異世界に渡った現代吸血鬼の生態~実践編~   作:ウサギとくま

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処女を襲って血を吸うだけの簡単なお仕事です

1人の少女が夜の住宅街を走っていた。

 やぼったい眼鏡をかけて、髪を三編みにした生真面目そうな少女だ。

 学校帰りだろうか、少女はダッフルコートの下に高校の制服を着ていた。

 少女の足がコンクリートを踏む度に、膝下まで伸びた長いスカートが翻り、お気に入りの本で膨らんだ学校指定の鞄がぽんぽんとはねた。

 

「はぁ、はぁ……図書室にいるとどうしても時間を忘れちゃうのよね」

 

 一旦休憩……と膝に手をつき、荒い息と共に出たのは反省の言葉だ。

 少女は先ほどまで学校の図書館で趣味に耽っていた。彼女は趣味に没頭すれば時間を忘れる性格であり、気がつけば窓の外は真っ暗になっていた。

 

「まだ、7時なのに暗いなぁ。早く帰らなくちゃ」

 

 季節は冬。

 夜の暗さと冷たさが少女のわずかに露出した肌を撫でた。

 

 少女は住宅街の中にある、公園に足を踏み入れた。

 ここを抜けると彼女が住んでいるマンションまでショートカットができるのだ。

 

 誰もいない公園を歩く。風に吹かれたブランコがキーキーと音を立てて揺れていた。

 

「……よ、夜の公園ってどうしてこんなに怖いのかしら」

 

 昼間は子供で溢れかえっている公園が、ただ暗くて人がいないだけでどうしてこんなに怖いのか。

 人は古来から火を焚き、光を求めた。現代になってもそれは変わらない。闇を覆い潰すようにあちらこちらに街灯を立てる。

 それは恐らく人が本能的に闇を恐れるからなのだろう。恐れるから遠ざけようとするのだ。

 だから自分が今闇を怖がっているのは本能であるからして当然であり、断じて自分が怖がりなわけではない。 

 言い訳のようにそんなことを考えていると、ふと、今朝方母親が話していたことを思い出した。

 

「そういえばこの公園、痴漢出たんだよね……」

 

 すっかり忘れていた母親の注意をいまさら思い出す。

 朝食を食べながらテレビの星座占いを見ていたので、殆ど聞き流していたが、実際に痴漢が出現した場所に来てから思い出してしまった。

 しっかりと話を聞いていれば、夜の公園なんて通らなかったのに……と既に踏み入れてしまってから後悔する。

 

「は、走ろっと」

 

 公園は小さい。走って抜ければ10秒もかからない。

 少女は恐怖に背中を押されるように、再び走り出した。

 

 サクサクと地面を蹴る音が公園に響く。

 走っていると妙なことに気づいた。

 

 いくら走っても出口にたどり着かないのだ。

 

「あ、あれ……?」

 

 真っ直ぐに走れば通り抜けられるはずの公園。

 だが、一向に出口に着かない。それどころか何故か出口が見えない。

 日常的に通っている道のはずなのに、どこか見知らぬ場所のように感じてしまう。

 振り返り自分が入ってきた入り口を見るが……入り口も見えなくなっていた。

 ありえない。狭い公園で入り口も出口も見えないなんてありえないことだ。

 疑問がゆっくりと恐怖に変わっていく。

 知らず流れた汗が背中を塗らす。

 

「何が起こってるのよ。……え、これ……霧?」

 

 気がつくと夜の闇に混じって、うっすらと赤いモヤのような物が少女を取り囲んでいた。

 濃くなっていくモヤのせいで、遊具すら見えなくなっていく。

 先ほどまでキーキーと音を立てていたブランコもみえず、音すら聞こえない。

 完全なる無音の世界。

 

「もう何なの!?」

 

 静寂をかき消すように、精一杯大きな声を出す。声は震えていた。

 得体の知れない恐怖が、少女の心を侵食していく。

 

 そして静寂は唐突に終わりを告げる。

 

「――静かに。ご近所迷惑だよ」

 

 と。

 闇の中からヌルリと染み出るような声。

 優しげなのに、恐怖を感じてしまう妙な声。

 反射的に声の方を振り返る少女。

 

