Love live is SHOWTIME!!   作:ホームズの弟子見習い

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基本的に不定期更新ですが、完結まで進められたらと思います。
という訳で、二話目です。


第一章 運命の鼓動
RING.1:懐かしき新天地


「ちっ…まだ“再生”はされないか…。」

 

 街灯もビルの灯りも殆ど消えている深夜の時間。女…メデューサは自分の身体の状態に舌打ちをする。

 夕暮れの時間に一人のゲート…高坂穂乃果を見つけ絶望しようとしていた矢先に、“指輪の魔法使い”が現れて自分の邪魔をしてきた。メデューサからしてみれば、様々な思いが胸中を巡らせていた。

 ゲートを絶望させられなかった不快感。邪魔者を排除することもできない苛立ち。そして何よりも。

 

(何故奴はここにやってきた…?)

 

 この街でゲートを発見し、計画を実行するのは今回が初めてなのだ。にも関わらず、指輪の魔法使いはまるで知っていたかのように此方を邪魔してきたのだ。メデューサにはそれが不思議でならなかった。

 

「随分と派手にやられたようだな?」

 

 背後から話しかける男の声にメデューサは振り向くと、そこには赤いジャケットにズボン、その上着の下にはクリーム色のシャツを着た若い男性が堂々とした態度で立っていた。

 

「何の用だ?」

「確認だよ、奴が本当に現れたのかっていうね。でもまあ、お前の様子を見る限りじゃ嘘じゃないって事かねえ…。」

 

 しみじみと言葉を漏らす男に、メデューサはふん、と鼻を鳴らす。あくまで平静な様子の男が面白くないのだろう。苛立ちの感情が見て取れる。

 

「だがせっかく見つけた獲物だ。ここで逃がしては損をしてしまう。」

「それなんだが…。暫く待った方がいいと思うぜ?」

 

 意気込むメデューサに、男は異を唱えた。反対意見を出されるとは思っていなかったメデューサは、男に鋭く睨み付ける。

 

「馬鹿な、折角見つけたゲートをみすみす見逃せと言うのか?」

「まあ、そんなところだなあ。」

「貴様…一体何を考えている?」

「簡単なことさ。」

 

 短く答えると、男は立ち去ろうとするのかメデューサから背を向けた。

 

「時間をかけた方が、絶望の度合いも半端なく上がるだろう?」

 

 去りながら理由を答える男の目は、陰険な笑いが含まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で…なーんでここに来ちまったのか、理由を説明してくれるか? 希月陽人くーん?」

 

 希月(きづき)陽人(はると)は目の前の男性の問いに、何度目になるか判らないため息を吐いた。自分のため息を見たのか、「こっちがため息吐きてえっての…。」とぼやき出した。

 

「仕方ないじゃないっすか…ここって良くも悪くも人口密度が高いんですから…。」

 

 陽人も辟易とした様子で理由を答えると、眼前の男も気怠そうに座っていた椅子の背もたれに寄り掛かった。陽人の言葉の真意を理解している男は、気を引き締めて陽人と向かい直した。

 

「って事はお前が旅していたトコはファントムは少なかったって訳か?」

「少なくとも、俺が旅していた地域はそんなにいなかったっすよ? 寧ろ日本の方が割と見かけたくらいですし…。」

 

 思い出すように言葉を並べる陽人に、質問した男は腕を組み、考え込むような仕草を取る。最後に見たのは一年半前だっただろうか。陽人は彼の様子を見て、懐かし気な気持ちになった。

 

「ダメだ、考えていてもしょうがねえ。解読も進んでねえんだろ?」

「ええ…指輪の製作もありますし…何よりそういう連絡も来てないですよ。」

 

 考えるのを放棄した男性は、陽人に訊くと彼もまた申し訳なさそうに頭を掻きだす。

 

「別に謝ってくれなんて言ってねえ。それはそうと、暫くは東京にいるつもりか?」

「ええ、そのつもりです。アイツも“匂い”にこれまでにないほど敏感になりましたから…。」

 

 話題を切り替えた男性の確認に、陽人は頷く。彼の答えに安心したのか「なら丁度いいな。」と一人呟く。

 

「水乃さん、何ですか一体?」

 

 陽人は男…水乃の名を呼ぶと、彼は咳払いをして陽人と正面を向かい合いだした。唐突に真面目な雰囲気を醸し出した水乃に、陽人は少しだけ緊張感が走った。

 

