほったらかしにするのが正解なのだ。

 

しかし問題があるのだ。オイヨイヨには、問題がある。

それは、シュバルツがそばに居る事だった。

彼女がいる中で、能力は使いたく無かった。

氷の能力、それだけは使えない。

それが彼女の記憶に対してどれほどの刺激を与えるのかなんて、明白だった。

 

 

シュバルツはおそらく、オイヨイヨの氷の能力を見れば、全てを思い出すだろう。

自慢ではないが、自信を持ってそう言い切れる。

それほどまでに強烈な事を、過去に彼女の前でやらかした事があったから。

 

 

ともなれば通常モード、ジョンとコンビを組んでから扱い始めた雷系魔法を駆使して脱出する他にないのだが、ここのモンスターは、電撃など物ともしない程には手強い。魔法耐性がとてつもなく高い。

実際過去、猟団の面々は、半数がこの土地に、環境に、生命体にやられたといってもいい。

如何に勇猛な騎士様だろうが、如何に魔法と知識に長けた魔導師だろうが、自然の力というものには歯がたたないというもの。そんな洗礼を、突入した全員が浴びたのだった。

よほど特殊であり、抵抗力があり、免疫があり、精神異常者でも無い限り、ここでは成されるままに死ぬことになる。

 

脱出難易度は跳ね上がっている。

シュバルツを連れて行動をするにせよ、シュバルツに戦闘を強制したくもない。

さてどのような手段、手順を用いて脱出作戦を決行するか……。

 

そんな事を考えていた矢先の出来事。

 

 

「……ん、なんだ?」

 

 

モンスター達のうめき声、自然界で存在する環境音に耳を方向けざるを得ない故に気がついた。

よほど遠い位置から。しかし距離は2,3km以上。

周囲を見回しても何処に居るかは把握しそびれる。森が全てを遮っている。

オイヨイヨは即座に更に上、木の上へ上へと足を進める。

 

この場所には似つかわしくない銃声が聞こえるのだ。

そしてこれは、この音は恐らく……。

 

 

「自動小銃…、スプリングフィールド、M14…、なわけないか。

 この場所ならむしろ、ユージン・ストーナー、M16って所だろーな。

 ……多分だがw」

 

 

正式名称をUnited States Rifle, 7.62 mm, M14。製造期間は1959年-1964年と短め。

これは自動小銃、アサルトライフルである。銃の長さが約110cm。

有効射程、おおよそ800m。連射速度、1分に700~750発。マガジンには20発装填可能。

このM14を基礎とし、改造改良が成されて派生した物がとても多く、色々と便利性の高い代物である。

 

しかし今回にも言えることなのだが、この銃は湿気などにとても弱い。

それは大部分が木製の為。湿気があまりない場所では、丈夫で安定的なこのM14は優秀。

だがやはりこの湿気に対する問題点は致命的だった故に、原型であるM14の製造期間は短い。

M14からM16に取って代わられた例が実際にある。

 

小口径自動小銃、正式名称Rifle, Caliber 5.56mm, M16。

同様にアサルトライフル。長さはほぼ100cmと、M14より気持ち短い。

有効射程距離は500m。連射速度は分間900発。マガジンは20発、30発用が存在する。

しかもM14よりM16のほうが1kgほど軽い。

素材もアルミ、プラスチックなど。

もちろん耐久度でいえばM14の方が格段に上なのだが、M16もM16で利点があり、この土地においてはM16の方が優れている。

ちなみにこのM16、当時はその銃の小ささ、重さ、外見が酷く安物チック過ぎたのもあって、バービー人形やモデルガンで有名なマテル社から取って、「マテルの玩具」と揶揄されていた時期もあるようだ。

 

 

さて、本題に戻そう。

 

 

オイヨイヨはダカダカ聞こえてくる音に、興味津々。

救助かもしれない。そんな期待が膨れ上がる。

しかし更に木の上に昇った所で、銃を乱射している存在達の位置取り把握には失敗。

随分派手にやらかしている割に、明かりも付けていない様子。上に向かって弾丸が飛ぶ様子も全く無い。

 

中々徹底した存在達のようだ。

それに関してはオイヨイヨも多少不安を覚えたが、脱出に関して全く目処が立っていなかった事を思えば、劇的な進展である。

すぐさま木を折りて、家の床に足を下ろす。

そしてシュバルツを揺さぶり起こすのだった。

 

 

「おいシュバルツ、起きろ、そして服着ろ。いや、何を置いても先に服着ろ」

 

「ンナ?…オイヨイヨ…?」

 

「起きろ。いいから。

 俺を助けに来た奴らかもしれねえ」

 

「…んー?ナー?」

 

 

シュバルツは服を着ようともせず、布を肩に掛けながらその様子を拝みに行く。危なっかしいから服着てくれない?

しかしシュバルツ、驚いた様子は無い。常に無表情なので、我々にはよく分からないだけかもしれないのだが。

 

そのままオイヨイヨも、寝起きなのかふらふらしているシュバルツが心配で肩を持つ。

 

特にライトも展開していないのに、彼女にはその部隊が見えるようだった。

オイヨイヨもその方角を眺めていると、確かに僅かながら、発砲時に発生する発砲炎の光が見て取れた。

距離感がつかめないが、少なくとも5km以上離れているらしい。

 

 

「……紅蛇…ナ」

 

「…あ?」

 

 

予想外の名前が、こんな所で登場する。

よりにもよって、紅蛇。

 

 

「最近、誰かを探してる…みたいナ」

 

「ギャルっぽく喋ってんじゃww………、今はいいか。

 紅蛇が、探してるだって言ったな。

 なんでお前、そんな事を知ってんだよ」

 

「…一昨日の昼間に突然、現れたのナ。

 隠れて聞いてたら、そんな感じのこと言ってた…ナ。

 人と遭遇した事もロクにないのに、今日は貴殿に出会ったのナ。

 最近は人を発見する確率が高くてビックリなのナ」

 

「……、救援どころか、紅蛇の手先系かよwww

 しかも俺を狙ってるんじゃない感じかよ畜生wwww

 ……狙ってるのは、俺じゃなく……ってことか」

 

 

恐らくはシュバルツを。

どういう経緯からどのような思考をもって狙い始めたかは分からないが。

そこに偶然オイヨイヨが降ってきて、巻き込まれた形。

 

不幸中の幸い、は使い方を間違えている感が半端じゃないが、幸運だったのは確かだろう。

シュバルツを連れ出す明確な理由がこれで完成だ。オイヨイヨが必死に考えるまでもなかった。

一刻も早く脱出する必要性も出てきたが、しかしあれだけ派手にやらかしているのだ。モンスター達は向こう側に集中するだろう。脱出難易度も多少変更が入ってくれている筈。

 

 

「紅蛇、知ってる…ナ?」

 

「まあなw

 俺の知り合いの馬鹿が聞いたら、飛び込んでる所だwww

 だがまあ、居なくて好都合だ……w」

 

「…?」

 

 

ジョンが居たら、何をしでかしたか不明。

この現状ならばジョンでも流石にシュバルツを優先したとは思うが…。

 

オイヨイヨは自らの武器を確認する。

とはいえ、完全に旅行する気でいた故に、武器は殆ど持ち合わせていない。

持ってて便利そうなポケットティッシュ、使う事なんて滅多に無いけどオイルいっぱいのジッポーライター、プッシュダガー1本に、ツアーの広告とツアーのしおり。

ブーツにいつも内装しているクナイ、計2本。

あとは、おまけ程度の長い針一本。ピッキング用。

 

サバイバルナイフの一本も持っていなかった。これは酷い。

 

 

「シュバルツ、お前の荷物全部出せw」

 

「…下着…ナ?」

 

「阿呆かお前は!!!!wwwwwww

 武器だよ武器wwwww工具でもいいぞwwwwww」

 

 

わざとなのか、シュバルツは下着類衣服類と共に、武器もその場に並べる。

オイヨイヨは下着や衣服をほっぽり出しながら、武器を確認していく。

当時のシュバルツが戦闘を目的にこの地に来ていたのもあって、充実していた。

意味を分かっているのかそうでないのか、整備も万全。驚くほどにきれいな状態だった。

他にもここに来てから作った代物もあるようだ。道具に不足無し。パーフェクト。

 

こりゃ勝てないわけだと、こりゃ追尾できなかったワケだと、こりゃ潜伏場所を特定できなかったワケだと、またまた今更ながらに思う。

 

 

「…wwwww

 こりゃすげえwwwww

 俺のフル装備とはまた違った一品ばっかりだなwwwww

 かっけえ日本刀の短い版みたいなのまでありやがるしwwww

 これグルカナイフかwwでっけーの使ってんだなお前wwwwww

 

 んあwショーテルかこれw

 頭身約150mmの短剣、湾曲箇所計4。

 とんでもねえ武器使ってんのなw

 

 で、こりゃあ中々だなあw

 闘牛のような頭身、それが2つもあるナイフ。

 こりゃあどこのナイフだ?w

 拷問器具のネコの前足だっけかw

 それと同じ派生の武器なのかねw

 

 お、こりゃ…、治療用の刺針じゃあねえか。ツボ刺激する奴w

 数も結構ある。ホルダーに約60本程度内包出来るし、肩、腰まわりであれば装着可能か。

 数本一気に取り出せるように段のある箇所、そうでない箇所が有り、実戦向け。

 おお、クナイまでありやがる。

 知ってるかシュバルツ、クナイってな、苦しいに無い、『苦無』って書く。

 元は工具から派生したって話もある。

 これはまあ万能ナイフでよ、和製のサバイバルナイフみたいなもんだ。知り合いが持ってたなそういや。話もそいつからちらっと聞いたんだったか。

 足場にも使える上に暗殺にも使える。切れ味も然ることながら、紐を付ければ木へと引っ掛けることも出来る。鉤縄(かぎなわ)ってやつの代用品な。

 も少し万能なの持ってそうだが、壊れたらコレ使えるってこったよ。

 んでこりゃあ…」

 

「…やめて」

 

「んぉ?」

 

「やめて……、頭が、痛い……」

 

 

こんな暗がりでもハッキリわかる程に、シュバルツの顔は真っ青だった。

物珍しくてつい語ってしまったオイヨイヨは、後悔する。

 

 

「……悪い」

 

 

元より無駄話をしている場合じゃない。

ことは急を要する。

 

オイヨイヨは適当に、武器を拝借する。

しかし使う分だけ。魔法に耐えうる代物だけ。簡単な物だけだ。

それ以外は全部シュバルツに返した。正しくはその場に置き直したくらいの事だが。

 

そして気がつく。

松明つけっぱなしだった。

急いで消すが……。ずっと前から手遅れだろう。

 

 

「装備しろ。この森から出るぞ」

 

「…や、やだ…」

 

 

無表情のままに、シュバルツは立ち上がって一歩引いた。

だが無表情さなど詮無き事。拒絶感はありありだった。

オイヨイヨもここで立ち上がり、言うのだ。

 

 

「出るんだよ!

 お前、ずっとここで生きていくつもりか!?

