Love live is SHOWTIME!! 作:ホームズの弟子見習い
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そして描写にムラが出来てしまうのは何とかしたい。
それでは、第六話…もとい、七話目です。どうぞー。
「はっ! たあっ! おらあっ!!」
夕暮れ時の帰り道。俊平は襲撃してきたグールを追い払っていた。正確には、俊平を襲ってきたのではない。彼の後ろにいる海未とことりを襲ってきたのだ。
(悪い予感が当たっちまった…!)
もしもの時のために、二人についていって正解だった。ファントムを一度倒したと思っていたら、復活したと陽人から聞いた時は最悪の事態を考えた。それは海未とことりが狙われる可能性だ。
ファントムはゲートを絶望させるためならばどんな手段も厭わない。ゲートに近しく親しい人物を殺すことすら躊躇わない。だからこそ、俊平は海未とことりの護衛のつもりで二人を送っていた。
「だあーくそっ!! キリがねえ!!」
わらわらととめどなく溢れてくるグールの大群に、俊平は思わず愚痴を零す。如何せん、海未とことりを守りながら戦っているだけに、緩やかに状況は悪くなっていくのも愚痴を零す要因の一つだ。せめて陽人が来てくれれば…。そう思っていた矢先だった。
「それっ! 邪魔だぞぉ!!」
三人の頭上をバイクが通り抜けた。バイクは俊平の眼前より二メートル先でドリフトで止まり、搭乗者はじっと目の前を見つめていた。
「か…仮面ライダーさん!?」
「ど、どうしてまた…?」
「怖い人に襲われそうになったら、助けるのが俺の流儀なんでね。」
バイクに乗って現れた人物、仮面ライダーウィザード〔フレイムスタイル〕に海未とことりは混乱を隠せなかった。そんな二人に軽い調子で応え、俊平も両掌をはらうとウィザードとともに目の前のグールを睨み付けた。
「さて…二人はこいつの後ろにでも隠れててくれ。すぐ終わるからよ。」
ウィザードはそう言って、自ら乗り込んできたマシンウィンガーに隠れるように誘導する。言われるがままにそそくさと海未とことりは隠れるが、俊平は変わらずに眼前のグールを睨み付けており、ウィザードも彼の隣に並び立った。
「おいおい、隠れててもいいんだぜ?」
「冗談…。人手不足な状況と思う人が変わるだけでしょうよ?」
ウィザードの軽口に軽口で返す俊平に、返された魔法使いは「フッ」と小さく笑った。
「確かにそうだな。俺もさっきの戦いで魔力はスカスカになってきてる。」
「だからこそ、短期決戦でケリをつけなきゃ…でしょ?」
「言うじゃねえか…お前に出来るとでも?」
「出来るか出来ないかじゃないし…寧ろ!」
会話を繰り広げている間に突っ込んできたグールに、俊平は一発のストレートパンチを浴びせると、静かに続きの台詞を言う。
「俺達二人なら、余裕でしょ?」
「へっ…そうだな!」
俊平の台詞に同調するとウィザードは、俊平から少し離れるように駆け出した。
「さぁてと、よいしょ!」
ウィザードは、まず正面にいたグールの顔面を肘打ちで当てて仰け反らせる。当てられたグールは強く握り締めていた槍を、一瞬だけ緩く持ってしまった。
「よっと、こいつは戴くぜ!」
その一瞬を好機と見たウィザードが、槍を強引に奪い取った。槍を奪われたグールはどういう事なのかと狼狽えているようで、ウィザードから見ればそれは格好の的だった。勢いよくグールの腹に刺し、そのまま放置する。
直後、後ろから二体のグールが呻きに似た鳴き声をあげながら襲い掛かろうとしていた。
「うおっ! 危ないねえ…っと!」
その場でしゃがみ込む事で背後からの襲撃を躱したウィザードはそのまま後転し、刺したまま放置していたグールから槍を抜き取ると、薙ぎ払うように二体のグールを退けた。
「これで三体…最初にいた二十体を分けても、遠い数に感じるぜ…。」
