恋の形   作:ククルス

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武威に満ちてから二、三ヵ月
冬の休戦期間から京都へ舞い戻った大和のお話。
小競り合い位はしてると思いますけど、
第二戦隊は戦力の再編成に追われているかなと。


・上島 武人
前回からの続投。

階級は中将で第二戦隊の総指揮官。
果断即決が信条だが悩む時はとことん悩む。
年の頃は三十後半を想定。


・大和
皇族に血を連ねる女性。

初期艦人化計画の成功段階から、
「皇族とて国の為に戦わん」と明言された陛下の
言葉から海軍が意を組み数多の実験結果から
集大成として選定された戦艦を継いだ。
人の頃の記憶、戦艦としての記憶を共に持つ。




想い重ねて

世は荒れ戦いは激化の一途を辿る。

多くの都からは灯りが消え、

人々は惑い苦しみの日々を過ごす。

 

(日の國『興亡の歴史』より)

 

 

 

 

京の都、薄雪の降る静かな夜。

冬ばかりは誰ともなしに人や深海棲艦も

戦いを止め、次来る春を待つ。

 

休戦期間である。

 

私が大和()となる前に、

皇居の窓辺より聞こえた人々の営みは

鳴りを潜めて幾久しく。

皆、強き心を保ち続け勝利を信じれば

戦人も未だ意気は高い。

 

それでも…。

艦人化計画が立ち上がり一時でも、

国防圏の先まで深海棲艦を

押し込めた事が嘘のように思える。

 

そう、考えてしまう。

先の熊本撤退戦で私達、第二戦隊は

多くの仲間を失った。

先日までは隣で不敵に笑っていた妹も

既に九段で私達を待っている。

 

あの時、戦場で散るは本懐と私は口にした。

皆は決意し作戦へと身を投じていったけれど、

誰一人として死を望んだ者は居ない筈で。

この現状を思いやれば、私は彼等の死に

意味を与える事が出来ているのか不安になる。

 

人は皆、物事に意味を求める。

 

自らの人生、その果て。

終着点を迎えて意味ある人生であったのか?

 

即ち、この死は意味を持つのかと。

誰もが無意味な死に恐れを抱かずにはいられない。

 

私は、彼を信頼している。

第二戦隊、皆の提督である上島 武人中将を

信頼し命をを預けた。

 

覚悟し信頼して、それでも。

私は胸に空いた喪失感から

今も尚、こうして揺れ惑うのだ。

 

 

「私達の死に、命に意味はあるのでしょうか…」

 

 

ふと口にするつもりのない弱気を

彼の前で吐いてしまった。

 

 

「大和、お前は意味が欲しいのか?」

 

「…っ」

 

 

慌てて口に手を当てても意味はなく、

観念して言葉を続ける。

 

 

「私は、大和の道は生まれる前よりから

多くの悲しみの上にあります」

 

「生まれてからも変わりません。

艦娘となる前から、私には皇族として誓った

想いがある筈なのに…ふふ、情けないですね」

 

 

私の言葉を叱責するでもなく、彼はただ聞き続ける。

 

 

「……そうか」

 

「…提督、私達の死に意味はありますか?」

 

「死の意味か…意味はないだろうな」

 

「そう、ですよね」

 

 

即答に彼らしさを感じながらも、

私の想いは失意から更に沈んでゆく。

 

皆の命を背負う彼がせめて、

これ以上の負担に沈まぬ様に。

つまらぬ考えはここで終わり。

 

私は微笑みを返せただろうか。

 

そう心配していると彼は言葉を続けた。

 

 

「だが、命に意味はあるだろう」

 

「お前を産んだご母堂の、皆の愛を受け此処に居る。

その命でした事に意味は宿ると俺は信じる」

 

「提督…」

 

「あぁ…柄になく難しい事を言った。

だから、笑え!お前が悲しめば俺が武蔵たちにどやされる」

 

 

彼は向き直り乱暴に私の頭を撫でて、

恥ずかしそうに笑う。

 

 

「私に意味を与えて下さいますか?」

 

「その命、今一度俺が預かる。

大和、互い死ぬ時は伴をしてくれ」

 

「…はいっ!必ずや」

 

 

迷いは切れた。

この身に意味はあるのだと信ずれば、

後は勝利を目指して戦うのみ。

 

 

 

 

我が道は無明長夜の先にあり。

苦節を越え、この身で果たして意味を持つ。

 

惑う無かれ。

流れる血潮は國の為。

命の高鳴りは民の為。

纏いし想いは彼の為。

 

護国に我ありと世に叫ぶ。

国体背負いし我が名を聞くがいい。

 

戦艦大和、此処にありき。

 

 

「戦艦 大和、推して参ります」

 

 

 

死を想え、されど背負うことなかれ。

想い継ぎ共に歩みて桜の下へ。

 

 

 

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