 無理だろ!!馬鹿か!!

 早く逃げんだよ。

 いいからついてこいっての」

 

「やだ…っ」

 

「なんでだよ」

 

 

オイヨイヨが無理やり腕を取り、シュバルツを逃さまいとする。

しかしシュバルツは、もはや体を覆ってくれているR-15ギリギリラインを守る布の事などお構いなしに暴れ始める。

シュバルツは極度に嫌がっている。

正しくは恐れているのだろう。

この森から出ていく事を。

この森で過ごした期間があまりに長いから。

 

何より、彼女は色々を恐れている。

もっともっと重要な事。

本来ならば是が非でも掴み取りに行くべき事。

 

 

記憶を取り戻す事を。

 

 

暴れ続けるシュバルツが、ふとしたタイミングで後ろへと転ぶ。

オイヨイヨはそれに引っ張られるようにして、覆いかぶさる形になってしまった。

その瞬間、二人は一旦動きを止める。

シュバルツは目を見開いてオイヨイヨを見つめ、オイヨイヨは半開きの目でシュバルツを見つめる。

 

シュバルツの肩は、大きく上下していた。

汗ばんでいた。

顔色はかなり優れない様子だった。

 

もう、なにがなにやらだった。

 

 

「……ったく、最初の逆だなこりゃ」

 

「やだ…、オイヨイヨ…、怖い…」

 

「……俺が怖い(けだもの)に見える…って意味じゃなさそうだな」

 

 

泣き出しそうな顔で、乞う。

彼女は必死になって、拒む。

 

 

「拙…、思い出したくない…、怖い……、思い出しそう……、嫌な事、全部……やめて……思い出したく……いやだ……いやだ………」

 

 

「ったくよ」

 

 

オイヨイヨは静かにシュバルツから離れる。

それでも警戒心たっぷりに体を後ろに引きずって離れるシュバルツだったが、それも無視する。

余計な語りも含めて、余計な時間を食いすぎたようだ。

 

 

「こりゃ、場所割れてやがるな。

 参っちまったなあw

 どーしろってんだよww」

 

 

これほど入り組んでいると移動も大変の筈だが、紅蛇の部隊は気がつけば3km程度の距離。

銃撃音も激しさを増している上、今ではエンジン駆動音も微妙に聞こえてくる。

ともなれば丈夫な車両、もしくは装甲車かで移動をしているのだろう。

弾丸もたっぷり、何なら機関銃、マシンガン、最悪ロケットランチャーくらいの代物を引っ張り出して来かねない。

 

事態は悪化する一方。

話し合いすらも、後回しにしなくてはならない。

 

 

「…オイヨイヨ……、拙…、拙は…」

 

「わーったよ!無理にこの森抜けさせるような真似はもうしねーよ。

 兎に角アイツら、撒くぞ。逃げなくちゃならねえ。

 でなきゃお前、殺されるかもしれねーんだぞ。

 明らかにここ目指してるってことは、多分そうだろうよ。

 まあ今じゃ俺狙ってるのかもしれんがな」

 

「……森から、出ない…?」

 

「でねーよ。出ねーから着いてこい。

 別の場所に家造りゃ文句ねーだろ?

 あの、あれだ、家造りだって手伝ってやるから。

 とにかくここを離れるんだ。急げ。急いで服着ろ!」

 

「………うん…」

 

 

時間を食いすぎた事、松明を設置してしまった事。これらはかなり事態を悪化させてしまっている。

最悪、逃げる経過で攻撃及び追撃を受けるだろう。追いつかれる可能性は高い。

そうなってしまえば、彼女の身をオイヨイヨは保証出来なかった。

別に怪我、または命の危機の話ではない。

 

 

記憶の方が問題だ。

 

 

服を着ないまま移動しようとするシュバルツを無理に服を着せつけ、オイヨイヨはその手を引っ張りながら大急ぎで逃げた。

木から飛び降りて、モンスターを避けて、逃走。

こうして語るとドラマチックな雰囲気に聞こえるかも知れないが、真っ暗闇で逃げている様など、どこもドラマチックではない。緊迫感も、真っ暗画面では何も伝わってこない。悲惨な限りだった。

 

本来のオイヨイヨの予定では、相手が移動手段に使っているであろう乗り物を強奪するつもりだった。

だが今、それは実行不可能。シュバルツが森の脱出を拒む以上、森から抜け出しての逃げ切りは出来ない。

なので森の中を車両で移動するだけに使うとなると、かえって追跡を容易くするだけに終わる。車輪の跡から足跡まで色々と残ってしまうだろう。痕跡を消し去るにしても、ここでは難しい。

だから今はとりあえず全力疾走かで撒き切り、シュバルツの身の安全を確保した上で、オイヨイヨだけで帰るという手段を取る他にない。

 

しかしもちろん、それは最悪の手段。

シュバルツをこの森に置き去りにしていいのか、オイヨイヨはここでまた考えさせられる。

後日また迎えに来るなど出来るだろうか。この森は紅蛇の部隊がウロウロしているのだ。根本的にシュバルツの安全を保証出来ないのだ。どうあがいても。

 

だがそんなことは、逃げ切ってから考えればいい事。

説得に成功するか失敗するかはともかく、今は、とにかく遠くへ。

 

……、しかし、気になることが一つ、オイヨイヨにはあった。

これは今すぐにでも確認すべき、重要な事だ。

だからオイヨイヨはここで、このタイミングで質問を投げる。

 

 

「…シュバルツ」

 

「…何…?」

 

「…お前……、本当はよ…」

 

「……」

 

「…、んや、何でもない。急ぐぞ」

 

 

シュバルツは、語尾の「ナ」をとっくの昔に使うのをやめていた。

それは何を意味するのか。

オイヨイヨだって理解の範疇だった。

 

分かりきっていることだった。

 

しかしあえて明確にするのを避けた。

今ここで明確にしてしまうと、色々な問題が発生する事を遅れて理解したから。

だからこそシュバルツも何も言わず、口を閉ざしているのだ。

もうどうにでもなれ。知った事ではない。オイヨイヨはそう思って、無我夢中になって草むらをかき分ける。暗闇をもかき分けていく。

シュバルツも今は必死に追いかけてきている。小さな手はしっかりとオイヨイヨの手を握っている。

無配慮な逃走劇の所為で、二人の体は擦り傷まみれ。ここの植物達の頑強さに感心するしかない。

 

 

が、ここでオイヨイヨ、ある事に気がつく。

異様なまでに早い音の連打。接近してくる何かの気配。

気味の悪い感触。恐ろしい者、得体の知れない何かが、とんでもない速度で接近してきている。そんな気配。

シュバルツも急に振り返る。その気配を察知したのだ。

 

ダメだ、振り切れない。

オイヨイヨはそう判断した。

 

 

「伏せろ!!シュバルツ!!」

 

 

オイヨイヨはシュバルツを抱きしめ、思い切り方向転換する。

当たり前のことだが、二人共がものすごい勢いですっ転ぶ。

 

と、何かが高速で通りすぎていった。

オイヨイヨにはそれが何かは理解できていなかった。

弾丸か何か。そうでないなら飛び道具か何かと思ったくらいだった。

 

しかし気味の悪い感覚、それがその飛び道具か何かから発せられているのだと分かった途端に、身の毛がよだつ。

 

 

「あいててて、木にぶつかっちゃったや。

 やけに無茶苦茶な軌道変更だね。

 流石に僕にも予想外だったよー。

 そんなことしなくてもまだ攻撃したりしないってばー」

 

 

そんな声にオイヨイヨは認識を即座に改めた。

飛び道具だとか、得体が知れないだとか、そんな程度の存在がやって来たのではない。

猛者かモンスターかは分からないが、とんでもなくやばいヤツがやって来たのだ。

 

即座に状況確認。

どうやら身勝手に先行してきたのはこの1名、木にぶつかって急停止したこの1名だけらしい。

まだまだ遠い位置で銃撃戦の音が反響している。部隊は置き去りらしかった。

しかし、この森のモンスター達を一切無視する程の高速移動をやってのける輩とは。

全力疾走していたオイヨイヨ達にすら簡単に追いつけるような輩とは。

 

かなり不味い。

言うまでもないかもしれないが、オイヨイヨはそう思う。

だから酷く体が強張っていたし、酷く強い殺気を放っていた。

 

 

「っけww

 森の中でF1レーシングなんかしてやがるからだよww

 お前コースアウトなwwww

 お前ここでリタイアなwwww

 

 じゃ、そういう事でwwwwwww」

 

 

なにがそういう事でなんだ。

とか言いたいところだが、無理もない。

目先の存在は、こうして文章で語っても全然伝わらないとは思うが、異常な存在なのだから。

 

 

「僕は紅蛇の手下ってやつだよ?

 逃すワケがないじゃないかー」

 

「そうかよwwwwww」

 

 

目の前の少年のような風貌の存在は、オイヨイヨの鬱陶しいヘラヘラ笑いとは違い、実に楽しそうな表情で笑っていた。

元からそういう顔なのかと言いたくなるような満面の笑み。幼さたっぷりの笑み。ハリボテっぽくて、しかし本心から出る笑み。

 

その格好もまた異質性を駆り立てている。

まるで陰陽師のような姿。もしくは中華風の、黒服。しかもダボダボ。サイズ合ってない。

ただし胸元にはボタン替わりと言わんばかりに札が3枚貼りつけられている。

普通の服と違い、羽織る形らしい。

にしたってその長袖部分は、手が全然見えていない。よっぽど大きいのだろう。

 

随分長い金色の髪だが、男でもあるようだ。

外見から判断すると、年齢は13~15歳くらい。

 

そしてその少年は、木に松明かをザクザク簡単にぶっ刺して、光源を取り始める。

ただでさえ異様な雰囲気を携えているというのに、行動もなんだか異様だった。

素手で松明を木にぶっ刺すという行動そのものが常識離れしている。

そもそも火種はどこにあったのやら。突然発火したようにも見えたが。

 

 

「やあ、涅色の殺し屋、そして悪魔の申し子。

 僕の名前は真朱麻呂(ましゅまろ)

 白くて可愛らしい名前だろう?」

 

「ああw覚えやすいなww

 ひらがなかカタカナ表記ならよww」

 

 

少年の名前は、真朱麻呂、というらしい。

しかしオイヨイヨはこの存在をよく知っていた。

ひょっとすればジョンと同じくらい有名かも知れない。

少なくとも紅蛇よりも有名であるし、紅蛇よりもずっと大物だろう。

目先の少年が嘘をついているのでないのならば……、

 

かなりやばい。

 

オイヨイヨが想定していた最悪の何百倍も最悪の存在が、満面の笑みでご登場しているのだ。

 

 

「ふふ、僕は別に紅蛇の命令で動いてるワケじゃないんだ。

 僕は興味があるんだよ。

 涅色の殺し屋、シュバルツ=アハトにね」

 

「紅蛇の奴の差し金じゃねーのかよww

 そもそもなんでここにシュバルツが居るって分かったんだ?ww」

 

