Extra Chapter : 作:回避盾
〝
「ただいま……」
静まり返った室内に、声が虚しく響き渡る……。
「お疲れ様、GV」
「ああ、シアンもお疲れ様」
アメノウキハシでの決戦から早一ヶ月。皇神はもちろん、フェザーからも逃げるように拠点を移したボクは、急激に増えた依頼の処理に追われていた。
どこから聞きつけたのか分からないが、「SSランクの雷撃の
皇神の力が弱まったこの機に、能力者の世界を創るため動こうと力を求める者からの依頼と、その勢力によって危機に陥いり打つ手がない無能力者が藁にも縋る思いで助けを求めてくるというケースが殆どだ。
これはボクの責任だ……。無能力者を襲う連中を戒めなければいけない。しかしこのままでは、平穏に暮らす能力者の立場もいずれ無くなってしまう。能力者と無能力者の間にある溝を無くすには、一体どうしたらいいのだろうか……。
「あまり思いつめないで……。いつか手を取り合える日が来るよ。あなたならきっとできるって、わたしは信じてるから……」
──能力者の……未来は……お前に……託す……
……ボクの脳裏に、あの人の言葉が浮かぶ。
「……ありがとう、でもボクは大丈夫だよ。ボクがやらなければならない事なんだ……。休むわけにはいかない」
「GV……」
……? 外からなにか聞こえる。この駆動音は……皇神の兵器か!? この場所に迫ってきている!
「シアンッ! ボクの傍に!」
「!!」
幾度となく遂行した任務で培われた勘が警鐘を鳴らす。咄嗟にシアンとその場を飛び退いた瞬間、轟音と共に拠点の壁が破壊された。すぐさま体勢を整えて銃を侵入者へと向ける。
「動くな……何者だ」
こちらが銃を向けると同時に、相手も左腕に取り付けられている光学銃をシアンへと向けていた。がっしりとしていて、見る者に力強い印象を与えるようなメカだ。右腕はブレードになっており、左腕には銃が取り付けられていて、戦闘のために開発された物だということを窺わせる。
侵入者は皇神の兵器の様に見えるが、それにしては動作が自然すぎる……。人が直接操作しているかの様だ。初めて見る機体だが、皇神が新たに開発したのか……?
敵はこの拠点を突き止める程の情報収集能力を持つ人物だ……。今のシアンに攻撃が効かない事も分かっているだろう。だというのに銃を向けるという事は、何らかの攻撃手段があるのか、それともハッタリか……。
くそッ! 迂闊に動くのは危険だ……。彼女をもう傷つけたくは無い……!
「突然の襲撃だというのに、随分と早い対応だね……。流石はガンヴォルト、といったところなのかな」
機体の顔にスピーカーが付いている。そこから声を発している様だ。
「何者だ、と訊いているんだ……。答えろ」
「検討はついているんじゃないかな? キミが推測しているであろう通り、皇神の兵さ。
基地の兵士共を焚きつけて準備も終わったから……。皇神最高の能力者である紫電を倒し、真にこの国最強の第七波動能力者となったキミへ宣戦布告に来たよ」
全ての宝剣を解放した紫電を倒すとは思わなかったな、と緊張感の無い語調で語っている敵。
「宣戦布告だと……?」
「ああ。キミはこれから能力者を巡る時代の中心となるだろう……。良くも悪くもね。
ならば、キミを倒すことが出来ればボクこそが最強の能力者となれる! 最強の称号を手にし、世界にボク自身の力を知らしめてみせるんだ……!」
コイツはただの戦闘狂なのか? それにしては言動が妙だが……。
相手の目的がなんだろうと、ボクには使命がある。
「そんなことはさせない……! お前はボクが必ず打ち倒す」
「そう言うと思っていたよ、ガンヴォルト。勝つのはキミじゃない、このボクだ」
敵機の銃が発光している! マズい……どうする!
「GV──」
「シアン──」
「遅いよ」
ボクへ手を伸ばしてきたシアンを庇うため、即座に動き出したが間に合わず……。弾丸は発射され、吸い込まれるようにシアンへ命中した。
「きゃあっ!」
「シアンッ! 大丈夫か!?」
敵のことも忘れ、慌ててシアンに駆け寄る。どうやらケガはしていない様だが、身体に紅紫色の光がまとわりついている。これは……。
「気づいたかい? その光……。
ただの見様見真似だから、電子の譜精を一時的に封じる程度だけど……。十分な代物だ」
「うぅっ……ごめんなさい、GV……」
「シアン……!」
苦痛に声を上げながら、彼女がボクの身体へ沈んでいく。だが、いつものような第七波動の高まりを感じない。能力を封じられたというのは事実のようだ……。
「さて、用は済んだ。そろそろ失礼させてもらうよ。ボクの名前はコーベット。第二陸上基地に来い、ガンヴォルト。これからの時代を制する者を決めようじゃないか。相応しい場所を用意して待っているよ」
「待てッ!」
退こうとするコーベットに向かい攻撃しようとするが、身体に絡みつく紅紫色の光に動きを止められた。シアンと同化させられた事で、グリードスナッチャーの影響がボクにまで出ている……!
