ファイナルファンタジークリスタルクロニクル~悲恋~   作:雪高

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第2話「失踪」

馬車をひく音が聞こえる。

馬車の中には私と、ム・ジカ、クレアがいる。

シーベークはいつものように馬車をひく係だ。

「ふう。なんとか今年も溜まったな」

ム・ジカが重そうなクリスタルゲージを抱えて言った。

ティダの村の話をしてからの数日後。

今年は幾度となく好調であり、すぐに溜める事が出来た。

「これで帰ったらしばらくは旅もお休みね」

クレアは伸びながら言った。

これで1年間は安心だと思うと、一気に疲れが出た。

「私はもう少し、旅を続けたかったですね。色んな場所の観測したかったです」

「おいおい…。エリンの時に説教していたシーベークが何言ってんだよ」

ム・ジカがそう言うとシーベークは「忘れてました」と冗談をいれながら答え、

ム・ジカ、クレア達はゲラゲラと笑っていた。

この楽しい時間がいつまでも続けばいいのに。私はいつもそう思う。

 

瘴気を無くす方法を全種族の人々、全街・村の人々が考えており、未だその謎を明かされていない。

結局のところ、何年も瘴気に冒されるこの世界の理に従って、私達はまた終わらない旅を続けないといけないのだ。

勿論旅は危険な事だらけ…いつティダの村のようになってしまうのかと思うと、私は怖いと思う事が何度かある。

「大丈夫よ、エリン。そんなに怖がらないで。モンスターも強い奴ばかりじゃないし、物騒な所は行かなければいいだけよ?」

浮かない顔をしていたのか。クレアが察するように私を肩をポンと叩きながら言った。

「うん…それはわかっているんだけど…」

私はどうにも気がかりな事があった。

 

それは数日前にティダの村について語った時。

あのボロボロの手紙を話した時からである。

あの時からセシルやル・ティパさんの事が気になって仕方がなかったからだ。

「やっぱり、気になってんのか?マール峠のー」

「セシルさん?」

クレアとム・ジカが続けて言った後に、私は「うん」と小さくつぶやき頷いた。

マール峠の村長であるセシルさんが、数日前から行方不明になっていた。

妙な事に私が落としたボロボロの手紙を読んだ後から、少し様子がおかしかったらしい。

「孫娘さんにも聞きましたが、まだ見つかっていないようですね…」

シーベークも気になっていたようだった。

「しかし見つかっていないだけで、どこかにいると思いますよ。瘴気の中でどこにも行けないでしょう」

確かにそうだ。

私達にとって瘴気は毒だ。

そんな中、どこかに出かけるなんて、自殺をするようなものだ。

「結局ティダの村の事も噂ですからね。エリン?気にしないように」

私がこの間からこの事について責任を感じているのをわかっていたのか。

シーベークは私を慰めるように、優しく言った。

「うん、ありがと。大丈夫だから」

しかし…本当に噂なんだろうか。私はそんな事ばかり思っていた。

 

アルフィタリア城下町の近くを通ろうとしたその時だった。

城下町の近くには、数日前やついさっき話題になったティダの村がある。

その近くで、なにやら騒いでいる人がいた。

シーベークはその騒ぎに気づき、急いで馬車をとめた。

「ただ事ではないですね…」

シーベークがそう言うと、騒いでる方を見た。

そこにはなんと、マール峠のクリスタルキャラバンの他。

セシルさんの孫娘さんや、ルダの村のクリスタルキャラバン達が集まっていた。

「シーベーク…」

私は嫌な予感がした。気持ちを察してくれたのか。彼らの近くにまで馬車を進めてくれた。

 

「でも、ここで見たと聞いたんです」

「しかしな、ここは何もないはずだぞ」

「私達もおかしらがここにいたって噂を聞いたんだ!」

「おい。ゲージを持っているから、この子を連れてっても大丈夫だろ。何でダメなんだよ」

「いや、民間の人を巻き込むわけには」

マール峠のリルティ族のクリスタルキャラバン ロルフ=ウッドさん。

城下町のリルティ族のクリスタルキャラバン ソール=ラクトさん。

ルダの村のセルキー族のクリスタルキャラバン ハナ・コールさんとダ・イースさん。

そして、マール峠のセシルさんの孫娘 クラヴァットのラシェさん。

それぞれ囲うように集まっており、何やら言い争いのように騒いでいた。

 