「陽人、お前には一年間音ノ木坂学院に通ってもらう!」

「……え?」

 

 余りにも突然過ぎる宣告に、陽人は思わず間抜けな声を出すしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 陽人は今日何度目になるのか分からないため息を大きく吐いた。水乃による突然の音ノ木坂学院への編入通告。あれから一日経って、陽人は今音ノ木坂学院の校門前にいた。しかし、校門前まで着いてから三〇分ほど経過している。これほどまでに陽人が校内に入るのを留まっているのには、れっきとした理由がある。と言ってもそこまで複雑なものではない。単純に案内人が来ないからである。

 

「希月陽人君ね?」

 

 しゃがんで待っているところに、後ろから声が聞こえたので振り向く。そこには音ノ木坂学院の女子制服を着た、金髪のポニーテールの女子と紫がかった長い黒髪をふたつに纏めた女子の二人がいた。

 

「私は絢瀬(あやせ)絵里(えり)。音ノ木坂学院の生徒会長を務めているわ。」

「ウチは東條(とうじょう)(のぞみ)。生徒会の副会長をやってるん。よろしくなあ。」

 

 丁寧に自己紹介をする二人に、陽人も律儀に会釈で返す。

 

「希月陽人です。今日は春休みでしょうに、わざわざ時間を割いてくれてありがとうございます。」

「いいのよ。学院内も色々とゴタゴタしていて、時々私達生徒会も手伝っているの。」

「今回は理事長に君を案内するだけやから、楽な方なんやけどね。」

 

 そう言う二人の表情は、あまり疲れを感じさせないものだった。音ノ木坂の生徒会は忙しい日が多いのだろうかと陽人は考えたが、今はそれどころではない。

 

「じゃあ、理事長室まで案内するわね。見たところ、手ぶらみたいだけど…まあいいわ。こっちよ、ついてきてね。」

 

 絵里についてくるよう促され二人が歩き出すと、陽人は彼女達の後ろをついて歩き出した。陽人は絵里の後姿を見て、何故か既視感を覚えていた。

 

 

 

「失礼します。理事長、希月君を連れてきました。」

 

 絵里と希につられるように理事長室まで案内され入ると、そこには陽人に見覚えのある人物が書類と睨めっこをしていた。

 

「あら、絢瀬さん…。わざわざありがとう。」

「いえ…生徒会の方も少々書類が溜まっていましたので…。」

 

 絵里達に気付いた理事長が礼を言うと、絵里も取り繕うように凛とした態度で返す。

 

「そうだったの…あ、悪いけど、二人はちょっと出て行ってくれるかしら? 彼とは二人で話をしたいし…。」

「わかりました、それでは失礼しました。」

「失礼しました。」

 

 絵里と希が理事長室から退室したことで、ここにいるのは陽人と理事長の二人だけとなった。

 

「久しぶりね…希月陽人君?」

 

 理事長は陽人と向かい合うと、再会の言葉を発した。言われた陽人も、思わず懐かしさがこみ上げていった。

 

「フルネームで呼ばれるのはちょっとこそばゆいんですけど…。まあともかくとしてお久しぶりです、朱鳥(あすか)さん。」

 

 陽人もまた理事長に対して再会に思いを馳せると、名前を呼ばれた理事長…朱鳥はくすくすと小さく笑った。

 

「しっかし…どおりで話がトントン拍子に進み過ぎると思いましたよ…。」

「水乃刑事とはちょくちょくメールするから…。まあ貴方を編入させた理由は、“依頼”みたいなものだけどね?」

 

 依頼。朱鳥の発した言葉に、陽人は内心嫌な予感を抱えつつあった。

 恐らくそうなる訳は昨日のことだ。陽人は穂乃果達がファントムに襲われる場面に遭遇していたのだ。ただし、魔法使いに変身した状態ではあるが。

 

「依頼っていうと…もしかしてあいつ等を守って欲しい。って事ですか?」

「…ええ。察しが良くて助かるわ。希月陽人君。貴方には、音ノ木坂学院の学生という身分と同時に、“仮面ライダー”としてこの街を守って欲しいの。」

 

 朱鳥が言った“仮面ライダー”という単語に、陽人は疑問を覚えた。

 

「仮面ライダーって…俺がですか?」

「ファントムや貴方自身は“魔法使い”って言う呼び名のようだけど、私も含めた民衆は、世界各地で現れる風の如く颯爽と現れるヒーロー…仮面ライダーとして認知しているわ。」

