クロノ・ハラオウンは戦慄していた。
彼とて若くてもそれなりの修羅場を切り抜けていると自負していたが、
目の前に存在する怪物にはあったことがなかった。
悪魔。
そんな神話やおとぎ話の中でしかいないものが目の前にいる、
しかも、ロストロギアを取り込んだという最悪の状況だ。
フェイトも目の前の怪物の異常さを肌で感じている。
なのはは勘もそうだが、怪物の見た目で危機感が警戒している状態。
そんな彼等を余所に全く動じない少年がいた。
「あんたの名前は? それとも口が聞けないのか?」
その質問を聞いたクロノは思わず「馬鹿か」と言いたくなった。
そんなクロノの心情をよそに悪魔は丁重に答えた。
「バフォメットとお呼びください」
「へ~、随分と丁重な言葉だ。
てっきり不良かヤクザのような言葉遣いかと思ったけど」
「私としては、なぜそのような事を思ったのかを聞きたいですね」
「それは見た目♪」
のんきに悪魔と会話をしている大樹に頭を抱えたくなるクロノ。
「さて、自己紹介も終わったことですし死んでください」
バフォメットは手のひらをなのは達に向けた。
すると、手のひらから魔力弾が放たれた。
「無詠唱で砲撃魔法だと!?」
三人は空に飛んで避け、大樹は瞬動を使い避けた。
そして、バフォメットは空に向かって飛んだ。
「なんて威力だ!?」
クロノは無詠唱で放たれた砲撃に驚愕した。
その感想はなのは達も同じようだ。
「あの程度で驚かれてはわたくしはとても恥ずかしいのですが」
突然の言葉に、三人は視線を向ける。
「どうしました、逃げないのですか?」
バフォメットはそう言うが、三人の本能がそれ許さなかった。
なぜなら、この場で背を向ければ殺させるという事を、
本能が告げているからだ。
「あんまり俺を無視しないいただきたいんだけど」
大樹はさらに、バフォメットの背後から愚痴る。
「これはこれは、申し訳ございません。
四人の中であなたが一番弱いかと思っていましたから」
バフォメットは素直に感想を言った。
「まあ確かに、俺の魔力は三人に比べたらカスみたいなものだけど、
それも戦い用はあるぞ?」
ニヤリと笑みを浮かべた大樹を睨みつけるバフォメット。
三人はチャンスだと思い一斉に攻撃を仕掛けた。
「スティンガーレイ!!」
「ディバインシューター!」
「フォトンランサー!」
だけど、バフォメットに当たる前に魔法障壁の前に防がれる。
「おやおや、随分と行儀がなっていないのですね」
「…うそ」
「全く効いてない」
なのはとクロノは驚くなか、フェイトは大樹に視線を移していた。
【俺が戦っているうちにアルフと逃げろ】
【え!? ね、念話!? 大樹、念話が使えたの?】
【そんなことより、いつでも逃げれる準備はしろ】
【わ、わかった。でも、大樹は大丈夫なの?】
【安心しろ、こいつは力を持て余しすぎて、少し興奮気味になってる、
そのせいで結構隙だらけだ】
フェイトもそれのおかげで、なのは達と同時に攻撃できた故、
納得した。
「あんたの顔と格好を見たら嫌でも焦るだろ?
少しは自覚しろ悪魔さん」
さっきから、態度を変えない大樹にクロノは呆れなながら、
バフォメットの隙を探り出す。
「これは失礼、わたくし、少々はしゃいでますゆえ、
気づきませんでした」
「うん、知ってる。だから死ね♪」
大樹は笑顔で、刀を振り下ろしたが、魔法障壁はその攻撃を防いだが、
大樹は気を足に込めて、バフォメットを蹴り飛ばした。
その攻撃は効いていなかったが、バフォメットは驚いた表情をしていた。
「これは驚きましたよ、召喚術だけが脳ではないようですね、」
「ったりめーだボケ。魔力を失ってから、
いろいろと身につけてるんだよ。来な、叩き潰してやる」
その言葉を聞いたクロノは唖然としていた。
魔力値の差で勝負は決まるわけではないと思っていても
その差は歴然。攻撃も魔法障壁で効かないとなったら、もう大樹に打つ手はないと思っていた。
その予想通り、大樹の攻撃は効いていなかった、バフォメットは攻撃をしても避けられているが、
魔力の込められた体術の破壊力はデバイスを持たない大樹にとってはシャレにならないはず。
それを知っているのか知らないのか、大樹はバフォメットと攻防を繰り返す。
大樹が接近しているせいで、うかつ攻撃できない。
正直言ってしまえばクロノにとって今の大樹は邪魔である。
そんな緊迫した空気を壊す子狐が現れた。
「待ったーー!かしこみ、かしこみ~ぃ
宇迦之御魂神も大絶賛&大承認のこの未来の良妻!
