Love live is SHOWTIME!! 作:ホームズの弟子見習い
仕事が忙しい時期だったのでしょうがない。
それでは三話目です(実質第二話)、どうぞー。
保健室に向けて歩を進める、穂乃果を背負った陽人と保健室までの案内役を請け負ったことり。ことりもまた、陽人に対して怪訝そうな視線を向けていた。
「どうした? ちゃんと前見てくれなきゃ保健室まで辿り着けないぞ?」
「あ…う、うん。」
ことりの視線に気付いた陽人が、彼女に前方を促す。正面に顔を向けても、ことりの気持ちが晴れる事は当然だがなかった。
保健室前まで着いた二人。陽人はことりにアイコンタクトを図る。今、自分は穂乃果を背負っているために両手が塞がっている状態だ。陽人の意図を理解したことりは、ドアをノックし「失礼します」と断りを入れて保健室に入った。
「失礼しまーす。」
「はい、どうぞー。…ってあら? 女の子おんぶしてどうしたの?」
「廃校がショックで倒れたみたいですよ。」
「あら…この子が来るなんて滅多にないのに。それだけショックって事ね。」
養護教諭の言葉から察するに、穂乃果は保健室とは縁が少ないようだ。陽人はベッドに穂乃果を寝かせて、彼女の寝顔を見る。安らかそうな穂乃果の寝顔は、廃校のことなど忘れているかのようだった。というよりも、起きたら恐らく夢だと錯覚するのではないか。
「可愛い寝顔ね? 廃校の事なんて忘れてるんじゃない?」
「…でしょうね。」
養護教諭も穂乃果の寝顔を覗き込みながら、陽人と同じ感想を口にする。元々そう考えていた陽人は同意した。
「それじゃあ、先に戻ってます。失礼しました。」
「失礼しました。」
「はい、失礼されました。」
養護教諭のお茶目な返しに、陽人は思わず苦笑いをするのだった。
「ねえ、やっぱり貴方は…。」
保健室の扉を閉め、教室に戻ろうとする陽人にことりは訊く。陽人は小さく微笑み、ことりに振り向いた。
「その話は、あいつが起きてからな?」
「…うん!」
陽人の答えに、ことりは思わず嬉しさがこみ上げてきた。
●
「うわあああああああん! ど~しよお~~~~~!」
叫び声をあげながら、穂乃果が教室に入ってきた。今の時間は昼休みにあたるため、このように叫びながら教室に入っても問題は然程ない。さすがに度を過ぎれば先生に叱られるのは目に見えているが。
「うるせえ、もうちっと静かになさい。」
未だに嘆いている穂乃果に、陽人は注意する。いつもなら海未に注意されてしょぼくれるまでが日常の一部なのだが、いきなり男子生徒に静かにしろと言われたせいか。穂乃果は唖然とした表情になった。
「ご、ごめん…ん?」
謝る穂乃果だが、直後に陽人の顔をこれでもかと凝視する。これ程までに見られると、陽人としては何か変顔でもしてやりたくなる気分に駆られるが、何とか我慢する。
「もしかして…ハル君?」
幼い頃、いつも呼ばれていたあだ名で呼ばれた陽人は、大袈裟気味に口角を上げる。
「よう、久しぶりだな。穂乃果。」
軽く手を上げ、再会の言葉を口に出す陽人に、穂乃果は嬉しさが爆発しそうになっていた。
「や、やっぱり…陽人君なのですね?」
「陽人くん…でいいんだよね?」
「改めて、久しぶりだな。海未、ことり。」
海未とことりにも、再会の言葉を投げかける。最後にこの四人が会ったのは、小学五年生になる直前の春休み。あれからおよそ六年ぶりの再会に、穂乃果達は顔を見合わせて、にやりと笑みを浮かべる。
「ハルくーーーーーーん!」
「うおおっ!?」
嬉しさがここにきて爆発したのか、穂乃果が陽人に抱きついてきた。教室のど真ん中でいきなり抱きつかれては堪ったものではない。陽人は穂乃果を引き剥がそうとする。
「ハル君だあ! ハル君だよお!」
「ええい、離れろ穂乃果!」
「そ、そうですよ穂乃果! こんな教室の真ん中で!」