 少女の視線の先にいたのは――黒いマントに包まれた男。

 闇に溶けるその姿を認識できたのは、マントから露出した男の肌があまりにも白かったからだ。

 病的なまでに白い肌。夜の闇とのはっきりとしたコントラスト。

 

「やあ、いい夜だね」

 

 男は知り合いに会ったかのように、にこやかな笑みを浮かべて少女に声をかけた。

 まるで今日の天気でも聞くような気軽な調子で。

 だが男から感じる圧倒的な違和感が少女を警戒させた。

 

「だ、誰ですか?」

 

「そう警戒しなくてもいいじゃないか。可愛い顔が台無しだよ?」

 

「ひ、人を呼びますよ!?」

 

「どうぞお好きに」

 

 得体の知れない状況に陥った混乱と見ず知らずの怪しい人間に対する恐怖が、彼女を行動させた。

 声帯の普段は使わない部分を使って思い切り叫ぶ。

 公園は住宅街の中心にある。間違っても少女の叫びが届かないなんてことはないだろう。

 昔から暮らしている場所なので、自分を知っている人間も多い。

 自分の声を聞いた誰かが駆けつけてくれるだろう、と。

 

 だが、待てども待てども誰かが公園にやってくることはなかった。

 繰り返し叫ぶ少女。しかし誰一人としてやってくる気配は無い。

 自分の声が闇に溶けていくような錯覚を抱く少女。

 声を震わせながら、恐怖から逃げるように自分の体を抱きしめた。

 

「な、なんで……?」

 

 そんな少女を男はまるで慈しむような笑みを浮かべて見ていた。

 優しげな我が子を見守る親のような温かな笑顔。

 笑みを浮かべる口元からは、白く尖った歯が2本両端に生えていた。肌と同じく白い歯。肌と同じく恐ろしいまでに白い歯。

 

「電話……!」

 

 少女は鞄から携帯を取り出した。

 すぐさま電話帳から家の番号を呼び出し、コールボタンを押した。

 家まで2分も無い。両親が助けに来てくれるだろうと希望を込めて。

 

「おっと、それはダメだ」

 

 携帯を取り出した少女を見て、男が右手を突き出した。

 少女と男の距離は5メートルほど離れている。手が届く距離ではない。

 少女は男を警戒しながら、コール音を響かせる携帯に耳を当てた。

 

「いけ――僕の眷属達」

 

 男が呟くと、男の右手が指先から崩れた。

 崩れた手は黒くて羽の生えた無数の何かに変化し、少女に殺到した。

 

「いやぁ!?」

 

 何か――無数の蝙蝠に包まれる少女。

 体を這い回られる嫌悪感に、携帯を取り落としてしまう。

 目をきつく閉じ、しゃがみながら頭を守るように手で覆った。

 

 蝙蝠の羽ばたきが聞こえなくなったので、少女は目を開いた。

 

 男が蝙蝠が掴んだ携帯を受け取り、その蝙蝠が男の腕を構成していく光景が見えた。

 

「も、もうやだぁ! なんなのよ一体!」

 

 理解できない現象を起こしている男への恐怖が限界になり、男に背を向けて走り出す。

 だが、その足が進むことはなかった。

 

「どこに行くのかな?」

 

「ひっ」

 

 先ほど背を向けたはずの男が目の前にいた。

 動いた気配も音も聞こえなかった。

 まるで最初からそこにいたような、そんな自然さでそこに立っていた。

 

「さて、では本題と行こうか。……動かれると面倒だな」

 

 立ち尽くす少女を見る男の赤い目が、怪しく光り輝いた。

 少女の体が虚脱し、目から光が失われた。

 さきほど血相を変えて逃げようとしたとは思えないほど、脱力した様子でぼんやり立っている。

 

 ――魅了の魔眼。

 

 男の目は少女から抵抗する意思を奪い、従順な人形に変えた。

 

「よし。では今から君の血を吸うよ」

 

「……はい」

 

 機械染みた動きで首肯する少女。

 今や少女はどんな命令にも従う、ただの人形だ。

 

「おっと、その前に一つ質問がある。……君、今付き合っている男性はいるか?」

 

