帝国で斬る!   作:通りすがりの床屋

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前回のあらすじ

シェーレ生きてるってよ

今回、オリキャラ(?)登場
活躍するとは言ってない
後、お気に入り100件超えましたありがとうございまぁぁぁぁす!


元大臣を斬る!

帝都近郊を馬車と護衛の兵士が進行する

重税により雀の涙ほどの収穫も差し出し、餓えと寒さに耐える民

これでは冬を越せるかも危うい

どこの村も似たような状況だ

帝都ばかりが華々しいが、帝都から出れば荒れ果てた不毛の地と、死を待つばかりの弱者()

反乱軍が何かをするまでもなく、民は死に、遠くないうちに帝国は滅亡を迎える

そんな民を憂い、隠居していたオネストの前任の大臣チョウリは帝都に向かう

命欲しさに隠居などしていたら娘のスピア達の未来はない

 

「こうなったらワシはあの大臣ととことん戦うぞ」

 

「父上の身は私が守ります!」

 

娘は本当にいい娘に育ってくれた

勇ましすぎて嫁の貰い手がいなかったり、護衛より強いのが玉に瑕か

それとき馬車が止まった

 

「……また盗賊か!?治安の乱れにも程がある!」

 

チョウリが帝都に向かう道すがら盗賊に襲われた数は二桁を越している

彼等は生きるために盗賊になるざる負えなかった者だ

治安を悪化させ、彼等を悪の道に引き摺り落としたのはオネストだ

やはり、オネストを放置するわけにはいかない、とチョウリは襲撃の度に覚悟を強くする

彼等のためにチョウリは帝都に急いでいるのに、その邪魔をするのが救うべき民であるとは皮肉な話だ

 

「今までと同じように蹴散らす!相手が女子供だからと油断するな!行くぞッ!」

 

仕方なく盗賊に身を(やつ)したとはいえ道を塞ぐなら振り払わねばならない

スピアは護衛を指揮し、容易く盗賊を潰してきた

そして、必死な弱者の執念はこちらの喉を食い千切りかねないということを学んだ

だから、女が二人であっても油断することは出来ない

 

「行くぞ!」

 

スピアの号令で護衛は盗賊に飛びかかる

殺す必要はない

 

(悪いが、腕と足くらいは覚悟してもらう!)

 

油断するな、といったスピアだが、無意識に相手を見下していた

毒蛇の巣に出向くまでもなくチョウリ達の首元に毒蛇の毒牙がそこまで迫っていたのだ

 

「競争だよお姉ちゃん」

 

「葬る」

 

チョウリの集めた護衛は全員強者揃いだ

盗賊程度の相手なら過剰戦力に違いない

ただ戦う相手が悪かったのだ

強者とはいっても一般の兵の域を出ない護衛達は一方的に蹂躙された

護衛達は勇ましくクロメとアカメに踊りかかる

クロメは駆け足で八房を抜刀する

アカメは歩きながら村雨を振るう

雑兵はクロメに殲滅され、間一髪逃れたスピアは、アカメに槍を打ち落とされ、追撃の蹴りを腹にもらい蹲る

 

「強すぎる……私の槍術が……」

 

「この中でお前が一番強かった。誇っていい」

 

「気休めにもならないな……」

 

アカメに気休めのつもりなどなくただ事実を口にしただけだが息切れ一つ起こさず自分達を圧倒した敵を前にしてスピアがそう思うのは無理もない

 

「アカメだ。恨んでくれて構わない」

 

スピアに名乗り返す余裕はなかった

絶望に染まる顔で死神(アカメ)の顔を見上げることしか出来ない

アカメは刀を振り下ろした

 

「へへっ、私の勝ちだぁ」

 

無邪気に踊るように馬車から降りてきたクロメは、その手に老人の生首を持っていた

標的、チョウリの首だ

 

「倒した数での競争じゃなかったのかクロメ」

 

「違う違う。どっちが先に標的を殺れるかの競争だよ」

 

「なら、私の敗けだな」

 

妹に激甘のアカメは後出しジャンケンだろうと可愛いと受け入れる

返り血を浴びて尚、笑うクロメはどこか妖しく美しい

シスコンフィルターがかかっているアカメは怒っているクロメも可愛いと言うに違いない

 

