――戦え!
無理だ
――戦うんだ!
あんな奴らに、勝てるわけ無いだろ!?
お前みたいな、成績上位者ならともかくな!
――戦わなければ、生き残れない!
大切な人を守るために兵士になったんだろ!?
…………
――ほら、もうすぐなんだ。
全部終わったら、皆で……――
っ……! 馬鹿、猿型が向かってきてる!
ここは食い止めてやるよ! 持って数十秒だろうけどなぁ!
だから約束は守れよ、この死に急ぎ野郎……。
――だけど……お前はどうするんだよ!?
アイツ以外にももっと……
ごちゃごちゃ喧しいんだよ! 俺の兵士の生き様だ!
お前だって大切な人に含まれてんだこの馬鹿!
――死ぬなよ
そりゃこっちの台詞さ。ほら、振り返らずに行け。
……ったく、最後の最後でカッコつけちまったよ。
こんなふうになったのも、お前のせいだからな……。
ガスも替刃も残り少ないと来たもんだ。
せいぜい、かっこ悪く足掻いてやるよォ!!
「――――起きろ!」
「ぐっはっ……!!」
ゴツンという音が教室に響き渡り、机へと顔面を打ち付ける。
頭を抑えながら前方に視線を向けると、教師がこちらを睨んでいた。
「さて、今いった事は確実にテストにでる。でるというか出す。
確実に覚えておくように」
はーい、と周りの生徒が返事をした。
「せ、先生! ワンモア、ワンモアプリーズ!
聞いてない! 俺聞いてないです!」
「すまん。先生最近物忘れが激しくってなぁ。
なんて言ったか忘れてしまったよ」
「えっ!? も、もう寝ませんから!
絶対寝ないんでお願いします!」
ちょうど、授業終了のチャイムが学校中に鳴り響いた。
「よーし、今日の授業はここまで!
今いったことを覚えておくように」
「いやいやいや! 絶対覚えてますよね!?
今いったことって言いましたよね!」
「はいじゃあ挨拶は省略で解散ー」
がやがやと騒ぎながら、大半の男生徒が売店へと走っていく。
そして、大半の女生徒が鞄から弁当箱をとりだし、わいわいと喋りながら食べ始めていった。
「――おーい、コウ。早く行こうぜ」
友人が俺の肩を叩きながら教室を後にしてでていった。
「あー……わかった。ちくしょう」
結局先生に教えてもらえなかったことを嘆きつつ、売店へと歩き始めていった。
「にしても、レベルたけーよな」
「何? 勉強のことか?」
焼きそばパンを頬ぼりながら、友人はつぶやいた。
「ちげーよ。女の事だよ。
最近の中学生はやばいよな?」
「いや、知らん。年下が好きだったのか?」
「知らんとは何事だこの野郎!」
友人は勢い良く立ち上がりながら、俺の制服をがしりと掴んだ。
「ば、馬鹿! 伸びちゃうだろ!」
「んなこたぁどうでもいい!
あのな? 麻帆良学園の女子中等学校のレベルはやばいんだぞ?」
「いや、知らん。つーか俺達だって麻帆良学園の高等学校だぞ」
「おふぁぇふぁっへぇ、ふぃになるほぉんないるふぁろ!?」
「いや、分からん。食べながらしゃべんなきたねぇ」
「……お前だって、気になる女いるだろ!?」
ゴクンと飲み込みながら、友人は一気に捲したてた。
「いや、いない。まだ高校生になってすぐ彼女探しはねーよ……っと、俺は行くぞ」
「食い終わるの早くね!? ちょっとまってくれよ!」
「いや、待たん」
友人をおいて、俺は売店を後にした。
「――さてと、どーすっかな」
授業も終わり、寮へと戻った俺はさっそく立体機動装置の修理に取り掛かった。
「……どっか改良する……いや、下手に手を加えて壊したくはないな……」
カチャカチャといじりながら、本を読みながら正確に直していく。
「……あ? なんだ、このページ」
みたこともないページを見つけ、修理を一旦中断してページに目を向ける。
『――を傷――より、傷口から―最大――級の巨――と変貌――――。
――意志に沿って必要な分――巨人の肉体が自動的に生成―――
―を達成した後には朽ち果て――だし、負担は大―――肉体と精神――。
なお、巨人――うなじ――埋没した状―――』
「くっそ……所々破けたり、文字が薄くなって読めなくなってる……」
これじゃあ解読しようにも、読めない部分が多すぎる。
「まぁいいか。後で調べよう」
ページを戻して、再び立体機動装置の修理に取り組み始めた。
何時間たっただろうか、時刻はもう丑三つ時だった。
額の汗を拭いながら一息つく。
「あー……終わった終わった。そろそろ寝るかな」
道具をてきぱきと片づけ、寝る準備を始める。
「……そういえば、あの夢は何だったんだろう」
首を傾げて考えてしまう。
もうあまり覚えていないが、大切な夢だった気がする。
「――まぁ、忘れてるってことはそんなに重要じゃないってことだよな。
よし、寝よ寝よ」
ベットの中へと潜りこみながら、瞳を閉じた。
――っしゃあ! これで累計討伐数16だ!
おーい……俺の補佐も忘れんなよ。
――わかってるって! これでお前に追いついたからな!
……お前、あの状態で何体屠ってると思ってんだ。
あれも含めると少なくとも30体は超えてるだろうよ。
――いや、あれになると意識が遠のくっていうか、曖昧になるっていうか……。
あーあ。俺にもそんな力があればなぁ……こう、親指の付け根あたりを
ガリッとやればできたりしねーの?
――できるわけないだろ……。
だよなぁ……ったく、人類に貢献しやがって。お前が羨ましいよ、エレ――――。
「――いっでぇ!?」
突然の頭痛に目をさます。
頭を抑えながら上半身をゆっくりと起こす。
ズキズキと頭の奥が痛み、視界がチカチカとする。
「んだよ、これ……!?」
頭を抑えて、数分程度呻いていると痛みは引いてきた。
「うあー、なんなんだ一体……つーか今何時だ」
ちらりと時計に視線を向けると、短針が八時を過ぎたあたりだった。
「――遅刻じゃねぇかぁ!!!」
ベットから跳ね起きて、急いで支度を整えて寮を飛び出していった。
「やっべぇ! 完全に遅……刻……?」
ガシャンガシャンと腰のあたりがとてつもなくうるさい。
舌打ちをしながら腰に視線を向けると――何故か立体機動装置を身に纏っていた。
「は、はぁ!?」
いやいやいや、おかしいだろ!
いつも通り、調査兵団の朝練に遅れないように支度したはずだ。
くっそ、替刃を持って来んのを忘れ――
「…………」
再び、ズキンと頭が痛んだ。
朝の痛みと比べれば気にする程でもない。
今はもっと重要なことがある。
調査兵団の朝練てのはなんだ?
替刃を忘れたってのはなんだ?
普通は、制服や鞄の事をはじめに考えるだろう。
百歩譲って昨日の調整で間違っちゃった――百歩じゃなく、一千歩――として。
調査兵団ってのは何だよ。確かに文献にはのっていた。
「……気づかないうちに厨二病になってたとか笑えねぇぞ」
これを普段着と考えるほど俺の頭はまだ腐ってねぇぞ。
「……遅刻確定だわ。糞が」
制服をとりに、俺は踵を返した。
――頭痛が無視できない痛みになっても、我慢して。