帝国で斬る!   作:通りすがりの床屋

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前回のあらすじ

FGOだとアステリオス君とか好きですね
関係?当然、ないですよ


幕間 それぞれの休息

 

「お姉ちゃんと恋人らしい行為をしてない」

 

「クロメ貴女疲れているのよ」

 

開口一番に実の姉との性事情の有無をし始めた同僚に、鋭いつっこみを入れた暗殺部隊の少女を誰が責めれようか

少なくともこの場にいるクロメ以外の少女は内心で、

 

((よく言った!))

 

このように称賛している

言われた本人(クロメ)は口を尖らせて不満気だ

実の姉妹で付き合うなんてナンセンスだ

認められるかそんなこと

暗殺部隊の女子達は声を揃える

もっとも本人はこれっぽちも聞きやしない

 

「一緒にお風呂入ったり、寝たり、色気出してみたりして誘ってるのに、お姉ちゃん何もしてこない」

 

「クロメは責めじゃなくて誘い受けだったというの……?」

 

そこじゃあない

問題は責めとか受けの話ではないのだ

 

「色気は置いといて、いつもやってるじゃ効果ないでしょうが」

 

そう、それだ

男女で、親しくない間柄で行えば効果的な手段だと言えるが、幼い頃から殆ど苦楽を(一時期を除いて)共にしてきた実の姉妹に効果的か

否である

アカメは今日もクロメは可愛いで済ませる

シスコンめ!

 

「それで皆に相談なんだけど、どうやったらお姉ちゃんを狼に出来るかな?」

 

自分から責めるのではなく、姉に野獣になってほしいとクロメはいう

なんという乙女なのか

乙女で合ってるのか?

 

「いつも貴女の馬鹿を止めてた私達に言う?」

 

「却下よ。却下」

 

暗殺部隊ガールズはノーという

アカメの気を引こうとクロメがやらかした騒動の数は思い出すだけで頭が痛くなる

クロメが馬鹿を起こしそうになったら、もしくは起こしたらアカメに勘づかれる前に処理すべし

それが暗殺部隊の共通認識である

 

「皆がお姉ちゃんの写真とか捨てた服持ってるの知ってるよ?」

 

「「「………………」」」

 

却下されて引き下がるクロメではない

爆弾投下でクロメ以外は固まった

冷や汗が止まらない

クロメは笑っている

いつも通り、笑っているのだ

ただね

目がヤバい

 

「もしかして、気付かれないと思ったの?お姉ちゃんに近付く悪い虫を駆除してきた私が気付かないと思ったの?」

 

クロメの目が深淵に続いている

誤魔化でもしたら冥府に送られる

最近、部隊から抜けていたからクロメの脅威が薄れていた

故に、同時に警戒心も薄れていたのだ

彼女等は、アカメのことになると帝国最凶(誤字ではない)と名高いエスデスをも凌駕しかねない超ド級のシスコンの脅威を再び思い知ることとなった

暗殺部隊の仲間だから殺さずに済ませているとは本人の談

 

閑話休題(おしおき完了)

 

「で、お姉ちゃんをやる気にさせる提案ある?あるよね?ないなんて言わないよね?」

 

「イエス!マム!」

 

薬の副作用よりやべぇや

お仕置きが終われば命の危機が去ると思ったか馬鹿め

ヤンデレのギアは上がり始めたところだろうよ助けて

 

「色仕掛けで駄目ならいっそ媚薬でも盛ってしまえばどうでしょう!サー!」

 

「受けなんて似合わないこと止めて攻めてみればどうでしょう!サー!」

 

「辛抱強く、しかし、同性として意識されるようにアピールを……同性として意識って何だ?」

 

答.よくて友達エンドの意識じゃないですかね

 

 