 

時間を稼ぐ意味はほぼ無いが、時間を稼ぐオイヨイヨ。

ただでさえ真っ向勝負を挑んで勝てる相手ではない。

後々の話で読者も嫌ほど知る事になると思うのだが、真朱麻呂という存在は相当に馬鹿げた存在。

 

事実上、世界最強の存在であり、唯一無二、比類なき最強である。

誇張表現を除いても、前代未聞の強さを誇る事に変わりなし。

 

おかげで、逃走難易度が最上級まで跳ね上がってしまった。

だがどうにか逃げ切らなくてはならないのだ。そうなると、思考する時間が少しでも欲しかった。

もちろん、思考する時間など皆無。会話しながら同時進行で別の思考をするなど不可能に近い。

 

 

「知り合いに変わり者の爺さんが居てね。

 意味不明だけど、シュバルツ=アハトの場所を教えてもらったのさ。

 半信半疑だったけど、実際ほら、見つけちゃったのさ」

 

 

予言者ってやつかな?とか言っておこう。

 

 

「じゃあお前が引き連れてる奴らが喋ってた、紅蛇がどうのってのは、フェイクか?w

 随分用意周到じゃあねーかww」

 

 

シュバルツが聞き耳を立てていて得た情報の事。

紅蛇が云々と部隊の人間達は語っていたらしいのだが。

 

 

「ああ、それは部隊を動かす為の嘘。僕の一身上の都合だけじゃあ簡単に動かせないからねー。

 レイモンド…じゃなくて、今来てる部隊の皆は紅蛇がシュバルツを捕まえてこいって言ったって思い込んでるだけー」

 

「そうかよww」

 

 

なんだか向こうも苦労しているようだ。

とはいえ同情の余地は無い。

コチラをどうする気なのかは、明白だからだ。

 

 

「しかし悪魔の申し子ニブルヘイム、君まで居るというのは想定外だったよー。

 やあー、ラッキーだなあ。

 僕、君たちと戦いたかったんだ。

 別に君たちじゃなくてもいいんだけどね。

 強ければ誰でもいいよ」

 

「ならストリートでファイトしてこいよwwwww」

 

「雑魚に用は無いよ。

 やっぱ戦うなら強い奴じゃないとねー。

 そうじゃないと楽しめないでしょ?」

 

「こんの…戦闘狂めがww」

 

 

強がりを言って見せても、どうしようもない。

正直言って震えが止まらなかった。

まるで規模が違う何かがそこに居る。

そう身体が理解し、知性を置き去りにして恐れをなしている。

 

不味すぎる。このままでは。

 

 

「オイヨ…イヨ…」

 

「…ああ、安心しやがれ。

 俺がどうにか撒いてやるっての。

 マシュマロよぉwwww

 紅蛇の大将は来てないんだな?wwwwww」

 

「来てないよー。

 来てたらきっと、僕を邪魔してるさ。

 大将はニブルヘイムをお気に入りだからね。

 

 僕が手を出したら君は死ぬ。

 それは絶対だ。

 今頃見てるなら既に出てきてるよ。

 いいや、殺すとはまだ言ってないけどね」

 

「そうかよw

 それ聞いて安心したわwwww

 

 シュバルツ、お前だけでも逃げとけ。

 記憶失ってるって知ったら、アイツも興味なくなるだろ」

 

 

あえて声を大きくして言う。

目先の存在が、噂通りの存在である事を切に願って。

 

しかし効果はあった。

目に見えて態度が変わった、なんてことは無かったが、しかし返ってきた言葉はこれだ。

 

 

「あれー?記憶無いの?

 んー、じゃあいいや。確かに僕の関心の範疇外だよ。

 僕は無駄になるような殺生はしないんだ。

 僕は強いヤツと戦いたいだけだからね。

 

 飛び方を忘れた鷹は、狩人じゃあないさ」

 

 

オイヨイヨもまさかここまであっさり信じてもらえるとは思っていなかった。

だが短時間で事は成った。あろうことか成ってしまった。

時間稼ぎ、やはり不可能。

もうやりあうしかない。

 

 

「行け!!シュバルツ!!

 マシュマロ!!絶対に手ぇ出すんじゃねえぞwwwwwwwwwwwwwww」

 

「出さない出さない。

 僕は女の子には優しいから」

 

「ヤローにも優しかったら気持ち悪いけどなwwwwwwwwww」

 

 

シュバルツはものすごい勢いでオイヨイヨに押されて逃げることを催促されるが、あまりに突然だったがためか転んでしまっていた。

しかもその場に座ったまま、動けず居る。逃げる気が無いのかも知れない。

 

だがオイヨイヨはもう、かまってやれない。

目の前の敵は予想をはるかに上回る強敵だったから。

 

シュバルツを勢いよく押しのけたのは、逃げる事を催促する為だけではなかった。

真朱麻呂がとんでもない速度で突進してきたからだ。

間一髪の所でオイヨイヨもそれを避け、事なきを得ていた。

 

余裕などある筈もなく。

 

と、言えない所。

なんと真朱麻呂、追撃をしてこなかったのだ。

どうやら攻撃を交わしてくれて、相当に嬉しかったらしい。

とても満足げな柔らかい笑みを浮かべ、木の側面にへばりついてそこに居た。

左手の指が、木に思い切り食い込んでいる。

 

尋常ではない。

 

戦闘狂。化け物。怪物。

真っ向から相手にしていられない。

仮に不意打ちでも勝てる気がしない。

力量差はそれほどまでに歴然と転がっている。

 

 

「っぶねーな!!ww

 シュバルツ巻き込みそうになってんじゃねーかよwww」

 

「そりゃ、車の進行方向にいる彼女が悪い。不慮の事故さ」

 

「屁理屈言いやがってwww」

 

 

オイヨイヨはポケットをまさぐり、小さな木箱を取り出してはそれを割る。

もうただの苦肉の策。思考が可怪しくなっていた。

 

 

「ほれよww」

 

「およ?」

 

 

中に入っていたのは撒菱(まきびし)。オイヨイヨはそれを容赦無く地面へと投げまくる。

真朱麻呂の高速移動は、跳躍とは違っている。

確かにほぼ飛んでいるみたいな具合だが、相当飛距離のあるジャンプをしながら走ってきている。先程からそんな具合。あえて堂々挑んできている風。

 

自由落下速度は、物体の速度に関係しない。すべてに等しく存在している。

ただしそれに抗う手段が無いわけでもない。

例えば野球のボールのように、回転が加われば変化球となる。

例えば鳥が羽ばたいてしまえば、それだけで自由落下を抑制する。

それに、空気抵抗なども抑制力となりうる。紙飛行機が空を舞い、竹とんぼが宙を回り、正月の凧が空を謳歌するように。

しかし真朱麻呂はそういった事をあえて避けている。

ならば、この撒菱作戦は意外に効果的やもしれなかった。

 

 

「作者、分かってないよ。

 僕が撒菱に怯むと思ってる?

 工夫なんて不必要だ。

 そうじゃあないかい?」

 

 

こんな風に作者を何故か愚弄しつつ、真朱麻呂は高速移動を開始した。

しかしオイヨイヨに向かってではなく、微妙に逸れた位置へ。

当然撒菱が大量にある場所を、だ。

 

実演のつもりだろうか。

 

オイヨイヨは目を見開いて、それを目撃していた。。

真朱麻呂が自慢気な顔で移動、オイヨイヨの隣まで走りぬけ、しかもまた元の位置まで戻るまでの経過を。

 

 

何故戻ったし。

 

 

「ほら、工夫なんて必要ない」

 

「思い切り工夫してたじゃねーかwwwww

 撒菱の間を器用につま先立ちしながら走ってたじゃねーかwwwwwwww

 お前若干ジョンとキャラが被ってんじゃねえのか!?wwwwwwwwwwwww」

 

 

この小説の9割はボケでできています。

いや、キャラの9割がボケボケしています。

 

正直さっきからさ、真朱麻呂が変な事してたり、発言が妙に軽々しかったり、口調が子どもっぽかったりしてる所為で、全然大物っぽく感じない不具合。

いやね?本気でやばい奴なんだよ?真朱麻呂、マジでやばい奴なんだよ?

この世界じゃぶっちぎり最強で、いやこれマジ話。

12話くらいで嫌ほどその事実を知れる事になると思うけれど、もう絶対的な存在なんだよ?信じて?

 

 

「さて、仕切り直しにしよっか…おろ?」

 

「バーカwww」

 

 

元の場所へ律儀に戻った真朱麻呂の足は、氷漬けとなっていた。

これではオイヨイヨが絶大なまでに卑怯者にしか見えないが、そんなことを言っている場合でこそないのが実情。

何度でも言うが、真朱麻呂は世界最強の存在。そんな桁違いの化け物を前にして、出し惜しみなど愚の骨頂。

命あっての物種。シュバルツの過去が記憶が言ってる場合ではない。

 

全身全霊で生き残らねば、記憶がどうなろうがこうなろうがああなろうが、未来など無い。

こんな化け物に殺されるくらいならば、シュバルツに息の根を止められたほうが遥かにマシ。

決着くらい、きっちり付けさせてやりたかった。

ここで死ぬくらいなら、それくらいの事をさせてやった方が、全然いい。

 

だが、無駄。

 

 

「ねえねえ、ニブルヘイム」

 

「あ?www」

 

「こんな事で僕が止まるくらいなら、僕はとっくに死んでるんだよ。

 心臓の鼓動も、呼吸も、思考も、ほぼ同時刻に止まっている筈だ。

 しかしそうではなかった。そうならなかった。

 だからこそ、僕はここに居る。

 お前等の目の前に、立って居る。

 

 目先の僕は、まぎれもなく現実なんだ」

 

 

真朱麻呂は、胸元の札を1枚剥がした。

意味があるのか無いのか、いまいちパッとしない動作だった。

とても簡単にはがされて、とても簡単に宙を舞うも、すぐに地面に落下。

何というか、どうしようもないくらいに簡単だった。

 

にも関わらず、一瞬で氷が溶けたのだ。

瞬間、オイヨイヨのみならずシュバルツまでもが明確に感じた。

 

魔力の放出量が、異常であることを。

 

途端に膨れあがった魔力。

魔法をメインにして戦うオイヨイヨですら戦慄を覚える膨大な量。

のっぺりとした空気が、辺り一面を万遍無く覆い尽くす。

暴れ狂うように蠢くそれは、何故か異様な静けさをもってそこに在る。

空気が重い。息苦しい。逃げ出したい。死にたい。

陰鬱な気持ちが、急に湧き上がってくる。

まるで、絶望を人の姿にしたような、そんな存在にしか思えなかった。

 

って語って見せても、真朱麻呂の底の知れ無さは、文章では表現し難い。

その場に実際に居合わせて貰わない事には、上の文章の心境を理解出来はしないだろう。

 

したいのならば、12話を覗き見てもらう他に無い。

それはそれでどうなんだという話になるが、しかし、他に手段を提示出来ない。

作者、筆舌に尽くしがたい思いで一杯一杯。

魔力の方もあちらでは一杯一杯に膨れ上がっている様子だが。

 

 

「知ってるとは思うけど、僕、人間じゃあないんだよ?」

 

「…へいへい、そりゃあそりゃあ。

 じゃあ何だってんだ?化け物か?」

 

「そうだね。化け物のジャンルだよ。

 でも、低俗なモンスターとは違う。

 それに化け物ってジャンルもだけど、それは人間の価値観だろう?