「気持ちは分かるけどぉ…!」
ことりと海未も、陽人に抱きつく穂乃果を止めようと奮闘する。穂乃果も、海未の説得により自分が恥ずかしい事をしていることに気付いたのか、パッと陽人から離れると途端に顔をみるみる赤くさせた。
「わ、わわわ…! ご、ごめんねハル君…。」
「お、おう…別に気にすんな。」
急にしおらしくなった穂乃果に、陽人は思わず照れ臭くなり、顔を逸らした。横目で海未とことりを見ると、ことりは野次馬根性丸出しの笑みを、海未は照れ臭そうに苦笑いを浮かべていた。教室にいるクラスメイトも、穂乃果が陽人に抱きついてきた一部始終を見ていたためか、ざわざわと噂話を始めていた。
「それよりも穂乃果、お前二分前の自分を忘れたわけじゃあるまいな?」
陽人が気を取り直して、穂乃果に問いかける。穂乃果はというと、彼の質問に徐々に顔を青褪めさせた。
「ん~! 今日もパンが美味いっ!」
昼休みの中庭にてはむ、とパンを頬張る穂乃果。陽人は先程まで廃校で落ち込んでいた彼女とは打って変わって元気になる様を見て、現金な奴と思った。
穂乃果が調子を取り戻したのは、極端に言えば彼女の勘違いにある。穂乃果は音ノ木坂学院の廃校は、今年になるものだと思っていた。だが実際には、今の一年生が卒業してからというのが真相である。廃校事態はまだ仮決めではあるものの、完全に決まれば新入生は入らず、そのまま一年生が三年生になっていった後は音ノ木坂学院に待っているのは廃校となる。穂乃果はこのことを知らなかったのだ。
「あまり食べ過ぎないで下さいよ…?」
「わかってるってー!」
すっかり元気になり、好物であるパンを頬張る穂乃果に海未は窘める。返事とは裏腹に解っていなさそうな穂乃果に、陽人もことりも呆れるしかなかった。
「でも…正式に決定したら今の一年生には後輩がいないんだよね…?」
ことりの弱気な声に、四人の間に沈んだ空気が漂い始める。今のような状況が続く空気が苦手な陽人は何か話題を探そうと頭を振り絞って考えるが、全くと言っていいほど思いつかなかった。
「ねえ、ちょっといいかしら?」
ふと、自分達に話しかける声が聞こえたので四人は声の聞こえる前方に顔を向ける。そこにいたのは二人の女子生徒だった。
絢瀬絵里。東條希。
生徒会の二人が一体何の用で話しかけてきたのだろうか。
「生徒会長に副会長じゃないすか。どうかしたんですか?」
「希月君…ちょっとね。」
陽人の隣で、穂乃果が絵里と希の顔を交互に驚いた表情で見ているのはこの際気にしないでおくことにした。
「南さん、確か貴方理事長の娘さんよね?」
「は、はい…。」
どこか冷たい態度の絵里の確認に、ことりは緊張しながらも答える。陽人はそんな絵里の態度に違和感を持ち始めていた。
「理事長は廃校の件について、何か言ってなかった?」
「い、いえ…私も今まで知らなかったので…。」
ことりの答えが満足のいくものではなかったのか、絵里は「そう」とだけ返すと、踵を返そうとする。
「あ、あの!」
立ち去ろうとする絵里と希を、穂乃果が呼び止める。二人は無言で振り向いた。
「本当に…廃校になっちゃうんですか?」
「…貴方達には関係のない事よ。」
冷たく突き放すような絵里の言動と態度に、穂乃果達はたじろいだ。陽人も絵里と希が去ってゆくのを見送ると、今の気分を紛らわせたいために大きくため息を吐いた。
「全くよ…。この前会った時とは段違いだ。」
「あはは、エリチがあんな態度でごめんなぁ?」
「うおっ!? と、東條先輩…いつの間に?」
「君が愚痴り始めた時からかな…。それはそうと、さっきはエリチが冷たい態度とってゴメンな?」
謝る希に、陽人は「気にしないでいい」と取り繕う。頭を上げた希は、まだバツが悪そうな表情をだしていた。
「エリチのお祖母さん、ここの学校出身らしくてな? それで廃校阻止に躍起になってるんよ。」