「やったー!じゃあ、罰ゲームでビラ撒き一人でやってね!私は人形(死体)遊びしてるから終わったら教えて!」

 

「程々にな」

 

アカメとクロメはエスデス軍の所属となった

上司のエスデスからの最初の命令は大臣と対立する文官の暗殺

そして、『ナイトレイドによる天誅』と書かれたビラを現場にばら撒くことで罪をナイトレイドに被せることだった

標的はブドー大将軍の庇護下にある

正面から始末出来ないからといって手段が稚拙すぎる

これではナイトレイドの名を騙っているアカメ達を本物が始末しに来るのも時間の問題だ

しかし、腐っても帝国を牛耳る大臣の事だ

ナイトレイドが出てきて、ついでに始末出来れば良しくらいに思っているのだろう

敵前逃亡をエスデスは許さないと思うが、クロメが危険な目に合うようならサブミッション(ナイトレイドの始末)など投げ出す覚悟だ

チョウリと護衛達を葬ったアカメはそれでも周囲への警戒を怠らなかった

 

※ ※ ※

 

 

帝都で文官の連続殺人事件が起きている

被害者は良識派の文官6名とその警護の人間が多数

これ自体、反乱が成功した後の貴重な人材を失う痛手ではあるがナイトレイドが動く案件ではない

問題は殺害現場に『ナイトレイド』がやったという犯行声明が残されていたこと

分かり易い偽物

普通にバレる

だが、殺された文官の警護は厳重

偽物はそれを全滅させている

やはり帝具使いの集団であるナイトレイドの犯行ではないかという見方が増えてきた

偽物にいつまでも好き勝手を許すようではナイトレイドの株は下がる一方

罠と理解していても飛びつく以外の選択肢はない

罠であろうと捻じ伏せる

ナイトレイドの名を騙るとどうなるか見せつけてやれ

ボスから指令が下った

狙われている文官は3人

うち宮殿の外に出る予定があるのは2人

ナイトレイドは二手に分かれて文官の護衛

及び偽物の――――始末

タツミとブラートは『竜船』に乗り込む

 

※ ※ ※

 

帝都近郊の村で、国を憂い、民のため心を痛める文官ビマクは民に備蓄米を振る舞い近郊の村を回るのが日課になっていた

ビマクも分かっている

この施しは焼け石に水

貧困の大本を絶たねば、いずれ備蓄米は尽きる

時間稼ぎにしかならないことを

大臣を倒さねば帝国に未来はない

そんな大臣に反感を持つ文官(古き友)達が次々と暗殺されている

今日は自分が殺されるかもしれない

今日は竜船に乗りセレモニーに参加している文官が殺されるかもしれない

そんな不安を胸にビマクは民に仮面の笑顔を見せる

 

(この命、最期まで民のために……)

 

そう祈るビマクの知らぬところで始まる

彼を狩らんとする獣と彼を守らんとする狩猟者の光を浴びることのない戦いが

 

「どうやら、お出ましだ……」

 

備蓄米を振る舞っていたビマクを見守る影が動く

ラバビマクに背を向ける

ラバの糸の結界に反応があった

 

「そんじゃま。いっちょ殺るか」

 

獅子は軽快に獲物に向かう

三獣士はラバックとレオーネのいる村に現れたのだ

 

「アハハハ、今回はアカメがいないから顔の皮コレクションが作れるよ!」

 

「経験値がたっぷり稼げるぜぇ!」

 

「二人とも油断するなよ。そろそろ本物(ナイトレイド)が出てきてもおかしくない――――

いや」

 

森を歩くリヴァは糸の結界を――――踏み潰した

 

「心しろ」

 

獅子が三獣士の前に降り立つ

リヴァは手袋を外す

ダイダラは樽を降ろす

ミャウは笛に口を付ける

ラバはただ息を潜める

村から外れた森で帝具使いの死闘が幕を開ける

 

 




三獣士の出番が伸びに伸びて次回に
彼等の出番は続く
頑張れ三獣士!負けるな三獣士!お兄さんは魔法少女育成計画みてくるから!

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