ファイナルファンタジークリスタルクロニクル~悲恋~ 作:雪高
今年ももう終わりだ。
ティパの村は私達が帰ってきた事で、いつもの宴の準備をしていた。
ゲージは一杯で、今年も無事帰ってこれた。
何も悲しい事はない。何も心配する事もない。楽しい時間の始まりだ。
でも私の心は、いつまでも晴れなかった…。
ティダの村からセシルさんとティパさんの遺体を見つけたその後。
ソールさん達がいつまでも帰ってこない私達を心配しに来た。
ティダの村から遺体を運び出すと、ラシェさんは泣いていた。
ハナ・コールさんとダ・イースさん達も泣いていた。
ラシェさんは「おじいちゃん」と何度も呼びかけ、ハナさん達は「おかしら」と何度も呼びかけ。
いつまでも返事をしない2人に呼びかけていた。
「あとの事は私達に任せておいてくれ」
ソールさんとロルフさんがそう言い残し、私達はティパの村へと帰ってきた。
ティパの村での宴をする準備の最中。
「エリン。この手紙を」
とシーベークが私の家にやってきた。
「これは?」
「ラシェさんからです」
ラシェさんからの恨みの手紙だろうか。
私は不安になりながら開けてみた。
『エリンさん、お元気ですか?
おじいちゃんの事、どうか自分だけを責めないでください。
おじいちゃんが残してくれた多くの思い出はなくなりません。
そして、おじいちゃんとティパさん。
2人の想いも永遠に消える事がなく、ようやく巡り会えた事。
本当にありがとうございました…エリンさんのおかげで、おじいちゃんはもう一度。
自分の好きだった人とめぐりあえたんです。
ありがとうございました…。おじいちゃんも後悔してないと思います…。
だから自分だけを責めないで。本当にありがとうございました!』
手紙には何度も滲んだ後があった。
「…こんなのずるいよ」
「でも貴方の持ってきた手紙。あれのおかげでまた巡り会えた。とっても素敵な事だと思いますよ…」
私はシーベークの持ってきた手紙を何度も読み、何度も泣いていた。
ただただ後悔しか残っていない私は、いつまでも自分の行いを責め続けた。
「きっとこれで良かったんですよ…。きっと誰だって、わからないままで終わるのは嫌なはずです。巡り会えた事こそ、素晴らしい事ですよ…」
シーベークは何度も励ましてくれた。
私は泣きながら、頷くだけだった。
今年ももう終わる…。またクリスタルキャラバンの旅へと旅立つんだ…。
ミルラの雫をあげる宴の中。
ム・ジカ、クレア、シーベーク達は私を励ますように、何かを言おうとしていた。
「大丈夫だよ。もう大丈夫」
「お、おう。そうか」
突然私が笑顔になったのが驚いたのか。ム・ジカは少々冷や汗をたらしながら言った。
「エリン。あの後ラシェさん以外にも、ハナ・コールさんの手紙も来たんです。おかしらの最期のお願いを叶いてくれてありがとう、と」
「え、それだけ?」
なんともハナさんらしい手紙だった。
私はぷっと吹き出してしまった。
「誰もが皆、永遠をわかちあえるわけじゃない。最後の最後に出会えたのは、彼らにとっても良い事だったはずです」
「うん…大丈夫。もうわかっているから…」
シーベークの説教じみた言葉を深く考え、私はまた泣き出しそうだった。
「ね。エリン。セシルさん達やっぱりティダの村の生存者だったらしいの」
「う、うん?」
クレアが言った。
「その日、彼らは結婚しようとしていたらしいの。でも、願いは叶える事が出来なかった…。クリスタルキャラバンが帰還出来なかったからよ」
「…」
「もしこのまま、本当の事を知らずに、あの手紙の事をわからないまま。過ごしていた方が良かったと思う?」
始まりはあの手紙だ。私はあの手紙を拾わなければと思っていた。
でも、今はそうは思わなかった。
「いいや…思わない。何となくわかったの。これで良かったんだろうなって…ラシェさん達も言っていたからさ」
私は泣きそうな目をこすりながら、クレアに言った。
「そ。きっとこれで良かったんだよ。永遠に邪魔される事なく、ようやく結ばれたんだからね」
クレアはまた肩をポンポンと叩きながら励ましてくれた。
あの手紙がなかったら永遠に知らずにいた事実。それはほっておけば良かったのだろうか。
いいや。知らせていた方が良いと思う。
2人の気持ちが永遠にわからないままにしてはいけないと思う。
何だかそんな事を私は思っていた…。
「ま、まあ、元気になってよかった。それよりも、来年も行くだろ!クリスタルキャラバンの旅!」
「全くアンタは…空気読めよ」
なんだと!とム・ジカはムキになったように怒りながら答えた。
今年ももう終わり、また新しい旅が始まる…。
また皆と旅が出来るのだろうか。
皆と暮らせられるのだろうか。
そんな事を思いながら私は、星空を見ていた。
きっとティダの村の宴もこうだったに違いないと思った。
「来年も、皆と一緒に、これからも一緒に旅できると良いね!」
皆にはちょっとだけ笑われたが、それでも私はそう思った。
新しい旅に向けて、また旅立つのだった。