旅館からの超特急のスクランブル、千の光年を駆けて未来の旦那のピンチにただいま到着っ!」
「「「「「…………………」」」」」
「あれ? ピンチじゃないですかご主人様?」
「いや、ピンチなのはニャンコ先生じゃないのか?」
大樹はそう言って物陰にいるニャンコ先生に視線を向けると。
「おえぇぇぇぇぇ~~~~、飲みすぎた、
あのアホ狐思いっきり引っ張りおって…うっ…」
「「「「「…………」」」」」
「た、タマモ、アンタなにしにきたんだい? いや、それより空気をよんで」
いつの間にかフェイトの傍にいるアルフが口にすると、そこにいたほとんどの者が同意した。
「さて、どうします、あなたの剣では私は斬れませんよ?」
「なに、体も温まった頃だし、そろそろギアを上げるさ」
戦っている二人は無視をして、空気を元に戻して戦いを再開した。
タマモはショックを受けているが、大樹は無視して斬りかかる。
「何度やっても同じです。 あなた程度では私を殺せませんよ。全く、
非常に残念です」
大樹の攻撃を防いあと距離をとったバフォメットは愚痴を零すように口する。
「
今のあなたにはその欠片もない」
「アラ…ルブ…ラ?」
クロノは口にするとバフォメットはクロノに視線を向けた。
「彼が所属していた団体ですよ、彼等は強かったですね、
その中で、
そして、サモンマスターである彼は特に強かったですよ。
今の私では歯が立たないくらいにね」
クロノは信じられないという表情をしていた。
「特に、彼がサモンマスターと呼ばれていた時の殲滅力は恐ろしいものでしたよ。
巨大な獅子を龍を召喚して、軍隊を一人で殲滅できる化物でしたし」
大樹は耳をほじりながら話を聞いていない素振りをしていた。
「特に厄介だったのが、先の二人と三人で戦った時が厄介でしたと聞いています」
規格外を三人相手にするならそうだろうと大樹以外はそう思っていたが。
「三人は協力して私の主の組織を潰したのではなく、
三人の喧嘩で潰されていましたからね、幹部達は頭を抱えていましたよ」
「…は?」
誰が声を出したのか分からないが、その言葉は全員の代弁していた。
「しょうがないだろ、俺達が戦うと自然破壊になるってアル達がうるさいからな、
敵地になら思う存分戦えるっつことで、よく戦ったんだよ、決着つかなかったけど」
「全く、潰す気できたのなら、心情的には納得できますが、
喧嘩に巻き込まれて殲滅ですから幹部達は頭を抱えていましたよ」
「うわ~」となのは達は同情的な表情になる。
「だけど、今のあなたにはあの頃までの力はないのはひどく残念ですよ、
一度あなたの召喚術を見てみたかったのですが」
「確かに今の俺はあの時に比べたら魔力はカスだけど、
今のお前を殺すにはこれで十分だぞ」
大樹はそう言って、は両手の気と魔力を融合させた。
タマモ以外は大樹から出ている威圧感に驚愕した。
「これは!」
バフォメットが驚愕した瞬間、大樹は間合いを詰めてバフォメットを吹き飛ばした。
「
距離が離れた瞬間、大樹は呪文を唱え始めた。
「
バフォメットは直ぐに全魔力を魔法障壁に注いだ。
「
それを見た大樹は笑みを浮かべ。
「神鳴流奥義 斬魔剣 弐の太刀」
斬撃が魔法障壁に当たると思った瞬間、
障壁をすり抜けてバフォメットを切り裂いた。
「こ、この技は!?」
バフォメットが驚愕していた一瞬に大樹は距離を詰め
「はい、もう一丁斬魔剣」
二擊目の攻撃で魔法障壁を破壊した。
「そして止め、
膨大な雷がバフォメットに襲いかかり大爆発がおきた。
「が…あぁ…」
煙が消えたあと現れたのはもはや風前の灯という状態のバフォメットだった。
「そういえば、先程召喚術を見てみたいとおっしゃいましたねお客様?