 僕は僕だよ。僕が基準だ。脆い人間」

 

「参ったなwwww」

 

 

その姿にほとんど変化などないのだが、かなりの威圧を湛えながら、真朱麻呂はゆっくりと歩み寄ってくる。

オイヨイヨも理解していた。

今の簡素な装備では間違いなく、殺される。

それも、有無も言わさず、うめき声一つ上げる事無く。

 

 

「あ、痛!撒菱痛い!!」

 

「お前馬鹿だろwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

 

格好をつけることに精一杯だったのか、真朱麻呂は撒菱を思いっきり踏んづけたらしい。

馬鹿ここに極まれり。悠長に何歩いて接近しようとしてるんだこの馬鹿は。

 

そしてオイヨイヨにとってすればチャンス以外の何でもなかった。

逃げる…ではなく、殺すチャンス。

ここで最悪の芽を摘むチャンス。

千載一遇。時宜を得た。

 

そう思えるくらいに、目先の化け物ならぬ馬鹿者は、滑稽だった。

 

 

「俺の氷の技に、凍結の技に、名前はねえ。

 あるにはあるが、それとは若干違う代物だ。

 有象無象すべてが凍結する。

 それが魔法であろうが何であろうが。

 概念も時も、例外なく凍りつく。

 これが効かなかったヤツは殆ど居ないぜ?」

 

 

それを放つ為に腕を掲げるオイヨイヨ。

その間に真朱麻呂も、撒菱を抜き捨てて笑顔。

 

 

「馬鹿だな、馬鹿だよ君。

 すべてが凍りつく世界?冷たさが正義の世界?

 僕の前ではそれこそ無力だ。

 知っているかな?

 絶対零度以下の温度は、この世に存在しないという事実を」

 

 

そして、真朱麻呂が突っ込んでくる。

 

 

「痛っ!!足!!撒菱がまた!!!」

 

「一生そうやって馬鹿やってろ馬鹿wwwwwwwwwwwwwww」

 

 

いや本当に馬鹿だよ。

 

オイヨイヨは躊躇わずに腕を大きく振るった。

その結果、真朱麻呂は真っ白に変化。一瞬の出来事。

しかし真っ白になったのは真朱麻呂に限った話ではない。

その真朱麻呂が居た一帯全てが凍った。空気すらも。

 

極限の絶対零度によって。

 

その一帯もまた、生命が寄り付かぬような場所へと変わるのだろう。

実際、とんでもない量の冷気が、ドライアイスなんて比でもないくらいに拡散する。

 

……だが。

 

 

「…効いちゃいるが、何だよテメェw

 化け物どころの騒ぎじゃあ、やっぱねーなww

 ああwww効くとは思っちゃいなかったぜ?wwwwwwwwww」

 

 

真朱麻呂はその白い肌を破るように、メキメキという音を立てながら動いていた。

そのうちすぐに、元の状態へと早変わりである。

確かに効いていた。しかし無意味に終わった。そういう状態。

 

絶対零度に耐えうるなど、もはや生命体ではない。

化け物という言葉すら生ぬるい。

 

これは、神様に近い。

不死身であって、不変であって、不可解。

神様以外にどう形容すればいいだろうか。

 

 

「思ってるなら無駄なことはやめて、早く僕にかられt痛い!!痛!!まだ刺さったまんまだったの忘れてたよ!!!」

 

「チャンスだww一生やってろwwww」

 

 

千載一遇のチャンス、発生し放題。

なんだかなあ。

 

オイヨイヨは座り込んだままのシュバルツの腕を無理につかみ、無理に走り出す。

一応、真朱麻呂が行く手を遮っていた形だったので、撒菱を避けて、真朱麻呂すら避けての移動であった。

 

 

「あ、待ってよ。

 この撒菱痛いんだってば。優しく抜いてよ。これ、滅茶苦茶奥まで刺さってるんだってば」

 

「知るかwwwwwwww」

 

 

どうにか真朱麻呂から逃げ出すことに成功したが、しかしながらそうそう距離も離せないだろう。

ハッキリ言って、あの化け物を撒くなど不可能。

あと何度撒菱に引っかかり続けるかも怪しい。

そのうち超特急で追いかけてくるだろう。

何度でも何度でも。めげずに楽しそうに笑いながら、さも当然のように追いかけてくる事だろう。

呆れ果てるくらいの距離を稼ぐか、追尾不能と思わせる工作でもしない限り、追いかけっこは終わらない。

 

 

「オイヨイヨ…」

 

「んだよw

 今は会話してる場合じゃあねーぞww」

 

 

腕を引いている感覚は、すでに無い。

確かにオイヨイヨはシュバルツの腕を掴んでいる。

しかし、引っ張っているという感覚が無い。

 

それはシュバルツが、オイヨイヨの走力に完全について行けているから。

また夜目も利くのだろう。これっぽっちも(つまず)きそうになったりしていなかった。

当然それをオイヨイヨは変だと思っていた。

一方で、変な事は一つもないのだと分かっていた。

 

 

「拙…、師匠が居たんだ…」

 

「……おい、やめとけ。

 このタイミングだと、死亡フラグだぞそれ」

 

「師匠は、「そりゃそーだな!」が口癖。

 小さな頃の拙は、その「な!」って言葉がなんだか好きで…、よく、返事がわりに真似してた」

 

「…」

 

 

おそらくは、オイヨイヨが真朱麻呂に攻撃を放った瞬間、完璧に決定されたのだろう。

そうでなくとも薄々思い出している節はあった。

これは最悪の事態、だろうか。

 

否。

 

最悪なのは、オイヨイヨの方だ。

 

 

「そんなある時の話。

 今から数えて多分、3年くらい前。

 師匠は、殺された」

 

「…今、関係あるのかそれ」

 

「関係あるよ…。

 師匠を殺したヤツはこう呼ばれてたから」

 

「……悪魔の申し子、ニブルヘイム…か」

 

 

どんな気持ちだっただろう。

 

 

「………オイヨイヨは、知ってて拙の傍に居たんだよね…」

 

 

師匠の仇が目の前に居たという事実は。

そしてそれを忘れていたという事実は。

 

久しく出会った来訪者。

それだけでも嬉しかったのに、自分を知っているらしい人物というだけで、妙な居心地になっていた。

だから家に簡単に招いたし、ウマバエ対策の薬を躊躇わず与えたし、触れ合って、見つめ合って、それで。

 

そこに恋愛感情があったのかと言われたら、皆無だ。

シュバルツには少なくともそれは無かった。

純粋で、純真で、無垢で、無知だったから。

 

では現在は?

 

師匠の仇。それだけで十二分。

殺意を向けるに足り得た。

憎悪と嫌悪と憤慨と、……。

 

だが、困惑、しているだろう。

わけが分からなくなっているだろう。

意味が分からない。

なんで、どうして傍にずっと居たのか。

 

怒りがこみ上げてきて、でも、すっと引いて。

 

シュバルツは、頭がクラクラしていた。

 

 

「…言っただろw

 俺は突発性の記憶喪失になるってよwww」

 

「師匠の名前は、タウゼント」

 

※ドイツ語で1000を意味する。

 

「…」

 

「……血の繋がりのない、拙の兄のような存在であって、好きで堪らない人だった……」

 

 

好きな人、だった。

これがもしも薄情な意味での過去形だったならば、その方が実は良かったのやもしれない。

だが、過去に縛られ未練を思い、そうして復讐者となったシュバルツがそう薄情だったワケもなく。

 

死んだ人は過去の人。

そういう意味での、過去形なのだろう。

 

 

「車奪って逃げるぞ」

 

「……」

 

 

無粋で偉そうなオイヨイヨの声に、賛同の返事こそは無かった。

だが今はオイヨイヨに従い、行動してくれていた。

 

流石のシュバルツも、あの化け物を相手にはしたくなかったのだろう。

記憶を取り戻したシュバルツはそれでも嘘を並べ立てる事で言い逃れ出来るやもしれないが、絶対に襲われないという保証があるワケではない。

ここは不服あれど、強力し合う事が最善で間違いなかった。

 

かなり急いで2名は移動する。

というのも、今まではただただ真朱麻呂から逃げるために突っ走っていただけだったが、今は車が目的。

そうとなれば、真朱麻呂より後方の奴らから奪う他になく。

ともなるなら、真朱麻呂を再び通り過ぎる必要性があった。

必ずしも真朱麻呂の横を素通りする事もなく、少々遠回りすればいいだけなのだが、夜遅くの暗闇の中でそれを行うのは恐ろしく怖い。また最短距離ではない。

どうしても真朱麻呂をすぐにでも素通りしなくてはならなかった。

 

少しすれば、未だに撒菱と必死に格闘しているらしい姿が見えてくる。

世界最強が何をやっているのやら。

 

 

「いた、いたたた………、おろ?帰ってきたんだ?

 でも僕もそろそろこの罠を突破できs(ry」

 

 

無視してシュバルツとオイヨイヨは滅茶苦茶に跳躍、軽々と10mを跳ぶとかいう超人的な真似をやってのけ、撒菱の罠を突破する。

真朱麻呂は、

「ああ!その手があったか!いや、その足があったか、が正しいのかな?」

とか言いながらまた撒菱を踏みつけ痛みで悶えていた。

ある意味運が良かった。とんでもない馬鹿で良かった。本当に良かった。

 

そのままオイヨイヨとシュバルツは、かなり近くまでやって来ていた車を襲撃開始。

相手は訓練されている兵士達。更には結構な銃を装備中。車両数5台。兵数10名以上。

しかしこれまた運が良かった。

その車両目掛けてモンスターが執拗な攻撃を開始していたらしく、出払っていた。

当然、これだけ派手に暴れて派手なエンジン音打ち鳴らして、モンスター達がよってこないワケもなく。

そのままキーも挿しっぱなしの車に、呆気無く乗り込むことに成功した。

運転席は何故かシュバルツ。大丈夫だろうか。

 

 

「お前運転出来るのか?ww」

 

「…、拙、馬には乗れる」

 

「車に乗れるのか聞いてんだよwwwwwwwwww」

 

「無理。ニブルヘイム、早くしろ、運転かわれ」

 

「ったくよwwww地味なタイムロスだぜwwwww」

 

「あ!!この!!」

 

「いてぇよ!!何だよwwwwwww」

 

「今、その、お、おおお…、触っ…、触られ…」

 

「記憶喪失中無防備だったテメェがそれを言い出してんじゃねーよwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

 

どうにか交替(こうたい)し、一気に3ギア発進である。

微妙な速度で走りだす車だったが、その内すごい勢いになる。

当然急に動き出した車に動揺の声をあげる兵士達。すぐさま発砲される。

しかし防弾仕様なのか、窓ガラスにヒビが入ったりと最悪な状態になりつつも、弾丸を素通りはさせなかった。視界もどうにかこうにか、確保されている。

あとあの、モンスターを大量に跳ね飛ばし回っている為、非常に見せられない地獄絵図が視界に広がっているが、オイヨイヨもシュバルツも一切無視である。

四の五の言っている場合ではない、と言うと語弊か。だがもう全てがどうでも良かった。

 

 

「ありゃ、おろ?