 

 そのように世間に知られているとは思わなかった陽人は、どこかこそばゆい気持ちになった。陽人が照れているのを見た朱鳥は、小さく笑みを浮かべる。

 

「まあ、話は大体わかりました。その依頼…承りました。」

「ありがとう…陽人君。」

「あ、そうだ…。」

「あら? 何かあったの?」

 

 ふと、もう一人の仲間のことを思い出した陽人。朱鳥も彼の思い出したことが少しだけ気になったのか訊ねる。

 

「俊平の奴もこの学校に編入させることって、出来ますか?」

「大丈夫よ、元々は俊平君も貴方と一緒に編入させるつもりだったから。」

「ああ、なら良かったです。」

 

 自分の確認に対して、満足の得られる回答をもらった陽人はほっと胸を撫で下ろす。

 もう要件もないだろうと、陽人はお暇することにした。

 その直後だった。陽人の携帯から着信音が聞こえてきた。携帯を朱鳥に見せると、朱鳥は口には出さずに「OK」と示す。朱鳥の反応に頷いた陽人は電話に応じる。

 

「もしもし?」

「よう、話は通ったか?」

 

 電話の相手は水乃だった。いつもと変わらない調子で話しかける彼に、陽人は肩を竦める。

 

「ええ、依頼は受けましたよ。っていうかそれならそうと言ってくれれば良かったのに…何も言わずに“音ノ木坂学院に行け”の一点張りなんですから…。」

「まあそう言うなって。幾らおめえが旅していて高校に通ってねえからって言ってもそれはいかんと輪嶋と話し合っての結果だからな。」

 

 そう言われると、陽人はため息を吐き何も言い返せなくなる。水乃と会話に出てきた“輪嶋(わじま)”という人物は、一年半前から陽人の育ての親として接してくれているのだ。この二人からそう言われては、陽人も何だかんだで引き受けてしまうしかない。

 

「だが高校生になるとはいえ、ある程度は自由は保障される。授業中にファントムが現れてももどかしい気持ちになる事はないから安心していいぞ。」

「本当の意味で安心したいんですけど…?」

 

 水乃にツッコミを入れる陽人だったが、さらっと重要な情報を言われた気がする。その事については後で朱鳥に訊くことにした陽人は、電話に集中する。

 

「ところで昨日聞きそびれたんだが…。」

「ん?」

「…お前まだ、踏ん切り点いてないのか?」

 

 水乃の質問に、陽人の顔は思わず強張ったものになる。陽人の電話の様子を眺めていた朱鳥も、彼の顔を見て苦い表情を出した。

 

「…多分一生、踏ん切り点かないと思いますよ。あんなコトを言われた…あの日からずっと。」

 

 そう言う陽人の声は、複雑な感情が入り混じっていた。後悔。悲しみ。憎しみ。重圧。ネガティブな感情が陽人の頭の中をぐるぐると駆け巡る。

 電話越しの陽人の答えに、水乃は「そうか」とだけ返した。

 

「踏ん切りがつかないなら、一生引き摺ればいいさ。あんなのは割り切れる方がおかしいんだからな。」

「水乃さん…。」

 

 励ますわけでもなく。宥めるわけでもなく。ただいつもの調子で言葉を連ねる水乃に、陽人は気持ちが少しだけ楽になった気がした。

 

「んじゃ、またなあ。力が必要になった時は連絡を入れるわ。」

「…ええ。喜んでお貸ししますよ。」

 

 ピッ。電話の切れた音が理事長室に響き、静寂の空間になる。そう言えば訊きたい事があったんだと思い出した陽人は、朱鳥と改めて向かい合う。

 

「気持ちが少し晴れたみたいね?」

「ええ。そうだ、水乃さんが電話で言ってたんですけど…授業中に戦いに行っても良いんですか?」

「何もせずに見殺しにするよりはいいでしょう?」

 

 あっけらかんと答える朱鳥に、陽人は思わず彼女の器の広さを感じ取り唸ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 四月七日。桜が咲く春という季節。学生が新しく入る、入学式というイベントが学校には待ち控えていた。それはもちろん、音ノ木坂学院も例外ではない。この学院内では今、二人の男子生徒が廊下を歩いていた。

 

「うう…胃がきりきりしてきた…。」

「別にそこまでになるほどの事じゃないだろ? 少ないとはいえ男子もいるって話だし。」

 

