時は8月、暑さも冷めやらぬ夏の中頃。
鮮やかな夕暮れの陽射しが
窓から執務室へと射し込んでいる。
俺は残った書類作業を終えて、
長年の付き合いとなって久しい少女[Z3 マックス]に視線を向けた。
首筋で綺麗に切り揃えられた赤毛は
陽に照らし出され一層に深みを帯び、
小さな体躯から窓の縁に掛けられた手指は幼さを感じさせられる。
この頼りになる彼女が俺の部下となって既に8年にもなる。
8年間という歳月を長いと感じるか、
短いと感じるかは人にも依るのだろうが
俺からすればあっという間であった。
記憶を思い返しては、ふっと笑みがこぼれるのを肌で感じる。
視線に気付いたのだろうマックスは俺へと振り向き
柔らかく微笑んでくれた。
「どうしたのかしら、提督」
「ははっ…いや、絵になっていたなと思ってね」
席から立ち上がりながら近付き、俺がそう冗談めかして
口にすれば彼女は少しぽかんとしたあと、
白い肌を赤らめて不服だと言わんばかりに見上げてくる。
普段から無表情な彼女がふと魅せるそんな仕草。
そうしたギャップもあって彼女を堪らなく愛おしいと感じてしまう。
抱き締めたくなる己が安易さを自制しなくてはならない。
「…提督?」
俺を気遣う寂しげな表情を浮かべているマックスに
何ともいえない痛痒を感じ、心配させないように笑いながら
髪を梳くように優しく頭を撫でた。
俺が彼女に抱くこの感情は決して許されるものではないのだと。
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肌が紅潮するのが自分でも分かり、
夕焼けが隠してくれる事を祈りつつ彼を見上げる。
日本人離れした精悍な顔立ちに、若くして白髪混じりの髪に
皺一つない汚れ一つない白い二種軍装をきっちり着こなした男性。
私が、彼と出会って長くも短い8年間。
兵器としての私は歳をとらないし子を残すことも出来ない。
そういう意味で私には長く感じた。
人間であることを捨てた時、覚悟していた事だけれど。
だから…ねぇ、そんな思い悩む
貴方が悲しいと私も悲しいから。
「…提督?」
私の提督、私だけの提督。
彼が悲しい時、嬉しい時も気持ちを
一緒分かち合いたいけれど、そんな未来はありえない。
彼が、私に亡くなった妹さんの影を見ているならば
私は妹として振る舞おう。
せめて少しでも悲しみが癒える様に。
だから私の想いが実らなくても、私は構わない。
「…くすぐったいわ」
笑って、微笑んで…私の