南洋海戦物語〜人類の勇戦譚〜   作:イカ大王

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ネルソン作ったりドレッドノート作ったりジェガンコンロイ機作ったり、アニゴジ見たり、後期中間試験あったりして遅れました!

このような長期休暇はほどほどにします!


あ、でもこの機会に今後のストーリーとか再構成できたからプラスだったかにゃ❓(アホ)



第四十七話 死闘ルソン上空

1

 

「右上方。敵機!」の報告が響いたのは、第一次攻撃隊がTF16と一航艦を発進して一時間半ほど進撃した頃だった。

 

 

その報告がレシーバーから響いた時、第一次攻撃隊の総指揮を執るミハエル・リーチ第5偵察爆撃隊隊長は、ドーントレスの操縦桿を握りながら右上方を見やる。

 

「遅い。そして少ないな」

 

リーチは一目で敵編隊の規模を把握し、ボソリと呟いた。

 

 

ーー現在の攻撃隊の位置は、ルソン島よりの方位90度、40浬。攻撃目標たるバレル飛行場姫はルソン島東岸の海岸線上に位置しているため、「ルソン島との距離=飛行場姫との距離」になる。

すなわち、飛行場姫との距離は40浬(約74km)と考えて良い。

 

この距離は航空機にとって目と鼻の先だ。

 

加えて、敵編隊の規模も小さい。

甲型戦闘機の機数は二十機に満たず、こちらのF4Fと零戦の機数が敵機を圧倒している。

極東最大の敵拠点を攻めているとは思えないほどの戦闘機の少なさであり、迎撃に上がってくるのも遅い。

 

リーチとしては、拍子抜けもいいところだった。

 

(単にバレル飛行場姫の規模が予想より小さかったのか…。それとも別の空域にオスカーを上げたのか…)

 

そのような憶測を脳内で渦巻かせながら、リーチは無線機を握る。

 

「『ミカエル・リーダー』より『ヴィネット1』。F4Fを差し向けろ。ただし深追いはするな。追い払うだけでいい」

 

第一次攻撃隊のF4F隊を率いるヴィネガー・ヘルス少佐を呼び出し、指示を飛ばす。

 

その直後には「『ヴィネット』了解」の返答が返され、「ヴィネット」こと「ホーネット」戦闘機隊と「ラフィエル」こと「エンタープライズ」戦闘機隊から、十機ずつのF4Fが編隊を離れ、接近中のオスカーに向かってゆく。

 

「日本軍編隊は、戦闘機を差し向けないようですね」

 

リーチ機の後部座席に座っている偵察員のサンダース・キャメロン少尉が、双眼鏡を見ながら言った。

 

「それでいい。敵機にはF4Fで十分だ」

 

リーチはそう言って、編隊の左正横に首を向ける。

視線の先には、緻密な編隊を組み、リーチ率いるアメリカ海軍攻撃隊に並走している日本海軍攻撃隊の姿が見えた。

 

九九式艦上爆撃機と零式艦上戦闘機で構成されており、その精悍な姿は日本海軍がいかに精強で頼りになるかを示しているように思えた。

 

編隊を離れたF4F群は、敵機と交戦に入る。

 

攻撃隊の右前方空域で空中戦が始まるが、敵機は攻撃隊に向かって来る様子がない。F4Fとの戦闘で手一杯のようだった。

 

第一次攻撃隊は、右に空中戦を望みつつ、進撃を続けた。

やがてF4Fとオスカーの空中戦は後方に過ぎ去り、見えなくなる。

 

それと変わるようにして、攻撃隊正面にルソン島の濃緑の巨体が、その姿を横たえ始めた。

 

 

2

一方その頃…

 

 

「しめた!」

 

雲海の上を通過したのちに機体下方に広がった光景を見て、高雄航空隊飛行隊長の高嶋稔(たかしま みのる)少佐は、軽く喝采をあげた。

 

 

現在の高度は四千m。

 

