Love live is SHOWTIME!!   作:ホームズの弟子見習い

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平成ジェネレーションズに紘汰さんだけ出れないと知って、残念な気持ち。
でも晴人さんや進兄さんが出れるだけでも有り難い気持ちです。

どうでもいいですけど感想も欲しいなーって|д゚)

それでは第五話…もとい、六話目です。どうぞー。





今更なんですけど、あらすじ変えました。


RING.5:廻り始める歯車

 

 

 

 音ノ木坂学院校門前。絵里に啖呵を切った陽人は、穂乃果達と共にそれぞれの家へと歩を進めようとしていた。だが陽人とは対照的に、穂乃果達三人は先へ足を進めようとしていなかった。

 そうなる理由は、陽人に視線を向けているからだ。三人の視線が少しだけ鬱陶しく感じてしまった陽人は、思わず後ろを振り向く。

 

「ったく…なんだよ、そんなに熱烈に見つめちゃって? ヤダねー、モテる男は。」

「そういうのではありません…。」

 

 軽口を叩く陽人に、海未が呆れながら否定する。こういう反応が返ってくるのは陽人も予想していたため、フッと陽人は小さく笑みを浮かべる。

 

「何というか…ハル君があそこまで反発するのって、見たことなかったから…。」

「ちょっと吃驚しちゃって…。」

 

 穂乃果とことりに昔と違う印象を抱かれたのかと察した陽人は、頭をガシガシと掻いた。そう言われても、昔と今では性格も変わるものだと陽人自身は思っている。何よりも、変えなければならなくなってしまった出来事があるせいか、過去と変わりないまま接してくれている穂乃果達にはらしくないことをしたような気がすると陽人は思う。

 

「あれから六年も経ってるんだ、そりゃあ色々と変わるだろ。それよりも、だ…これからどうするか…問題は山積みだな? 穂乃果?」

 

 そう言って穂乃果に呼びかける陽人に、彼女は首を少しだけ上に傾けて空を眺めていた。その表情は沈み気味だった先程とは打って変わって凛々しさを感じるものとなっていた。

 

「だって、可能性感じたんだ。そうだ…進め! 後悔したくない目の前に、僕らの道がある…!」

 

 右拳を自身の胸に当てて、穂乃果は口ずさむ。いつもそうだった。どんなに困難が立ち塞がろうとも、穂乃果は何が何でもそれを成し遂げようとした。それを止めようなどどいう無粋な真似はしなかったし、出来る筈もなかった。邪魔してしまえば、それは自分の青春を奪うのと同義だったから。

 口ずさんだ穂乃果は、一気に駆け抜ける。突然走りだした穂乃果を、海未とことりは追いかけ陽人も二人に倣って足を走らせる。

 

(おい、陽人! 匂うぞ!!)

 

 走りだした直後、陽人の脳内に語り掛ける声が彼の顔を強張らせた。小走りで駆けていた陽人の足は一気に速くなり、先導していた穂乃果を追い越す勢いを感じさせるものになっていた。

 

「ど、どうしたんですか!?」

「は、陽人くん!?」

 

 驚く海未とことりに目も暮れず、陽人はまだ先を走っていた穂乃果に手を伸ばそうとする。だが陽人が伸ばした手は穂乃果に届かず、彼女はそのまま階段をジャンプして降りようとした。

 そこで、止まった。穂乃果は飛び降りた直後のまま。まるで空に浮いたかのように穂乃果の身体は止まっていた。

 

「おい、穂乃果! 俺の声が聞こえるか!?」

「は、ハル君…。」

 

 陽人が呼びかけると、穂乃果は涙を浮かばせながらもなんとか応える。階段の麓を見下ろすと、そこには自分に伝えられた声の通りだった。ファントムがいた。陽人は思わず大きく舌打ちをする。

 狙いはやはり穂乃果と見て間違いない。二度も命を奪われる危機に陥っているのだ。確実に“ゲート(・・・)”は穂乃果が対象となっている。

 ただ、一度目と今回の二度目とでは違う点がある。それはファントムの個体が全く別であるということだ。

 一度目に対峙した敵は名を“メデューサ”と呼ばれていた。だが今回見えたのはメデューサとは姿形が全く別の個体だった。まるで蜥蜴のような頭の個体で、メデューサとは別個体であることは一目瞭然だった。あの風貌から考えて、名は“ファフニール”と言ったところか。