ボクが動きを止めている隙に敵機は足裏からエネルギーを噴出し、空を飛んで撤退していく。
「くそッ……逃げられたか……」
◆
粗方の用意は整った。装備の確認を始めよう。
雷撃の第七波動を補助する、専用の電磁加速銃──
避雷針は使用するカートリッジによって、弾丸の性質や雷撃の誘導性が変化する。ボクが愛用しているものは
ナーガはよく使っているが、チャージの機能は未だ任務で使ったことがない。絶対に必要だという場面があまりなく、チャージが終わるまで待つならば他の手段を使った方が早いことが多かったからだ。この機能は便利だ、有効に扱いたいな……。
常に付けるようになった両目のコンタクトは、視覚から精神に作用し様々な効果をもたらす特殊な物だ。ボクの
「EPエネルギーの残量には気をつけろって忠告されていたな……アシモフ……」
感傷に浸っている暇は無い……。準備を続けよう。
右手に光るのは第七波動を高める特殊な霊石や金属で出来た「セラフリング」。空中での跳躍と移動を可能とする指輪だ。
シアンが作ってくれたペンダントを首にかけて行きたいが、これ以上損傷すると完全に壊れかねない……。懐に大事にしまっておこうか。
シアンの想いの結晶であるこのペンダントは、彼女を守れなかったボクを激しく責め立て鼓舞してくれる。今の精神状態でなんとか戦うことが出来るのは、アシモフの言葉とシアンの存在を支えとしているからだ。第七波動を強化する効果がなくとも、持っていくべきだろう。
身体の調子も万全だ。擬似グリードスナッチャーによるボクへの影響は一時的なものだった様だが、シアンは未だに出て来る様子が無い。今の彼女はとても不安定な存在だ。深刻な影響が無い事を祈るしかないか……。
出撃の用意は整った。第二陸上基地へ向かおう。
「ヤツの思い通りにはさせない……!」
◆
「ガ……ガンヴォルトだ! ガンヴォルトが来たぞ! 総員、迎撃用意!」
「皇神の意地を見せてやる! 覚悟しろ、ガンヴォルト!」
「邪魔だ……道を開けろ……!」
立ち塞がる兵士に避雷針を連射し、第七波動の力で
激しい衝撃に声を上げ、昏倒していく兵士達。それを尻目に、雷撃鱗によるホバリングでゆっくりと着地し、基地の中を駆けて行く。ヤツは一体どこで待ち構えているのだろうか……。
『鮮やかだなぁ。蒼き雷霆サマはやっぱり凄いね!』
! この声は……。
「コーベット……!」
『ようこそ、ガンヴォルト。ボクに出来る最高のもてなしで歓迎するよ。……紅茶でいいかい? それともコーヒーがいいかな?』
「ふざけるなッ!」
基地内のあちこちに設置されているスピーカーから話しかけて来ている……。わざわざ設置したのか? ご苦労なことだ。
『キミの様子はカメラを通して見てるよ。ボクは最奧のエリアで待ってるから、早く来てねー』
べらべらと、よく喋るヤツだ……! アイツはシアンにも手を出した……。絶対に許すわけにはいかない……!
決意を再確認し、再び走り出す。
最奥へと向けて進んでいると、突然前後にシャッターが降りてボクの行く手を阻んだ。
「挟撃か……!」
これは……防衛シャッターだ。備えられた光学銃でビーム弾を撃ってくるが、攻撃が単純なため注意していれば然程の驚異では無い。
砲門が展開され、前後別々のタイミングでビーム弾が撃たれる。それを躱しながら、前方と背後に避雷針を撃つ。充填のために一時的に銃撃が休止したタイミングを見逃さず、雷撃を放出して二つのシャッターを同時に破壊。
精神集中する為に
前方に作動しようする防衛シャッターを複数発見。ごく僅かな時間だけ第七波動で身体に負荷をかけ
……この辺りの防衛シャッターは全て越えられた様だ……。先へ行こう。
───────────────────
『うーん……やっぱりこの程度の仕掛けじゃダメか……。じゃあ兵士さん、アレを出しちゃおうよ』
「了解! よし、行くぞ! マンティスレギオン……発進! ぶちかましてやれッ!」
───────────────────
並み居る兵士や兵器を突破し、長い通路を突き進むボクに向かってレーザーが飛来してきた。通路の幅は狭い……。横に避ける事は難しいだろう。床を強く踏みしめてダッシュ、その速度を活かして勢いよく跳ねる。雷撃鱗で滞空し、レーザーを飛び越えた。
「このレーザー……第九世代戦車か? かまわない! そんな玩具、何度でもボクの蒼き雷霆が打ち砕く!」
『蒼き雷霆が、ね……。ふーん……やれるものならやってみなよ』
広間に出ると、前方から改良型の赤い第九世代戦車がやって来た。
