帝国で斬る!   作:通りすがりの床屋

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前回のあらすじ

アカメとチェルシーはズッ友だよっ☆

今回は原作知ってる方は読まなくても問題ない内容となっております申し訳ない
原作との差は些細なものです


就職を斬る!

「どうしてこうなった……」

 

少年タツミはあまりの展開についていくことが叶わず呆然と立ち尽くすことしか出来なかった

 

※ ※ ※

 

タツミは村を救うため仲間のサヨとイエヤスと意気揚々と村を出た

その後、ついてないことに夜盗に襲われ散り散りになった

一人になったタツミは危険種を狩りながら帝都に付く

腕を見せようと兵舎で剣を抜いたら追い出された

ついてない

てっとり早く仕官できる方法を知っているという酒飲みの女に騙されて金を殆ど持っていかれた

メシ代を払ったら一文無しになった

実は自分は不運なんじゃないかと思ってきた

金が尽きたので野宿しようとしたら富裕層のお嬢様アリアに拾われた

その一家は親切で行方知れずのサヨとイエヤスまで探してくれるという

最後についてると思ったら恩人の一家が殺し屋集団(ナイトレイド)の襲撃に会った

ついてないにもほどがあるとタツミは己の不運を恨む

護衛があっさりと始末されるのをタツミは見ていた

ナイトレイドに敵わないことを理解した

しかし、正義感の強いタツミは恩人のアリアを見捨てて逃げるなんて選択は出来なかった

アリアと護衛を見つけた

護衛は倉庫に逃げるまでの時間稼ぎをタツミに頼むがナイトレイドはタツミを無視し護衛を殺した

標的ではないから見逃すという

アリアが殺されるのを黙って見ていろという

それは無理な相談だとタツミは剣を抜く

相手の眼鏡のが自分より格上で勝てる相手ではないとわかっていても

 

(そもそも、女の子一人救えない奴が村を救える訳がない!!)

 

タツミは駆ける

眼鏡の女も駆ける

剣と鋏が交差し火花が散る

タツミは鋏をいなし攻撃に移る

眼鏡の女は横薙ぎを姿勢を地面すれすれにまで低くして避ける

 

「ヤベッ」

 

がら空きになったタツミに振るわれる一閃

 

「カハ……ッ」

 

「タツミ!!」

 

アリアの悲痛な叫びが木霊する

眼鏡の女は倒れたタツミを見て首を傾げる

 

「……はて?この感触、鉄ではありませんし……木ですか?」

 

眼鏡の女はその場から動かず倒れているタツミに疑問を投げ掛ける

死んだふりはバレバレのようだ

 

「痛ってぇ……ッ!油断して近づいても来ねぇのかよ」

 

裂かれた懐から二つの物が落ちる

神様はタツミを助けてくれなかったようだ

村長がくれた木彫り(せんべつ)は真っ二つに両断されていた

咄嗟にバックステップを踏んでいなかったら自分も木彫りのように上半身と下半身が泣き別れしていたことを想像して背筋が凍りそうになる

 

「たくさん殺してますから。出血量からして先程のは浅すぎて致命傷にはならなかったでしょう」

 

「一体、どれだけの人を殺して……」

 

「すいません。仕事ですから」

 

眼鏡の女は鋏を振るう

剣を落としたタツミにそれを防ぐ手段はない

タツミの頭に死のビジョンが刻々と浮かぶ

 

「待った」

 

「はい?」

 

鋏の先端が鼻先を掠める

誰かが眼鏡の女を後ろから引っ張ってくれたおかげで一命をとりとめたらしい

自分を助けてくれた恩人の顔にタツミは見覚えがあった

 

「この少年には借りがあるんだ。返してやろうと思ってな」

 

「!アンタあの時のおっぱ……!」

 

「やっほー。美人のお姉さんだ。しかし、少年、運がない、いや、運がいいな。シェーレ相手にまだ生きてるなんて。……オールベルグ組なら今頃お陀仏だったろうけど」

 

なにやら不吉な事を言っているが相手が良かったのだけは確からしい

タツミは悪運だけ強いのかもしれない

 

「少年。お前、罪もない女の子を殺すなと言ったが」

 