 

「フン!」

 

 ファフニールが力を入れた声を上げると同時に既に掲げていた手を大きく左に振るう。すると穂乃果の身体もまた吊られるかのようにファフニールから見て左に移動していった。

 

「ほ、穂乃果!?」

「穂乃果ちゃん!?」

「ちっ!」

 

 恐怖に染まった穂乃果は悲鳴を上げる暇もなかった。陽人は数歩助走を加えると、穂乃果に届くように大きくジャンプした。がしっと抱き抱える事には成功したが、このままでは二人一緒に再起不能になってしまう。最悪、御陀仏ということも有り得た。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

【GRAVITY PLEASE.】

 

 そうならないための対策は当然仕込んであった。自らの叫びで音声を掻き消すように重力を制御する魔法…〔グラビティ〕リングを発動させ、穂乃果に大きな怪我は負うこともなく、陽人も穂乃果を庇う際に多少身体を打ったものの、最小限に留められた。

 

「う、ううん…。」

 

 重傷を負っていないとはいえ、突然自分の身体が浮いたと思えばいきなりブーメランが振り回されたかのように地面に衝突するところだったのだ。穂乃果はショックが強すぎたのか気絶してしまったようだ。

 無事で何よりと陽人がホッとするのも束の間。ただならぬ気配が陽人の肌にひりひりと感じさせた。ファフニールが此方に向かってくる。まだ自分が抱き抱えている穂乃果だけじゃない、近くには海未とことりもいる。三人を戦いに巻き込む訳にはいかない。

 どうするかと考えあぐねていると、陽人の携帯からメールが届いた。送信者は俊平だった。

 

<園田先輩と南先輩はこっちに任せるっす>

 

 ベストタイミングで朗報を送ってくれたことに、陽人は笑みを浮かべた。今穂乃果は気絶している状態だ。近くを見回しても、誰かがいる気配は感じない。

 

(ドラゴン、行けるか?)

(野次馬はいない、思う存分やってこい!)

 

 自身の身体に抑え込む相棒に確認をとり、相棒もまた発破をかける。そう言われては遠慮をする必要はない、相応に暴れさせてもらうことにしよう。陽人は左手に〔フレイムスタイル〕リングを付け、右手には〔コネクト〕リングを付ける。本来、〔コネクト〕リングは空間同士を繋ぐ魔法陣を作成するものだ。大きさは自由自在で、腕一本分を通すサイズから人一人分が収まるサイズまで作成できる。そんな〔コネクト〕リングだが、もう一つの効果がこのリングにはある。

 

【DRIVER ON PLEASE.】

 

 陽人は右手を制服のベルトのバックル部分に添えると、ベルトは本来の姿へ変化した。元々ベルトのバックルはハンドオーサーが備えられていたものが、それを中心に銀色の鎧のように重厚な物に変化したのだ。

 ベルト…ウィザードライバーの変化にも、目の前のファントムは動じることなくゆっくりと此方に歩み進める。何かしらの反応があってもおかしくないはずだったのに実際は無反応であることに陽人は気を引き締めた。

 

「変身。」

 

 静かに発した言葉に、ファフニールはピクリと反応したのか立ち止まった。

 そして陽人は自分の呟いた言葉と共に、左手の〔フレイムスタイル〕リングを仮面のような形状に変化させ、ハンドオーサーにそっと当てる。全身からぞくりと力が湧き立つのを感じた陽人は、左手をそっと前に突き出す。すると赤い魔法陣が出現し、陽人の身体は突き出した左腕から徐々に変化していく。

 

【FLAME PLEASE. Hea…hea…HEA,HEA,HEA!!】

 

 まるで魔法使いのような風貌に。

 まるで人々の自由を守る象徴の戦士に。

 仮面ライダーウィザードに、その姿を変えていった。

 

「指輪の魔法使い…!」

 

 小さく忌々し気に、ファフニールは宿敵の名を口に出す。態度を変えたファフニールに、ウィザードは「ご明察。」と明るく答える。

 

「さて、コイツは遠い所に置いときますか。」

【CONNECT PLEASE.】

 

 右手のコネクトリングをハンドオーサーに当てて、魔法陣を作り出す。魔法陣のサイズは人一人分の大きさで、現在気絶している穂乃果がすっぽり収まるほどだった。

 