コイツの相手はこれで五度目……。ビームを内蔵したミサイルを搭載していたり、バルカンをジャンプで回避した瞬間レーザーを放つなど厄介な機体だ。無人型の第九世代戦車は頭部にダメージを与えると、非常冷却が作動してコアが上部に押し出されるという
……? 以前には無かった角があり、カラーリングもやや変わっている様に見える……。
『それは改良を加えた無人型の
第九世代戦車の弱点である頭部にキミが幾ら攻撃しようが、当てられなければなんてことないのさ』
──来る! マンティスの両肩にあるフタが開き、誘導ミサイルを発射してきた。ボクはゆっくりと移動しながら雷撃鱗を展開。雷撃鱗に触れたミサイルが壊れ、内臓されていたビーム弾が露わになる。ビーム弾がミサイルの軌道のままに迫って来るが、既に動いていたボクは、危なげなくそれを回避。攻撃後に出来る硬直を狙う。
空中でジャンプする事で、高い位置にある弱点へ正確に照準を合わせた。低い位置からでは、避雷針が刺さる装甲の隙間が見つけにくいのだ。マンティスの頭部に避雷針を素早く三連射。再び雷撃鱗を展開し、三重の雷撃を対象へ当て続ける。
元々の三倍というだけの速さはあるようだ。だが改良型から大きく変化した様には見えない。この調子なら問題なく倒せるだろう。
硬直が終わり、マンティスが動き出す。両腕部から地に向かって放たれるバルカンを雷撃鱗による滞空で避けていると、空中での無防備な状態を狙って
雷撃鱗を解除して着地する。直後に、開かれた口部から宙に向けてレーザーが放出された。訪れた僅かな隙で自己暗示の型をとり、EPエネルギーを回復した後にすかさず雷撃を叩き込む。
敵機がしゃがむ様な予備動作を見せた直後に大きく跳躍。巨大な体躯でこちらを押し潰そうとしてくる。ボクは雷撃を放ちながら、跳躍したマンティスの下をくぐる様にダッシュして攻撃から逃れた。あの大きさに潰されてはひとたまりもない。跳んでから着地するまで時間がかかるよう、軽快に何度も跳ね続けるマンティスから離れた位置を取っていく。
! コアが露出した……。頭部にかなりのダメージを与えられた様だ……。コアを攻撃してマンティスに止めを刺すため大きくジャンプし、頭の中で強く念じる。ボクの第七波動がそれに反応して、解放される時を待ちかねているようにうねり荒れ狂う。
天体の如く揺蕩え雷
是に至る総てを打ち払わん
「──
第七波動を応用した技の中でとりわけ強力な
雷撃鱗を凌駕するパワーを込められた巨大な三つの雷球が、ボクの周囲を旋回しながらコアにヒットして完璧に打ち壊す。
コアが破壊された影響でマンティスが内部から連鎖的に爆発を起こし、やがてバラバラに崩壊した。
「──撃破完了」
『そういえばキミ、あの〝
嘆息する様子のコーベット。耳を貸さずに進むのが賢明だろう。有益な情報を出すとも思えない。
『開発段階で計画してたように、ミサイルに内蔵したビーム弾が敵を追尾する方がよかったかな? でもそうすると、作るのが難しいし仕方ないか。
まあいい。ともかく、早くゲートモノリスを破壊して次のエリアに進むんだね。次の仕掛けを用意しておいてあげるからさ』
道を阻むように設置されている、皇神のセキュリティバリア装置、ゲートモノリスを破壊して先へ進む。ヤツの元へたどり着くには、もう少しだけ時間が掛かりそうだ……。
◆
エリアを越えても、未だ敵の勢いは衰えない。
無傷でかなりの敵を倒し続ける事でボクの調子は上がっているけれど、シアンの祈りによる歌声が聴こえない。普段なら、調子が上がって強まったボクの第七波動に電子の譜精が共鳴して、歌が届いて来るんだが……。
シアンの歌が聞こえないのは、おそらくコーベットに撃たれた弾丸がまだ効いているせいだ。シアンは今もボクの中で苦しんでいる……!
込み上げてくるヤツへの怒りを振り払う様に、より一層疾く駆け出す。
一際広い部屋に出た。この様な場所では包囲される危険性がある。警戒しながら部屋の中央まで行くと、警報装置が作動すると共に天井から兵士が続々と降りてくる。
部屋の出入り口は、避雷針が通らないほど強固なシャッターで閉じられてしまった……。先へ進む為にはまず、押し寄せる兵士を倒さなければいけないか。
「待っていたぞ、ガンヴォルト! 飛んで火に入る夏の虫! 戦闘部隊、集中砲火だ!」
一足先に降りてきた、ミサイルランチャーを装備した兵二人に挟まれた。即座に前へ三回、後ろへ二回避雷針を撃つと同時に、二方向から発射された追尾性ミサイルがボクへと迫ってくる。だが無意味だ。ボクに実弾は通じない……!
