「お腹空いた」で始まるデスマーチ   作:ナトリウム水溶液

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ファングオブアンダードッグを全巻読んだ記念に作者が勢いで書いてしまいました。
至らぬところも多いと思いますが、温かい目で見守ってください。


第一話:俺はクソ映画の世界に転生します。

お腹減った。

 

俺の寝起きの言葉だ。家にストックされていたカレーヌードルはそこを尽き、カップヌードールライトもなくなった。こうなってしまったらもう、俺は外へ出ざるを得なくなる。

 

お腹空いた。

 

そう呟きながら、仕事卓の上に置かれた家の鍵を手に取る。

勘違いされがちだが、俺はニートじゃない。もちろん引きこもりでもない。ちゃんと仕事をして金を稼いでいるし、親の世話にもなっていない。

ただ、職業が特殊なだけだ。イラストレーター。絵が好きな人なら、一度は目指す職業ではないのだろうか。自分で言うのも気が引けるが、俺は俗に言う売れっ子イラストレーターだ。

アニメ好きなら一度は俺の名前を聞いたことがあるんじゃないだろうか。小学生の頃から絵が好きで、暇さえあればいつも絵を書いている。そんな奴が俺だ。

趣味も極めりゃ職になる。その言葉通り趣味を職にしたのが俺というわけだ。

けれど、イラストレーターだからって俺みたいにずっと外に出ない人は少ないだろう。加えて俺みたいに、ここ数年のほとんどをカップ麺だけ食らって生きてきたイラストレーターなど、ごく僅かだ。というか、俺以外いないんじゃないか。

 

胃が空っぽ。

 

久方ぶりに外へ出る。時間は夜中の0時。俺のつぶやきは闇の中に消える。真夜中だというのに街は明るい。暗闇を消すように光続ける電灯。大人を誘惑するためのネオン。電光掲示板が流すパチンコの情報。

どれも俺の目には新鮮なものに見える。だが、どれも俺の目を満足させちゃくれない。

 

何か食べたい。

 

ファミレス、ラーメン屋、居酒屋、チェーン店、高級料亭。ダメだ。金の無駄だ。いくら世間がうまいと言おうが、俺にとっては金の無駄にしかならない。

ジャージ姿で夜の街を歩く俺。入れっぱなしの財布は常に重い。売れているだけあって、金の心配はない。これだけあれば大量のカップ麺が買える。いや、そろそろカップ麺はやめよう。いい加減、体の毒だ。たまには冷凍食品にしよう。

 

美味しいものが食べたいです。

 

俺は行きつけの食料品店に入る。レジの方からは野太い声でラーッシャイマセーという呪文が響く。俺が今の職について、親から離れてからというもの、俺の食事は全てここの商品で成り立っている。

といってもそのほとんどがカップ麺だ。好きな銘柄はカップヌードール。安心と安定が積み重なった銘柄だ。

Are you hungry? と聞けば誰もがカァップヌードールッ!! Hoooo!! と狂ったように叫び出すくらい、カップヌードールは有名なのだ。

俺は何も持たずにレジへと向かう。24営業のこの店では、深夜の0時に買いにくる客など俺しかいない。それを、この店のバイトは重々承知している。

 

お腹空っぽ。

 

俺がそう呟くと、レジにいたバイト君は困惑を顔に貼り付けながらも「お久しぶりです」と頭を下げた。そしてすかさず、さも当然というように「ここの店のカップヌードール全部ですね?」と聞いてくる。

俺は頷くと同時に、冷凍食品コーナーの方を指差す。

 

ハラヘリハラヘリ。

 

俺の口から出た呪文に、流石のバイト君も首を傾げたが「すぐに笑顔になって、冷凍食品も全部ですか?」と訪ねてくれる。

最近の冷凍食品は素晴らしい。昔のものよりも、匂いがいい。少し嗅ぐだけでも天にも昇る心地になる。勘違いされがちだが、俺が嗅いだのは別に、シンナーでも笑気ガスでも危ない粉でもない。冷凍食品だ。

俺はさらに調味料のコーナーを指差す。

 

刺激的な料理が食べたい。

 

この呪文は慣れたバイト君にしか伝わらない秘密の呪文だ。意味は、いい匂いのする調味料をくれ。食べ物にとって一番大切なものは香りだと思う。誰が何と言おうが、俺は香りに勝るものはないと思うが、どうだろう。

俺の呪文を聞いた店員の顔に、暗い影がかかる。なにか不都合でもあるのだろうか。そう思っていると、彼は申し訳なさそうに口を開いた。

「申し訳ございません、味覇は売り切れてまして」

 

ッ!? I'm hungry!

 

こいつ、初心者だな。確かにこの前来た時は味覇を買い占めたが、別に今日も味覇を買いにきたわけじゃないよ! 味覇は確かにいい匂いのする調味料だとは思うけれど、あれを入れただけで匂いが全部味覇にかき消されてしまうのだ。匂いが、臭いになる。

ともあれこの呪文が使えないのなら、別の呪文だ。そういう意味じゃないよ、という呪文を言おう。

 

Ich war hungrig.

 

再び首を傾げるバイト君。ならばどういう意味だ、という気持ちの現れだろう。ここでもう一回さっきの呪文を口にしてもいいが、それでは伝わらないだろう。ならば、別の呪文だ。

 

배고파 했다.