「させるか!!」

 

 ウィザードの意図、つまり穂乃果をこの場から逃がそうという思惑を察知したファフニールは、自らの右掌から長い舌のようなものを繰り出し、穂乃果を自分に引き寄せようと試みた。

 だが、怪人よりも戦士の方が早かった。ウィザードは魔法陣に穂乃果を放り込むと同時に全身を纏う魔法衣、ウィザードローブでファントムの攻撃を防いだ。

 

「貴様っ…!」

「…さあ、ショータイムと行こうぜ。キッチリ、落とし前はつけなくちゃな?」

 

 静かに言い放つウィザードに、ファフニールはどこか肌寒い感覚を覚えた。ウィザードは今、ファフニールに対して怒りの感情を見せていた。理由は言うまでもない。大切な人(穂乃果)を傷付けられそうになったからだ。

 以前にメデューサが穂乃果を襲った時にも怒りが沸き上がっていない訳ではないが、努めて冷静に対処できたのは穂乃果が既に襲撃されていたからこそ、救出優先に結論を下せたがためだろう。あまり私情を持ち込むのは個人的には御法度だが、そうだとしてもこの怒りは収まりそうにはなかった。

 

「はあっ!」

 

 勢いよく短い雄叫びを上げるとともに、ウィザードは攻撃を仕掛ける。数メートルの差を一気に縮めると、ウィザードは敵の右脇腹に思いきり蹴りを入れた。

 

「グウッ…!」

「ちぃっ!」

 

 だがその蹴りもファフニールは蹴りだした右足を掴むことによって、未然に防がれてしまった。この状態ではハンマー投げの如く振り回されてしまう。

 

「むうん!」

 

 そしてウィザードの危惧した通りになった。ファフニールはまさにウィザードが予測した通りに振り回し、そのまま投げた。

 ウィザードの身体は地面すれすれに投げ込まれ、やがて地面に衝突するとボールが跳ねるように彼の身体は転がり込んだ。衝突した地面は見事に抉られ、工事費がかかりそうな雰囲気を漂わせるが、今はそんなことは誰も気にしていない。

 

「ゴホ…意外に力持ちじゃないの。」

 

 投げ込まれたことによりファフニールとの距離が大きく開いたウィザードが起き上がり、敵の評価を口にする。ウィザードは内心、ファフニールに感謝する。無策で突っ込んでこのザマだ。返り討ちにしてくれたおかげで頭が冷えて冷静になれた気がする。

 

「力持ちには相応の相手が必要だな?」

【LAND PLEASE. D,d,d,d,Don,Donn,D,D,DON!!】

 

 そう言うとウィザードは左手の〔フレイムスタイル〕リングを、トパーズを彷彿とさせる〔ランドスタイル〕リングに付け替え、ハンドオーサーに当てる。ウィザードは左手を地面にかざすと、黄色い魔法陣が浮かび上がり、彼の紅い宝石の装甲、フレアペイルとフレイムラングストーンは黄色へ変化し、グラドペイルとグラドラングストーンに変えた。

 ランドスタイル。土のエレメントを宿し、フレイムスタイルの他にもあるウォーター・ハリケーンの四形態の中でもパワーと防御力に優れている形態である。

 目には目を、歯には歯を。力には力を。と言いたいところだが、ウィザードが〔ランドスタイル〕リングを選んだ理由は単純に力比べをするだけではない。

 

「よっと!」

「何!?」

 

 ウィザードは突然地面をすり抜けるかのように潜り込み、ファフニールを驚かせた。どこからやってくるのか。恐らく足元から奇襲を仕掛けてくるのは予想できたファフニールは、足元の周囲を警戒する。

 

「甘いんだよ!」

 

 だがウィザードは足元の警戒を察知していた。裏をかいたウィザードはファフニールの足元から三メートル程離れた場所から出現し、予め〔コネクト〕リングで取り寄せていたウィザーソードガン・ガンモードで撃ち込んだのだ。出現と同時に魔力の弾丸を撃ち込まれたファフニールは、ダメージを受けて怯んだ。

 

「ぐっ…貴様!」

「…ん?」

 

 態勢を整えようとするファフニールに、ウィザードはひとつの違和感を覚えた。

 別に体型の問題ではない。いや、それに近いものではあるがこの奇妙な違和感はなんだろうか。

 

「はあっ!」

 

 考え事をしている隙にファフニールが魔力弾を放つ。我に返ったウィザードはウィザーソードガンで咄嗟に受け止めた。

 

「危ねえ危ねえ…。」

「流石は長く戦っているだけあるものだ!」

 

 ファフニールの皮肉を込めた称賛に、ウィザードは言葉を返さなかった。心中に思っていた事は、先程感じていた違和感の正体だった。

 

(男と勘違いしてたけど…! この声色、女かよ!?)