ミサイル兵を倒すまでにかかった時間で、更に兵が来ていたようだ。今にもボクに命中する、という程に迫っている二発のビーム弾から逃れるために大きくジャンプ。弾丸がすぐ傍を通り過ぎていく。敵二人が光学銃のチャージを行っている間に、素早くルーティーンをとってEPエネルギーを回復。隙だらけの銃兵達へ発砲、撃破する。
まだ部屋から出られないらしい。火炎放射装置を手にした兵が四人、ボクを包囲するように降りている。この兵は危険だ……! 攻撃範囲が広いため、急いで対処しないと燃やし尽くされてしまう。
四人が一斉にチャージを始めた。まずは間近な兵二人に雷撃を命中させて対処する。残る二人が火炎を放ってきたが、予想していたので問題ない。セラフリングの強化により、空中で二度目のジャンプをして躱す……。
……! いつの間にか、上空に浮遊砲台が来ている! 砲台が真横に撃ったレーザーがボクの頭上で止まり、垂直に落ちてくる。完全に不意を衝かれた! 慌てて空中で身を捩ると、間一髪で命中を免れる。雷撃で浮遊砲台を爆破して着地、再び火炎放射をされる前に兵を撃破した。
後続はやって来ない……。どうやら終わったようだ。天井で鳴り響いている警報装置を破壊すると、出入り口を塞いでいたシャッターが開いていく。
敵の接近に気付けないとは、いつの間にか油断していたみたいだな……。
ゲートモノリスを発見。そろそろ最奥だ。戦いに備えて気を引き締めよう。
◆
真っ暗な部屋だ……。全く光が無い。本当にここに居るのか?
不意打ちを警戒しながら歩いていると、突然部屋中が眩い光に包まれた。反射的に両腕を交差させ、目を守る。
「やあやあ、よく来たねガンヴォルト!」
光が治まったのを感じて目を開けると、部屋の中心に一人の少年が立っているのを視認できた。先の閃光と同時に明かりを点けたようだ。
「……お前がコーベットか」
「そうだよ。全く、待ちくたびれたなぁー」
ヤツを見た途端に沸々と怒りが湧いてくるが、なんとか抑えて冷静になる事を意識する。油断して隙を晒す真似はしてはいけない。まずは注意深く観察しよう……。
背丈はボクと同じ位、年齢も大して変わらないだろう。今までの能力者と同じ様に、皇神の制服を着ている。見たところ武器は所持していないみたいだ。周りに兵が潜んでいたり、罠がある気配も無い。
宝剣の解放が始まる前に勝負をつけたいが……。避雷針を撃ち、雷撃を当てるには少し距離がある。誘導の対象からあまり離れると、雷撃が避雷針へ向かわないのだ。動きを悟られぬよう、ゆっくりと慎重に近づこう。会話でもして注意を逸らすか……。
「……どうして隙を突かなかった? 暗闇の中から攻撃したり、光で目をくらましている間に宝剣を解放することが出来たハズだ。ボクを殺したいのならば、そうするべきだろう」
ボクの問いを聞くと、ヤツは逡巡する様子を見せる。数瞬の間が空き、先ほどまでの軽い口調とは打って変わって、暗く沈んだ声でコーベットは語り出した。随分と様子が違う……。この落ち込んだ雰囲気が素のようだ。
「ボクは、この世界はもう終わりだと悲嘆しているんだ。皇神が絶対的な力でなくなった今、国内の能力者が叛乱を起こし始めている。今起こっているような暴動も次第に激しくなり、手がつけられなくなるだろう。国外の大規模な能力者の組織が、何やら不審な動きをしているという話もある。破滅はもう避けられない。
そこで、最強の第七波動〝蒼き雷霆〟をこの手で倒したいと思った。ボクが蒼き雷霆を上回っていることを世に証明できれば、もう心残りは無くなるからね。後悔すること無く、良い気分で死ねる。
不意打ちしなかったのはそういう理由だよ。正面から打倒しなければ意味が無い」
本当に、ただボクに勝ちたいだけなのか……こいつは? そんな自己満足のためにシアンを傷付けて……!
話し終えたのか深くため息をつくと、コーベットはボクの足元を見て一言呟いた。
「キミも待ちきれないみたいだし、そろそろ戦おうか」
──やはり気づかれるか!
接近が失敗した。宝剣は既にヤツの手元に転送されている。一か八かで攻撃するしかない! 間に合うか……?