 

これで伝わったのか、彼は何度かうなずくと「いい匂いがする調味料ですね」と口にした。よし、伝わった。

一通りの会話が終わると、俺は財布を取り出し、彼に渡す。財布の中にあるのは、紙で止められた札束。

この店では見慣れた光景だからか、彼は特に動揺せず、その中から必要な額だけを抜き取る。

アーザッシターという言葉とともに、店内にいた店員皆が、カップヌードールや冷凍食品、調味料等を店の裏口へと運び始める。

 

メシ食いてぇ。

 

俺がバイト君に言われてスタッフ用の裏口から外に出る頃には、店の大型トラックには俺の食料品が詰め込み終わっていた。さすがは俺の行きつけの店だ。手際がいい。

大型車両の免許は、一応とってある。もちろん、小型船舶の免許もだ。親に言われてとったが、今だに小型船舶に乗る機会には恵まれていない。きっと一生そんな機会はないだろう。なんでとったんだ、小型船舶免許。

俺は運転席に飛び乗り、挿しっぱなしになっていた鍵を回し、エンジンを始動させる。運転席内に響く重低音。やはりトラックに乗るのは、気持ちいい。

 

おーなーかーすーいーたー。

 

家からここまでは近距離だが、トラックじゃないと荷物は運べない。なぜなら俺が頼んだのはこの店のカップヌードール全部。店の倉庫にあるストックも全部である。そんなもの、人間が運べるはずもない。ダンボール何個分か、考えるだけでも恐ろしい。

そんな大量のカップヌードールと冷凍食品、さらに調味料を積んだトラックは、ゆっくりと走り出す。

 

おにゃかすいたにゃぁ。

 

俺がこんなに冷凍食品やカップヌードールを買い込むのには、理由がある。とても単純な理由だ。作るのが楽だからだ。

レンジでチンとかお湯入れて3分とか、もうどれだけ楽か言うまでもない。これはプッチンプリンを超える発明だと俺は思う。

他人にはよく、体に悪いと言われるが、俺は気にしてない。たまに野菜を生で食べる野菜イヤーを作ってるから、問題ない。

そして、よくそんなに同じもの食べて飽きないねと言われるが、こればっかりは一般人には理解できないだろう。

 

お腹いっぱいご飯が食べたい。

 

俺は味覚障害だ。

しかも甘いものが苦く感じられるというものではなく、全く味がしない類の味覚障害。グリードじゃないぞ、俺は人間だ。

物心ついたときから味覚障害で、最近食ったものの味すら知らない。そのくせ腹だけはバカみたいに減る。だから気づいた頃には、俺の口からは食事関連の言葉しか発せられなくなった。

 

メシィ、メシクワセェ。

 

しかも定期的に口から言葉がこぼれ出る。だから基本的には、他人と話す時は筆談か、言葉のニュアンスでわかってもらうしかない。

これを言うと皆、俺に同情するが別にこれはこれでいい。味がしないおかげでどんな料理も食えるのだから。

だが、嗅覚だけはかなり敏感で、変な匂いのする料理は食べられない。食えるかどうかを判断できる唯一の器官が、鼻だ。

 

お腹がすきました。ご飯にしましょう。

 

だから俺は食事を楽しむために、匂いのする調味料を買い込む。少しでも食事を楽しむために。

俺が乗ったトラックは、我が家の前で止まる。T字路の突き当たりに位置する我が家の前、つまりアクセルを踏み込めば我が家に突っ込める位置だ。

……いや、踏まないよ? ブレーキと間違えてアクセルなんかーー

 

お腹へっーーたぁ!?

 

次の瞬間、トラックは急加速。そのまま愛しのマイホームへと、突撃。

飛び出るエアバック。それを貫通して俺の腹に刺さるコンクリート。

視界が、赤く染まる。

朦朧とする意識の中、俺は人生最後の言葉を口にした。

 

Are……you ……hun……gry?

 

カァップヌードールッ!! hoooo!!

こうして俺はこの世界での人生に、終止符を打つこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

終止符は打った。間違いない。実は生きてましたなんてことはない。地獄のそこから這い上がる気力は俺にはない。人生は楽しかった。それで終わりにしたかった。

……なのに。

 

「わしは神じゃ」

 

初老の神様が、そこにいた。

俺は確かに腹をコンクリートに貫かれて死んだはずだ。俺の遺言はAre you hungry? のはずだ。なのになぜか俺はーー

 

「生き……てる?」

 

思わず自分の口を抑えた。ありえない。食事関係以外の言葉が、口にできてる?

 

「ふむ、何をそんなに驚いておる? 神がいることか? それとも自分の意識があることか?」

「Are you hungry?」

「カァップヌードールッ!! hoooo!!」

「俺、生きてるのか?」

「いや、死んだ。腹をコンクリートに貫かれて死んだ。おまけのはてにエアバックが不良品だったせいで、顔面がひどいことになっておるぞ?」

 

あのトラック、リコールの対象車だったのか。そんなものを今までずっと乗りこなしていたかと思うと、ゾッとする。

 

「さてお主は死んだわけじゃが、お主はかなり不幸な人生を歩んできたようじゃから、ここで大復活チャンスじゃ!」

「いらないです。さよなら」

「ちょっ、おまっ」

「俺は不幸な人生を歩んだとは思ってないです」

「遺言がAre you hungry? なのにか?」

「カァップヌードールッ!! hoooo!! あぁ。俺は自分が不幸だとは思っていない」

 