 

 見た目とは裏腹な凛々しくも高い声に、陽人は仮面の下で驚愕する。とは言え、それとこれとは話が別というやつだ。陽人は気持ちを切り替えて、改めて眼前の敵と対峙する。

 

「はぁっ!」

 

 ウィザーソードガンをソードモードに切り替えた陽人は、回し蹴りも交えながらファフニールを斬りつける。武器を持っていないファフニールは、ウィザードの連撃に次第に押されていった。

 

「どうしたどうした!? さっきまでの威勢はどこ行った!」

「黙…れ!」

 

 連撃を与えながら、ウィザードは挑発する。ファフニールは息も絶え絶えに反発するのがやっとだった。

 

「そりゃっ!」

 

 そして最後の一撃に、ウィザードはウィザーソードガンを思い切り突く。だがファフニールがこの一撃を貰うことはなかった。

 ファフニールは自らの身体を捻らせ、ウィザードの突きを回避したのだ。力を振り絞って回避されたか―――。ウィザードは敵ながら天晴れと言いたくなる気持ちに駆られた。

 ウィザードの攻撃を躱したファフニールは身体の捻りを利用し、そのままくるりと左足を軸に一回転すると、ウィザードの突き出した右腕を掴んだ。

 

「なっ!?」

「はあっ!」

 

 腕を掴まれたウィザードはそのまま背負い投げの要領で、背中を地面に衝かせてしまう。いくら変身している状態であるとはいえ、アスファルトに勢いよく背中をぶつけるとなると相当肉体にダメージを受けたことは想像に難くない。

 

「ぐう…。ハッ、がああっ!」

 

 あまりの衝撃に悶絶しかけたウィザードは、ファフニールの踏み付けによる追撃を許してしまった。ファフニールはぐりぐりとウィザードを踏み躙り、どこか楽しんでいるようにも見えた。

 

「気に…食わねえな!」

 

 苦しみながらもウィザードは両腕に力を籠めると、自らの身体を踏み躙るファフニールの足を掴み持ち上げた。

 

「まだ抵抗する力が残っているか…!」

「そう簡単に死ねるかよ!」

 

 ウィザードはそう言うと、右脚を大きく上げてファフニールの背中を蹴り返す。手痛い反撃を喰らったファフニールは一瞬だけ怯んだ。その一瞬の怯みがウィザードに隙を与えた。転がりながらウィザードはファフニールに距離をとると、右手の指輪を付け替え、態勢を整え直す。同時に戦士の魂胆には、決着をつけるという思いが芽生えていた。

 

【CHO-E-NE!! KICK STRIKE!! SAIKO--------!!】

「ハッ!」

 

 音声とともにウィザードは高く跳びあがると、ファフニールとウィザードの間に黄色の魔法陣が現れた。右脚に土の属性の魔力が溜まったウィザードは飛び蹴りの構えをとり、魔法陣諸共、ファフニール目がけて突っ込んでいった。

 

「はあああーーーーーっ!!!」

「くうっ!」

 

 雄叫びとともに、ウィザードは自ら放ったキック“ストライクウィザード”をファフニールに当てようとする。対するファフニールも、魔力弾を光線状に放つことで抵抗しようとする。

 

「ぐうううううっっ! …はああああああああ!!!」

「あ…ああああああああ!!」

 

 ストライクウィザードとファフニールが放った魔力弾。十秒近く拮抗した勝負の行方は、ウィザードに軍配が上がった。魔法使いのキックは魔力弾を(くぐ)るように貫き、ファフニールさえも貫通した。

 蹴り貫かれたファフニールは呻き、その後ろでウィザードは左腕を緩く横にかざす。

 その行動が、この戦いは仮面ライダーウィザードの勝利であることを知らしめるものだった。

 

「ウウ…あああああああああああ!!!」

 

 悲鳴という断末魔とともに、ファフニールは爆発した。後に残るのは魔法使いと、怪人が爆発したために燃え盛る炎、そして怪人の肉片だけだった。

 

「…ふぃー。」

(油断するな陽人! 魔力の残骸が妙にデカ過ぎる!)