「どうしたんですか?」

私は真っ先に降りて、ソールさんに事情を聞いた。

「おお。エリン殿。それにティパの村の皆さん!」

ソールさんは敬礼をした後、かしこまるように言った。

「実はこちらのラシェ殿が、マール峠の長であるセシル殿を見たと言っておられるのです」

「え…?」

私は少々困惑したが、ラシェさんが続けた。

「数日前におじいちゃんがいなくなった事は知っていますよね?しばらくして、峠に来たキャラバンの人達が言ったんです。ティダの村に入って行ったって」

シーベークやクレア、ム・ジカ達もその話聞いて真っ青になっていた。

「おい、何かの冗談じゃねえのか?」

「冗談でこんな事言いません!」

ラシェさんはム・ジカを怒鳴りながら言った。

「実はな。セシルさんを見かけた話は俺らも聞いた事があるんだよ」

ロルフさんがラシェさんをおさえるように言った。

「なんでも数日前にここに来たと言っている奴が何人もいてな。それで俺達が調べようとしているんだが…」

 

「ハナ・コールさん達もここにいた、と言うわけですね?」

しかめ面のハナ・コールさんを見ながら、私は言った。

「そうよ。でも私達がここに来たのは、おかしらがここにいるからって聞いたから」

おかしらと言うのは、ル・ティパさんの事だ。

彼女達ルダの村の人は、ティパさんの事をおかしらと呼んでいる。

「おかしらが知らない間にキャラバンの馬車に乗って、ここにきたって話を聞いたからね。俺達も心配でここにきたんだ」

ダ・イースさんがいつになく、不安な顔をしていた。

いつもは陽気に話しかける彼も、さすがに困惑していたようだった。

「そしたら、ソールさんが頑固でね。通してくれないんだ」

ダ・イースさんは意地が悪そうに言った。

 

「民間の方をここに入れるわけには行かないんだ。ロルフ殿。ラシェ殿を連れて早急に帰還してほしい」

「そうは言っても、クリスタルキャラバンの俺達が入れば安全だと思うんだが…」

ソールさんとロルフさんはラシェさんが中に入れて欲しいと何度も頼んでいるのを見て、どうするかと言い争いをしていた。

「おじいちゃん、このままだと大変な事になりそうで怖いんです!…昔、ここで…」

ラシェさんが何かを言いかけた。私は心が揺らいだ。ここでって…?

「ここで…?どうしたんですか?」

私は気になって訊いた。

 

「おじいちゃんから誰にも言うなと言われました。…でも、何だか嫌な予感がしてならないので話します…」

ソールさんとロルフさんは言い争いをやめて、ラシェさんの方へ向いた。

「おじいちゃん。数年前、ティダの村で生活していたんです…」

私は何かを感じるように頭が揺れるような感覚を感じた。

「数年前に?数少ない生き残りだったのですか?!」

ソールさんが困惑しながら訊いた。

「はい…。何十年も前、ティダの村が崩壊しかけた時。おじいちゃんはある女の人の事を好きになっていたようです。一緒に脱出しようと思い、彼女の事を探したみたいで、結局その人は見つからなかったみたいです…でも最近ある手紙を見て、ここに来る事を決心したみたいなんです」

ある手紙…。

「それって…」

私はボロボロの手紙をラシェさんに見せた。

「…そう。きっとこれ…です」

ハナ・コールさんが手紙を覗くように見ていた。

「ねえ。これ、おかしらの字じゃないの?」

「…そうだ。おかしらの字だ!」

ダ・イースさんとハナ・コールさんが言った。

困惑していたが、この字はティパさんので間違いないらしい。

「やっぱりおかしらはクラヴァットだったんだね。前からおかしいとは思っていたんだ…セルキーっぽくもない人だったから」

 

…。

2人きりでここに来た。そして瘴気の中の村にいる。2人はティダの村の生存者。

2人の因果を結ぶのはあの手紙。

私はここで嫌な予感がし、ム・ジカの持っていたゲージを奪ってティダの村にまで走って行った。

「!?エリン!どこに行くんだ!」

ム・ジカがあっけにとられながら、私に言った。

「手紙を見せたのは私のせいよ…だから、私にも責任があるの!何だか嫌な予感がする…ごめんなさい!」

ソールさんを払いのけて私はティダの村まで行った。

「お、おい!」

「エリン!待って」

「すみません!ここで待っていてもらえませんか?」

「お、おい!君達!」

ム・ジカ、クレア、シーベークは私の後を追いかけるようについてきてくれた。

私は申し訳なくなって、振り向き謝った。

「みんな…ごめん…」

「良いよ。別に」

ム・ジカが言った。

「それよりもさ。早く行こう?」

クレアは私の泣きそうな顔を見ながら、優しく言った。

「ここに何事もなければ、それで良いんですけどね…」

シーベークはあたりを見回すと、不安そうに言った。

私の嫌な予感は…あたってしまったのだった…。

 

 

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