この一言に、涙ぐむ自称神様。

 

「なんと立派な人間じゃ。お主には好きな世界に転生する特典を挙げよう!」

「じゃあ、トランスモーファーの世界で」

「……は?」

 

なんだ、その反応は。好きな世界に転生させると言われたら、間違いなくトランスモーファーの世界だろ。

 

「えっと、fateとかじゃなくて?」

「うん」

「ハイスクールDDじゃなくて?」

「うん」

「勇者のくせに生意気だ。じゃなくて?」

「そんなとこに転生した人いるの?」

「もちろんじゃ。……えっ、マジでトランスモーファー?」

 

流石にくどいな、この神様。トランスモーファーの世界に転生したいって言っただけなのに、なんでそんなに驚いてるんだ?

 

「トランスフォーマーじゃなくて?」

「トランスモーファー」

「トランスフォーマー?」

「トランスモーファー!」

「あのクソ映画の?」

「ふぁ!? あれは普及の名作だろ!?」

「いや、今までここに来たやつでそんなこと言うたんは初めてや」

 

あれ、神様口調おかしくなってないか?

 

「うっ、うむ。ならトランスモーファーの世界に転生させよう。何か欲しいものはあるか? いまなら何でも授けよう」

 

欲しいもの、ね。そうだな……。

 

「味覚が欲しい」

 

転生できるなら、味を知りたい。普通の人は何を食い、なんでハバネロを生で食おうとしないのか、知りたい。

 

「味覚、か。わかった。転生したら必ず神にも並ぶ舌を授けよう」

 

そこまで望んでないんだけどなぁ。

 

「では、第二の人生を楽しみたまえ」

 

神様がそう言うと同時に、俺の意識は次第に薄れていく。

あっ、俺はもう一度死ぬんだな、と霞む意識の中で何と無く思った。

そして、俺の意識が途切れる直前で、聴覚は確かにその言葉を聞いたのだ。

 

「あっ、やべっ。ミスった」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の意識が復活するのは、俺が生まれてから1年と半年経った時だった。最初の約1年間は脳が発達していないらしく、意識というものが存在できなかったようだ。

俺がこのトランスモーファーの世界で始めて見たものは、母親の寝顔だった。綺麗な顔をした母親で、若干童顔のその女性を見ながら、俺は考える。

 

この人。日本人だ。

 

顔つきが、完全に日本人のものだ。アジア系の顔だから中国人? と一瞬考えたが、違う。

中国人は寝言で「あなた、ダメェ……」なんて言うはずがない。

 

「……だぁ」

 

俺の口からもれたのは、そんな声だった。声帯がまだできあがっていない。これじゃあ意思表示もできそうにない。ついでに今の俺はまだ1歳なので、ハイハイもできるか分からない。いわんやサマーソルトキックをや。

 

「……だぁだぁ」

 

声帯ができあがっていないので、とりあえず声を出す。意味なんてない。とりあえず、自分の子供の前で夫に変なことをされてる夢を見ている母親を起こさなくては。

 

「だぁだぁ。……だぁ! だぁだぁ! だぁ だぁ だぁだぁ?」

「うーん、はっ寝ちゃってた!」

 

俺の母親らしき女性が跳ね起き、俺の方へ視線を向けると、嬉しそうに微笑んだ。

 

「ごめんね、百合ちゃん」

 

おい、今俺のこと百合っつったか?

俺は男だし、ノーマルだぞ。頬ずりするな、気持ちいい。もっとして。

 

「だぁー」

「うん、どうしたの? あっ、もう授乳の時間かぁ。全然休めないわねぇ」

 

母さん、そうじゃねぇんだよ。聞きたいことがあるんだよ。おっぱい吸えるのは嬉しいけどさ、そうじゃねぇんだよ。

 

「だぁ!」

「えっ、おっぱいいらないの?」

 

いや欲しいんだけどさ、そうじゃねぇんだよ!

 

「だぁだぁ。だぁー? だぁだぁ!」

「どうしたのぉ? 百合ちゃん。何か嫌なことでもあるのぉ?」

 

待て。もしかして百合って、俺の名前か!? しかもちゃん付けって、もしかして……。

まだ発達していないはずの発汗器官から大量の汗が湧き出る。まさか、まさか!

 

「それにしても女の子が生まれるなんてねぇ。あの人、また予想外したわねぇ」

 

俺は、女になったのか?

 

 

 

……ひゃっふぅ! カァップヌードールッ!! hoooo!!

 

性別が変わった。さすが神様、よくわかってんじゃねぇか。せっかくの新しい人生だからってことで、性別変えてくれたんだな? 流石だぜ!

 

性別が変わってうろたえる人の方が多いかもしれないが、俺は違う。男として生きてきたのだから、2度目の人生は女になりたかったのだ。『股間の使い捨てロケットランチャー』も前世でちゃんと使ったし、せっかくなら女でニューゲームを望んでいたら、神様が叶えてくれた!

もうサイッコーだね! 天和国士無双だね! 初手エグゾディアだね! ひゃふぅ!