「……いえ」

 

「では、今まで異性と付き合ったことは?」

 

「……ないです」

 

 少女の答えに、男は満足げに頷いた。

 軽快な足取りで少女に近づく。

 冷たい風がバサバサと男のマントを揺らした。

 息がかかる距離に近づくが、少女は逃げようとする意思すら感じさせない。ただぼんやりと立ち尽くしている。

 

「マフラーを取って、首筋を露出させろ」

 

「……分かりました」

 

 スルスルとマフラーを取り、片方の手で制服の首元をグイと引っ張る。

 首を傾けると誰にも踏まれていない新雪のような白い肌にうっすらと血管が浮き出ていた。

 

 男は少女の腰に手を当て抱き寄せ、首筋に顔を近づけた。

 マフラーを取ったことで溢れた出た少女の芳醇な香りが男の鼻を刺激する。

 ワインの匂いを味わうようにしっとりと吸い込む。

 

「いい匂いだ。熟れていない果実特有の酸味を感じる。実に美味そうだ……実にね」

 

 十分に匂いを堪能した男は、次いで口を開いた。

 開いた口から舌が這い出て、少女の首筋を撫でた。

 

「……んぅ」

 

 熱に浮かされたような甘い吐息を吐く少女。その顔に嫌悪感はない。

 それどころかこれから起こるであろう快楽に期待するかのように紅潮している。

 

「では――いただきます」

 

 2本の犬歯を少女の首筋にゆっくりと突き立てる。

 ツプリと埋まる歯、ジワリと溢れ出る真っ赤な血。

 

「はぁ……あぁぁ……」

 

 少女の頬は痛みではなく、痺れるような快感で赤く染まっていた。

 吸血に伴う快楽で、体がピクピクと震えている。

 口はだらしなく開き、その小さな喘ぎ声ともとれる小さな声と涎をこぼしている。

 

 男は少女の痴態を見て満足そうな表情を浮かべ、溢れ出てきた血を舐めるように口に含み喉で味わうようにゆっくりと嚥下して――盛大に嘔吐した。

 

 

 

■■■

 

 

「おぇぇぇぇぇっぇぇ!」

 

 飲み込んでしまった血液を無理やり押し出すように、胃が痙攣する。

 血と一緒に昼に食べた焼きそばが殆ど出てきた。

 体の拒否反応に従い、残さず吐き出していく。

 

「まずっ、くそっ、おま……くそ不味い! ひぃぃぃ! 不味すぎるぅっ!」

 

 全て吐き出したはずだが、口の中に臭いと味が残っている。

 例えるならそう……放置したまま1年が経過したご飯ジャーを開けたような、そんな臭い。

 それが口の中を汚染している。

 

 このクソったれな味……間違いなく――非処女の血! 

 俺は吸血鬼だが、わけあって体が非処女の血を一切受け付けない。

 体に取り込むものなら、こうやって拒否反応を起こしてしまうのだ。

 

 そのまま卒倒しそうになる体を、気合だけでなんとか持たせる。

 そして視線を目の前で嘔吐してもぼんやりと呆けている少女に向けた。

 

「おぼろろぉぉっ! ……お、おいこら! 君処女じゃないの!? 彼氏いないって言ってだろう!? いない歴=年齢だって!」

 

 魅了の魔眼によって洗脳された彼女は、絶対に嘘がつけない。

 先ほどの答えは間違いなく真実だったはず。

 

 やぼったい眼鏡に、クソ丁寧に編まれた三編みヘアー、スケバンかよってくらい長いスカート。大正時代の女学生のような出で立ち。

 図書館から出てきた彼女を見て間違いなく処女だと判断して、こうして場を用意して吸血に至ったわけだが。どうしてこうなった?

 一体俺は何を間違った?

 

 俺が魔眼で魅了した少女は、俺の質問に従順に答えた。

 

「……処女じゃありません」

 

「マジで!? その見た目で?」

 

「……こういう格好をしていると、童貞が寄ってくるので」

 

「ど……!」

 

 少女の見た目からは出ないであろう言葉が出た。

 童貞? 童貞って言ったか今?