台湾より発進した第一次攻撃隊の遥か下、高度一千mの空域では、「アイ・フィールド」こと逆探搭載型B17部隊の救援に向かったP38隊と、百機を超える甲型戦闘機の熾烈な空中戦が繰り広げられている。

 

第一次攻撃隊の迎撃に上がった甲型戦闘機は、低高度を飛行する「アイ・フィールド」部隊に引きつけられ、「ドラゴン」本隊や、高雄空をはじめとする日本編隊に近づいてこない。

「アイ・フィールド」のB17やP38には申し訳ないが、図らずとも彼らが囮の役割を果たしてくれているのだ。

 

 

日米混成の大編隊は、空戦を眼下に望みながら、夜明けから一時間ほどの空を突き進む。

高度差がかなりあるためだろう、下方で交戦中の甲型戦闘機は上昇してくる様子がない。P38への攻撃に徹するようだ。

 

「まだ来るな」

 

「そうですね」

 

高嶋の言葉を、副操縦士の山上直樹中尉が肯定する。

こう考えているのは高嶋らだけではないだろう。「ドラゴン・リーダー」こと編隊の総指揮を執るアルヴィス・ハート大佐や、各海軍航空隊飛行隊長、陸軍飛行戦隊戦隊長も、これらの敵機が深海棲艦の発進させた迎撃機のすべてではないと確信している。

 

先の甲戦百機が第一次迎撃機隊なら、必ず第二次が来る。

 

台湾で深海棲艦と対峙してきた彼らにとって、飛行場姫の迎撃がこれだけではないといことは、共通の考え方だった。

 

それが正しいことは、まもなく判明する。

 

予定の空域で二十機前後のB17が、バブヤン島の敵レーダー・サイトを攻撃すべく編隊を離れた直後、高嶋の目に「それ」は写った。

 

第一次攻撃隊の正面に、多数の黒点が見える。

距離が詰まるに連れてその黒点は数を瞬く間に数を増やし、輪郭もはっきりとしてくる。

双眼鏡を正面に向けて「敵機」だと確認した高嶋は、無線電話機の周波数を隊内から攻撃隊全体に切り替えて、ゆっくり落ち着いた声をマイクに吹き込んだ。

 

「『アーチャー1』より全機。編隊正面に敵機。数約二百」

 

その言葉で、全体に緊張感が広がる。

こちらの護衛戦闘機は、零式艦上戦闘機百二機、P38が九十九機、内P38の半数は編隊を離れて第一迎撃機隊と交戦中だから、手持ちの戦闘機は百五十機ほどだ。

 

(大丈夫だ…)

 

高嶋は目まぐるしく思考を巡らせてながら、胸中で呟いた。

 

零戦とP38が甲戦の百五十機を牽制できると考えても、残りの五十機はこちらのB17、一式陸攻、九六式陸攻、九七式重爆の弾幕射撃で対応できる。

 

 

高嶋は操縦桿を握りながら、左右や上方に目を向ける。

視界には、「コンバット・ボックス」と呼ばれる第八航空軍考案の防衛陣を敷いた爆撃機群の姿が見えた。

 

三機1組で三角形を作り、それら何百組を上下左右に緻密に組み合わせ、一つの集団とする編隊編成方法である。

各爆撃機の死角を僚機が補えるように組み合わせられており、護衛戦闘機隊を突破した敵機がいても、接近すれば死角なき銃火の弾幕が迎え撃つようになっている。

さらに米軍、日本海軍、日本陸軍の爆撃編隊はそれぞれ別の梯団ではなく、三軍合同で一つの巨大梯団を組んでいる。

 

第一次ルソン島沖海戦の時に発生したルソン島航空攻撃では、日本軍と米軍は別々の梯団を組んでおり、敵の迎撃隊が最初に米編隊を襲っても、日本編隊は援護することができなかった。

 

今回の航空攻撃では、その時の戦訓が生かされているのだ。

 

高嶋がそんなことを考えているなどいざ知らず、制空隊として、梯団の周囲を固めていた百二機の零戦がフルスロットルを開く。

半ばからになっていた増槽を切り離し、「誉」発動機の頼もしい爆音を轟かせながら、梯団の先頭に位置している高嶋機を追い抜かし、自らの二倍の数の甲戦に斬りかかっていく。

