Extra Chapter : 作:回避盾
夕陽が徐々に沈んでいき、空が淡い茜色に染まる。海面に反射する陽光に浜辺が照らされていく中、二つの影が寄り添っていた。
「GV、あなたとここへ来れて良かった……」
「ボクも、キミと旅行に来れて嬉しいよ、シアン」
向かい合う少年と少女──ガンヴォルトとシアンが、熱い視線を交わしている。GVがシアンに微笑みかけた。彼女の顔が熱を帯びていき、胸が激しく高鳴っていく……。
「顔を背けないで……。キミの表情を、もっと見せてほしい」
羞恥に耐えられなくなったのかシアンが俯いていると、頬に手が添えられ、その顔を彼へと向けさせられた。
「は、恥ずかしいよ……GV……」
シアンが潤んだ瞳で訴えかけるが、GVが気にする様子は無い。抵抗をする気が無いと分かっているようだ。次第に彼女の表情が、何かを期待するものへと変わっていく。
「シアン……照れているキミも可愛いよ」
シアンがそっと目を閉じ、無言で懇願している。GVが彼女を抱き寄せ、顔を近づける。そのまま、二人は口づけを──
「シアン、何してるんだい?」
「きゃああっ!?」
机に向かっているシアンに声をかけると、彼女はノートを抱えて椅子から転げ落ち、真っ赤な顔であたふたとし始めた。また驚かせてしまった……。今度からは物音を立てた後に話しかけるようにしよう。
「どどど、どうしたの! GV!!」
ノートを隠すように持ちながら、激しい剣幕で問いかけてくる。何かマズいことをしてしまったんだろうか。
「いや、鼻歌を歌いながら楽しそうに何かを書いていたから気になって……。驚かすつもりは無かったんだ、ごめんよ。ただ声をかけただけだから、心配しないで」
彼女はボクの言葉を確かめるようにうなずくと、深呼吸を始めて落ち着きを取り戻した。
「う、ううん。大丈夫……。あ……あの、今度旅行へ行くプランを二人で練ってるでしょ? その事を日記に書いてたら、段々と楽しみになってきちゃったんだ……。え、えへへ……」
照れくさそうに話してくれる。……彼女はずっと、皇神によって囚われていた。見たことの無い景色を見るということが新鮮なのだろう。色々な場所へ連れていってあげたいな……。ボクたちはもう、自由なんだから……。
「そうか……。実はボクも、あまりそういうものに行ったことが無いんだ。だからシアンとの旅行、楽しみにしてるよ」
「!! う……うん! わたしもすごく楽しみ!
あのね、この前テレビの特集で、すごくきれいな海が映ってたの! 他にも、『遊園地』って場所に行くのとか映画を観に行くのがオススメなんだって!
それと、GVのために早起きしてお弁当作るつもりなんだ。料理についても、色々調べてるの。アジフライの美味しい作り方とか……。この間は、おまけなのに一万円もする栄養ドリンクなんて物があって……」
シアンはとても楽しそうに、旅行や最近のことについて話している。皇神の追っ手に見つかる危険性も多少あるが、彼女が笑顔を浮かべられるなら安いものだ……。フェザーの皆に迷惑をかけてしまうことは、申し訳ないけれど……。
「……でも、GVは明日ミッションに行くんでしょ……? 無事に帰ってきてね……」
「ああ。フェザーからの依頼で、皇神のデータバンク施設を襲撃するんだ」
シアンは、さっきまでの明るさが嘘のように沈んでしまった。心配してくれているのだろう。彼女は、自分が守ってもらっているだけで何もしていないと思っている節がある……今もそう感じているのかもしれない。ボクはシアンにかなり支えてもらっているんだが……。
「……ボクは大丈夫だよ、シアン。必ず無事に帰って来る」
ボクなりに励ましてみるが、シアンはまだ不安そうにしている。どうすれば彼女の気分を晴らすことができるだろうか……。
「……そうだ。また良い宝石を見つけたら、シアンにあげるよ」
「い……いいの? あんなきれいなもの……。もう六つも貰ってるのに……」
「うん……。他でもない、シアンに受け取ってほしいんだ」
「……ありがとう……。GV」
少し元気が出たみたいだ……。笑顔が戻ってよかった。物で釣る様なことしかできない、自分の無力さが恨めしいな……。今度、モニカさんにでも相談してみようか。少しからかわれそうだけど。
チラリと時計を見ると、日付けが変わろうとしている所だった。彼女のため、明日は絶対に死ぬわけにはいかない。早めに眠って備えておこう。
「ミッションがあるし、ボクはもう寝るよ。おやすみ、シアン」
「うん! おやすみ……」
自室に入り、一人考える。
あのノート……確か前にも拾った物だ。ボクの事ばかり日記に書いていた気がする。チラシにサインの練習を書いていた時よりも、凄い剣幕で問い詰めてきていた……。あれよりも見られたくないものなのか……?
一体どんな内容をノートに書いているんだろう。もちろん覗きはしないけど、少しだけ気になるな。
シアンとの心の繋がりを感じた