帝国で斬る!   作:通りすがりの床屋

8 / 22
前回のあらすじ

シェーレの膝で泣く←
ブラートの胸を借りる


て、てーへんだぁ!検索して気付いたけんど、アカメが斬るで姉妹百合書ぇてるのオラだけだべぇ!
ハーメルン人少ないの?百合好きが少ないだけなの?


帝都警備隊を斬る! (後半)

警報の笛が夜の帝都を響き渡る

ナイトレイドは笛の音を聞き付けた帝都警備が駆け付ける前に逃げなければならなくなった

制限時間を設けられたがアカメとクビョウ、セリューとマインとシェーレは互いを観察し動かない

『オールベルグ』

アカメはその暗殺結社を知っていた

かつてアカメ達、暗殺部隊が敵対した革命軍に雇われた伝説の傭兵である

名の知れた暗殺集団だけあってアカメ達は無傷で勝つことが出来ず、多大な犠牲を払い辛くも勝利した

主戦力を失ったオールベルグの残党はアカメの知らないところで帝国に蹂躙され滅ぼされたと聞く

しかし、アカメが何より驚き、研ぎ澄ませた殺気を霧散させた理由はクビョウの持つ剣にあった

 

「それはチーフ(ナハシュ)の剣……」

 

クビョウの持つ剣

臣具『水竜の剣』はかつてアカメの部隊のリーダーをしていた男の使っていた剣であった

クビョウは水竜の剣を、()()、拾っただけだがそれをアカメに教えてやる義理はない

先手必勝と突貫を掛ける

無論、正面から不意を突いた程度で倒せるほどアカメは安くない

村雨と水竜の剣が交差する

思考をクリアにしたアカメは余計な情報をシャットアウトする

オールベルグを殺してチーフの剣を取り戻そう

それがチーフへの手向けになる

アカメと対象的にクビョウの思考は恐怖でグチャグチャだ

クビョウの生存本能は激しく警鐘を鳴らしている

 

(死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない……!)

 

生にしがみ付くクビョウの執念

それがアカメの技量を凌駕する

なんて世界は甘くない

村雨の能力は傷一つから呪いを流し込み心臓に到達すれば相手は死ぬなどと反則もいいところな刀だ

だが、それを抜いてもアカメは強い

クビョウは生きた心地がしない

アカメは帝具の性能に頼り過ぎないように戦っている

それがクビョウには恐ろしくて仕方ない

村雨を持つアカメは相手に致命傷を負わせる必要はない

傷一つさえ付けれればそれで終わる

クビョウはアカメと幾度目か剣を交えて気付いてしまった

アカメの太刀筋はどれも致命傷しか狙っていない

 

(戦い方を切り替えられた瞬間に私は死ぬ……ッ!)

 

即死刀に頼る戦い方をメインにすればアカメは容易くクビョウを葬れる

その事実に行き着いたクビョウの思考が乱れ、息は荒くなる

されど、クビョウの太刀筋は絶対に揺るがない

状態は膠着していた

アカメは刀を振るいながら感嘆の息を漏らす

五分五分の戦いだと素人ならば判断するだろう剣と刀の奏でる舞

否、実際のところは実力は拮抗しておらず、技量も速度もアカメが上回っていた

だというのにクビョウはアカメに食いついてくる

クビョウは天才ではない

クビョウは優れた師を持っていない

クビョウは肉体を改造しているわけでもなく、薬物を投与しているわけでもない

ただ、死への拒絶が死神の鎌(アカメの一刀)を遠ざける

この劣勢を覆す術をクビョウは持っていながら使えずにいた

一方、アカメは着実にクビョウの戦い方を学習していく

クビョウの剣は荒々しい攻撃の型

だが、防御に回らざる負えない今はそれを十全に使えていない

圧倒的にアカメが優勢なのだが、クビョウに奥の手はあることをアカメは理解している

クビョウには身体能力を底上げする臣具、水竜の剣がある

仲間の使っていた剣だ

当然、能力発動時に激痛が走ることをアカメは知っていた

一瞬の隙も与えないことで強化を簡単に封印できる

攻撃に徹すればアカメがいずれ競り勝つのは必定

 

(油断せず、攻め切る!)

 

仕切り直しの為、アカメから距離を開けようとするがクビョウを追撃する

クビョウはアカメの前で水竜の剣の強化を使えるとは思っていない

クビョウはシェーレとマインの援護を待っていたが芳しくない

後、十手、剣を交わさないうちにクビョウは葬れる

だが、しかし、残念ながら、不幸なことに、――――セリューとアカメは互いに情報を共有していなかった

 

「コロ!狂化(おくのて)!」

 

『ギョアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

シェーレに追い詰められたセリューは苦肉の策として己の生物型帝具の奥の手(きょうか)を使用した

事前にアカメにコロの奥の手を伝えなかったのは使うとは思っていなかったというセリューの慢心だ

帝国の闇から目を逸らし、臭いものに蓋をして、正義は悪に屈しないなどと妄言を本気で宣う(のたまう)のがセリュー・ユビキタスという歪な少女なのだから

突然の咆哮にセリュー以外の行動が一瞬阻害される

それがクビョウにとって起死回生の一手となった

アカメの勝利は必定だったが、奇しくも味方であるセリューの帝具『魔獣変化ヘカトンケイル』の咆哮がそれを破る

プロであるアカメの立ち直りは早い

聴覚をシャットアウトするという離れ業でやってのけた

それでも十分な隙だ

クビョウは耳が馬鹿になることにも気を留めず強化を執行していた

 