 

 聞いてもいないのに、少女は続ける。

 

「……私、趣味が童貞狩りなんです」

 

「う、嘘だ! 読書だろ!? と、図書館で分厚い本とか読んでるんでしょ!?」

 

「……図書館には本ばかり読んで恋愛経験のない童貞がたくさん居るので……簡単に釣れます」

 

「お、俺は夢でも見てるのか?」

 

 そうでも思わないとやってられない。

 それくらい少女の口から出る言葉は、理解できないものだったからだ。

 

「……今日も図書館の司書室で3人ほど戴きました。最高記録は1日に8人です」

 

「ひぃぃっ!?」

 

 俺はあまりの恐怖に仰け反った。

 目の前の少女が恐ろしくてたまらない。

 読書好きガールかと思いきや童貞大好きガールだった。何を言っているか分からないが、俺も分からん。

 テレビとかで性の乱れが問題になってるけど、これ乱れってレベルじゃねーよ。もはや性のタイフーンだよ。自分で言ってて意味が分からんけど。

 

「……遅くなってしまったせいで、警備のオジさんに見つかってしまったんですけど……オジさんも戴いちゃいました」

 

「あわわわわ……」

 

 どうやら俺は外れを引いてしまったらしい。

 しかも超特大級の外れだ。大凶。大ビッチだ。

 人は見かけによらないって言うけど、こういうのってアリなのかよ。これが清楚系ビッチってやつなのか?

 

 外れを引いた残念感と非処女の血液を口にしたことで生じた体調不良から、体の力が抜ける。

 そのまま俺は公園の地面に倒れてしまった。

 

「……あれ」

 

 ついでに少女にかけた魅了の魔眼も解けてしまった。

 少女の視線が、地面に倒れている俺に向けられた。

 その視線に篭もっているのは先ほどまであった得体の知れないものでの恐怖ではなく――敵意。

 

「この――痴漢っ!」

 

「顔はやめて!」

 

「黙れ! そして死ね!」

 

 少女のサッカーボールキックが俺を襲う!

 ちょっとでも優位性を感じた途端、オフェンスに回るとかこの子マジ肉食系! 肉食系と書いてなでしこと読む!

 いやぁ、この切り替えの早さ日本のサッカー代表にも見習って欲しいですね。

 

「このこのこの!」

 

 雨のように降ってくる蹴りの嵐に、何とか体を丸めて急所だけは守った。さながら亀の如く。

 一見無様に見えるこのスタイルだが、急所を守ると同時にあまりにも惨めなので相手の戦意を削ぐことができる究極のスタイルなのだ。

 が、少女の戦意は削がれるどころか、際限なく増している。どうやら自分より弱い存在に対して戦闘力が上がるタイプのファイターらしい。

 キック10発から先は数えるのを止めた。ひたすら暴力の嵐が過ぎ去るのを待つのみ。

 

「痴漢! 変態! なによこの格好! 黒いマントかと思ったら、黒いゴミ袋に穴空けて被ってるだけじゃない! その下――普通のジャージじゃない! しかも安物の! 馬鹿にしてっ!」

 

「雰囲気を! 雰囲気を出そうとして!」

 

 黒いマント代わりに纏っていたゴミ袋がビリビリに破かれてしまった。

 そして現れたのはすっぴんの俺。普段着のジャージ。

 だって仕方ないじゃん……。

 コンビニの帰りにたまたまこの子見つけて、絶対処女だと思ってストーキングしたんだよ。

 準備なんてしてる暇なかったし。

 吸血鬼と言えば黒いマントは絶対に欠かせないってこだわりから、何とか黒いゴミ袋を調達してきたのに。

 ジャージ姿で現れたら雰囲気もクソもないと思って気を遣ってやったのに。

 こういう苦労を知らないで人のことを変態変態って……腹立つわ。 

 

「死ねっ死ね! これでも……食らえ!」

 

 少女が鞄の中からフォークを取り出した。

 見ただけで鳥肌が立つその材質は……銀だ。

 銀は吸血鬼の弱点の一つ。アレで急所を刺されたら凄く痛い。死ぬほど痛い。

 

 フォークの先端に赤い液体が付着しているが、お弁当の苺だろうか。

 まあ、もうすぐ俺の血で塗りつぶされるわけだが。

 