希のフォローに、陽人は納得がいった。祖母が嘗て通っていた学院に、孫である自分も学生として通うというのは誇らしいことだろう。故に自分が何とかしなければという思いが彼女を頑固にさせ、あのような冷たい態度になったのかもしれない。
「て言っても、一応関係はあるんだけど…なあ。」
絵里の放っていた言葉に、陽人は愚痴るように感想を呟く。陽人の言葉に、希は苦笑いで返すしかなかった。
「穂乃果…この学院大好きなんだけどなぁ…。」
「…私もです。」
「ことりもだよ…。」
幼なじみが無力感で打ちひしがれている。陽人は気まずい空気の中で、何を言えば良いのか分からなくなり、頭をがしがしと掻いた。
「別にええんよ? 君達が君達に出来る事を探せば。」
「えっ…副会長さん、それってどういう…。」
意味深な言葉を語りかける希に穂乃果はどういうことかと訊こうとするが、希は「ほな、またね~」と言い残し、煙に巻いて中庭からさっさといなくなってしまった。
「私達に出来る事…。」
穂乃果は希の言葉を繰り返し呟くと、何かを決意したかのような目の色に変えた。
「こうなったら、穂乃果達も何かできるか考えよう!」
「と言っても、具体的に何するか決まってないだろ?」
穂乃果の決意表明に、陽人は指摘を入れる。陽人の指摘に穂乃果は思わず固まってしまうのだった。
「まずは、音ノ木坂の部活の過去の成績を見てみるのはどうでしょう?」
「そうだね! ことり、後でお母さんに頼んでみる!」
「海未ちゃん、ことりちゃん…!」
穂乃果に感化されたのか、海未とことりも協力の意を示す。昔からそうだった。いつも穂乃果が何かをやろうと言い出せば、ふたりは嫌がったり戸惑いながらも最終的には穂乃果の後に続いていく。それは勿論、陽人自身も例外ではない。とは言え、彼の役目はタガが外れ過ぎた場合のストッパーが殆どであった。
思いを馳せていると、自分の胸ポケットが震えていることに気付いた。胸ポケットには携帯を入れており、取り出すとメールが受信されていた。メールの送信者は、水乃だった。
<来夢公園付近にて、出現。急行願う。>
たったの一文だったが、陽人が動くには充分過ぎた。陽人は携帯をしまい、盛り上がっている穂乃果達に呼びかける事にした。
「悪い、穂乃果。俺もう帰るわ。」
「えーっ!? まだお昼過ぎでしょ!?」
「いつもグースカ授業中に寝る位なら帰った方がマシだろ。」
穂乃果が驚くも、陽人の皮肉にむうう、と頬を膨らませ唸る。ことりは苦笑いでやり過ごし、海未も呆れの表情を隠さない。
「ですが、穂乃果の言う事も尤もです。まだ授業はあるのに、何で早退するんです?」
海未の言葉の通り、陽人が早退するにはもちろん言えないものの理由がある。しかし言えば何を言われるか堪ったものではない。陽人は適当な理由をつけて誤魔化すことにした。
「あー…あれだ。ちょっと色々溜め込んでるんだよ察しろ。」
あまりにも回りくどい言い回しに、海未は思わずゲージが上昇するかのように顔を真っ赤にさせた。ことりと穂乃果もそういう意味だと勘違いしたのか、ひそひそと二人で話をしていた。
「意味を訂正するのもめんどくさいんで、俺はもうお暇するわ…。」
自分の発言が雰囲気をややこしくさせたのを陽人は察したが、それを訂正するのも気が削がれたので、そのまま中庭を後にすることにした。
●
来夢公園。近辺に公園があるのはここだけで、常日頃子供達の遊び場となっている。そんな公園の付近にある住宅街で、人々は否応なしに逃げ惑っていた。
理由は怪人が現れたからだ。人々を絶望の淵に追い込ませ、同族を生み出そうとしている怪物、ファントムが出現したのだ。
「怯むなあ! 立ち向かえる奴は俺に続けぇ!」