 

「だぁだぁ!」

「ふふっ、百合ちゃんも嬉しいの? やっぱ子ども産むなら女の子だよねぇ」

 

そこで、俺の思考が止まった。

 

まさかこの親、俺に百合ってつけたのか? マジか! これ絶対中学でいじめられるやん! 「私、百合!」とか笑顔で言える自信ねぇよ! ある意味ピカチュウちゃんより残酷だよ!

 

いや待て、日本には苗字という概念がある。名前で自己紹介しなくともーー

 

「男百合。いい名前ね」

 

積んでんじゃねぇか! 男なのか百合なのか、どっちかにしろよ! 男で百合好きかぁ。なるほどなぁ。じゃねぇよ! ファック……ス!

おい、神様。ミスったってまさかの名前かよ。なんだよこの名前。西尾ナントカさんも驚きの名前だよ。空々空、並にやばいよこの名前! これなら味覚なくてもいいから、前の世界にいりゃぁ良かったよ。

 

いや、待て。名前でそんなに落ち込む必要はない。恥ずかしいが「私は百合です」って自己紹介すりゃあいいだけの話だ。せっかくトランスモーファーの世界に来たんだ。名前なんて気にせず、楽しまないとな。

名前は所詮名前だ。気に入らなかったら改名すりゃいいし、苗字はまともな苗字の男と結婚すればいいだけの話だろ。山神ルーシー(以下略)よりマシだろ。

 

「ただいま!」

 

そんなことを考えていると、我が家に野太い声が響いた。父親だろうか。そこそこダンディな声で、シュワちゃんを彷彿とさせるいい声だ。

 

「おっ、百合も起きてるのか」

 

俺の視界に入ってきたのは、いかにもな悪役ヅラをした男。あれ、こういう顔どっかで見たことあるぞ? ドズル・ザビか?

 

「えぇ、あなた。百合は今、起きたとこよぉ」

「ふむ、子供の成長は早いなぁ」

「えぇ、あっという間に大きくなっちゃうんですものぉ。本当に早いわよねぇ」

 

母親の甘い声と父親の野太い声。俺の声帯はどっちに似るんだろう。シュワちゃん似の声の女の子とか、嫌だなぁ。絶対小学校で男って呼ばれるよ。あっ、それ俺の苗字か。あはは……家に引きこもろうかな。

 

そうこう考えていると、なんだかものすごく腹が減ってきた。とりあえずおっぱいをおねだりしよう。本当は芋焼酎が飲みたいんだけど、子供が芋は流石にまずい。アルコール度が高すぎる。まずは缶チューハイか、おビールだろう。よく苦いと言われるおビールも美味しいと言われるチューハイも、味はしないがよく飲んだ。あの酔っ払う感覚が好きで飲んだのだが、最後の方は酔う感覚も味わえなくなるほど、酒に強くなった。どうやら俺の中で眠っていたロシア人の血が覚醒したらしい。純日本人だが。

 

とりあえず手を動かそうとすると、突如体を母親に持ち上げられる。わぁ、二の腕柔らかそー。確か二の腕とおっぱいの柔らかさって似てるんだっけ? いや、二の腕はいいからおっぱいくれ。喉渇いたわ。

 

そういえば、牛乳ってどういう味がするんだろう。小さい頃は大きくなりたくてしきりに飲んだが、あれ、飲めば飲むほど気持ち悪くなるんだよな。だから、大人になってからはほとんど飲まなかった。同様の理由で炭酸も飲まなかった。口の中が弾ける感覚は好きだったが、あれを飲んだ後、腹に溜まって大変だった。

 

「だぁ」

「ん? どうしたの、百合ちゃん。おっぱい欲しいのぉ?」

「だぁ」

 

早く母乳よこせや。早く味が知りたい。牛乳でも人乳でもなんでもいいから、乳の味が知りたい。今、乳をチチって読んだやつ、腕立て13回な。俺は下な理由じゃなくて、純粋に味が知りたいのだ。

トランスモーファーの世界にきて最初に味わうものだ。一生忘れてなるものか。

 

母親が服をたくし上げ(以下自主規制)

 

 

 

 

 

 

それから十数年が経った。俺はもう14歳、中学三年生だ。立派なJCである。あと1年も経てばJK。ラノベなら様々なイベントが起こるのだが、この世界では何も起こらないはずだ。

なぜならこの世界は迷作映画、トランスモーファーの世界だから。

 

さて、俺あらため私の今までをダイジェストで振り返ろう。まず3歳のとき、クレヨンでピカソのゲルニカを描いた。

あれは今でも反省している。イラストレーターだった頃のくせで、ついささっと描いたら、かなり本物に近くなってしまったのだ。いやはや、やっちまった。その一言しかない。

 

そして4歳の頃、親にシャープペンソーが欲しいと韓国語で言ったらなぜかくれたボールペンで、女の子が絡み合う絵を描いた。先に言おう。あれは事故だ。あまりにもいいボールペンだったのでささっと描いたら、女の子が絡み合ってた。エッチな薄い本を描いてた時のくせで、つい描いてしまった。絡んでるキャラクターはもちろん、安達としまむらだ。

これが母親にばれた時はマジで死ぬかと思った。百合って名前がレズになるかと思ったが、これを見た偉大なる母の一言が、

「ねぇ、アフリカ行ってみない?」

母よ、どうしてそうなる。

というわけで俺のイラストについては華麗にスルーされた。父上様も特に何も言わず、目の前でマゾヒスティックエクスタシーの表紙を描いても、ニヤニヤ笑ってるだけだった。

知らない人は検索してみよう! ただし親の前ではやめておこう。絶対に後悔する。ついでに原作者は『だから僕はHができない』通称僕Hの作者だ。みんな、察してくれ。

 