 

 ファントムを倒し、一件落着を実感した戦士は一息ついた。かと思えばドラゴンからのお告げだ。どうやらまだまだ油断はできない状況にあるようだ。ウィザードはファフニールがいた方に向き、戦闘態勢を構え直す。

 

「なっ…。」

 

 そこでは有り得ない光景が見えた。肉片が勝手に動き、粘土のようにそれぞれがくっつき合いだした。肉片はやがて人の形となり、それはウィザードがつい先程までに戦っていたファフニールとなった。

 

「おいおい、マジかよ…。」

「ちっ…ここまで追い詰めるとは思わなかったよ。ここは一旦引かせてもらう!」

 

 ファフニールはそう言うと、魔力弾を足元に放ち、閃光弾のようにウィザードの目を眩ませた。

 

「くっ…待て!」

 

 後を追おうとするが、既にファフニールは逃げていた。ウィザードは舌打ちをする。だが、本音を言えばここでファフニールが逃げてくれたのは此方としても有難いことだった。

 

(魔力の方はまだ残っているけど…身体がそれに追いつかないのはな…。)

 

 希月陽人が仮面ライダーウィザードとして闘い始めるのはつい最近ではない。それなりに長く戦ってきているというのに、自らが抱える魔力量と自分の身体能力は、完全にマッチしているとは到底言えないものだった。

 所謂、“頭が身体に追いつかない”ならぬ、“身体が魔力に追いつかない”状態となっているのだ。日々鍛え続けているものの、こればかりはどうにもならなかった。

 

「…っと、あいつ等が来ない内に退散するか。」

 

 恐らくもうすぐ海未達が此方に来るであろう。穂乃果は〔コネクト〕リングで彼女の自宅に避難させたので、心配はない。

 ウィザードは〔コネクト〕リングで専用マシン、“マシンウィンガー”を取り寄せるとすぐさま搭乗し、この場を離れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうすか。了解っす。んじゃ二人にもそう伝えますんで。」

 

 ふう、と俊平は一息吐くと、海未とことりの方に顔を向けた。今、三人はつい先程までウィザードとファフニールが戦っていた場所…即ち、音ノ木坂学院校門前の付近まで来ていた。ファフニールの攻撃によって穂乃果と離れ離れになってしまった海未が穂乃果を救おうと何度も出向こうとしていたが、その都度俊平に止められていた。ウィザードとファフニールの戦いの最中にやってきた場合、ファフニールに人質として取られるのが目に見えているためだ。穂乃果の件についてはウィザードに任せておけば大丈夫と説得し、何とか思い留まらせた訳である。

 

「園田先輩、南先輩。高坂先輩は今は自宅にいるみたいっス。アニキが先輩の母親に訊いてみたら突然自室のベッドの上で寝転がっていて驚いたわって言ってたので、まず間違いないかと。」

「そ、そうですか…。」

「あ、ありがとう…俊平君。」

「イヤイヤ、気にしなくていいっすよ。ついさっき知り合ったとはいえ、心配なのは俺も同じっすから。」

 

 礼を言う海未とことりに、俊平は取り繕う。自分の言う通りではあるが、確かに穂乃果とは知り合ったばかりの関係ではあるものの、間に陽人がいる事で、余計に心配度は上がるのだ。尚更二人に穂乃果の詳細を伝えないわけにはいかない。

 

「そういえば、高坂先輩の鞄って二人のどっちかが持ってるっスか? アニキから先輩の鞄持ってきてくれって言われてるんすけど…。」

「それだったら、わたしが持ってるけど…。」

「んじゃあ、俺もついていくので、先輩の鞄を届けてやってください。あんな事があったんじゃ、色々不安もあるだろうし…。」

「でしたら、私もついていきます。」

 

 海未もついていくのには、元よりそのつもりでいたため俊平は頷いた。陽人から聞いた話ではあるが、海未もそれなりに武道を嗜んでいるという。だがファントムが絡んでいる場合になると、事は簡単にいかない。穂乃果が狙われている場合、海未もことりも狙われる可能性が必然的に高くなるためである。