そんなファントムの恐怖に負けじと、周囲を鼓舞する男性がいた。水乃刑事だ。彼は人々が逃げる中、一警察官として平和を守ろうと仲間の警官を鼓舞していた。
「人間がここまで足掻こうとするとは…面白い。だが!」
携帯している拳銃で何度もファントムに向けて発砲するが、ファントムからすれば蚊に刺された程度の痛みしか感じない。後ずさりしながらも撃ち続ける水乃達だが、弾もそろそろ切れそうな状態まで陥り、万事休すという所まで行ってしまった。
「もう終わりか…存外つまらんものだ。では、さらばだ。」
ファントムが右掌に紫色の光球を浮かばせ、それを水乃に目がけて投げたその瞬間だった。
「だったら、俺が相手してやるよ!」
割り込んだ男の声とともに、光球は吸い込まれるかのように無くなっていった。割り込んだのは、指輪の魔法使いと敵から呼ばれる戦士だった。宿敵との邂逅に、ファントムは苦々しげな表情を隠さなかった。
「ちっ…やはり指輪の魔法使い、貴様が邪魔してきたか。」
「そりゃあ、悪人の仕事は邪魔しなきゃナンボだしな? ああ、それと…。その呼び名、長いから変えてくれよ?」
「軽口を叩けるとはなあ!」
言いながら、ファントムは衝撃波を魔法使いに向けて放つ。だが察知していたのか、魔法使いは全く慌てていなかった。
【DEFENDER PLEASE.】
〔ディフェンド〕のリングで、魔法使いは炎の壁を目の前に作り、ファントムの攻撃を防いだ。壁を解いた魔法使いはひとつ息を吐いた。
「人の話はちゃんと聞けよ…。まあ、勝手に名乗らせてもらうけどな! っと、お前の名前聞いてなかったな! 教えてくれよ?」
「名乗る必要などどこにある? ここで死ぬ貴様に!」
答えようとしないファントムが、魔法使いに向かって殴りかかって来る。魔法使いは腕をクロスさせて、それを防いだ。
「ハッ、せっかく覚えてやろうと思ったのに…よぉ!」
拮抗する状況に、魔法使いは右脚を思い切りよくファントムの腹部に蹴りを入れた。それによって、ファントムは後ろに吹き飛ばされることになった。
「それじゃ、名乗らせてもらうぜ…。“指輪の魔法使い”改め“仮面ライダーウィザード”。さあ、ショータイムと行こうじゃないか!」
魔法使い…否、仮面ライダーウィザードは左手の中指に付けた、〔フレイムスタイル〕リングを眼前の敵に見せつけると同時に、宣言する。それは戦いのゴングが鳴ったかのような錯覚を覚えるものだった。
吹き飛ばされたファントムは、むくりと起き上がる。ウィザードは、ファントムを眺めるように観察していた。
まるで雀のような顔つきに、カラスのような体毛を身に纏った姿。勝手だがファントムに名を付けるとすれば『カイム』もしくは『カミオ』だろうか。ソロモン王が使役したという七二人の悪魔。その内の一人が『カイム』、または『カミオ』という名だ。
起き上がったファントムに、ウィザードは内心で『カミオ』と名を勝手につける事にした。
「ちっ…中々来るものだ。ならば利用させてもらおう。」
そう言うと、カミオは一〇個程石ころを取り出し、足元に放り投げた。カミオが放り投げた石ころが、ただの石ころではない事を、ウィザードは知っていた。
「グウウオオオオオ…。」
呻き声をあげながら、灰色の鬼…グールが生まれる。その隙に、カミオは両手を広げて翼を出し、空に浮かんで行った。
「おいおい、逃げる気かよ…!」
「フン、誰が逃げると言った!」
身構えるウィザードに目がけて、カミオは空中突進を仕掛けてきた。カミオの突進を躱したウィザードだったが、別の者の手によって転ばされてしまうことになった。
「うわっ! …と、こいつ等もいたんだったな!」
グールの仕業によって転ばされたことを自覚したウィザードは、拳法の構えをとる。地上ではグールが一〇体。空中にはカミオが攻撃を仕掛けてくる。魔法を使う余裕など、無いに等しかった。
(いや…もしかしたらいけるか?)