そして5歳のころ、俺はアフリカへと渡った。現地のマオリ・バナ・レズさんとはかなり仲良く慣れたし、素手でワニを絞め殺したり、ピラニアを素手でとったり、蜂蜜を素手で採取したりと、言いたいことはたくさんあるが、割愛する。大事なことは、ここでいろんな珍味を楽しめたということ。ワニ肉は予想以上にプニプニしていて、その上味もある。だがさすがにもう、ムカデは食いたくない。確かにうまかったし食感も絶妙でよかったが、もうあれはごめんだ。

 

そして1年で日本に帰国してからは、たくさんのものを食べた。神様のおかげか、私の舌はかなりよく、微妙な味の違いにも敏感に反応できるようになっていた。例えば昆布をつけた時間や、出汁をとるのに使った豚骨の重さまでわかるレベルだ。でも、まずい物もちゃんと食べたし、前世で食べたものはできるだけ食べようとした。流石に味覇を直食いしたのはやばかった。あの時ばかりは死ぬかと思った。味覇って、あんなに辛いんだね。前世では直食いできたのに。

 

まぁ言わなきゃいけないことはそのくらいか。あとは案の定俺のあだ名が男になったり、中学ではレズって呼ばれたりしたことくらいだ。

 

あっ、そうそう。帰国してからはずっと日本の学校に通っている。またアフリカに行きたいという気持ちは強いが、それ以上に日本の環境と、飯が気に入った。

さすが無形文化遺『WASYOKU』。『SUSHI』や『TENPUーRA』も気に入ったが、やはり一番好きなのは、

『Are you hungry? カァップヌードールッ!! hoooo!!』

である。

 

こっちの世界に来てからも、私は何度かカップヌードールにありつく機会があった。最初に食べたのは小学4年生の時、たまたま家にあったので勝手に作って食べたのだ。

結論から言うと、想像以上に味が濃かった。ベースは醤油なのだが、スープの素にする過程で何かしらの魔改造がされたせいか、味が醤油を離れて別なものへと変化している。さらに胡椒の風味も交わり、『カップヌードールの味』という新しい概念を作り出しているのだ。あれには他の調味料を混ぜる必要はないだろう。カップヌードールは、あの容器の中だけで完結している。

あそこにワックのポテトをぶっこんだ前世の俺は、かなり頭が沸いていたらしい。仕方ないよね、味覚障害だったからね。

 

そんなこんなで私はもう中学三年生になった。そしてその春に事件は起きた。

 

両親が、コロンビアに行ってしまった。コロンビアで世界最高峰のコーヒーを作るらしい。いや、娘一人おいてどこ行ってんだよ。

幸いお金は入ってくるのだが、正直、限界がある。ささっと絵でも描けばいいのだが、お金がなさすぎてペンタブも買えない。

仕方ないので母親に相談したら「あらぁ、百合ちゃん、なんでペンタブが欲しいのぉ? 絵でも描くのぉ?」といってまともに取り合ってくれなかった。絵を描くからペンタブが欲しいんですよ。マウスで書くのは苦手なんだよ。

それに毎週ヤングジ○ンプを買っているのが、かなり財布に響くのだ。毎週欠かさず買って投票するのは前世からの習慣だ。毎月ラノベを買う習慣も、財布に響いているが、やめられるはずもない。

 

ともなれば1日3000円の食費を削るしかない。えっ、多いって? いや、少ないでしょ。前世で味のしないゴムのようなものばかり食べてきたんだから、この世界でくらいはまともな飯が食いたい。まともな、味のする飯が。

 

「ハラヘッタ」

 

学校の机に突っ伏し、私は呟いた。放課後の時間帯、教室には私以外誰もいない。皆部活動をしたり塾へ行ったりと、放課後を満喫しているらしい。

だが、私は教室にいる。なぜか。

これでもちゃんとバスケ部に所属しているし、今まで一回も練習を休んだことはないし、今日も部活を休んだわけではない。今日は元から休みの日だ。

ならなぜ家に帰らず、友達とも遊ばずにこうしているか。答えは単純だ。

家に、Gが湧いたからだ。

あのね、一人暮らしの乙女の部屋にね、Gが出るとかね、もう地獄だよ? これが飛翔するGだから、もう本当に地獄だ。誰かあのGが増殖するGになる前に対峙してそのまま滅却して! じょうじ、とか喋り出す前に殺して!

 

というわけで家には帰れない。私の黒胡椒せんべい、大丈夫かな?

そして友達と遊んでいない理由も単純だ。

 

金欠。以上。

 

さて、どうしよう。私も、目的がなくこうしているわけではない。一応男子の野球部の練習が終わるのを待っているのだ。そのまま男一人をふっかけて、家にお持ち帰りしてGと対峙させる戦法だ。我ながら悪くない。むしろサイッコーだねぇ!