やれやれと言わんばかりの調子でウィザードは呟くが、依然として攻撃の手を緩める事はない。そもそも残りの魔力自体が変身できる状態を維持するために注ぐのがやっとである現状だ。俊平もそれを理解していたからこそ、短期決戦を持ち掛けたのだ。
「ふう…そろそろ、終わらせるか!」
ファフニールとの戦いから、対グールの群れという連戦にいい加減うんざりしてきたウィザードは、握り締めていた槍に魔力を込める。本来なら、ウィザーソードガンにウィザードリングで魔力を注入するのが彼のやり方だ。だが敵から奪った武器ならば、そうはいかない。当然だが、ハンドオーサーがないのだから。
ではどうすればいいのかと言うと、単純に魔力を注ぐだけなら指輪を介さずとも出来るのだ。ウィザードの魔力は、ファントムが持つ魔力と対をなすもので、今持っている槍も一定以上の魔力を注がなければ壊れる事はない。
「はああっ!! たあっ! はああああ!!!」
魔力の注入を終えた陽人が、迎え撃ってくるグールを次々と薙ぎ払い、貫いた。
直後に攻撃を受けたグールは呻き声を上げながら爆散した。これで少なくとも残り十体か――。一息ついたウィザードは俊平の方を見る。
どうやら杞憂で終わりそうだった。
●
俊平も、戦う手段を持っていないわけではない。とは言え、その手段は徒手空拳という武器を持つよりも死の危険に繋がるものだ。
故に俊平は、一撃で敵を仕留める程の技量がなければならない。だが十五歳の少年に、異形の怪物であるグールを一撃で倒すことなど、到底不可能だ。先程グールに繰り出したストレートパンチも、一種のカウンターの要領で繰り出したからこそ怯むことができたのだ。
ではどうやって一撃で仕留めるのか。
「まずひとつ!!」
グールの動作自体が遅めであるため、俊平は素早く一体のグールの後ろに回り込むと、首の関節を外した。
関節を外されたグールは短い呻き声のような悲鳴を上げると、そのままだらりと倒れた。そして倒れたグールの槍を拾い上げると、器用に振り回した。
「ホアッ! アタァ!!」
洒落っ気も交えた雄叫びとともに、俊平は槍を薙ぎ払う。ただの人間が振り回しているとはいえ、グールから奪った槍だ。魔力で活動をする怪物には有効打を与えられる。
「うわっ、わっ…!」
だがそれでも完全に仕留められる訳ではない。残り五体というところで、徐々に俊平が押され始めていた。だが俊平の顔色はさして変わらなかった。奪い取った槍でグールの群れの攻撃を受け止めていたが、その槍を俊平はふわりと浮かばせるように手放した。
「おっととと…!」
得物を突然手放したことにグールは驚いたのか、俊平に一瞬の隙を与えてくれた。その一瞬の隙を利用して俊平は横に転がり、すぐさまグール達の後ろに回り込んだ。
回り込まれたことに気付いたグール達が、一斉に後ろを振り向く。俊平は意地悪な笑みを浮かべると、最後尾にいた一体の背中にミドルキックを放った。
「グガオ!」
蹴られたグールは悲鳴にも似た呻き声をあげながら、ドミノのように他のグールを巻き込んで倒れていった。
「さてさて、また貰いますよ…。」
蹴られて蹲ったグールが得物を手元から離している隙に、また槍を奪い取る。今度はそろそろケリを付けて確実にとどめを刺したいため、長い得物は短く持っている。
「うりゃあ!」
一体のグールの胸部を貫き、抜く。その刺突は後ろのグールにも貫いていたようで、これで二体はぐったりと動かなくなった。残り三体のグールも、動かない二体を払い除けて襲い掛かろうとするが、この程度の数なら、俊平にはどうということはないものだった。
二体をすれ違い様に横に槍を薙ぎ払うと、最後の一体を腹部に刺し、その勢いで刺したグールを壁に押し付けた。
ずぽ、と生々しい音を立てながら槍を腹部から抜かせると、まだ倒れるわけにはいかないと言わんばかりによろめきながらも攻めようとするが、それは敵わずにうつ伏せにそのまま倒れた。
「ふう…あー疲れた。」