 緊張で腹を抑える少年に、陽人はフォローの言葉を入れる。陽人とともに歩く少年の名は、鹿野(かのう)俊平(しゅんぺい)。ふとした切欠で二人は出会い、利害の一致と言うべきか仲間意識が芽生えたと言うべきか。そのまま一緒に共に過ごしている間柄だ。

 

「そうは言ってもアニキ、俺にはやるべきことがあるってのに…。」

「そこは水乃のおっちゃんが手回ししてくれてるんだ。それに今は手掛かりが少なすぎるんだから、果報は寝て待てってな。」

 

 独り愚痴る俊平に、陽人が宥める。俊平も納得したわけではないだろうが「まあ…そりゃしょうがないっすけど」と言い残し、愚痴を零すことはなくなった。

 暫くすると、二人は職員室の入口まで辿り着いた。

 

「失礼します。」

「失礼します。」

 

 三回ノックをしてから職員室に入る。職員室内はどこか慌ただしい雰囲気になっていた。その様子を見た陽人はそう言えばと思い返す。以前に来た時も生徒会長の絢瀬絵里が、周りが忙しいから自分達が案内人になったという旨の発言があった。どうやらその尾をまだ引き摺っているのだろう。陽人は内心納得した。

 

「よう、お前ら二人が理事長が言ってた編入生か。私は二年A組の担任の山田(やまだ)博子(ひろこ)だ。」

 

 陽人達に話しかけてきた、ジャージ姿の女性は姉御肌という言葉がぴったり似合うような雰囲気を纏っていた。

 

「希月陽人です。」

「鹿野俊平…です。」

 

 陽人は滞りなく自分の名前を言うが、俊平は若干詰まらせながら自己紹介をする。元々砕けた敬語で目上の人に接する俊平は、きちんとした敬語には慣れていない為であった。尤も、山田は気付いていないのかそれとも敢えてスルーしているのか。さほど気にする様子も見せなかった。

 

「希月は解っているだろうけど、私のクラスだ。鹿野は一年だから一クラスしかないが…担任は山内先生だ。あの眼鏡をかけた女の人な。入学式の間は私についてきてもらうからな。まだ入学式まで時間はあるから、その間は廊下で待っていてくれ。」

「わかりました。」

「了解です。じゃあ一旦、失礼します。」

 

 二人は職員室を出て、暫くは廊下で待つことにした。数十秒の間、無言の沈黙が続く。職員室はまだ騒がしく、その雰囲気が廊下越しでも伝わってきている。しかし、二人の間に何もないのは居た堪れないので陽人は俊平に話しかける事にした。

 

「そういえばアニキ?」

「ん…なんだ?」

 

 俊平に先に話しかけられたことで、陽人は内心同じことを考えていたかと思いを膨らませる。俊平の方に顔を向けると、どこか神妙な面持ちだった。

 

「なんでこんなに慌ただしいんすかね?」

「確かに…そうだよな? こりゃ入学式に何かひと騒ぎありそうな気がしてきたな…。」

「縁起でもない…って言いたいけど、どうもそれが当たりそうなんすよねぇ…。」

 

 半分冗談で言ってみたつもりが、俊平にまるで正解を当てられたように言われて、陽人は思わず「えっ」と声を出す。俊平は言うべきか言わないでおくか迷っているのか、悩まし気に頭をがしがしと掻いている。やがて意を決したのか、ふう、と息を吐いた。

 

「実は昨日小耳に挟んだ話なんすけど、ここ…廃校になる噂があるんすよ。」

「廃校って…あの廃校か?」

 

 俊平の発言の意味が一瞬解らなかった陽人は、思わず確認の意味も込めて訊き返す。俊平は頷き、陽人は思わず口を引き攣らせた。

 

「どうもここ最近、UTX学院に入学を希望する受験生が多いらしくて…実際、ネットのスレッドでもUTX学院に入学したって書き込みが沢山あったっす。」

「マジでかよ…。」

 

 俊平の話に陽人は思わず頭痛を感じてしまい、頭を抑える。

 ある程度は他の学生と同じ扱いを受けるが、学費は免除されると事前に聞いていた陽人は二つ返事とまではいかなくとも、早めに編入の連絡を入れていた身だ。まさか水乃が言っていた「一年間、音ノ木坂学院に通え」という指令も事情を知っていたからのではないかと邪推してしまう。