 

そんなことを考えていると、私の腹が声をあげた。

前世ほどではないが、私の食欲は尋常ではない。少し油断すれば授業中でも部活中でも、昼飯中でもカバディ中でも容赦無く腹がなる。それも子犬が鳴くような可愛らしいものではなく、地鳴りに近いもの。JCの腹の音とは思えないほど、音がヤヴァイ。

私は腹を抑えながら、立ち上がる。こうなってしまったら体が言うことを聞かなくなるのだ。前世の時と同じように食事関係以外の言葉が口にできなくなり、何かを口にするまでひたすら飯を求めてさまよい歩くゾンビと化す。

私は急いで通学カバンからおにぎりを取り出し、頬張る。コンビニで売っているおにぎりらしい安い白米の味と、醤油につけられて奥まで味が染み込んだ鮭の味が口の中でハーモニーを醸し出す。

保存料バリバリのご飯は自分で握ったものより甘みにかけるが、塩加減にムラがないのが特徴だ。具の鮭も同じく、味にムラがない。だからこそ、このおにぎりはただのおにぎりではなく、『コンビニのおにぎり』という新しいジャンルとなり得ているのだろう。

 

「不味くない。でも、おいしくない」

 

口から飛び出る感想。これ、コンビニ業界関係者に聞かれたら間違いなく殺されるだろうな。

 

「米本来も持つ味は死んでないけど、人の手で握ることで発生するムラが死んで、オリジナリティが消えた」

 

それはむしろコンビニおにぎりのメリットとも言えるが、同時にデメリットでもある。

 

って、何真剣にコンビニのおにぎりを批評しているんだ、私は。

きっと、嬉しいからなんだろう。味を味わえること、それの素晴らしさを知っているからこそ、全ての食べ物について、事細かに分析したくなるのだろう。うめぇ、といえば済むのに、それで済ませたくない私がいるのだ。

 

「ふぅ、ごちそうさまでした」

 

手を合わせて、無残に引き裂かれたおにぎりの包装へ、手を合わせる。

 

私がこの世界に来て気づいたことの一つは、この世界がトランスモーファー1の世界ではないということ。

というかそろそろトランスモーファーについて軽く説明しよう。

 

『トランスフォーマーのパロディにして、最恐のクソ映画。やたらとレズる上司と、サイボーグの兄ちゃんとその他が、金属生命体と戦う話。2作目はその前日譚』

 

うむ、我ながらうまくまとめられたわい。一言で言うなら、クソ映画だ。私がなぜこの世界に転生したいと望んだかといえば、なんか面白そうだから。以上。

 

だってクソ映画世界に転生するんだぜ? おもろいやろ(脅迫)

 

正直に言うと、私は転生とかどうでもよかった。トランスモーファーの世界だろうがゴジラの世界だろうが、仮面ライダーフォーゼの世界に飛ばされようがどうでもいい。神様特典なんていらない。私は本当に、ただただ純粋に、食を楽しみたかった。

そのためならどこの世界だってよかった。その中でもトランスモーファーの世界を選んだのは、純粋に俺の気まぐれだ。あのしょぼいCGでできたロボットを見たいというのもあるが、そんなのは後付けの理由だ。

 

この際だからぶっちゃけよう。

 

転生なんてどうでもいい。どうでもいいから飯食わせ。

 

それと、最近になって思うことがある。神様は一体何を間違えたんだろう。名前は確かにひどいが、そんな程度神様がミスった、とか言うだろうか。

否! 断じて否!

 

これは私の仮説だが、神様がミスったのは、俺を送る世界のことではないのだろうか。またまたはっきり言おう。神様がトランスモーファーの世界に転生する奴がいるなんて、考えているはずがない。

というかそもそもそんなマイナークソ映画見てるやつ、100人に一人ぐらいだろ。

 

それに、いつまで経ってもトランスモーファーがやってくる気配はないのだ。ならば違う世界に送られた可能性も出て来るというものだ。

 

私は学校制定のカバンを持って、教室を出た。

 

この世界はなんの世界なんだろう。ここはどっからどう見てもちょっと前の現代日本で、異世界と通じている雰囲気もない。

 

こういう場合、幾つかのパターンが考えられる。

 

パターン1。突然他世界に飛ばされるパターン。

これの代表的なものが、ラストエンブリオである。えっ知らないって? 問題児が異世界からナタラカンタラという作品の続編だ。突如他世界に飛ばされて無双する、代表的なパターン1である。

 

パターン2。ラブコメ、スポ根、その他日常系パターン。

これが一番わかりにくい。ラブコメとかさ、どうやって見抜くんだよ。ぶっちゃけ近くに知ってるヒロインがいなかったら、一生この世界が何かわからずに死ぬぞ?

ついでに、このパターンの代表作が、エロマンガ先生だ。この作品は有名だからもはや説明不要だろう。俺の妹がこんなにナンタラの作者の新作だ。アニメ化もするらしい。

 

パターン3。突然、または段階的に未知の力が発見されるパターン。

パターン1に近く、これもわりとあるあるだ。代表作で言えば、ペルソナ3である。

ど定番だ。説明はしない。

 

ん? なぜパターン3がメジャー作品なのかって? 私はそのパターンの名作をあげているだけだ。別にマイナー作品を選んでるわけじゃない。

 

パターン4、突然やばくなるパターン。

トランスモーファーがこれである。突如異世界から侵略者がやってきたり、ゴジラが目覚めたり、突然人類滅んだり。とにかくいきなり日常が壊されるのがこのパターンだ。

代表作は、東京侵域。これだけは譲れない。名作中の名作だ。読んでいない人、今すぐ本屋へGO! ポケモンしながらGO!