 

それと同時に五十機ほどのP38が、高嶋機の周辺ーーすなわち梯団の前面に展開し、直掩隊として接近してくる甲戦に目を光らせる。

 

改めて命じることは何もない。

 

台湾を発進した時から戦闘態勢は整っており、各銃座には常に兵員が取り付いている。

「敵機を無事に突破し、クラーク・フィールド飛行場姫に投弾する」

今集中すべきことは、その一点のみだった。

 

額に汗がつたるのを感じつつ、再び双眼鏡を正面に向けた。

 

丸い二つの視界の中に零戦と甲戦が見えた刹那、敵味方の編隊が一斉にばらけ、熾烈な空中戦が始まる。

早くも被弾する機体が出たのか、粉々に砕け散る零戦がいれば、真っ赤な炎と黒煙を引きずりながら墜落する甲戦も見える。

 

 

だが、攻撃隊を付け狙う敵機は、正面の敵編隊だけではなかった。

 

 

「『ドラゴンC28』より全機。後方下方よりも敵機!さっきの奴らだ!」

 

 

無線機からその言葉が飛び出すや、高嶋は舌打ちをしながらバックミラーを覗いた。

ミラーには味方機と雲しか見えないが、敵機が後方から近づいて来るのは間違いないようだ。

後方の味方機集団は、徐々に機体間隔を詰めており、明らかに敵機を警戒している様子である。

 

高嶋は敵機がどこから来たか目星がついていた。

分離したP38隊が相手取っていた敵編隊から、隙を見つけて抜け出してきた敵機だろう。

機数はわからないが、前と後ろから挟み撃ちにされては、いかに「コンバット・ボックス」といえど被害は増えてしまうだろう。

高嶋の焦慮の念は、徐々に高まってきていた。

 

 

梯団前面に展開した直掩隊から、十数機のP38が機体を翻し、爆撃機とすれ違いながら後方に飛ぶ。

米戦闘機隊の指揮官は素早く現状を理解したようだ。分離した双発双胴の重戦闘機は、後方から出現した敵機に斬りかかっていく。

 

「隊長。来ます!」

 

山上が叫んだ瞬間、高嶋は反射的にバックミラーから目を離し、機体正面に視線を向けた。

敵味方入り乱れる大空戦の中から、確認できるだけでも四十以上の敵機が、散り散りになりながらも抜け出す。

 

相手取った敵機の数は、零戦の二倍だ。

百戦錬磨の零戦でも、全ての敵機を封じ込めるのは至難だったようである。

 

その敵機に対応すべく、直掩隊が動く。

後方から接近中の敵機に何機か回したため、三十機ほどに減ったP38が、エンジン音を猛々しく鳴り響かせながら甲戦に突進した。

 

その刹那、高嶋は攻撃隊正面下方に、濃緑色のものが見えることに気づいた。

フィリピン北方に点在するバブヤン諸島の島々ではない。

それとは比べ物にならないほど巨大であり、見える限り南東西に大地が広がっている。

 

雲が多く、この高度から全体は把握できないが、まぎれもない。「ルソン島」であろう。

深海棲艦機に集中しすぎて気づかなかったが、攻撃隊はとっくにルソン島を視認できる位置まで到達していたのだ。

 

「帰ってきた」

 

意識せず、高嶋の口からはその台詞が漏れる。

本来、高嶋の故郷は日本であり、ルソン島などではない。

だが、半年前のルソン島攻撃の戦闘がよほど記憶に残っているのだろう、再びルソン島に飛来したことを、なぜか懐かしく感じたのだ。

 

「右前方、敵機!」

 

「左前方からも来るぞ‼︎」

 

無線機に爆撃機パイロットの怒号が飛び交う中、高嶋は冷静に敵機の動きを観察している。

見たところ、制空隊、直掩隊共に敵戦闘機との戦闘に巻き込まれており、これ以上の援護は期待できないだろう。

ルソン島上空に進入してからは、爆撃機群は弾幕射撃で対抗するしかなさそうだ。

 