 ベフッ!!!!!!!」

 

 

随分道を反れての移動経路を選んだ筈だったのに、唐突に車の前に出てきた真朱麻呂。意味不明な方向へ向かう車両を変だと思い、様子見にでも来たのだろう。

可哀そうなくらいすごい勢いで車に跳ね飛ばされてしまったけども。

 

 

「こりゃアレだよなww

 車の進行方向にいるアイツが悪いよなwwww

 不慮の事故だwwwwwwwww」

 

「…真朱麻呂の理論で語るなら、だけどな」

 

 

豪華客船の旅の予定が、滅茶苦茶な高度から突き落とされ、最悪の存在から命すら狙われるという運の無いイベントを数々突破したおかげなのか、今の運気は最高潮らしい。

 

どうにかこの場を切り抜ける事が出来たオイヨイヨ達だった。

 

一方の真朱麻呂だが、木に引っかかっていた。ひっくり返って宙ぶらりん。なんだか見事だった。

もちろん普通に血まみれであり、その木の下でモンスターが暴れまわっている。

襲われる寸前らしい。

そんな状態でも笑顔を崩さない真朱麻呂。

 

 

「全く、酷い人達だ。

 人情とかそういうの欠けてるよね絶対。

 いや車ではね飛ばしておいて、スルーするかなあ普通。

 

 でもまあ面白い人達だね。一筋縄ではいかない。

 加減していたとは言えまんまと僕から逃げおおせるくらいだし。

 

 狩るその時が楽しみだよ」

 

 

そう言って真朱麻呂は、残る2枚の札すら剥がす。

そして、変化もない笑顔のまま、木から飛び降りるのだった。

 

これから何が行われるのかは、言うまでもないか。

 

 

 

***

 

 

 

「…ね、ニブルヘイム」

 

「…ん?」

 

 

朝日が立ち上る少し前。

随分ご立派だったであろう赤暗い色の軽装甲車は、もはや見る影もないくらいにボロボロだった。

そもそも最初にモンスターをはね過ぎていた。お陰でフロントライト、呆気無く破損。

薄暗闇どころか真っ暗闇を突き進む羽目に合い、木々にぶつかっては右往左往。

ある意味ではそれが追尾を困難にした要因でもあったが、森を抜けられぬならば本末転倒。

というより、こうして森を抜け出す事に成功したのは奇跡に等しかった。偶然が彼らを救ったような物だった。

 

もちろん、途中でこの車が駄目になった所で、二人ならば徒歩で移動を開始しただろう。

何なら何処かに仮の拠点を設け、朝日が登るのを待っていただろう。

何にせよ真朱麻呂やら紅蛇の部下やらを完全に撒いた段階。特に二人は考えもなしに、車に乗ることを選んだのだった。

 

そうして森を抜け出し、広がる草原を目の当たりにして、シュバルツが突然喋り始めたのだ。

揺れに揺れる車内では二人共ぐったりせざるを得なかっただけに、あまり元気な声ではなかったが。

何よりもう殆ど徹夜だった。劇的な逃走劇だった。

二人に蓄積した疲れの度合いは、計り知れない。

 

 

「ニブルヘイムは何故、師匠を殺したの?」

 

 

先程から妙な音を立てているエンジン。

勢いもかなり悪い。速度など、人間が多少早めに走っている程度。

アクセルをずっと深く踏みっぱなしのオイヨイヨは、ハンドルを力無く握ったまま、シュバルツのそんな問いかけを聞いた。

思考能力はびっくりするほど低下していた。

だがそんな状態であってすら、やはりプロなのだろう。

 

彼には色々と、分かっていた。

 

 

「……さあな。忘れちまったよ。

 前の俺の仕事は、人殺し専門っつーか、荒事専門だったからな。

 無印猟団の中でも、スマートじゃない仕事ばっかり選んでた」

 

「今は、辞めたんだ?」

 

「ああ。どの面下げてって感じるかもしれねーが、()()うと生きてる。

 正義のなんでも屋ってのに転職した。

 ふざけてるだろ?」

 

「……」

 

「……」

 

 

オイヨイヨもシュバルツも、疲れきっていた。

その筈なのに、お互いがどうして眠らないのか。

当然、運転手のオイヨイヨが寝落ちなんてしたら問題だし、ここでシュバルツがスヤスヤ眠っていたとしても、物語は綺麗に終わったりしなかっただろう。

 

そのうちに車はガス欠で、緩やかに停止。爆発すらしそうにないくらいに緩やかな停車だった。

もはやメーター関係もボロボロの状態。ガス欠なのかさえ確認できない状態。

だが、止まってしまったからもうガス欠ということにしておくオイヨイヨ。真実の確認さえ面倒だった。

 

オイヨイヨは、立て付けの悪くなったドアを何度も何度も蹴り、破壊。そのままシートベルトも着用していなかった為に、しかしのっそりとした動きで、下車した。

その時もシュバルツは、何故かオイヨイヨに引き連れられていた。シュバルツの側も開けられないような状態にあったのだろう。

 

しかし、シュバルツの左手、背中に回された左手には、

 

 

暗殺者と生きていた頃に愛用していた、大きな大きなナイフ、グルカナイフが、力強く握られて隠されていた。その細い体によって。

 

 

「……腹、減ったな」

 

「…うん」

 

 

オイヨイヨはダラダラと少し歩いてから、その場に寝転がった。

シュバルツがグルカナイフをスルリと構えた、このタイミングで。

 

眠らないワケだった。

眠ったらその瞬間死ぬのだから。

眠ったらその瞬間逃げられるのだから。

 

お互いに分かっていた。

分かっていて、この時まで、最悪のドライブを満喫していたのだ。

史上最悪級のデートだ、と皮肉を言ってもいいくらいに。

何にせよ、後ろからナイフで刺されても仕方がない立場なのがオイヨイヨ、ではあるか。

 

 

「俺は別に、後悔せず生きてきたぜ。

 汚れるだけ汚れてきた。

 肥溜めだろうがぬるま湯だろうが冷水だろうが五右衛門風呂だろうが、何にでも浸かってきた。

 その上でプカプカ浮かんでヘラヘラしてたのが、俺だ。

 流されるようにしながら、適当に生きて来たのさ。

 楽しい人生だったよ。ああ。結構楽しかったな。

 

 ……覚えてるぜ、タンシングってヤツのこと」

 

「タウゼントだ」

 

 

そんなに刺されたいのかオイヨイヨ。

 

 

「強かったな、アイツ。

 猟団はなんであんな有能な男を殺す必要があったんだろうな。

 その内俺も殺される予定でもあったのかもな。

 俺は幹部であっても、情報も何も知らされちゃいなかった。

 ま、どうせ俺は、やるだけだ。その方が楽だったからよ。

 

 考えを放棄してた。

 でも考えるには考えてた。

 だが、抗う意思はなかった。

 全てに対してどうでもよかった。

 人生なんてもんがどうでもよくなってた」

 

「…」

 

「恨みってのは、便利だよな。

 それ一つで俺は、お前は、生きるとか死ぬとか、そんな難しい話から逃げ続ける事が出来たんだ」

 

「…」

 

「生きろ、って、何なんだよって思ったんだよ。

 一緒じゃなきゃ生きられないって思ってたんだよ。

 なのに恨み辛みの前じゃあ、そんな気持ちもスッキリ無視出来ちまってよ。

 

 卑怯なんだって事は理解してる。

 だけど、仕方がないんだよな。

 没頭出来ちまうんだから仕方ない。

 全て忘れて生きていられるんだから仕方ない。

 虚しい事だって分かってても、命を賭けるに値するんだよな…」

 

「……」

 

「なあシュバルツよぉ。

 俺をここで殺すか?

 ここで終わりにするか?」

 

「……」

 

「正直言ってお前クソ強いからな。

 俺じゃ勝てないだろーぜ。

 そうそう。こうやって抗わない生き方してきたんだ。俺はずっとよ。

 

 それでいいんだよ、俺は。

 こうして終わる方がきっと、世界にとって有益な話だと、思う」

 

 

シュバルツはグルカナイフを両手で持った。

直ぐ様無抵抗に寝転がっているオイヨイヨの上にまたがり、無表情のままに、大きくナイフを上に掲げる。

何時でも振り下ろせるような体勢で、力を溜めていた。

 

迷いは感じない。

細い体を目一杯上に釣り上げたかのような、綺麗な体勢。

その綺麗な琥珀色の双眸も、濁り一つ無い。光すらも。

 

対するオイヨイヨはいつも通り、笑っていた。

腹の立つ限りの、余裕の笑顔で。

 

だが何時にもなく力がない。

まるで微笑んでるだけだった。

諦めにも似た感情がそこにはあった。

 

 

「…あ、シュバルツよ。一つ聞きたい。

 お前なんで記憶喪失になっちまったんだ?」

 

「……話す義理なんて、ない」

 

「…ははwそうかいw」

 

 

数秒の後、シュバルツはグルカナイフを思い切り振り下ろす。

そして、何度も何度も、振り上げては振り下ろす。

何度も何度も何度も。

細い体が軋みそうで、細い腕が悲鳴を上げそうで、小さな両手が血まみれになりそうな、

それくらい全力で。それくらい遠慮なく。

 

何度も何度も、何度も何度も。

 

 

何度も、オイヨイヨを外した。

 

 

何度やっても顔の横。

何度やっても頭の上。

何度やっても肩の上。

耳の近く。

首のすぐ横。

 

 

何度やっても何度やっても。

 

 

「…腕、(なま)ったのか?」

 

 

オイヨイヨが声を掛ける。

しかし彼女は止まらない。

何度も何度もナイフを外し続けた。

 

何度も声を漏らした。

何度も何度も。

何度も、オイヨイヨに、

 

涙を落とした。

 

 

「拙は…お前が憎い…」

 

「…おう」

 

 

ナイフは当たらない。

 

 

「師匠を殺したお前が世界で一番憎い…」

 

「…おう」

 

 

どれだけ全力で振り上げて見せても。

 

 

「でもあの時も見た…!」

 

「…おう」

 

 

どれだけ全力で振り下ろして見せても。

 

 

「世界で一番憎いお前は、」

 

「…おう」

 

「世界一大好きな師匠と、」

 

「……おう」

 

「そっくりな笑い方…して……」

 

 