一瞬の隙を突けば或いは。ウィザードが思い描くイメージ通りに敵に隙を与えれば魔法を使うことは出来る筈だ。
「まずは雑魚から片付けなきゃな!」
自分の考えた一計がどこまで通じるか。実践してみなければ話にならないと踏んだウィザードは、自分の周りを囲むグールを退けることにした。
最初に、正面のグールを足払いで転ばせる。転ばされたグールは驚いたのか、自ら手に持っていた槍を離してしまう。それを見逃す筈もないウィザード。槍を素早く手に取ると、器用に振り回し始めた。
「はあっ!」
ウィザードは槍を横にいるグールに突き当てそのまま持ち上げると、上空に放り出した。同時に持っていた槍を放ったグール目がけて、槍投げの要領で放つ。宙に浮かび槍を貫かれたグールは、そのまま爆散した。
「ぐうっ…!」
空中でグールの一体が爆散したことで、空を飛んでいたカミオは思わず目を隠してしまった。それを見たウィザードは、仮面の下でニヤリと笑みを浮かべる。この一瞬の状況なら自分の魔法を使うことが出来る。
【HURRICANE PLEASE. Foo foo! foo Foo FOO FOO!!】
ウィザードは左の中指に付けていた指輪を付け替え、エメラルドを彷彿とさせる仮面を模した指輪に変え、ベルトのバックル…正式名称、ハンドオーサーに添える。直後に彼は左腕を上に掲げ、緑の魔法陣が現れると小さくジャンプし、自らの姿を変化させた。
ハリケーンスタイル。風のエレメントを宿した形態で、自分に風を纏わせることで空中戦も可能とするものだ。
【CONNECT PLEASE.】
ウィザードとしての武器、ウィザーソードガンを取り出し、ソードモードの状態にし、逆手持ちで構える。ウィザードは小さく浮かび上がると、低空飛行をしながら前方へドリル状に回転しつつ、突進していった。突進に驚いた数体のグールは、防御態勢をとることをすっかり忘れていた。ウィザードは突進のすれ違い様にウィザーソードガンの刃に魔力を込め、斬りつける。斬られた全てのグールは、小さく呻き声を上げて爆発した。
「あとは奴だけだけど…!」
このまま行けば順調に終わるだろうが、そうは問屋が卸さないと言ったところか。爆発の目くらましから復活したカミオが、ウィザードに向けて飛び蹴りを放った。
「やるじゃないか…! 指輪の魔法使い!」
「だーかーら言ってるだろ!? ウィザードって呼んでくれってさぁ!」
飛び蹴りを剣で防いだウィザードは軽口を叩く。まだウィザードに余裕があると見たカミオは、怒りを募らせた。
「調子に乗る奴だ!」
怒りを爆発させたカミオ、翼の羽根を苦無のように持ち、それを何十発も投げた。ウィザードは何度もバク転をすることで攻撃を躱すが、このままでは攻撃を受けるのがオチだと自分自身理解していた。
「なら…。」
ウィザードの呟きは誰にも聞かれることはなく、とうとう壁際まで追い込まれてしまった。
「フン、これで終わりだ!」
勝利を確信したカミオが、地上に降り立ち無数の羽根をウィザードに差し向け掃射する。それを見たウィザードは、ウィザーソードガンのハンドオーサーを開き、〔ハリケーンスタイル〕リングをそれにそっと添えた。
【HURRICANE! SLASH STRIKE!! Foo foo FOO!! Foo foo FOO!!】
「はあっ!」
「なっ!?」
カミオが驚くのも無理はない。ウィザードは持っていた剣を横に裂くように振るうと、彼の目の前に軽く三メートルは超えるだろう竜巻を作り出したのだ。当然ウィザードの目の前に作られた竜巻はカミオの羽根を巻きこみ、魔法使いが攻撃を受ける事はなかった。
「貰ってきな!」
さらに縦に振り下ろすと、風の斬撃破と先程作り出していた竜巻が、カミオに向かってくる。竜巻の他に追撃が来るとは思わなかったカミオは、油断していた。
「ぐううううっ!!」
自らの腕で顔を覆うように防ごうと試みるが、それだけで当然攻撃が完全に防げるはずもない。このままでは敗北は免れなかった。
(ならば―――!)