 尤も、海未の腹の内は俊平という存在に警戒心を抱いての発言だろう。ずっと自身の方を睨み付けているのだから。

 

「それじゃあ行きましょうか。先輩方、案内お願いします。」

 

 俊平の出発宣言に、ことりの足は穂乃果の家である“穂むら”へ向かい始めた。

 

 

 

 

 

 一方、陽人は穂むらから少し離れた閑静な住宅街に佇む一件の古美術商店の入り口前まで来ていた。正確に言えば、帰ってきたと言えるものだ。

 古美術商店“()()(かげ)(どう)”。

 現在の陽人と俊平の住処で、幼い頃からも度々この店の店主には世話になっており、陽人も恩義を感じている。

 

「ただいま、輪嶋のおっちゃん。」

「おお、陽人…帰ってきたか、おかえり。」

 

 陽人を迎え入れたのは、於母影堂の店主、輪嶋(わじま)繁人(しげと)だ。ウィザードリングの作成者でもあり、住処の提供や新たな力が加わるのには、この人物が欠かせないと陽人は常々思っているほどだ。

 

「あれ、一人だけか? 俊平の奴はどうした?」

「海未とことりを送り届けてるよ。穂乃果がファントムに襲われていたんでね。」

「そうか…お前の彼女さんが襲われたって事は、その子はゲートっていう訳だな。」

 

 陽人の返答に、輪嶋は苦い表情を見せる。陽人は「彼女じゃないって」と否定しながらも、輪嶋の最後の言葉には同意した。

 ファントム。人間が絶望に陥った際に、その人間に代わって活動を行う怪人だ。ファントムは自らの種族繁栄のために、内に秘められた魔力が高い人間…ゲートを様々な方法で絶望させようと暗躍している。ゲートにとって大切な物を破壊したり、周囲の人間を殺害しようとしたりなど、その方法は陰険かつ残酷なものである。一番手っ取り早いのが死の恐怖で、ファントム自らがゲートを完全とは行かずにある程度の重傷を負わせ、ゲートの深層心理を悪い方向に作用させることで、ファントムを産み出す方法だ。陽人も何度か、そういう場面に遭遇している。

 そうならないために、陽人はファントムと敵対して仮面ライダーウィザードとして戦っているのだ。

 

「念のためにガルーダに三人を見てもらうように頼んである。何かあったらすぐにこっちに来るよ。」

「何事もなければいいがな…。」

 

 心配性な輪嶋に、陽人は何とも言えない表情で頭を掻くしかなかった。

 

 

 

 

 

 暫くすると、窓の外からこんこんと叩く音が聞こえた。音の聞こえる方向に陽人達は顔を向けると、そこにはプラモで作られたような鳥を模した赤い物体が、自分の意志で窓を叩いていた。

 レッドガルーダ。所謂魔法使いの使い魔で、普段はプラモのランナーの如く“型”に収納されているが、陽人が〔レッドガルーダ〕リングを使用することにより、自動でそれぞれの部位が合体し、活動を行うことができる。

 

「ガルーダ、俊平達に何かあったか?」

 

 陽人が訊くと、ガルーダはピイピイと鳴き声をあげて返答する。傍から見れば何を言っているのか理解できない光景だが、ガルーダの…というよりは使役する使い魔の言葉を理解できるのは、魔法使いである陽人だけだ。故に陽人は何度もうんうんと頷いている。

 

「穂乃果の家に向かっている途中でグールに襲われた…? グールだけなのか?」

 

 ガルーダの言葉を噛み締めるように復唱する陽人に、ガルーダは頷く。陽人は「わかった」と短く言うと、ヘルメットを片手に於母影堂の出入り口を勢いよく開けた。

 

「陽人、気を付けろよ!」

「解ってるよ、おっちゃん! じゃあ行ってくる!!」

 

 その言葉と共に、陽人はガルーダを肩に乗せると乗っていた愛車のエンジンを吹かし、フルスロットルで俊平たちのいる場所へ向かった。

 

 

 




次回、Love live is SHOWTIME!!


「俺達二人なら、余裕でしょ?」

「ライブをやればいいんじゃないかな!」

「何故あの子達の味方をするの?」

「カードが…! カードがウチに、そう告げるんや!!」


さあ、ショータイムだ!
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