 

「まあ、水乃さんがそこを知っていたのかはさすがに本人に訊かなきゃ何とも言えないすけど…でも廃校になるのは、三年後らしいっす。」

「ん? ということは今の一年生が卒業するまでは学院は一応あるって訳か?」

「地味に辛辣っすけど…まあそういうことっすね。」

 

 なるほど、それならばまだ安心だと陽人は胸を撫で下ろす。とは言え、元々この学院を希望校として受けていた学生も少なからずいるはずだ。陽人自身は編入されたばかりなので、この学院に対する情はほとんどと言っていいほどない。だが当初からこの学院に通いたいという学生もいないわけではないのも事実。そう考えると、心苦しくなるものだ。

 

(あいつ等はどんな反応するんだろうな…)

 

 記憶の中から浮かぶのは、三人の少女達。特にオレンジがかった茶髪のサイドポニーの少女。一々他人のために行動を起こして、他人のために涙を流し、他人のために笑顔を見せる優しい少女。理事長の話では、娘も幼なじみも揃ってこの学院に通っているとの話を聞いている。それだけに、彼女は音ノ木坂学院の廃校という事実に相当のショックを受けるのだろうなと陽人は思っていた。

 

「よう、二人とも。手間をかけさせてすまないな。此方はもう準備は終わった。それじゃあ、私についてきてくれよ。」

 

 山田の声に我に返った陽人は、俊平とともに先生の後ろについて歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 入学式を終えた学生達は教室に戻るまでの間、ざわざわと会話が広がっていた。それは必然ともいえる事だった。音ノ木坂学院理事長、(みなみ)朱鳥(あすか)が入学式の挨拶時、廃校の旨を発言したからだ。そうなれば新入生はもちろん、二年生や三年生も動揺が広がるのも至極当然と言えた。

 陽人はというと、俊平が言っていた噂が本当だったという感想くらいしか湧いてこない。この学院に通って一日も経っていないのだから、そんな感想しか思いつかないのは仕方ない事だった。

 

「ん?」

 

 そんな陽人は現在、二年A組の教室に歩を進めており、目的地までもうすぐという所である光景を見かけた。三人の少女が廊下の壁に貼られた廃校の報せに、立ち尽くしている様子だ。

 

「あれってまさか…。」

 

 陽人は三人の少女に見覚えがあった。先程も思い浮かべたサイドポニーの少女。グレーのような髪色に鶏冠のようなはねた髪型の少女。青がかった黒髪のロングヘア―の少女。間違いない。間違えるはずがない。あの三人は自分の幼なじみだ。

 やはり廃校の現実に戸惑っているのだろう。三人の身体がわなわなと震えている。すると、サイドポニーの少女が仰向けに倒れようとしていた。

 

「うおっ…よっと!」

 

 すぐさま駆け寄り、なんとか倒れるのを防いだ陽人。二人の少女は、いきなり現れた男子生徒に困惑しているようだった。

 

「ったく…まさかここまでショックだとはな。えーっと、そこの鶏冠ちゃん?」

「ピィ!? こ、ことりの事を鶏冠って呼ばないでぇ~!」

「ハハ、悪い。アンタ、保健委員なんだろ? 保健室まで案内してくれよ。」

「え…う、うん。」

 

 鶏冠の癖毛の少女…ことりの協力を得た陽人はサイドポニーの少女をおんぶで背負い、彼女の後ろを歩こうとする。

 

「ああ、そうだ。泣き虫大和撫子ちゃん? 先生にちょっと遅れるって伝言頼むな。」

「誰が泣き虫大和撫子ですか!? …って、貴方まさか…。」

 

 陽人の事に気付いたロングヘアーの少女が陽人に問い詰めようとするが、陽人は我関せずと言わんばかりに無視を決め込みそのまま歩いていった。

 

「あっ、ちょっと! 先に行かないでぇ~!」

 

 先に歩いて行った陽人に追いつこうと、ことりは陽人に早足で追いかけるのだった。そんな彼らの様子を、ロングヘアーの少女は怪訝な目で見つめていた。

 

 

 




次回、Love live is SHOWTIME!!


「本当に…廃校になっちゃうんですか?」

「…貴方達には関係のない事よ。」

「だったら、俺が相手してやるよ!」

「フフ…フフハハハハハハ!!」


さあ、ショータイムと行こうじゃないか!
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