直掩隊を突破した十機前後の甲戦が、高雄航空隊含む日本編隊に突入してくる。

その後方からは二機のP38が追撃しているが、距離があるため、いかに零戦以上の高速機でも追いつけていない。

制空隊、直掩隊を突破した以上。頼れるのは、味方爆撃機と共に撃ち出す弾幕射撃と、みずからの操縦技術だけだ。

 

「『アーチャー』全機。撃ち方始め‼︎」

 

頃合いよし、と判断し、高嶋は部下の陸攻に下令した。

直後、高嶋が操る一式陸攻の機首、胴体上の二箇所の銃座から、直径20mmの火箭が吐き出される。

リズミカルな連写音が機内に鳴り響き、青白い曳光弾が近づいて来る敵機に伸びた。

それを皮切りにして、上下左右後方をつづく部下の一式陸攻も、次々と機銃を発射する。

 

無数の機銃弾が敵機に殺到した時、高雄航空隊以外の部隊も対空射撃を開始していた。

B17から発射された12.7mm弾、一式陸攻、九七式重爆から発射された20mm弾、7.7mm弾。それら全て、凄まじい数の機銃弾が、甲型戦闘機を押し包むように殺到する。

 

十数機いた甲戦は、瞬く間に半数以上が被弾した。

 

20mmの大口径弾によって、とんがった機首をえぐられた甲戦は、見えない壁に激突したかのように機体が瞬時に変形し、粉々に砕け散ったと同時に爆発する。

複数の小口径弾に捉えられた敵機は、白煙を機体中から吐き出しながら高度を落とし、無数の火箭をかわそうと左右に旋回した甲戦は、さらけ出された横腹に多数の機銃弾を叩き込まれる。

 

残った敵機は弾幕射撃に恐れをなしたのか、急降下しながら攻撃隊下方の雲に消える。それを追って、P38も雲へと消える。

 

「よし!」

 

それを見て、高嶋は喝采を上げた。

弾幕射撃だけで、敵機の初撃をしりぞけたのである。

 

この調子でいけば、低い損害でクラーク・フィールド飛行場姫にたどり着ける。そうすれば爆弾の投下量も増え、クラークといえど徹底的に破壊することができる。

高嶋の心には、その希望が芽生え始めていた。

 

下方に抜けた敵機を見ようと視線を下げると、下が海面ではなく深緑の陸地になっていることに気づく。

 

台湾から発進した攻撃隊は、ルソン島上空に到達したのだ。

ここに至るまでに、飛行場姫攻撃を担当する味方爆撃機は一機も墜とされていない。

このことが、高嶋の希望に拍車をかけていた。

 

「『ドラゴン・リーダー』より各機。右前方および左前方より、新たな敵機接近。『ドラゴンA』『ドラゴンC』は右前方、『アーチャー』『セイヴァー』『アタッカー』『シューター』は左前方。他は後方の敵機に対応せよ」

 

それが耳に入るや、高嶋は右前方と左前方を交互に睨みつけた。

 

通信の内容通り、右から二十、左から三十前後の敵機が近づいて来る。

正面からの弾幕射撃が強烈だと知って、迂回するとともに、左右に分かれて火力分散を狙っているのだろう。

 

「ドラゴン・リーダー」こと攻撃隊総指揮官のアルヴィス・ハート大佐は、「ドラゴンA・C」こと第85、第101爆撃航空団の弾幕を右前方へ、「アーチャー」「セイヴァー」「アタッカー」「シューター」こと高雄航空隊、三沢航空隊、鹿島航空隊、飛行第十四戦隊の弾幕を左前方へとさし向けることを指示したのだ。

 

「『アーチャー』全機。目標、左前方から接近中の敵機。射撃開始!」

 

高嶋が無線機に怒鳴り込んだ直後、指示を受けた各機が一斉に発砲を開始し、二回目の射撃戦が始まる。

 