そして買おう!

 

この4つのパターンに加えて、最後のパターン5が、すでに起こっているパターン。

 

こればっかりは本当にわからない。何処かでセレクター達が戦ってたり、実はミラーワールドで死闘が繰り広げられていたりと、私が認識できない範囲で何かが起こっているパターン。

例えば実は私は何かしらのループに巻き込まれている。例えばここは仮想空間で、毎週水曜日の放課後に本体は天使と殺し合いをしていて、その記憶は残らない。例えば、今、世界の何処かで凄腕スパイが悪と戦っている。

 

うん、そんなものをどないせいと? 作品に介入することもなく死ぬのがオチだ。おい、どないせいと?

そんな世界に転生させられていたら、俺の2度目の人生は、食を楽しんで終わることになる。それはそれでいいが、楽しくない。

 

考えてみよう。実は毎日ア○ギ様が命をかけて麻雀をしているのに、自分は毎日普通に生活している……。

それじゃアカギの世界に来た意味ないじゃん! 言っちゃったよ、伏字にした意味なくなっちゃったよ!

 

さて、私はもう中学三年生になったわけだから、そろそろ真剣にこの世界が何か探ってみようと思う。これで本当にトランスモーファーの世界なら骨折り損だが、そうでないなら意味のある行動だ。

 

私は学校の廊下を歩きながら考える。

 

私は元イラストレーターだが、そこまでアニメに詳しいわけではない。むしろ、アニメとはほぼ無縁の生活をしてきた。ならなぜエロマンガ先生を知ってるかって? それは私が、『アニメ化してないラノベ』を愛しているからである。

こう言うと皆、は? 何言ってんだお前、という反応をするが、事実私は、アニメ化が決定したラノベを買ったことがない。昔買ったラノベがアニメ化したことは多々あったが、基本的にアニメ化決定! の帯がつけられた作品は買わないようにしている。

 

そんな偏った知識では、この世界が何の世界かなんて、判別できるはずがない。いや、判別はできるが、どういう展開になっていくかがわからない。

 

例えばIS。有名なハーレムもののラノベだが、私は登場人物の名前と、世界観しか知らない。確か女性だけが操縦できる兵器、ISをなぜか男なのに使える女たらしが、IS専門学校に入って女の子とイチャラブセ……する話だということは分かるが、誰と誰がどういう関係で、誰が敵で誰がなんなのか、さっぱりわからない。

一方、似たような話だが『終焉世界の救世候補生』なら詳しい。世界観はゴッドイーターに近いが、ハーレムもので主人公だけが唯一、女性しか扱えない兵器を扱えるという設定は、ISに限りなく近い。まぁ主人公の立ち位置は生徒ではなく教員なのだが、それはその時期のラノベの傾向も踏まえてのキャラ設定だろう。もうちょっと世に出てくるのが早ければ、主人公の立ち位置はもうちょっと違っただろう。

 

おっと話がそれた。

ようはこの世界が何の世界かわかっても、その世界で何が起こるかわからない可能性が高いということだ。というか世界によっては登場人物すら知らない。

……うん、知らない世界じゃないといいなー。

 

そんなことを考えながら歩いていると、もう下駄箱の近くまで来てしまった。

イカンイカン。さっさと男子を捕まえて我が家のGと対峙させねば。そう思っていると、運良く下駄箱付近に平凡な顔つきの男がいたので、軽くてを振って声をかけてみる。

 

「あっ、こんばんわー。今帰るとこぉ? お腹減ったぁ」

 

しまったぁっ! 腹が減ってきたぁ!

 

「……」

「お腹減ったぁ」

「えーっと、僕に声かけてる?」

 

私は急いでカバンからメントスを取り出し、口に放り込む。これで少しは、空腹が紛れる。

 

「YES! 君に声かけてるよ、佐藤葉 ……佐藤洋くん!」

 

危ない危ない、名前を間違えるところだった。いやぁ読み方は一緒だったからうっかりラノベの主人公の方の漢字をつかちゃったよ。

佐藤葉。ライトノベル、サイハテの救世主に出てくる主人公。人類最強の天才であり、世界を滅ぼす災厄を論文としてまとめ、ホワイトハウスにて論文発表後に壊れた男。

東京侵域の作者が書いた作品が、サイハテに救世主。正確にはこちらの方が先に書かれたのだが、個人的には東京侵域のほうが好きだ。

 

「えーっと、なんで2度名前を?」

「間違えたから」

「いや間違えてなかったよね。ちゃんと『さとうよう』って読んでくれたよね?」

「漢字を間違えたから」

「それって声にだしちゃえば一緒なんじゃ?」

 

苦笑いを浮かべながらもしっかりと取り合ってくれる彼は、同じ学年の佐藤洋。佐藤葉ほどではないがある程度頭はいい。まぁ、いいやつではあるのだが、彼はある意味ヤヴァイ。私みたいにヤバいわけじゃなくて、彼は本当にヤヴァイ。

小学四年生の頃に友達の石岡君にブービートラップをしかけ、それを自由研究の結果として提出したなど、ある意味頭のネジが抜けている上、頭がおかしいレベルのセガ信者だ。

 

「ねぇ、佐藤くーん、お願いがあるんだけどぉ」

 

母親譲りの甘ったるい声で彼を誘惑。さぁ、そのまま私の家に来てGと対峙しろ!

