俺と妹達とアイドルと   作:ユーセー

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29話 失った翼

時は経ち、防衛戦本番の日を迎えた。

 

俺のことを応援するために皆来てくれるらしい。

それが物凄く力になり、絶対に勝てる気がしていた。

 

 

皆には黙っていたんだが、この試合に勝てば俺は更に大きなところで試合をさせてもらえることになっていた。

夢にまで見た…東京の大舞台で….。

 

 

言うならば、今日の試合は俺の夢がかかっている大事な試合である。

絶対に勝たなければいけないんだ。

 

 

ダイヤ「そろそろ行ったほうがいいんではないですか?」

 

ユウ「あ、わりぃわりぃ。そうだな……行ってくる!」

 

ルビィ「お兄ちゃん!応援しに行くから!!絶対勝ってね!」

 

ユウ「うん!わかった!」

 

 

 

 

俺は大切な妹達の頭を撫でてやり、会場へ向かった。

 

 

 

 

 

会場へ着き、試合まではまだ少し時間があったので俺はアップしていた。

 

その時、俺は自分の身体の異変に気付いた。

 

 

首が…痛い。

 

朝から少し違和感はあったのだ。

おそらく前に行われた前哨戦の時のことだろう。

思い切りパイプ椅子で頭を殴られた時、首を痛めたんだろう。

 

いつも以上に首が痛い。

首を徹底的に攻めてくる相手を前にこの状態では…とかなり不安になった。

 

そんな中…本番の時間が近づいていた。

 

 

 

 

 

そしてついに迎えた試合時間。

 

俺は時間ギリギリまで首を冷やしていたが…痛みは引かない。古傷もあるので仕方ないだろう。

 

お互いに入場が終わり…試合が始まった。

 

 

 

 

 

試合の中盤まではお互いに譲らない展開が続いていたのだが……やはり、相手側のセコンドが手を出して来た。

 

1人がレフェリーの気を引き、もう1人が俺の顔面にパウダーをかけた。

このパウダー攻撃が不意打ちだったため、目を開けられず口に入り水分も奪われた。

 

そこからは向こうのやりたい放題。

 

パイプ椅子で殴打。相手側のセコンドの選手の技が入る。

 

 

俺の意識入りここで既に朦朧としていた。

 

そして、挑戦者の雪崩式のパイルドライバーで……

 

俺は完全に意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ますと…そこはかつて俺がデビュー戦の後いた場所。すなわち病院のベッドの上にいたのだ。

 

ダイヤ「あぁ……お兄ちゃん……!目を覚ましてくれた……」

 

ルビィ「お兄ちゃん………何度も心配させないでよぉ……」

 

俺の妹達が大号泣して俺に抱きついてきた。

 

良く話を聞くと、俺はかなり危ない状態だったらしい。

自分では気付かなかったが頭を複数箇所切っており、首も大分やらかしたらしい。

 

そして何より驚いたのは…俺は3日間目が覚めなかったらしい。

 

 

ユウ「ダ……イャ…」

 

やばい。上手く声が出せない。

 

ダイヤ「しゃべらないで…?無理しちゃダメですわ……生きててくれてよかったぁ……」

 

ルビィ「あの試合……あんな酷い試合……許せないよ…」

 

 

 

結果は…俺の負け。

だが相手もかなりの反則行為をした。

もちろんベルトが渡されるわけもなく王座空席。

今は…チャンピオン不在という形になっているらしい。

 

ユウ「負け…ちゃった…」

 

ダイヤ「でも……まだチャンスはありますわ…だから、また私達と一緒に頑張りましょう…?」

 

ルビィ「うん……Aqoursだって…お兄ちゃんと一緒に頑張っていくんだから!」

 

 

そうだ、チャンスはまだ無くなった訳ではない。

それを教えてくれたのはまぎれもないAqoursだ。

 

皆がいてくれれば、これからだって頑張れる!!

 

 

そう思った時だった。

 

医者「あ、黒澤君。目を覚ましたのか!!」

 

ダイヤ「そうなんです!良かったですよ……それで、彼が退院するまでどれくらいかかりますか…?」

 

医者「意識が戻ってくれたんだ。早くて2週間くらいだろう」

 

2週間か……そこからリハビリとかもやっていって…試合の感覚を忘れてしまいそうだ。

 

 

医者「あ、それとだね…黒澤君はレスラーだったよね?」

 

ダイヤ「はい、お兄様は試合でこの怪我を負ったので…」

 

医者「残念だが……復帰は無理だ」

 

 

え……?今なんて…?