彼女はナイフを、思い切り突き立てた。

オイヨイヨの頭の上、それも今までで一番の大外れである。

シュバルツの泣き顔は、オイヨイヨの真ん前だった。

殆ど身体を密着寸前まで寄せての、まるで恋人の距離であった。

だがそこに恋愛感情は一片も無く、あるのは、名称のない感情の渦。

グルカナイフを主軸に、その細くて小さな身体を支え、これほどまで接近して。

シュバルツにはもう、何も分からなかった。

 

 

「……誰かを追いかけていて、…頭を強く打ったのは覚えてる……。

 そっからは記憶が曖昧で……。

 

 よく、覚えてない……」

 

「…そっか」

 

 

いきなりの暴露。嘘偽り無きディスクロージャー。

どうすれば良いのかよく分からなくなった彼女は、本当のことを喋り始めた。

決してオイヨイヨを許したワケではないだろう。信頼に値すると思ったワケではないだろう。

だが一歩だけ、ほんのすこしだけ、彼と彼女とが近づいたのは間違いない。

 

出来なかった。殺せなかった。

師匠と似ていたから。

優しくしてくれたから。

心配してくれたから。

精一杯考えてくれていたから。

助けようとしてくれたから。

護ろうとしてくれたから。

気を遣ってくれたから。

逃げ出したりしなかったから。

 

ここに来て殺されようとすらしてくれたから。

 

決着を付けさせようとしてくれたのだから。

 

記憶喪失中に出会ってしまった師匠の仇は、そういう奴なのだと知ってしまったから。

 

知らないままだったら良かったのに。

そう思うには充分過ぎる程、残酷な現実だった。

少なくとも今の彼女には、殺せなかった。殺すことはできなかった。

憎い筈なのに。殺したくて堪らなかった筈なのに。

絶対に許せない筈なのに。

 

 

「ニブルヘイム……」

 

「ん?」

 

「拙を、連れていって欲しい……」

 

「……それ死亡フラグっつってんだろw」

 

 

シュバルツは静かに横に転がりながら、しかし起き上がらずに空を眺める。

まだまだ薄暗い空。太陽が目を焦がすまで、あとどれくらい待てばいいだろうか。

 

きっと、もうすぐだろう。

 

 

「大丈夫。拙は強い子」

 

「かもなww

 流石にジョンの二の舞は勘弁だからなww

 滅茶苦茶慎重に、現在進行形で帰るぞww

 話はその後だwwwwwww

 寝るのもその後だからなwwwwwwwwwww」

 

 

そう言ってオイヨイヨは立ち上がる。

ジョンという名前に心当たりがあるのかそうでないのか、神妙な顔のシュバルツ。

だがどうであれ、死亡フラグは御免被りたいだろう。

 

竜舌蘭を救えなかったジョンの二の舞いは御免だろう。

 

オイヨイヨはシュバルツに手を差し伸べる。

それを受け取り立ち上がるシュバルツ。

 

さて、近くに町でも村でもあればいいのだが。

ここからの移動もまた、微妙に長引きそうである。

さっさと宿でも何でもいいから、落ち着ける場所でぐっすり眠りたい物である。

一方、後ろで煙を上げていた筈の装甲車は、永眠した様子だった。

 

 

 

***

 

 

 

「…なにその子」

 

 

ブルーベアがオイヨイヨに向けて、問い(ただ)した。

 

ジョンとミアだけでホワイン島2泊3日を満喫出来るように手筈を整え、武装したり道具を揃え終え、情報収集を開始する所だったブルーベアは、オイヨイヨとシュバルツが歩いているのを発見したのだった。

これまた超奇遇で、オイヨイヨ達もようやく帰ってきたばっかり。

宿を探す前に服をどうにかしたいと考えた2名は、比較的小さなこの町をウロウロと徘徊していたのだ。

あと超怪我まみれである。まず病院に行け。

というかその怪我、どうせ車を運転してる時に出来た怪我だろ。シートベルトしっかり着用しないからそうなるんだぞ。

 

 

「あー…、んと…wwwww

 養子に招き入れる感じでwwwwww」

 

「その下らないオママゴトはとっくに終わってるんだけど。

 ジョンとミアは訳あり姉弟として送り出したんだけど。

 で、何?養子養女が何?」

 

「待てってwww

 コイツww俺の知り合いなんだよwwwww

 普通の知り合いってワケでもないんだがよwwwww

 ああ待てwww違うwwwww

 知り合いっていうかあのだなwwwwwww」

 

 

流石嘘を吐くのが下手くそ野郎。

自ら窮地に陥るとか、狙って出来るもんじゃないぞ。

 

 

「…知り合い?

 ふーん。

 中々、よろしくやってるみたいじゃない?」

 

 

シュバルツは凄い勢いでオイヨイヨにべったりである。

オイヨイヨの腕に抱きつくように、歩いていたのだ。

現在進行形である。

多分、ワザとやってる。

困らせる方向性にするためだけに密着してる。

肘でちょこっと触られたくらいで大騒ぎしてた癖に。

 

 

「待てよwww

 なんでお前そんな怒ってるんだよwwww

 つーかシュバルツいい加減離れろやwwwww

 暑苦しいんだよwwww」

 

「私がなんで怒っているかって?

 それはね、不純異性行為を許容する気がないからよ」

 

「そういう事実は一切ねえよwwwwwwwwwww」

 

 

無かったけど、シュバルツの策略の前ではどんな言い訳も無力だ。

 

 

「じゃあ何よその子の服。

 どんなプレイよ。

 服の一部破るプレイがあんたの趣味?

 

 貴方最低の屑だわ」

 

「酷い勘違いしてんじゃあねえよwwwwwwwwwwwwwwwwww

 俺もコイツも怪我してんのが見えてねーのかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

「じゃあ理由を聞かせなさいよ馬鹿。

 一体どうしてその子の服がビリビリで、一体どうしてその子はあなたの腕に引っ付いているの?」

 

 

やけにそこに噛み付いてるけど、どうした?

もしかしてブルーベアって、オイヨイヨの事好きなの?

あえて370mLもここでは肯定も否定もしないでおこうか。その方がなんか面白いし。

 

 

「そうだなww

 紅蛇絡みでな」

 

「何それ。貴方のお粗末な物のこと?

 その小指のような紅蛇の首、この太刀でチョンパして使い物にならなくしてあげましょうか?」

 

「お前はどうしてそっち方面に無理にでも話つなげようとしてやがんだよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

 

その後、途方もない努力の末にどうにかブルーベアへと語弊無く説明を終えるのだが、すぐさまこの3名はホワイン島へ向かう旅を始める羽目に。

しかもどう足掻いても、ジョン達と合流するのは帰る直前頃になる予定。

バカンス期間の2泊3日を満喫するジョンとミア。

バカンス直後に帰還を余儀なくされるオイヨイヨとブルーベア。オマケにシュバルツ。

 

喫茶店ブルーベアまでの道のりは途方もなく厳しい。

 

そしてそのお見せの営業時間中は必ずといって良いほど、ピアノの音と騒がしい人たちの声が絶えない予定。

 

1週間後くらい後も多分快晴であり、多分平和だろう。

 

 

 

 

 

***

 

 

【あとがき】

 

どうも、370mLです(´・ω・`)

 

意外に短くまとまってくれた5話、如何だったでしょうか。

本編だいたい5万文字。

いや5万文字が少ないみたいに言ってしまうのは、もうそれだけで随分変なんだけども。

 

この5話は、元々かなり安定している話でもありました。

主人公がオイヨイヨだからなのか、文章も程よく構築しやすく、色々やりやすかったです。

作者が何も言わなくてもツッコミ入れてくれるし、分かりやすく語ってくれるし。

 

 

さて、シュバルツ=アハトの初登場回でしたね。

基本的にはシュバルツと呼ばれる事になる彼女の名前の由来は、「黒」のドイツ語と、「8」のドイツ語。合わせてシュバルツ・アハト。

実際深い意味は無く、何となく語感がよろしい的な意味で名付けた記憶があります。

黒ビールのことをシュバルツビールと言ったりしますがほぼ無関係であり、機動武闘伝Gガンダムに登場するシュバルツ・ブルーダーは一切無関係です。

 

竜舌蘭というキャラクターを創作した影響、こうしたぶっ飛んだキャラが後々も沢山出て来るようになります。というかこれ以上にぶっ飛んでいきます。

シュバルツにしても、語尾が「ナ」であり、15歳でありながら12歳みたいな外見であったり、褐色肌であったり、瞳の色が琥珀色とかいうかっこいい表現であったり、妙に積極的だったり、野生児だったりと、凄いキャラではあります。

そんなシュバルツは今後メインキャラとして活躍するようになるので、オレンジファンタジーにおいては切っても切れない重要な登場人物。

また過去設定もかなりぶっ飛んでおり、強さも割りと飛び抜けています。ひょっとしなくてもジョンすら勝てません。オイヨイヨなんて敗走しまくっています。

しかもオイヨイヨが仇だなんて、ええ、色々救えない男ですねオイヨイヨ。

でもオイヨイヨもかなり難しい立場の男だったりするので、作者としては彼を責め立てるのはちょっと憚られる所です。

 

 

そしてもう一人、やばいのが居ましたね。

そう、真朱麻呂です。

読めたもんじゃない方を読み進めている人はご存知かと思いますが、ぶっちぎりの最強です。

この5話では間抜けそのものとしか言い様がない具合でしたが、噂の12話では、見違える程の貫禄と桁違いの強さをまざまざと見せつけてくれます。

そしてその12話とは、原作において過去最多文字数を記録した回でもあるのです。

たしか、20万文字だったかな^p^

 

完全版が出来上がるのを待つも良し、先に覗き見ちゃうも良し、どちらにせよお楽しみに、と言った所でしょうか。

 

それではそろそろ恒例のアレ、始めましょう。

 

 

 

・5話にして開幕の地の文にツッコミを入れるというような摩訶不思議な暴挙に出ている

 

この5話を発端に6話が構築され、その後、この暴挙は続けられる事に。

いわゆる作者とキャラが普通に口喧嘩してるみたいな描写が……。

 

 

・作者がエクセルでキャラ別に入力しておいて絶賛放ったらかし中の設定資料

 

まるでTRPGのキャラメイク用の資料みたいな内容の物にじゃんじゃかと文字や数値、外見情報、武器防具、スキル、魔法、過去経歴、取得資格やらを入力しちゃってる資料の事。当然自作。正直、2週間くらい掛かった。

実はまだ入力してないキャラが居るというのに現在でもとんでもない情報量を保有。オレファン世界の種族等の情報も記載している。絵まで挿入可能。

知人や友人には頭可怪しいと言われたし、作者も頭可怪しいと思うのだが、この努力のお陰でキャラクターの資料を本編読み返して探す必要性はなくなり、より安定的になってくれた。

バルカン砲の武藤君のような惨劇は二度と起こらないだろう。

 

 

・ゲジの森

 