床を蹴り出し、相手へと向かいながら避雷針を連射したがやはり遅かった。宝剣の解放を阻止できず、避雷針は
「はぁ……。いつにも増して気分が落ち込むから、宝剣はあまり使いたくないんだよね……。宣戦布告の時は、頑張って元気だしたんだけどさ……」
戦闘態勢に入ったコーベットの周囲に、蒼い電光が迸る。
「その第七波動は……まさか! 蒼き雷霆……!?」
「当たらずとも遠からずってところかな。ボクの第七波動は〝
プロジェクト・ガンヴォルトの生き残りだと……!? アシモフの話では、生きた成功例は今やボクだけのハズ……! アシモフの言葉が間違っているとも思えない。どういうことだ……。
ハッと我に返り、ヤツに注意を向ける。コーベットが後ろに飛び退いて、彼方から飛んできた
「さあ、始めようガンヴォルト。キミの力を見せてもらうよ」
宣言が終わったことを知覚した直後、目の前にブレードを構えたコーベットが居た。
「──! ぐッ!」
反応は自分でも驚くほどに速かった。むりやり身体を反らして刃を躱し、横へ飛んで距離を取る。崩れた姿勢で飛んだが、転がって衝撃を受け流しながら体勢を直したので、後手後手になることは避けられたか。
凄まじい速度の攻撃だ……。自分を称賛したい程に素早い動きで回避しようとしたが、避けきれず胸部を斬られてしまった。致命傷になる程ではないが、あの速度でもう一度攻撃をされるとまずいな……。この怪我では、次は凌げない。
突進してくる直前にヤツの脚が蒼く光っていたように見える。アームドスーツの脚部にある推進装置に第七波動を使って驚異的な加速を生み出しているのだろう。だが、襲撃から帰還していく際は今よりもずっと遅かった。足裏ではなく脚部の装置を使った急激な加速は、そう何度も出来るものではないらしい。連続して使用できるのならば、距離を取ろうとしている間に接近されてボクは死んでいる。
「……今のを回避されるとは思わなかったな。終わりだと思ったのに」
先の突進が再び来る前に攻める! ヤツに迫りながら避雷針を五連射。狙うは推進装置のある脚部だ。
「無駄だよ。勝算も無く勝負を仕掛けるわけが無いだろう?」
避雷針は脚部へまっすぐ向かっていくが、アームドスーツの装甲に当たった瞬間に弾かれてしまった。随分と頑丈だな……。並大抵の攻撃ではびくともしないと思われる。
「その針さえ当たらなければ、キミの得意な雷撃は放てない。攻撃手段の無い蒼き雷霆など脅威では無いね」
左手から弾丸を連射しながら、足裏からエネルギーを噴出して浮遊。ボクの周囲を飛び回り弾幕を張ってくる。
シアンを撃ったあの銃はもう取り付けていないようだ。あの銃では、対電子の譜精の弾しか撃てないのかもしれないな。
雷撃鱗で弾丸を防ぎながら攻撃の機会を窺う。ただの武器ではあの装甲に弾かれるだけだが、生憎この避雷針カートリッジは全てを貫通する〝ナーガ〟だ。チャージが終わるのを待ちつつ、EP切れを避けるために弾幕が張られにくいよう走り続ける。
「ちょこまかと逃げるだけ? つまんないな」
痺れを切らしたのか、弾を切らしたのか。弾丸を撃つのを止め、ブレードを振りかざしこちらに迫って来た。銃のチャージは既に完了している。今が好機!
「……貫けッ!」
如何に強固な壁でも容易く穿つ避雷針が一発、ヤツの右脚へ命中する。雷撃鱗を解除し、EPエネルギーも回復し終えた。あの突進がいつ出来るようになるか分からない。早く推進装置を破壊しなければ……!
「なに! どうしてこの針が……!? ガンヴォルトの銃の威力は計算通りのハズ……」
動揺しながらも、至近距離から右腕で数回斬りかかってきた。かなりのスピードと剣筋による攻撃だが、第七波動で強化された身体能力にて紙一重で回避し続ける。
この連撃を長い時間躱しているのは困難だ。ボクの動きが鈍っているのもあり、負う傷が徐々に深くなっている。後ろへ飛ぶ瞬間に加速して飛距離を伸ばし、間合いを大きく取った。チャージしていた避雷針を、滞空している間にもう一発撃ち込み雷撃を叩き込む。
避雷針の対策をされていたが、ナーガのチャージについては知られていなかったみたいだ。今までの任務で使わないでいた甲斐があったかな……。
「……まさか、こんな隠し玉があったとはね。だが、この武装を貫通する弾は連発できないようだ。それに、今のキミは傷を負っている。その身体で動くのは楽ではないだろう。そろそろトドメを刺してあげるよ」
……体力や傷を回復するスペシャルスキルを使いたいが、あの技は隙が大きすぎる。戦闘中に発動するのはまず無理だ。
かと言って一時的に身を隠すのもリスクが大きい……。この傷ではあまり遠くまで動けない。すぐに追いつかれ、先の突進で殺されるだろう。どうするか……。
「今のキミは俎上の魚……。料理は得意なんだ。機動力を奪って歩みを止めた後、華麗に仕留めてみせる」
足裏からエネルギーを噴射し、一気に接近してきた。ブレードによる攻撃を何度も回避させ、少しずつ傷を増やしボクの体力を奪っていくのが狙いか……!