 

ユウ「え?嘘……ですよね?皆ちゃんと…リハビリ…して復帰してますし…俺だって……!」

 

俺は声を振り絞り訴えた。

 

医者「……じゃあ試しに手を動かしてみなさい…」

 

そう言われた俺は素直に利き手の右手を動かした。

 

まだ痛みが残っているがそれだけだ。

このくらいならすぐに治るだろう……

 

だが…左手が……全く動かない。

動かそうとはしている。

だけど……俺の左手はそれを拒んでいるのか…もしくはその命令が聞こえていないのか…

 

ユウ「左手が……」

 

医者「やっぱり……首をこれだけ酷くやっているんだ…きっと左手はこれからも自由には動かせないだろう…もちろん、その首もだが…もしかしたら身体全体…これからどうなるかわからない…」

 

ダイヤ「そんな……お兄様は…」

 

医者「プロレスどころか……普通に生きていくのも大変になるかもしれない…」

 

ユウ「そ……んな…」

 

早い。あまりにも早すぎる。

確かに怪我で引退を余儀無くされる選手は少なくない。

 

だけど……まだデビューしたばかりじゃないか!?

これから……大きな夢に向かって進んでいく途中だったのに……

俺の夢物語は…ここで幕を閉じるのか…。

 

 

ルビィ「お兄ちゃん……」

 

医者「でも…意識が戻ったんだ。これからはリハビリや治療に専念して早く退院できるように頑張ろう」

 

ユウ「………はい…」

 

 

医者は部屋を出て行った。

部屋に残されたのは…とても暗い表情の3人…。

 

ダイヤ「お兄様……その……」

 

ユウ「うん…元気付けようとしてるんだよね?俺は大丈夫だから…」

 

なんとか普通に喋れるくらいには意識も回復してきた。

 

ユウ「なぁ……花丸を呼んでくれないか…?お前ら3人に…とても大事な話がある」

 

ルビィ「わかった……電話してくるから少し待ってて…?」

 

ルビィが花丸に電話を入れて数10分後、花丸は到着した。

 

花丸「ユウ!!目を覚ました!!」

 

花丸はすぐに俺に駆け寄ってきた。

花丸の目からは大量の涙が溢れていた。

 

ユウ「花丸……心配かけたな……」

 

 

花丸は…俺が全力で愛している女性。

今後一生こいつの隣にいようと決めていた。

 

だからこそ…言わなければならない。

 

 

ユウ「花丸……別れよう」

 

花丸「…え?」

 

ルビィ「ちょっ!なんで!!またそういうこと!」

 

ダイヤ「ルビィ!!私たちは部屋を出るわよ……ここは…2人の問題です…」

 

ダイヤはルビィを連れて部屋を出てくれた。

 

 

ユウ「……これで2人きりだね…もう一度言う。俺と別れてくれ」

 

花丸「なんで……?この前も言ったよね…?おらにはユウしかいないんだって…!?いい加減怒るよ!?」

 

ユウ「まだ…話してないけど……俺はもうプロレスを続けられない……身体がぶっ壊れちゃったんだよ…普通に動かすのだって……とてもキツイんだ…」

 

花丸「だからなんなの…?おらは……おらはユウの事が好き!!ユウが動けなくなったからって!何もできなくなったからってそんなの関係ない!!!」

 

ユウ「俺は……花丸とずっと一緒にいるつもりだった……だけど…今の俺は…迷惑しかかけられない…。花丸の迷惑には絶対になりたくないんだ……だから…別れてくれ」

 

花丸「ばか!!!本当ばかずら!!!おらはどんなことされても!迷惑かけられても!ユウの隣にいるから!!!ユウがこんなに辛い思いしてるのに……隣にいてあげられないなんて…おらだってそれが1番辛い!!だから!何があってもおらは隣にいるから!!!誰がなんて言っても、これはおらが決めたことだから!!」

 

ユウ「良いのかよ……最悪寝たきりとかになる可能性もあるんだぞ…?」

 

花丸「それを近くで見守ってるのがおらの役目でしょ……?おらの愛は永遠ずら…」

 

ユウ「………後悔しても知らないからな…ばか丸」

 

花丸「あ!!ばかって言ったずら!せっかく良いこと言ったのにー!」

 

ユウ「ありがとな……?」

 

花丸「おらこそ…生きててくれてありがと…」

 

 

ダイヤ「あらあら…お熱いこと…」

 

ルビィ「お兄ちゃんのそばにいるのは私達もだからね?皆でお兄ちゃんを支えていくから!」

 

ユウ「え!?お前ら聞いてたの!?」

 

ダイヤ「あんなに大きな声で話してたら誰にだって聞こえますわよ……ばかユウ?」

 

ユウ「ばかって言うな!そしてからかうな!!」

 

花丸「でも……元気そうでよかった……」

 

ダイヤ「そうね……面会時間もそろそろ終わるから…私達は帰りますわね?」

 

ユウ「おう、また来てくれよ」

 

ルビィ「うん!今度は皆で来るからね!」

 

そう言って3人は帰っていった。

 

 

 

花丸の件は…あっさり解決した。

やっぱ…あいつを選んで正解だった。

俺は……一生尽くしていこう。

 

 

 

ただ……レスラー人生を強制的に終わらせられた俺。

その傷が浅いわけもなく……

 

その夜…俺は1人でずっと泣いていた…。

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