先陣切って突撃していた甲型戦闘機に火力が集中され、まとまって直撃した機銃弾によって、その甲戦は木っ端微塵に粉砕される。

その直後、二機目の甲戦にも火力が集中され、数秒とたたずに一機目の後を追う。

 

そのほかにも、翼をもぎ取られ、機載機銃を吹き飛ばされたりして墜落する甲戦が多発するが、およそ四割の敵機は怯まず突っ込み、陸攻に狙いを定めて真っ赤な発射炎をにきらめかせた。

 

甲戦が放つ20mm弾が、とある一式陸攻に命中する。

 

一条の火箭が左主翼からコクピットにかけて貫いた直後、左主翼が根元からちぎれとび、真っ黒な黒煙とキラキラしたものが空中に飛び散った。

直後、その陸攻は片方の揚力を完全に失い、錐揉み状態になりながら落下していく。

 

もう一機の一式陸攻は、すれ違いざまに数十発の20mm弾を機体後尾に叩き込まれた。

水平、垂直の両尾翼をほとんど同時に吹き飛ばされ、著しく機体の安定を失ってしまう。

そこにトドメというべき一連射が加えられ、燃料タンクに被弾したのか粉々に爆散する。

 

三機目の被弾機は、一式陸攻ではなく九七式重爆だった。

この重爆は全ての旋回機銃を振り立てて敵機を近づけまいとしていたが、一瞬の隙をついて接近を許し、右主翼の一番エンジンを敵弾にえぐられた。

ジュラルミンや油、どす黒い煙を撒き散らしながらも、一番プロペラは不安定に高速回転を続ける。

それが危険だと判断したパイロットはエンジン停止を試みたが、燃料をカットされ、発動機が停止する前に、プロペラが軸から外れ、高速回転したまま横に移動して機首に直撃した。

ガラス張りの機首爆撃席に座っていた爆撃手は瞬時に絶命し、二人のパイロットも高速回転に巻き込まれる。

 

自らのプロペラによって機首を切断され、パイロットが戦死した九七式は、原型を留めてない状態で急速に高度を落とし始めた。

 

「『セイヴァー7、12』被弾!『シューター8』被弾!」

 

左側面の7.7mm機銃を担当する兵が報告する。

 

三機の爆撃機が墜落している頃、左前方から飛来した甲戦の編隊は、高速ですれ違い、後方に抜けている。

銃火に身を晒す時間を最小にするためだろう。敵機は一撃離脱戦法を使用しているようだった。

 

右方向を見ると、数機のB17が黒煙を引きずりながら高度を落としているのがわかる。

米軍も、無傷とはいかなかったようだ。

 

高嶋は周囲を見渡した。

次の攻撃がどこの方向から来るか、早めに把握しておこうと思ったのだ。

 

だが、爆撃機梯団に向かって来る敵機はいない。

どの甲戦も、P38や零戦との戦闘に忙殺されているようだ。

 

高嶋は敵機が接近してこないことを確認すると、双眼鏡を手にとって機体正面に向ける。

望み薄だろうが、クラーク・フィールド飛行場姫が視認できるか?と思ったのだ。

 

 

だが当然、目標は見えない。

 

高嶋が軽くため息をついて双眼鏡を下ろそうとした時、高嶋の目線は視界内の一点で止まった。

一瞬、ルソンの濃緑の大地が大きく盛り上がったように見えたのだ。

疑問に思った高嶋は、ルソン島の大地を双眼鏡で凝視する。

 

「な……⁉︎」

 

そして視界に映ったものを見て高嶋は驚愕し、身体が凍りついた。

 

「どうかしました?」

 

山上が聞いてくるが、高嶋は無視して無線電話機に切迫した声を吹き込んだ。

 

「『アーチャー1』より全機。編隊正面下方に敵機!上昇してくる!」

 

高嶋が再び機体下方を見やると、二百機以上の甲型戦闘機が攻撃隊目指して上昇して来るのがわかった。

 

 

 

 

その敵機は、全てが緑を基準とした迷彩に包まれていた。

 

 

 


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