暗殺部隊の休日は実に平穏に過ぎていく

ちなみに議論は『媚薬の使用』で決着がついた

後日、クロメが実行に移すも、毒とか食って耐性付ける野生児ガールアカメに効果はなかった

ただ、その日のお姉ちゃん色っぽかったと本人は捗ったそうです

何が?言わせんな

 

※ ※ ※

 

チェルシーがアカメに近付いたのは偶然と打算の結果だ

しかし、時間を共にするほどチェルシーの中の思いは強くなっていく

チェルシーはアカメに――――同族意識を抱くようになっていた

同僚で長年の付き合いであるシナズが同性愛者であるのは承知している

彼女は前代より高尚な使命を受け継いでいる

女の子に正しい恋愛観を体で説くこと

シナズは、女の子と女の子が付き合うことが正しいと本気で思ってる

人の趣味をとやかく言うつもりはない

というか慣れた

 

(オールベルグってそういうものよね)

 

既に思考が毒されているが体を許していないからセーフ

現在、オールベルグはチェルシーを入れて四人しかいない

シナズの魔の手から辛うじて逃れているのはチェルシーのみ

クビョウは犠牲になったのだ

ライラは同意の元だったそう

のらりくらり(全力で)チェルシーはやり過ごしてきた

だが、この間、ブラックマリンを届けたとき押し倒された

血の気が引いた

じっくり攻め落とす予定だったレオーネが殺されたので、チェルシーは生きているうちにさっさと食ってしまおうと考えを改めたのだという

嫌いというわけではないが、好き合っていないシナズに初めてを奪われるなど堪ったものではない

暗殺者としての技量とガイアファンデーションを駆使して逃げ切った

仲間から逃げるとはおかしな話だ

暫く気まずくて戻れない

戻ったら今度こそ食われる

暗殺者の勘がヤベェと告げている

 

「悩み事か?」

 

心配してるんだかしてないんだか分からない表情でアカメは肉を食らう

アカメは会話中でも食べる手を一切緩めない

こっちにも慣れた

シナズより全然可愛げがあるじゃないか

口いっぱいに食べ物詰め込んでリスみたいとアカメの頬を突く

 

「うん。ちょっと同僚が変人でさ……」

 

嘘は言ってない

本業(オールベルグ)副業(使用人)も同僚が変人なのは変わりない

宮廷の変人共は接点が少ない分、気が楽ではある

 

(あれ?本業が一番面倒じゃない?)

 

オールベルグを抜けて宮廷で働く人生も悪くない気がしてきた

革命が成功しても使用人に罪はないのだから裁かれまい

 

「そーいや。今日はクロメちゃんいないんだね」

 

いつもならそろそろ背筋に悪寒が走る頃合いなのだ

いたらアカメの頬を突いたところあたりで殺意が爆発してる

考えてて悲しくなるチェルシーであった

 

「部隊に帰還してる。なんでも作戦会議らしい」

 

「あー……、大変だね」

 

チェルシーは理解した

クロメはアカメを食べるために思考を巡らせているのだと

アカメに抱く同族意識

同じくケダモノに目を付けられている

アカメはケダモノに狙われているという自覚はないが、同じ立場の人間がいるというだけで救いになる

チェルシーの今の生活でアカメが唯一の癒しだ

口一杯に料理をかき込むアカメのまた頬を突く

アカメは抵抗せず擽ったそうに眼を細める

 

(デート!?デートなのね!)

 

空耳が聞こえた気がするが忘れよう

 

※ ※ ※

 

「来るぞマイン!」

 

「言われなくても分かってるわよ!」

 

普段、いがみ合っているタツミとマインは仲がよろしくない

しかし、犬猿の仲でも護るものが一致した今だけは共同戦線を張ることにした

ブラートとレオーネが抜けた今、誰が奴を止める?

自分達だ

自分達が護るのだ

 

シェーレの貞操を!