最後の力を振り絞り、一枚の羽根を作り出す。それを自分の足元に突き刺すと、羽根は溶けるように消えていった。
「フフ…フフハハハハハハ!!」
ダメージを受け続け、再起不能になったカミオは突然高笑いをあげるとともに爆発した。残ったのはファントムの肉片とバチバチと燃える炎となり、ウィザードはそんな光景を無言で見つめるしかなかった。
(何で笑った…。)
自分の断末魔がただの高笑い。いや、あれがただの高笑いであるはずがない。カミオは恐らく、あの小さな竜巻と風の斬撃の中で“何か”を仕掛けたのだ。実際、ウィザードにはそれが見えた。
先程までいたカミオの足元を見る。何もなかった。もしくは仕掛けが目には見えない状態になっているのか。いずれにせよ、変身した状態且つ魔力も感知できないのではどうしようもなかった。
「水乃さん、被害規模はどれくらいです?」
「ああ…たまたま巡回中の警官がウチに知らせてくれたおかげで、それなりには抑えられた。まあ建造物とかは…。」
そこまで言うと、水乃は辺りを見回す。ウィザードが来るまでの間、人的被害は少なく留まったが、建築物の被害はやはり抑えようと思って抑えられるものではなかった。幸か不幸か、瓦礫と化したのは家の塀と公園の遊具が殆どだった。とは言え、ここの公園で遊ぶ子供達には気の毒であると言わざるを得ない。
「全く…これ誰が修理費出すんだよ…?」
「俺は出さないっすから。」
水乃の愚痴に、ウィザードは自分にお鉢が回らないよう明後日の方向に目を向ける。水乃もわかってると言わんばかりに、両手を降参するようにあげる。
「まあ冗談だ。お前もとっとと帰れよー? こんな所に長居するのはマズいだろ?」
「ハイハイ、とっとと帰りますよ…っと。その前に…。」
「あ?」
水乃の忠告を受け取り、去ろうとしたウィザードだったが急に立ち止まる。彼は指輪を取り出すとそれを右手の中指にはめ、ハンドオーサーにそっと当てた。
【REINSTATE PLEASE.】
音声が鳴った瞬間、ウィザードを中心に水色の魔法陣が広がっていった。魔法陣の範囲はやがて瓦礫が最後まで飛散していった範囲まで広がる。
ここまで広がれば十分だ。
ウィザードは魔力を魔法陣に込めると、瓦礫は光のように消えて塀や遊具もみるみるうちに元通りになっていく。完全に元通りになると、ウィザードは「ふぃー」と小さく息を吐く。
「あーあ…勝手に戻しやがって…。」
「感謝の言葉くらい下さいよ?」
「ハイハイありがとさん。色々と後処理が大変なんだよこれが…はあ…。」
「普通に俺が戻しましたでいいんじゃないすか?」
「上がそれで納得するか?」
「しないっすね。」
「だろ?」
歳は離れているというのに、まさに友人同士の会話を見せているこの状況に、水乃の部下達も苦笑いをするしかなかった。
●
人の通る気配のない深夜。普段ならこんな時間までハシゴ酒を楽しんでいたサラリーマンが数人は通るものだが、今日ばかりはそれがない。何故ならこの場所は昼間に魔法使いとファントムが戦っていた場所、つまり来夢公園通りだからだ。
「さて…ここら辺にあると思ったんだけど…。」
深夜に徘徊するには年齢がそぐわない女性が、キョロキョロと周囲を見回す。彼女がここに来た理由は、同士の“置き土産”を探し、それを有効活用させてもらうためである。
「ん~、魔法使いの魔力の反応もあるから見つけづらくなってるよ…むっ、これは!」
探しあぐねていた女性だったが、目当ての魔力を漸く感知することに成功したようだ。女性は歩みを止めるとしゃがみ込み、何かを抜き取る動作を行う。それは彼女だからこそ出来た芸当だ。自分達の宿敵ですらこの魔力は感知できなかったのだ。コンディションによって左右されるとはいえ、無事に見つける事が出来たのは安心だった。
「見つかったか。」
背後に男性の声が聞こえたので振り向くと、そこには見慣れた顔がいた。彼女を筆頭に、他の仲間は彼を慕っている。それは最早崇拝とも呼べるものだった。
「ええ、見つかりました。私が使っても宜しいのでしょう?」
「好きにするがいいさ。早い者勝ちと言うしな。」
畏まった口調で男に確認すると、放任の答えを彼は出した。答えに満足した女性は「ではこれで」と言い残すと、大きくジャンプし住宅街の屋根から屋根を飛び移った。
「…こんな時間とは言え、あまり目立つ真似はして欲しくないものだ。」
女性を見送った男は、独り愚痴を零す。誰もいなくなった一帯を、彼は見回し始める。感知できる魔力は三つ。先程の女性の魔力。そして昼間に戦っていたというファントムの一人と魔法使いの魔力。この三つの魔力が、燃えカスのように今もここに残っていた。
「目醒めるにはまだ程遠いか…。“四の欠片”はそれぞれ奴らが持っていたはずだ。機を見て嗾けてみるか。」
独り言のようにぶつぶつと呟くと男はまるで泡が弾けるかの如く、この場からいなくなっていた。
次回、Love live is SHOWTIME!!
「やっぱり音ノ木坂って廃校になるんだ?」
「どんな事があっても、必ずお前の所に帰るっていう約束。」
「アンタまさかスクールアイドル知らないっていうの!?」
「これだ…これだよ!」
さあ、ショータイムだ!