「これで形勢逆転です」

 

「ふ……っ!」

 

クビョウの剣が重みを増し、鋭く激しくなった

アカメは攻撃を捨て防御に回る

クビョウは必敗の状況こそ脱したが、依然、アカメが有利だ

水竜の剣の強化は三分

耐えきればアカメの勝ち

耐えきられればクビョウの負け

時間制現による焦燥はクビョウの剣をより高みに押し上げた

秒事に成長するクビョウの剣技を冷静に対処し、アカメもまた、冷や汗を流す

クビョウは掠り傷すら許されない

されどクビョウの剣は攻撃一辺倒

だというのにアカメの反撃は許されない

攻撃に転じようものなら必殺の一撃がアカメを狩る

三分という短い時間が嫌に長く感じる

時間は一分も経ってはいない

 

「ああっ、あああああああ!!!」

 

ヘカトンケイルの腕に万力のように握り絞められるマインの悲鳴が広間を木霊する

クビョウは聞こえていながら見向きもしない

咆哮を諸に喰らい、耳が馬鹿になったのだから聞こえなくても不自然ではなかろう

アカメが下がった

それは仲間を助けに行かないのかという無言の訴えだ

アカメに追い縋ることがクビョウの訴えへの返答だ

マインを助けに行けば後ろから斬り殺される

誰がそんな悪手を取るというのだ

シェーレが帝具の使用者のセリューを殺せば解決する話だ

腕は粉々になるかもしれないが死ななければいいのだ

生きてさえすればなんの問題はない

しかし、マインの悲鳴が止んだ

 

「仲間はお前ほど冷静ではないようだ」

 

アカメとしては愚かしいが好ましい判断だと微笑む

 

「?まさか……っ!」

 

アカメに注意を払いながら視線をもう一つの戦いに移す

シェーレは敵に背を向けマインをヘカトンケイルの腕から助け出していた

 

「あの馬鹿……っ!」

 

敵に背を向けるというのがどういうことかも理解してないのか

案の定、セリューは正義など冗談のようなドス黒い嗤い顔をシェーレに向けていた

セリューは人体改造により口内から銃を撃つことが出来る

 

「正 義 執 行 !!」

 

セリューは無防備なシェーレの背後から銃撃し、トドメにヘカトンケイルは大口を開けてシェーレに飛びかかっていた

クビョウが恐れたのはシェーレの死ではない

シェーレが死に、腕が折られ使い物にならないマインが残れば、ヘカトンケイルはアカメに加勢する

自分だけは死にたくないクビョウは頭が熱を上げてオーバーヒートするまどに頭を回転させる

シェーレを助けるのは無理

助けたところで胸を撃たれて役に立たない

シェーレは見殺しにするとして、マインを囮にする

駄目だ

マインは囮にするにはダメージを負い過ぎている

なによりクビョウはアカメから逃げ切る手段がない

水竜の剣の制限時間が過ぎれば疲労が押し寄せアカメに殺される

無茶でも無謀でも無理でもアカメと生物型帝具を一人で打倒するしか生き延びる方法はない

そう結論付けたクビョウは、しかし、括目する

シェーレに飛びかかるヘカトンケイルに横蹴りをぶちかます頭領の姿があった

 

「あんまり遅いから迎えに来ちゃった」

 

頭領は撃たれたシェーレに薬を飲まして地面に這い蹲っているマインを拾い上げて、こちらを見る

アカメは新手を警戒して動きを見せていない

 

「こんばんは。お仕事ご苦労様。この子達は私が貰っていくわね」

 

それは撤退宣言

クビョウは脱兎のごとく全速力で戦線離脱を図った

それを逃すアカメではないが、黒い壁が起立してアカメの進路を遮った

 

「『蠢くもの』……っ!」

 

黒い壁は虫の群だ

一匹一匹が人体を軽々と喰い千切る顎を持つ

昆虫型の危険種と考えていい

厄介だ

一刀で黒い壁を引き裂く

生きている以上、蠢くものも村雨の呪いからは逃れられない

クビョウの姿はもう見えない

厄介なのは虫ではなく、虫を使う女はオールベルグの頭領

今のところ、実力は未知数なのだ

そんなことお構いなしに、横蹴りから復帰したヘカトンケイルは遮る蠢くものを薙ぎ払いシナズに接近する

 

「あら?」

 

余裕の表情でヘカトンケイルを見上げている

ヘカトンケイルは筋骨隆々な腕を力強く打ち下ろす

直撃だ

 

『ギ……!?』

 

ミンチにしてやった

筈なのだ

けれど、死体がない

倒した筈のマインとシェーレ姿もない

ヘカトンケイルは辺りを見回す

敵は影も形も残っていなかった

アカメは構えを解く

この場に残る殺気は腕を失いながら戦意喪失していないセリューとその帝具ヘカトンケイルのみ

つまり、ナイトレイドを一人も仕留めることが出来ずに逃げられたのだ

 

 




原作との違いオリキャラのオールベルグ二人とアカメが介入する
エクスタスを奪われない

来るぞ!三獣士さんの出番だ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。