 

…………馬鹿じゃねぇの

深く考えると首を吊りたくなる状況なので二人は深く考えず、しかし、真面目に馬鹿の撃退を考えていた

相手は、馬鹿といってもブラートの抜けた今、ナイトレイドで最高戦力に当たるシナズ

オールベルグの頭領である

頭領なのに病人襲おうとか頭どうなってるのか知りたい

流石に、帝具は使わないようだが、『蠢くもの』くらいは使ってくる

というか、殺意高い

何故か、タツミに対してだけ

兄貴と筋トレしていなければ五回は死んでる

特に理由のない暴力でラバも死んだ(死んでない)

タツミの頬を汗が伝う

病人の貞操を狙うために仲間を取りにくるなんてなんてクレイジーウーマン

ただ、女にモテそうという理由で敵視される理不尽にタツミは慄く

 

汗が落ちる

 

「そこだッ!」

 

「狙い撃つ!」

 

タツミは(蝿叩き)で影から忍び寄っていた虫を潰し

不規則な動きで飛ぶ虫に、マインの(殺虫スプレー)が火を噴く(火ではない)

危険種である虫は早いが見えていれば敵ではない

問題は数の多さと、シナズが格上であること

『蠢くもの』をけしかけて悠々と歩いていたシナズが加速した

その速さにマインはついていけなかった

 

「いけない子」

 

そう言ってシナズはマインを強く抱き締めた

抱擁だ

骨が軋むほど強い抱擁だった

 

「は、な、せええええ!」

 

マインは抜け出そうと、もがくがビクともせず、締め付けはより強さを増す

シナズの顔は下心を隠そうともしていない

正直なところ、マインの生け贄でシェーレが助かるならそれでもいいよな、と思っているタツミだがシナズがマインだけで満足しない可能性を考え、(マイン)に食いついている隙をつくことにした

 

「ぜええええい!」

 

蝿叩きを両手で握り躍りかかる

なんて絵面だ

シナズは片手でマインを舐め回すように撫でながら、空いた片手に得物を持って迎撃する

蝿叩きとフランスパンは交差する

 

「フランスパン……だと……!?」

 

「これでおしまいね」

 

蝿叩きでフランスパンに敵う訳もなく、フランスパンはタツミの胴を薙ぐ

 

「ぐ……!」

 

「タツミィ!」

 

マインの悲鳴がアジトに木霊する

シュールな光景ではあるが、当人達は真剣である

フランスパンは折れたがタツミは身動きが取れないほどのダメージを負った

シナズが男に容赦などするはずもない

 

「さて、このままシェーレと一緒にマインも頂いちゃいましょうか」

 

「え?嘘よね?……誰か助けてええええ!」

 

身の危機を察したマインは全力で助けを呼ぶ

タツミがやられたときの比ではない声だ

 

「ふふ、叫んでも無駄よ助けなんて」

 

「うるさい」

 

スパンッ!

 

ナイスフランスパン

惚れ惚れする一閃がシナズの後頭部を打撃する

フランスパンは木っ端微塵だ

流石、ボス!最高記録だぜ!

 

「ったく、仲間を失ってショックなのは分かるがおふざけが過ぎるぞ」

 

この馬鹿騒ぎがショックの結果起きたとかレオーネとブラートが浮かばれない

実際、レオーネが死んだことでシナズが暴走したのでレオーネ浮かばれてない無念

しかし、そこはボス

事態を収集する

シナズに一言

 

「食べ物を粗末にするな!」

 

えっ、ボスが言う……?

思ったがマインは危機が去ったことを喜んだ

仲間の死を悼んでいる暇もない職場だとかブラックにも程がある

 

オチというオチはない

強いて言えば、マインはシェーレと一緒に寝て、タツミは廊下で一夜過ごした

マインの一人勝ちだ

 

 




アカメとチェルシーはお友達ヨー
デートじゃないネー
クロメに見られてもノープログレムヨー
本当ヨー


序章は終わった
さぁ、これより幕を開けよう
神すら予測できない舞台を
皆、皆様、拍手喝采で御迎え下さい


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