先の動揺が消えたからか、斬撃が一層激しくなっている。まずいな……距離を取る隙が無い。仮に離れられたとしても、すぐに間合いを詰められるだろう。一体どうすれば……!
息も絶え絶えになりながら必死に攻撃を避け続けていると、突然コーベットが一歩下がった。脚部の装置による突進を警戒して身構える。あれをまともに食らえば、今度こそ死は免れない。しかし、今の体力だと反応することすらままならないだろう。リスクはあるが、スペシャルスキルでの回復に掛けるしか道は無いか……。
わずかに迷い、ボクは勝つための行動を決めた。だがボクの考えに反しコーベットは突進の構えを取らず、代わりにアームドスーツの全身から蒼い光が迸っている。第七波動による攻撃の前兆だろう。
どんな攻撃が来るか分からない。攻撃を避けるため身体を引きずるようにして歩きだすと、周囲の壁や床、天井が開いてボクを包囲するように光学銃が現れた。
「しまった……!」
こんな仕組みがあるとは! 反射的に急所を守るが、発射された光弾は全てボクの身体をわずかに逸れていく。それを訝しみながらも身を隠して回復するため再び動き出した刹那、激しい衝撃がボクを襲うと共に、視界がぼやけ意識がもうろうとし始めた。いつの間にかボクは、温かい液体で溢れた床に倒れ伏している。
一体何が起こった……? ぼんやりとした頭で抱いた疑問は、すぐに氷解した。間近に、血塗れのブレードを構えたコーベットが立っているのを感じ取ったのだ。ボクの周囲にエネルギー弾を撃ったのは、動きを制限することで確実に突進による斬撃を当てるためだったのか……。
「……ガンヴォルトを、蒼き雷霆を、倒したのか? ハ、ハハ……。これでもう、比べる相手は居なくなる……。ボクこそが、〝最強〟だ!」
まずい……。ヤツの声が遠のき、意識が暗闇へと沈んでゆく……。ボクはまだ、倒れる、わけには……シアン……。
……
…………
………………
……闇の中、声が聴こえる気がする。彼女の、シアンの呼びかける声が……!
『こんなところで終わらせない!』
『あなたは死なせない……!』
この
『立ち上がって……GV! わたしが、あなたの
シアンの歌が、ボクの身体を支えてくれる……! シアンと一つになることで、ボクの第七波動が内から高まっていくのを感じる……!
パチリと目を開き、少し身体を動かして自分が万全の状態であることを確認する。
「ありがとう、シアン」
「ううん、わたしこそごめんなさい。あなたの足をひっぱっちゃって……。
あなたがやられてから、まだ時間は経ってない。行こう、GV! あの人を倒さなくちゃ!」
傍らからシアンが微笑みかけてくる。コーベットに力を封じられていた影響は無いのか確認したいが、今はそんな場合ではない。ヤツはここで倒さなければ……。
「GV、あの人はすぐ近くにいるわ。まだあなたには気が付いてないみたい。気をつけて!」
ボクを倒した余韻に浸っていたのか、コーベットはあまり離れた場所には居なかった。歓喜に打ち震えるように、虚空を見つめて呆然としている。今のヤツからは警戒心が全く感じられない。油断している今がチャンスだ。
音を殺して背後に忍び寄り、チャージした避雷針を脚部へ撃つと同時に雷撃鱗を展開する。
「なッ──! どうして! どうしてお前が生きているんだ、ガンヴォルト!」
コーベットが攻撃の気配に気づいてこちらを振り返ると、愕然とした様子で取り乱す。ボクが死んでいると確信していたようだ。やや時間が経過した後、ヤツのアームドスーツから何かの起動音が響いたと思えば、コーベットが微かに息を呑む音が聞こえた。アームドスーツで顔が遮られていても分かるほどに動揺している。
「この第七波動の波長──電子の譜精! この能力で蘇ったのか……! どうしてだ、能力は間違いなく封じた……。暫くはガンヴォルトの中から出てくることすら不可能なハズ……!」
ヤツが呆けている間にも、ボクは雷撃を放出し続けていた。両脚部に取り付けられている推進装置が大きな爆発を起こし、機体のバランスが崩れてコーベットは膝をつく。今の轟音と衝撃で我に返ったようだ。すぐに立ち上がり、構えた状態でこちらを見据えている。
「わざわざ電子の譜精を封じたのに、結局こうなるとはね……。二度と蘇生できないよう、徹底的に斬り刻んでやる!」
脚部の装置による突進という懸念要素を、隙を曝していてくれたおかげで壊せたのは僥倖だ。傷も癒えた……今度は全力で戦える。
エネルギーを足裏から噴射して、ボクを剣の間合いへと入れてきた。正中線を目がけて勢いよく振るわれるブレードを、身体を横へ傾けて回避。直後にボク自身へ負荷を掛けて一時的に第七波動での身体強化を強める。
コーベットの腹を蹴り飛ばし、がら空きの胴体へ避雷針を命中させる。ボクは蹴り飛ばした勢いで距離を取り、ヤツもまた空中で回転してすぐに体勢を戻している。
再び接近される前に、雷撃鱗を展開して雷撃を浴びせていく。脚部の推進装置があった場所へ刺さった避雷針は、今もヤツの脚へ深く食い込んでいる。推進装置が雷撃を受けていたので本人に届いていなかったが、それも先ほどまでの話だ。避雷針が当たった両脚と胴体へ、三条の雷がコーベットを襲う。