申し訳ございませんお客様。当方、手癖が悪くなっておりますゆえ、来世で召喚術を味わってください」
芝居かかった笑顔でそう口にした瞬間、バフォメットはジュエルシードを残し塵にように消えた。
大樹の笑顔にクロノは背筋を凍らせた。
(あの笑顔、母さん達より怖い…)
「もう、ご主人様のイケメン!! なんですか今のトンデモ攻撃は!?」
「はっ!!」
クロノはすぐさま現状を把握して執行官としての仕事を再開しようとした瞬間、
フェイトとアルフは転移魔法でこの場から消えた。
「しまった」
「……さて、俺は帰って寝る」
クロノがフェイト達を取り逃がしたことに悪態をついている隙に大樹がそう口にしてこの場を去ろうとした。
「待って、せ――「待ってくれ、君には聞きたいことがある?」―ーしゅん…」
「やっぱり?」
大樹はそう口にした。
「話すのは構わないが、先にお前が何者なのか教えて欲しいんだが」
「ぼく「それはもういい、管理局というのがなんなのかが知りたい」ー―っ」
『ならば、その説明のためにもこちらに来ていただく訳にはいかないかしら?』
空中に緑色の魔法陣が浮かび、そこに一人の女性の姿が映し出され、唐突に現れたことでなのはは驚いたが、
大樹はめんどくさそうな表情して。
「はぁ、わかった。じゃあ案内してくれ」
大樹がそう言った瞬間、大樹が握っていた刀が折れた。
「むぅ、やっぱり咸卦法状態で、二連擊は耐えられないか、
(詠春の修行時代のお下がりとはいえ、業物と言うワケじゃないから仕方ないか、
できれば、気も魔力も使わない破壊力がある攻撃を覚えたほうがいいみたいだな)」
大樹は折れた刃をさやに収めた。
「大丈夫なのか?」
クロノが言うと大樹は陽気に答える。
「問題ない、それより案内してくれ」
「わかった。君達にも事情をききたいから一緒に来てもらうけど?」
「あ、はい」
なのはが返答したあと、三人と三匹はアースラに転送された。
アースラ内部では、なのは、何度もチラチラと大樹を見ていた。
「ん、なんか顔についてるのか?」
「あ!? ちがうの!!」
「そう…、あ~、大丈夫だ、お兄さんとのことは誰にも言わないから」
大樹は小声でなのはに耳打ちすると。
「そ、それは勘違いなの、お兄ちゃんにはちゃんと恋人はいるの!!」
力強く否定するなのは、驚いた大樹。
「そ、そうなのか、そいつはすまなかった」
「あ、ご、ごめん」
「いや、俺も勘違いしていたし…」
大樹はタマモに視線を移す。
「勘違いは誰にもあるんですよご主人様♪」
「そんなことよりも君は元の姿に戻ってもいいんじゃないか?」
クロノがなのはの肩に乗っているフェレット視線を向けていった。
「ああ、そうですね。ずっとこの姿なんで、すっかり忘れていました」
ユーノはそう言って体が発光すると、金髪の少年が現れた。
「え? 嘘? な、何、どういうこと~?」
なのは、今日一番のリアクションを起こした。
「あれ? なのははなんで驚いてるの、最初僕はこの姿だったよね?」
「し、知らないよ! 最初からあの姿だったよ!?」
「え!? ええぇぇぇえええ!!」
二人で驚いている中、タマモはニヤリと笑を浮かび。
「では、このタマモもご主人様に見せましょう」
笑みを浮かべたタマモも発光した。
そして、現れたのは大樹達と同じ身長の和服を着た女の子だった。
ただし、猫耳ならぬ狐耳に狐の尻尾付き女の子である。
「…タマモ?」
「はい~、どうですご主人様♪ この衣服にあってますか?」
「うん、かわいいぞ。しかし、人間に化けられるなんて知らなかったぞ」
「いや~、本当はもう少しした後に見せようと思ってたんですけど~」
タマモはそういって大樹の腕に抱きついた。それを見たなのは頬を膨らませる。
「む~」
「ニヤリ」
タマモは挑発するように大樹に見えないようになのはに笑みを見せた。
それを見たなのは意を決して、大樹に近づいた。
「どうした……えーと…下町?」
ガクリとなのはズッコケた。
「おしいの、私の苗字はある意味逆なの」
「逆? ……上下町!」
「ちがうの、高町、た か ま ち な の は なの」
「そ、そうなのか、すまん、高町」
「う、うん…(えーと、これからなんて言えば…)
ね、ねえ、今度学校で一緒にお弁当たべていいかな?」
「かまわないけど」
「あ、ありがとうなの、そ、それと私のことはなの――「すまないが、自己紹介はあとにしてもらえないか?」―ーガクリ」
クロノの空気の読めない発言が発動した。
それを映像で見ていたリンディ達はため息をついていたのは彼は知らない。
そして、ニャンコ先生は。
「ぎも…ぢわるい…」
酒の飲みすぎ+船酔いでダウンしていた。
やっとなのはが主人公と関わってきました。
次回はアースラで管理局に関してのお話と、なのはのアプローチです。
そして、大樹が習得した、気も魔力も使わない破壊力がある技ですが、
懐かしい技です。某少年漫画の破戒僧の技です。
にしても、ニャンコ先生が不遇です。
ロリタマモに関しては本人自身の希望で大樹の身長に合わせているだけです。
感想、誤字、脱字などありましたら指摘をお願いします。