本来は別の名前の森だったと思われるのだが、大昔、ゲイジさんが誰かの命令を受けてこの森の奥深く、海岸にある村を発展させたのが由来。

正しくはゲイジさんが当時の原住民に対し「下知(ゲジ)を受けた者だ」と説明した結果、ゲイジとゲジは似ているとかよく分からない事を言われたのが発端。

まあそんなこんながあって、発展した村は今ではゲイジタウンと呼ばれており、広大に広がる森をゲジの森と呼ばれている。

あとこのゲイジさんは真剣に強い人だったようで、この森で無双してた。

広さは日本の5~10個分、と表現しているが、正確な面積は決めていない。

このゲジの森にしか居ないモンスターや生物、植物や昆虫の数は多い。だが密猟などが行われる事はほぼ無い。モンスターの数も強さもかなりの物だから。

当然、ゲイジタウンには空路を使うか、船で海岸沿いを移動する以外に立ち入る事はかなり難しい。

 

 

・確信犯

 

誤用、に見えるが実は間違えていないかも知れない。

ただ本来ならばここは「故意犯」と表現するのが正解だと思われる。わざわざ広い方の意味を使うまでもない。

確信犯とは、道徳的な考えや宗教的もしくは政治的な考えなどに寄り、これから自らが行う事に対し正当性を確信して、執り行われる犯罪。正当性を確信しているかが重要なので、犯罪を犯している自覚の有無はこの場合関係しない。

中でも結構理不尽な例をあげると、

炎天下の車内に衰弱している犬を発見して窓ガラスを割り犬を救助する行為(信じられないかも知れないが、器物損壊罪に当たる可能性がある)、

誰かの家が炎上していたので近所のマンションにあった消火器で消火作業をする(信じられないかも知れないが、窃盗罪に当たる可能性がある)、

なども含む。

もっと分かりやすく言えばテロ行為も該当するし、義賊もこの確信犯で間違いない。

今回のブルーベアがやらかしている「腐ったオレンジジュース」の提供は、ブルーベアがどう思っているかで話が変わってくる。正当性を確信していたならば確信犯。そうでないならば故意犯。

まあ、故意犯だろうな。誤用だよ。誤用だし御用だよ本来。

 

 

・黒板

 

全くもって意味を成していない、喫茶店ブルーベアに存在する備品。

本当の意味で要らない物であるが、ジョンが「それっぽい!」とかいって撤去を譲らない一品。

喫茶店ブルーベアが出来た際、業者がなんらかの理由で使っていたのかそうでないのか、ともかく何故か置いてあったらしい。

ちょうど黒板を格納出来そうな細い空間もあったので、そこにいつもはしまわれている。(3話より抜粋)

 

 

・江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ

 

江戸っ子は宵越しの銭は持たぬとは、江戸っ子の気前のよさ、金離れのよさを自慢したことば。

いわゆる貯蓄を良しとせず、ぱーっと使い切ってしまう金離れの良さを誇る際に言うか、もしくはそういった人物に対して言う言葉。

ただし、博打などで全部失ってしまった場合などに用いると、ただのやせ我慢や言い訳になり変わる。

 

 

・飛行戦艦ヤマト

 

実在した戦艦ヤマトが元ネタの、1974年に讀賣テレビ放送・日本テレビ放送網で放送されたテレビアニメ及び、1977年に劇場公開されたアニメーション映画作品、宇宙戦艦ヤマトより。

ただしオイヨイヨが言うようにほぼ飛行船なので、ヤマト戦艦飛行船の方が名称としては正しい気もしてくる。

どういう規模の飛行船なんだろうね。超巨大だろ絶対。全長1kmとかあるだろこの飛行船。存在していい代物じゃないよ。

 

 

・そもそも映画版って何だ。

 

記憶が正しければ、宇宙戦艦ヤマトの実写版。SPACE BATTLESHIP ヤマト、だと思う。

 

 

・ホワイン島

 

我々の世界で言う所のハワイやサイパンにあたる観光名所。ただし詳しい設定は考えてない。18話まで書いてるのに舞台になった事は無い。でも多分とってもハウオリ。

オイヨイヨが落下した地点からこの目的地まで5000km以上離れている。

 

 

・もしかして本気で殺すつもりで突き落としたんじゃなかろうな。

 

流石にそれはない、と言ってやりたい所なのだが、実は有り得る。

このあたりは6話で簡単な概要を知る事になるだろう。

 

 

・サバイバル

 

困難な状況を越えて生き残ること。また、そのための方法や技術。生存、残存の意味。

なので必ずしも自然界にて生活する事を指す言葉ではない。

 

 

・直径9mmの穴

 

自動拳銃用の弾薬の一種。割りとポピュラーな弾丸、9x19mmパラベラム弾の事。

DWM(ドイツ兵器弾薬会社)のゲオルク・ルガーによって開発された。その為9mmルガー弾とも。

また勘違いされがちだが、9mmが直径であるのは間違いないが、弾丸自体の長さは種類によって異なっている。19mmはあくまで薬莢(ケース)の長さ。先端の弾丸部分の形状は物によって違う。

「パラベラム」とは、DMW社のモットーでもあったラテン語の「Si vis pacem, para bellum」(平和を欲するなら戦に備えよ)という言い回しから来ているらしい。

 

 

・マスターソード

 

ゼルダの伝説に登場する聖剣。

ただし聖剣と呼ばれる事はほぼ無く、もっぱら退魔の剣と呼ばれている。恐らくその方がプレイヤーにとって分かりやすいだろうという配慮だろう。

このマスターソードが不遇な場面や、もしくはそもそも登場しないといったシリーズもあるが、このマスターソードが主題としてピックアップされるシリーズもある。

他、持ち主であるリンクと共に様々なコラボに登場したり、装備品としてコラボしたりもしている。

また刺さった状態のマスターソードの姿は様々なイラストやパロディで扱われている為に、ゼルダの伝説シリーズに一切触れていない人ですらこのマスターソードの存在自体は知っているなんて事も多分多い。

あとアーサー王伝説に登場する剣はエクスカリバーであり、マスターソードではない。というかエクスカリバーが元ネタの方である。

 

 

・涅色の殺し屋、シュバルツ・アハト

 

今から3年前(当時なんと12歳)に現れ名を轟かせた殺しの天才。

人間族最強ではないかと議論の候補に上がる程の猛者。

涅色とは、川底の泥のような茶みがかった黒色。恐らくは髪の色がこれに非常に近い所から。

褐色肌、ハイライト無しの琥珀色の瞳。髪はちょっと跳ねっ毛のショートヘア。

身長148cm。現在15歳だが、12歳の段階とほぼ変化がないとオイヨイヨは語る。

天涯孤独の少女だが、育ての親としてタウゼントという師匠が居た。

この師匠は目の前でオイヨイヨに殺害された。

元より無印猟団によって孤児になったシュバルツは、11歳の時に最愛の師をも奪われた事で修羅に堕ち、1年という期間修行した後、無印猟団を標的に殺戮を繰り広げた。

野性的な勘が特に優れており、とんでもない程の瞬発力を持って相手を翻弄したり、息を潜めて隠れる者を即座に発見したり出来た。

また徹底的なまでに相手に弱みや弱点や隙を見せないというような、尋常成らざる忍耐力や技術力を持っている。

当時オイヨイヨや百足侍ですら全く歯が立たない程に強かったのだが、何故か2年前のゲジの森での戦闘にて、シュバルツは記憶を失い、2年もの間ゲジの森で1人暮らしていた。

今では記憶がほぼ完全に戻ったが、語尾に「ナ」と付けたり、一人称が「拙」のままだったり、相変わらず頭が悪そうな発言を継続させている。後遺症だろうか。

ほか、記憶喪失中は無表情っぽい雰囲気だったが、記憶を取り戻してからは比較的表情豊かになる。ただし少々この表情のほうも子どもっぽかったり、ぽけーっとした顔だったりと、非常にふやけて力が入り切ってない具合になっている。

ただし戦闘スタイルやらに一切の変化はない。多少身体能力が落ちているっぽいが、変わらず強いままである。

具体的にどれくらい強いかっていうと、現在のジョン(主人公補正除く)とオイヨイヨとブルーベアVSシュバルツという3対1の戦闘を繰り広げたとしても、シュバルツが余裕で勝つくらい強い。

 

 

・不破刃

 

SNKの格闘ゲーム『ART OF FIGHTING 龍虎の拳外伝』に登場し、大柄、青い忍袴と頭巾のみを身に着け、ムキムキな体を見せ付けるかのごとく上半身裸という威圧感溢れる姿だが、歴とした忍者。

勝利時に「うおおおおお」と叫んでたりして非常にうるさい。また接戦を窮めた相手に対して、男女問わずに「・・・・すごい漢だ。」と賛辞を述べる。

無論普通に喋る事も出来る。一人称が拙。

 

 

・記憶喪失

 

記憶障害の一種であり、大分類としては健忘(けんぼう)に当たる。

健忘とは、記憶障害のうち、特に宣言的記憶の障害された状態。言語で表現できる物、エピソード記憶や意味記憶の事。単純に言って、単純な物忘れ(ど忘れ)から記憶喪失を含む概念。

シュバルツの記憶が失われた原因は外傷性で、頭部に対する強い衝撃による。また陥っている症状名は全生活史健忘。発症以前の出生以来すべての自分に関する記憶が思い出せない状態。

ただし外傷性では説明できない風の記憶の回復をしたことから、外傷性の記憶障害こそはすぐさま回復していた可能性がある。

が、当時思い出しそうになった途端、思い出したくない、忘れてしまいたいとする欲求、過度のストレス、罪悪感、精神的不安定さから心因性の記憶障害が入れ替わるように発生した可能性が高い。

恨み辛みがあろうとも、正当性を信じていようとも、通常耐えられる所業でなかったのだろう。殺人という物は。

 

 

・拙

 

割りと珍しい一人称。

一般的に日本で扱われる一人称は、自分・私・あたし・僕・俺・儂、など。

しかし意外に一人称の種類は多く、例えば侍や武士が「拙者」と言っていたり、お姫様が「妾(わらわ)」と言っていたり、平安時代の貴族が「麻呂」と言っていたように、数え切れない程存在する。

それこそ370mLが作中で「作者が~」と表現する場合が多いかと思うが、この作者という語も一人称に当たる。つまり役職名や地位がそのまま引用されて当人を指す場合も含むのである。

にしたって拙っていう一人称はすっごく珍しいと思うけどね。

 

 

・ターザン

 

アメリカの小説家エドガー・ライス・バローズが創造した架空のキャラクター。

主に小説のターザンシリーズに登場する主人公。原作。

小説版のターザンはなんとイギリス貴族。しかし野生で育った為に野生児。一方で聡明かつ知的な所もあり、文明的な物への理解もあれば批判の目も厳しい。しかも多くの言語を自在に操る。すげえ。

ターザンはナイフがあればライオンを倒すし、素手で類人猿を殺したなんて事もある通り、筋骨隆々。怒ると額の古傷が赤く浮かび上がるという設定を持つが、作者が次第に表現を忘れていく。

身体能力もさることながら、感覚もとんでもなく鋭い。味には無頓着。

あれ、意外にターザンと表現したオイヨイヨ、すげー的確なツッコミ入れてるんじゃね……?