「ぐぅっ……。万全の状態で、しかも電子の譜精の加護を受けているキミはやはり強いな。だがボクは勝つ。勝たなきゃいけない……!」
……何故こうまでボクに執着する? 話を聞く限り、皇神への忠誠心から復讐のために戦っているわけでもない。
「……一つ訊きたい。蒼き雷霆の成り損ないとはどういう意味だ? プロジェクト・ガンヴォルトの生き残りはボクしかいないハズだろう」
雷撃を止め、いきなり話し出すボクにコーベットは怪訝そうな視線を向けるが、問いの内容を聞くと納得したように頷く。
「確かに、蒼き雷霆の能力者を作り出す実験で生きた成功例は既にキミだけ。ボクはなんなのかというと、文字通り成り損ないだよ。ボクの第七波動は、電子機器へ干渉して操るだけの能力。
電子を司り、雷撃や身体強化による高い戦闘力を持ち、ハッキングまで意のままにできるという汎用性を誇るキミとは違うのさ。ボクの能力は、蒼い電光という見かけだけは立派な
ヘラヘラと軽薄な、しかしどこか陰を感じる笑みを浮かべて答えだした。今のヤツからは、皇神の能力者特有の妙な雰囲気を感じる。
「だからこそ、キミを倒して自身の実力を世界に示したい。キミの首を世に曝し、能力者の頂点が居なくなったと知らしめるんだ!
情勢は混乱し、
そんな絶頂の気分のまま、この絶望的な世界から去るんだ。最高の生き方だろ?」
完全に錯乱している……。ヤツの中では、もう世界は破滅しているのだろう。プロジェクト・ガンヴォルトの後遺症なのか? 皇神の被害者だと考えると哀れにも思えるが、こいつはエリーゼや薬理研究所の青年と違い、自分の意思で無駄な争いを起こそうと企んでいる。
ボクはヤツを決して認めるわけにはいかない。アシモフから託され、シアンが存在しているこの世界には、
「お前がどんな経歴で、どんな思いを抱えていようと! いたずらに世を乱さんとし、シアンを傷付けたことをボクは絶対に許さない!
迸れ、
口にしたのは、覚悟の証。眼前の敵を必ず退けるという強い決意の表れ。ボクの感情に呼応し、体内の能力因子がふつふつと熱を帯びていく。
既に避雷針のチャージは完了している。下ろしていた銃口をコーベットに向けると、ヤツも同時に左の掌からビーム弾を撃とうと構えた。だが、ヤツの攻撃はもう喰らわない……! 狙いを定められる前に雷撃鱗を展開し、シアンの力でより強力になった雷撃を放つ。痛みと電気によるショックで動きが止まったところで、避雷針を当てて雷撃をさらに強める。
「嘗めるなッ!」
コーベットが怒号をあげると、アームドスーツの全身に蒼い電流が奔った。その輝きは、この戦いで見た中で一番力強く、バチバチと弾けるような音が部屋中に響き渡っている。
「注意して、GV! あの人の第七波動が、どんどん激しくなってく!」
警戒を促すシアンの声に、ボクの勘も同意する。攻撃に備えて身体を守る電磁場の
煙幕か……。冷静に対処すれば問題は無い。膜の形状と大きさを変化させ、広い範囲を覆って攻撃を感知しやすくする。膜の内側に何かが入れば、見ること無く認識出来るのだ。
ヤツが背後に忍び寄っているのを感じ、振り向きながら身体を深く沈めた。頭の上をブレードが掠めていく。
コーベットは攻撃があっさり避けられたことに動揺しているようだ。視界が遮られていても、ヤツの動きは手に取るように把握できている。反撃に胴体へ避雷針を撃つと、攻撃を当てられないことに焦ったのか斬撃に銃撃も交え始め、追撃が苛烈になった。
……やはり先の怒号から、ヤツは迅さを増している。自分の能力は電子機器を操ることだと語っていた。ボクよりもハッキングや精密な操作に長けているのなら、アームドスーツを操り限界以上に性能を引き出すことも不可能では無いかもしれない。
常に感知範囲を広げているため、EPエネルギーが少なくなってきた……回復を急がなければ。右腕から振るわれる袈裟斬りを、グリップを逆さまに持ち銃身で防ぐ。一瞬だけ雷撃の出力を強め、ヤツの第七波動によるコントロールを阻害してから離れる。コーベットの第七波動も電子に関するものだ。強い電撃を与えれば、ヤツの電流が乱れて能力が使いにくくなるだろう。
予想通りアームドスーツの操作に異常をきたして、上手く動けていないようだ……今の内に、消費したEPエネルギーをチャージする。
「ボクが、ガンヴォルトに劣っているだと……。そんなハズは無い! そんなこと、認められるものか!」
アームドスーツの動きを取り戻したのだろう。幽鬼のようにゆらりと立ち上がり、誰にともなく虚ろな叫びをあげている。しばらく喚き散らした後、再びボクを見据えてきた。どろりと濁り、絶望しきったような眼だ。
「幕を閉じよう……」
轟くは支配者の呼び声
響くは蒼き世界への怨嗟
数多の電子よ境界を超えて従属せよ
「
ヤツの、スペシャルスキル──! 第七波動を強めていたのは、この為でもあったのか!