 

「どうしたの? レズさん」

「百合だっつってんだろうがぁ!」

「ごめんね、レズ姉」

「百合! レズじゃなくて百合!」

 

ついでに私の名前のアクセントの位置は、第二音節らしい。小さい頃、父親に散々仕込まれたせいで、私は自分の名前をユリと発音できずに、百合としか発音できなくなってしまったのだ。ファ○ク!

 

「それで、どうしたの? レズ姉」

「さようなら」

「ごめんごめん、レズさん」

「もういい、お腹空いた」

 

やべっ、メントスが速攻で消えた! 私は急いでメントスをもう一つ、食いに放り込んだ。

 

そんな私の様子を見て、ニヤニヤと楽しそうな笑みを浮かべる佐藤洋。一応彼とは小学校の頃からずっと同じ学校なのだが、不思議なことに一度も同じクラスになったことがない。そして彼こそ私にレズというあだ名をつけた張本人だ。

 

「ごめん、百合。お願いって?」

「うぅ……私の親が二人ともコロンビアにいることは知ってるよね?」

「コロンビア? なんで?」

「世界で一番美味しいコーヒーを作るんだって。そんなわけで私の家には今私しかいないわけです」

 

はて? という風に首を傾げる彼。おい男子中学生、もっと欲望に忠実に生きろよ。

 

「それで、どうしたの?」

「お前はブレイドかよ」

「えっ?」

 

今仮面ライダーが頭に浮かんだやつ、ちょっとこっち来い。英雄教室について永遠に語り合おう。

 

「ううん、なんでもないよぉ。佐藤洋君にお願いがあってねぇ、私今一人で生活してるからぁ、少し防犯が心配でねぇ、家の裏口にブービートラップをしかけて欲しいんだぁ」

「ゑ?」

「だからぁ、家の裏口にトラップをしかけて欲しいのぉ」

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとか彼を家に連れ込んだ私は、無事に彼とGを対峙させることに成功した。

いやぁ、激戦でしたね。佐藤君もすごかった。飛翔するGを新聞紙で叩き落すとは。さすが男の子。やるなぁ! えっ私? 私は女の子だよ?そんなことできるわけないやん。

ただ一つ申し訳ないのは、Gを叩き潰した佐藤君に抱きついたら、その衝撃で彼はバランスを崩し、Gの死骸を踏み潰してしまったのだ。しかも裸足で。

本当に、申し訳ない。

その代わりに、私がラノベヲタクということが彼にばれてしまった。

Oh god! まぁ仕方ないか。いつかバレることだ。だが、それと同時に私のエロ本がばれたのが不味かった。何故だ。大量のラノベにがある本棚の裏だぞ。何故バレた?

くそっ佐藤洋め、佐藤葉の偽物のくせに勘だけはいいな。

 

そんなこんなで私と佐藤洋の距離は一気に縮まり、そんなノリのまま早くも中3の夏になった。夏休みの宿題は配られたその日に終わらせたため、今はかなり暇だ。部活は午前中だけしかなく、夏前に買い込んだラノベは全て読み終わり、本当にやることがない。

 

試しに佐藤家へ電話をかけたが、彼は今シーマン育成中で忙しいらしい。なんだよ、シーマンって。

 

そしてここに来て発覚したことは、ラノベの買いすぎでそろそろ本格的に食費を削らないと、生きて行くのがきついレベルにまで来ているということだ。理由は、中3の春から一気に食費が増加したことにある。

前世からの空腹が、この世界にまで引きずられているのが主な理由だ。

ついでに、前世では毎日カップヌードールを15個食べていた。そんな恐ろしいほどの食欲に襲われれば、嫌でも食費は増えるのだ。

 

「さて、お腹空いた」

 

そんな私がたどり着いたのは、ご近所にあるごくありふれた普通のスーパーだ。部活の先輩(ガチレズ)曰く、ここでは特定の時間になると、弁当が半額になるらしい。いやはや、いいことを聞いた。その代わり胸を揉まれた。いやぁ、危うく大人になるところでした。危ない危ない。

 

というわけで私は今、とあるスーパーの前にきている……のだが、

 

なんじゃこりゃ。

 

何故スーパーから血まみれの人間が出てくる? なぜ鼻血を拭いながらスーパーから人が出てくる!? なんで呻きながら腹抑えてる奴がいるんだよ!!? 意味がわかんねぇよ! デスニードラウンドの葛ユリちゃんも驚きだよ! ハンバーガー店のピエロが実は超能力を使うことを暴露されたぐらい驚きだよ。ロナウダマジィックス! ヘェァハハハハハハハ!

 

私は急いでスーパーに駆け込み、惣菜コーナーから忽然と姿を消した弁当を見て、何と無く察した。

 

ここはトランスモーファーの世界なんかじゃない。ここは、ここはーー

 

ベン・トーの世界だ。




完全なまでの見切り発車です。大丈夫か、これ。

先日知人に、お前ハーメルンで二次書いて見るきない? と勧められたので、とりあえず書いて見た結果がこれです。まぁ作者の気分次第で続けます。

そして皆様にお願いがあります。このライトノベル面白いよ、というのがあったらぜひ教えてください。どんなにマイナーでも、ど定番でも結構です。これ読んで! というのがあったら教えてください!
ではまたいつかお会いしましょう!
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