巨乳のお姉さんはタツミから背を向け歩き出す

そこにあるのはアリアと護衛が逃げ込もうとしていた倉庫がある

倉庫の扉は厚くなるほど逃げ込めば安心できる

それを獣は一撃でいとも容易く蹴破る

 

「これを見てもそんなことが言えるかな?」

 

「な……、なんだよ……コレ……!」

 

倉庫の中は地獄だった

傷はないのに檻の中で衰弱し動かなくなった人間があった

逆さまに吊るされて肉を削がれた肉塊があった

檻の中に皮と骨だけの骸骨が呻いていた

台の上で腸を裂かれ内臓を剥きだしにされた死体があった

水槽の中で溺死した死体があった

全身をバラバラにされ標本のように飾られている死体があった

頭に穴を開けられて脳漿を掻き混ぜられた死体があった

試験管の中に浸けられた赤ん坊の死体があった

死体があった死体があった死体があった

見るも無残な死体の山だ

辛うじて生きている者も助からないと確信できてしまう

 

「これが帝都の闇だ」

 

タツミは帝都に向かう途中で商人に忠告を受けていながら、今、本当の意味で帝国の腐敗を知った

こんなことが罷り通る

そんなことがあっていいものか

タツミは頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだった

そこに追い打ちをかけるように見つけてしまった

 

「……サヨ?」

 

一緒に村で暮らし一緒に村を出た仲間の姿を見つけた

足が一本足りない

全身痣だらけ

顔色が悪い

違う違う違う

こんな再会を望んでいたわけじゃない

理不尽じゃないか

サヨが何をしたというのか

絶望と憤怒がタツミを包む

 

「…タ…ツ…ミ……タツミだろ。オレだ……」

 

消え入るような掠れた声がタツミに届く

それはよく知っている声だった

 

「イエヤス!?」

 

「そ…その女が……サヨをいじめ殺しやがった……!」

 

再会の感動はなく悲観の涙を流しイエヤスは告げる

 

「し、仕方なかったの!本当は嫌だったけど、やらなきゃパパとママに捨てられちゃうから仕方なくなってたの!心が痛かったけど、身寄りをなくした子が帝都でどういう末路を辿るかアリアは知ってた!怖かった!だから!」

 

イエヤスの証言にアリアは取り乱して見苦しく助けを請う

 

「まだ言い訳を続けるなんて大した面の皮だ。シェーレ悪かったな」

 

「問題ありません」

 

ゴーサインを受けたシェーレは鋏を構え直す

 

「待て」

 

「まさか……今の話を信じたわけじゃないだろうな少年?」

 

「いや」

 

今の話が本当だろうが嘘だろうが関係ない

嘘なら外道

本当なら自分の命可愛さに人間を棄てた外道

 

「俺が斬る」

 

「あ?」

 

結論は変わらない

憎しみに身を任せタツミは人の皮を被った化物を斬り捨てた

こんなことしてもサヨは生き返らない

しかし腹の虫が収まらなかった

アリアが言ってたことだ

 

「仕方ない、だろ?」

 

タツミは剣を収めた

シェーレは何も言わない

レオーネは静かに感心する

イエヤスは座り込んで笑う

笑って血を吐いた

駆け寄ったタツミにイエヤスは笑ってカッコよく最期を遂げた

死因はルボラ症の末期だという

 

「……どうなってんだよ帝都は……!」

 

※ ※ ※

 

嘆いていたらタツミはナイトレイドに勧誘された

勧誘というより拉致がしっくりくる表現だろう

暴れるタツミはお姫様抱っこで運ばれ、集合場所で落とされ殺し屋集団(ナイトレイド)の注目を一身に浴びながら言われた

 

「今日から君も私達の仲間だ!ナイトレイドに就職おめでとう!」

 

どうしてそうなった

タツミの頭はとっくに容量オーバーを起こしていた

取り合えずサヨとイエヤスの墓を作ろう

後の事はそれから考えよう

タツミは現実から目を逸らした

 

 

 




原作との違い
アカメではなくシェーレと戦ったり、村で貰った御守りが機能しなかったり、アリアが本性を剥き出しにせずもう少し粘ってみたりしましたが結局流れは原作通りです
この頃、アカメはクロメと仲良くお布団に入ってます

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