「GV、避けて!」
シアンの声と同時に、床から現れた光学銃が放たれる。撃たれたのは今までのようなビーム弾ではなく、
気がつくと、ボクの周囲の床や壁が光学銃で埋め尽くされていた。四方八方をヤツに囲まれた形だ。立て続けにレーザーが撃たれる中、時々ミサイルが飛んできて煙幕が張られる。
良くない状況だ。いくら周囲を感知できると言っても、蜘蛛の糸のように張り巡らされたレーザーを避け続けるのは難しい。判断を間違えて、放出されているレーザーに突っ込んでいけば身体が真っ二つになるだろう。EPエネルギーが切れれば、電磁場の膜で攻撃を感知することも出来なくなる。コーベットを直接叩くのが得策か。
「あの人は少し離れたところで力を溜めてるわ。これほどの膨大なエネルギーを食らったら、わたしでも支えられない……!」
「大丈夫だよ、その前に倒す。ヤツはどっちにいる?」
「……あっちに居るよ! GV、急いで!」
シアンが指した方向へと急いで駆ける。彼女の焦り方からすると、あまり時間は残されていないようだ。行く手を阻むように辺りからレーザーが向かってくるが、撃たれる前に角度とタイミングは把握していた。針に糸を通すように正確に、レーザーの隙間を縫って走る。
「消し飛べ──!」
雨のように入り乱れるレーザーを潜り抜けコーベットの前に飛び出る。しかし、もう攻撃の準備は終わっていたようだ。かつて無いほどのエネルギーが、アームドスーツの左掌から放たれた。
視界が白く塗りつぶされるほど大きな光の塊が、ボクを呑み込まんと迫ってくる。シアンの加護を以ってしても、躱すことも耐えることも不可能。ならば、やるべきことは一つ。身体の底から活力を引きずり出し、全身に第七波動を漲らせる。想像するのは、総てを打ち破る蒼き剣。
「迸れ、
煌くは雷纏いし聖剣
蒼雷の暴虐よ敵を貫け
「──
剣として現れ出で実体を持つほどに強力な雷が、ヤツの放ったレーザーを両断する。避雷針を通さぬ強固な武装鎧など意にも介さず、コーベットもろとも斬り裂き穿つ。
この技は体力の消耗が大きいため、持続させられる時間がとても短い。役目を終えた剣が霧散していく。
「無念だよ……」
光が搔き消えて視界が元に戻ると、ヤツの最期の声が耳に入った。皇神の能力者は宝剣と融合して能力を使う。身体にダメージを受けると、宝剣も同じだけ損傷するということだ。上半身を貫かれれば、もはや耐えられない。
限界を超えたダメージを受けて、それを処理しきれなくなった宝剣が能力者ごと爆発を起こす。宝剣だけが解放前の剣の形に戻るが、雷撃鱗に触れると粉々に砕け散った。
宝剣さえ壊せば、敵が生き返るようなことは起きないだろう。戦いが終わって安堵し、力が抜ける。だが、ここは敵の基地だ。休んでる暇など無く、急いで脱出しなければいけない。
「うっ……」
「! シアン!」
移動しようとすると、突然彼女の苦しむ声が聞こえた。姿もどこかノイズが走り、薄れているように見える。
……そういえば、アメノサカホコでシアンの力を借りている時はEPエネルギーが減ることは無かった。ずっと無理に能力を使っていたのか……!
「ごめんなさい、GV……。わたしのせいで、またあなたを……」
「いや、シアンのせいだなんて思ってないよ。大丈夫だ、安心して休んでいて……」
シアンが疲弊した様子で、ボクの内へと戻っていく。ボクはまたシアンを守れなかった……。撃たれることを防げないばかりか、存在が薄れるまでに無理をさせてしまうなんて……!
彼女を守れるのはボクしか居ないんだ。ボクの魂が離れても、この手は決して離さない。例えどんな争いに巻き込まれようと……。