こっちの褐色小柄の女ターザンさんは、知的な面はほぼ無いけども。

また映画版やアニメなどのターザンは、この原作者側とでトラブル、行き違い、原作無視の設定などが連続して起こっている。実際映画版などのターザンは言語が不得手であったり、チンパンジーがマスコットとして取って付けられていたりと、結構違っている。原作者はあまり良くは思っていないようである。

 

 

・このお話、健全に行きたいからね。

 

後にジョンがコソコソとエロ本買いに行ったりするようになるんだけども。

 

 

・チワワ

 

北アメリカにおいては最も古い犬種であり、テチチ(Techichi)として知られるアステカ文明の王族の時代から飼われ儀式の生贄とされていた、現状よりすこし大きい犬種の直系の子孫であると考えられている。

19世紀半ばからアメリカで品種改良が進められ(この時期、ロングコートが改良生産された)、アメリカンケネルクラブに登録されたのは1904年。日本で飼育が始まったのは1970年代。

様々な経緯からいろいろな国で人気の犬種であるが、それが様々な社会問題を招いているのも事実である。

 

 

・裸の大将

 

日本画家の山下清の愛称。

またこの題名の映画は1958年に上映され、1980年には裸の大将放浪記と題したドラマ放送が始まった。

「お、おにぎりが美味いんだな!」といった台詞が非常に有名。どもりの多い語り、語尾に「な」が付く場合が非常に多い独特の喋りが、現状のシュバルツと割りとハマっている為のツッコミだった。

 

 

・なむ~

 

南無(なむ、なも)とは、敬意、尊敬、崇敬をあらわすサンスクリット語の間投詞「ナモ」を音写した漢訳仏教語であり「那謨」とも音写される。ってwikiに書いてある。よくわからん。

浄土教においては南無は「おまかせいたします」という信仰対象への自己の帰投、または信仰告白を意味するらしく、南無阿弥陀仏とは、阿弥陀仏様にお任せ致しますという意味になるようだ。

この南無という言葉は宗教上の言葉であるが、ネトゲなどでは一昔前、他プレイヤーがモンスターに戦闘不能に追いやられた際や、キャラクターを誰かが放置している間に殺されてしまって未だプレイヤーが未帰還と思われる現場に遭遇した際などに「南無」と唱えておくという習慣もあった。

 

 

・厚顔無恥

 

こうがんむち。無知厚顔と表記しても良い。

意味は、厚かましく、恥知らずなさま。

他人の迷惑などかまわずに、自分の都合や思惑だけで行動すること。

厚顔という言葉にかなりよく似た類語に、「面の皮が厚い」などがある。

気をつけて頂きたいのは、「無恥」であり、「無知」ではないという点である。

場合によっては誤用でありながらむしろ正解になってしまう事もあるかもしれない、気をつけよう。

 

※言った傍からミスしてる作者である。お分かりいただけただろうか。

 皆はこうならないように気をつけよう。

 

 

・カノヨナウマバエ

 

ウマバエの一種であり、ゲジの森の比較的奥地にしか分布していないハエ。

人体に寄生されると、寄生されている間、高熱、嘔吐、目眩、激しい痛みが伴うようになる。除去しても数日は症状が残る。

ウマバエとは、ヒツジバエ科の一種。また正確に言うなれば、人に対して寄生するタイプはヒトヒフバエである。一般的にはこの種をウマバエと総括して呼ぶ事が極めて多い。種類こそはかなり少ない。

とりわけ哺乳類に卵を寄生させて繁殖する。

しかも直接的に寄生させる場合と、蚊やイエバエといった中間宿主を介する場合がある。

何より生息地は中央アメリカから南アメリカというとても広い地域である為、旅行者は注意が必要である。無論、蚊ほどに要注意ではないと思うが、何にせよゾッとしない話である。

ちなみに日本にはこのハエは生息していない。

 

 

・森ではコンパスが効かなくなる

 

本編で語ったので割愛。

具体的には大袈裟過ぎなだけであって、嘘とはちょっと違う、といった具合か。

 

 

・スプリングフィールド、M14

 

割愛。

 

 

・ユージン・ストーナー、M16

 

割愛。

ただ天誅道の兵士が使ってたアサルトライフルは、FA-MASである。オイヨイヨ、大外れ。

 

 

・マテルの玩具

 

M16がプラスチックやアルミで出来ている上で軽く小さめであり、外見が安物であったという所から、当時支給された兵士達が揶揄した表現。

これが転じてアメリカでは「玩具メーカーであるマテル社製のM16が存在する」という噂が存在している。

事実無根である。

 

 

・グルカナイフ

 

一般的にはククリ。

、ネパールのグルカ族をはじめとする諸種族、およびインドで使用される刃物である為、グルカナイフと呼ばれる事もある。くの字型の刀身は非常に特徴的。

いかにも戦闘用なイメージの強い代物だが、実際は万能ナイフ、もしくは日本で言う所の鉈(ナタ)に近い位置づけ。無論狩りなどにも用いられる。

またククリには、グリットより上、刃より下の、付け根にある「チョー」と呼ばれる「ω」型の刻みが存在する。これには様々な諸説があるが、実はこの形状が取られている意味は正確な所は分かっていない。

しかしこの刻みを付けるのは伝統であり、概ね特殊な事情がない限りは必ずこの形状を取っている。

 

 

・ショーテル

 

ショテルとも。

エチオピアの伝統的な刀剣で、世界の他の刀剣と比べてもかなり特殊な形状をしており、両刃の刀身が大きく湾曲しているのが特徴。

本来は盾を無視して斬りつける事を目的とした形状だったが、非常に切れ味がよい。扱いも通常の武器と違って様々なメリットがある。一方で扱いがとても難しい。

しかも鞘に収める事が困難である形状の為、抜身で持ち歩くしかない代物もある。

またシュバルツが使っているショーテルはショーテルではなく、特注品。シュバルツはこれを蛇剣と呼んでいる。形状としてはフランベルジェに近いが、大袈裟な湾曲はショーテルに近い物がある。

 

 

・ネコの前足

 

資料が非常に少ないが、拷問の為に用いられた道具と言われている。

あくまでも通称であり、正確な名前は別にあると思うのだが、何故かそれらしい情報に行きつけなかった。本当に実在したのだろうか。

長い棒の先端に、いかにも猫の爪を直角に曲げたような形で3本の刃が取り付けられている。

ちなみにシュバルツが持っている物はネコの前足ではなく、武器としての鉤爪の一部を勝手に改造して作った代物。

これで斬られると、傷口同士の間隔が非常に短く発生する為に、縫合が難しくなる。場合によっては縫合する前に細菌に侵されたりして死に至るなんて事も起こりうる。

 

 

・クナイ

 

忍者が使用した両刃の道具で、漢字では「苦無」もしくは「苦内」。

平らな鉄製の爪状になっていて、壁を登ったり、壁や地面に穴を掘るスコップとしての使い方や、武器にも使用されるなど、現代でいうサバイバルナイフに近い装備。

後部が輪状であり、紐や縄を通して使用したり、水を張ってレンズ代わりにするなどの使い方もあったようだ。

小型のものは手裏剣のように使われることもあり、「飛苦無」(とびくない)と呼ばれていたらしい。

だが投げて使うのはかなり稀。よく忍者が投げているのは、手裏剣か棒手裏剣である。

あとシュバルツはクナイも持っているが、棒手裏剣も相当数持っていた。何故か銀製だけども。

そしてオイヨイヨ、その棒手裏剣を見て何故か治療針と勘違いしていた。にわか乙。むしろなんで見間違えたし。あんなぶっといモン、身体に軽々刺すワケねーだろ。場面が場面だけにツッコミにくかったし。

 

 

・真朱麻呂

 

シュバルツ同様、5話初登場。天誅道所属。

オレファン世界における最強どころか、370mLが創作したオリキャラの中でもダントツ最強。

この5話でそれらしい雰囲気がイマイチ感じられないのには、理由がしっかりとある。

今回は外見年齢おおよそ13歳であり、漫画でよく見る笑顔のおかげで目の色が確認できない状態にあったが、紅色である。また腰まである長い金色の髪を持つ。

中華風なのか日本風なのかイマイチよくわからないけど多分平安時代っぽい服なんじゃないかなみたいな服であるが、サイズが全体的に大きすぎる様子。今回は身長158cm。

上服のボタンがあるべき部分に何故か3枚の札が貼ってある。

詳しい説明は9話と12話で行う予定。ネタバレを気にしないならば、読めたもんじゃない方の9話または12話を参照。あるいはオレンジファンタジーの外伝である所の漫画「裏切りの鬼子 過去編」をば。

 

 

・知り合いに変わり者の爺さんが居てね。

 

天誅道所属の狸寝入りのチョンチョンの事。

ネタバレを気にしないならば、詳しくは6話、9話を参照。

まあ、先に読んだとしても現段階ではロクに何も明かされてないのだが。

 

 

・レイモンド

 

天誅道所属の特殊部隊の3番隊隊長。

読めたもんじゃない方での明確な初登場はなんと18話。

完全版では9話でちらっと、…出ないね。出せないね。無理。そもそもその時期にはまだ所属してなかった筈だし。

 

 

・ならストリートでファイトしてこいよwwwww

 

ストリートファイターの事。割愛。

 

 

・俺の氷の技に、凍結の技に、名前はねえ。

 

オイヨイヨとジョンの特殊な能力は6話で明かされるので割愛。

ただしオイヨイヨに限っては、その6話で明かされるのは片方だけであり、もう一方の劇的にやばい能力の方は、およそ15話まで所持している事実すら明かされない。

それどころかそのやばい方の能力が一体どういった物なのかも明言していなかったりする。

 

 

・絶対零度

 

絶対温度における 0 度で、0 K(ケルビン)と表される。

セルシウス度で表せば -273.15 ℃、ファーレンハイト度で表せば -459.67 °F

である。熱力学では最低温度。

 

 

・タウゼント

 

ドイツ語で1000を意味する語であり、シュバルツの師の名前。

ただしこのタウゼントに関するキャラ設定は一切無い。決めてない。

どんだけ興味ないんだよさなお。

 

 

・自ら窮地に陥るとか、狙って出来るもんじゃないぞ。

 

10話に向けてのフラグを完全版にて建てておきますね。

 

 

・貴方最低の屑だわ

 

スーパーロボッチ大戦史上最悪のクズとして名高い、スーパーロボット大戦Kの主人公であるミスト・レックス。

その恋人候補の名前がアンジェリカさん。

この為、全く無関係でありながら名前が一緒であるというただそれだけの理由から、エロゲーの主人公?であるアンジェリカさんのパソコンゲームソフトのタイトルをそのまま引用して、ミストを罵倒するコメントやレスが付く場合がある。

「あなたって本当に最低の屑だわっ」

 

 

意外に書くことなくて、細かい部分も拾って解説しちゃってます。

あとがき解説だけで1万文字もあったら充分過ぎるとはおもいますが^p^

以上、このへんで。

370mLでした。

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