 だが、このまま大人しく食らってやるわけにはいかない。

 

「やめて! その攻撃は俺に効く! ……ええいこれでも食らえ!」

 

「きゃっ」

 

 俺は地面に倒れ付したまま、砂を掴んで少女の顔に浴びせた。吸血技の一つ《サンドシャワー》だ。昔知り合いの砂かけババアに習った。

 少女が顔に付着した砂を擦って落とそうとする。

 その隙に立ち上がり、少女から距離をとった。

 

 ふん、非処女に用はない。

 

 俺は少女に指をつきつけた。

 

「今日はここまでにしよう。だが覚えておくといい。 ――夜は僕の世界、君達人間が闇に感じている恐怖は僕という存在を根源とする――」

 

「ぶっ殺す!」

 

「サヨナラ!」

 

 青筋立ててこちらに迫ってくる少女から逃げる為に、背中から羽を生やした。

 そのまま空に舞い上がる。

 少女が投擲した銀のフォークがすぐ側を通って一瞬ヒヤっとしたが、何とか脱出は成功した。

 

「どこまでも追って絶対にぶっ殺す! 絶対にだ!」

 

 前半と同一人物とは思えないほど豹変し、空を飛ぶ俺に向かって罵声を浴びせてくる少女。

 怖い。

 もっとも恐ろしいのは人間だ……って昔の偉い人が言ったらしいけど、あの言葉はマジだ。

 少なくともここ数年で出会ったどんな生き物よりも恐怖を感じる。

 当分、夢に出てきそうだ。

 

 月の光を浴びながら、上空をパタパタと飛ぶ。

 

 ――ぐぅぅぅ

 

 処女の血が吸えなかった上、お昼の焼きそばまで失った腹が不満げに鳴った。

 

 これで2週間ほど、まともに処女の血を吸えていない。

 原因は色々ある。

 まず俺自身の力の衰え。長いこと生きてきたが、昔と比べて随分と力が落ちた。

 最近はその落ち具合にも拍車がかかっている。少なくとも昔の俺なら、途中で魔眼の効果が切れるなんてことはなかったはずだ。

 

 そしてあの女子高生。

 あんな詐欺染みた非処女が増えてきたってのも原因の一つだ。

 純粋に処女が少ない。成人していない少女達がインスタント感覚で処女を捨てる。

 俺は言いたい。それ(処女)を捨てるなんてとんでもない!と。

 何だよ清楚ビッチって……。清楚なら清楚らしく貞操守ってろよ……。将来旦那さんになる人が可愛そうだろ……。

 今は昔と比べて貞操観念が低すぎる。嘆かわしい……本当に嘆かわしい。

 

 そしてもう一つの理由。

 インターネットの普及だ。

 昔は一部の人間した利用していなかったインターネットだが、最近の普及率は異常だ。

 個人端末であるスマートフォンが現れてからは、その異常さに拍車をかけている。

 今やインターネットを利用したことが無い人間の方が少ないだろう。

 そしてインターネットの普及による弊害は俺のような不審者――もとい人間じゃない連中に大打撃を与えた。

 晒されるのだ。

 つい最近も『うちの裏山でツチノコ見つけたww』と写真付きで○イートされ、そこそこ話題になった。といっても『この蛇何ハムスターでも食ったのか?w』『有名になりたいからって、ただの蛇に細工してアップするとか……最低です』みたいな批判的な盛り上がりだった。

 だが不幸なことにそのツチノコは本物だった。そしてアップされた写真に信憑性を感じ取った『連中』が動き、日本最後のツチノコは……姿を消したのだ。本当につい最近の話だ。

 

 少しでも下手を打ち、一般人に面が割れれば……即座にネットに晒される。

 俺が吸血鬼だとかは関係ない。怪しい行動をすれば簡単に写真つきでネット上に上げられる。今はそういう時代なんだ。

 もしネットに晒されれば後は『連中』がやってくる。それで終わりだ。

 

「……はぁ。昔はよかった」

 

 昔と比べてすっかり汚染された空を飛びながら、ため息を吐く。

 生き辛い……。

 ほんと、嫌な時代になったなぁ……。

 

 

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