片が付いたと確信した俊平が槍を放り投げると、全てのグールは爆散していった。
●
「よう、終わったみたいだな。」
倒したグールが爆散し、残ったのは俊平とウィザード。隅にはバイクに隠れた海未とことりだけになった路上で、ウィザードが俊平に話しかける。
「ええ、よーやっと終わったっすよ…。後で人員寄越して、二人を送り届けますから今日はここでお別れっすよ。」
「おう、じゃあな。」
短く言葉を交わすだけで十分だった。ウィザードはマシンウィンガーの辺りまで歩き、ひょこっと隠れていた海未とことりを覗き込んだ。
「ひっ…!」
どうやら驚かせてしまったようだ。海未が小さく悲鳴を上げている。どうしたものかと頭を悩ませるウィザードだったが、ことりがか細い声で「あ、あの…」と話しかけたことで、旨く話が進みそうだ。
「お、終わったんですか…?」
「ん、おう。終わったよー、これで一安心さ。」
気さくに語りかけるウィザードの言葉が本当か、海未とことりは頭を少しだけ覗かせる。言葉通りの光景が目に映っていたのを確認した二人は、漸く立ち上がった。
「それじゃ、俺は退散するよ。気を付けて帰れよ、三人とも。」
ウィザードはそう言い残すとマシンウィンガーに跨り、そのまま走っていった。走っていくウィザードを見届けた三人は、それぞれ顔を見合わせた。
「二人とも、大丈夫っすか?」
「え、ええ…。それにしても…。」
「俊平君って、なんというか…凄いね…。」
二人が俊平に驚くのも無理はなかった。ただの人間が、いくらウィザードと手分けしているとはいえおよそ十体ものグールに、敢然として立ち向かうなど自殺行為に等しいものだ。だが俊平は見事にグールを全て倒してみせたのだ。それが却って、鹿野俊平という男と知り合って間もない者から見て、疑問が増えていくのも無理はなかった。
「まあ、昔は結構荒れていた時期があったんで、その賜物っすよ。それよりも早いとこ、高坂先輩の鞄を届けましょう。あんな事があったから、ちょっと日も暮れそうっすよ。」
俊平のその言葉で本来の目的を思い出した海未とことりは、そそくさと俊平とともにこの場を離れていくのだった。
(あからさまにはぐらかされましたね…。)
(うーん…機会は次の内に、ってことにしよっか…。)
●
「ありがとう! 海未ちゃん、ことりちゃん、俊平君! いやあ~、目が覚めたらいつの間にか家にいたもんだからビックリしちゃったよ~!」
アハハハ、と笑い飛ばしながら、穂乃果はことりから自分の鞄を受け取る。無事に変わらない穂乃果の笑顔を見る事が出来て、海未とことりはほっとしていた。
「そうだ、話し合いたいことあるから、上がっていってよ! 丁度ハル君も来てるしさ!」
「え? 陽人くん来てるの?」
「うん! 今後のスクールアイドル活動について、話し合った方がいいんじゃないかって言われてたから!」
穂乃果の説明に、海未とことりはなるほどと納得した。生徒会長の絵里に拒まれたとはいえ、三人ともに活動を辞める気はさらさらない。どうにかして活動を続けるのか、今のうちに話し合うのも悪くない。
「でしたら、少しお邪魔させていただきます。」
「お邪魔します、穂乃果ちゃん♪」
「どうぞどうぞー! あ、俊平君も上がってく?」
「おお、いいんすか? これは願ったり叶ったりっす!」
穂乃果の誘いを俊平は有難く受け取り、海未とことりと共に二階にある穂乃果の部屋に上っていった。
「おう、来たか。まあ適当にその辺に座っとけ。」
自分の家でもないのに、さも自分の家であるかのようにくつろぎながら陽人が出迎えてきた。これには幼なじみ二人も俊平も、引いた反応しか出なかった。
陽人が穂むらに来た理由は、俊平による連絡を受けたからだ。ウィザードとして戦い、海未達から離れた後、俊平からメールが送られてきたのだ。当然、内容は“海未とことりの護衛”である。
わざわざこんなメールを送ってきたのは、辻褄合わせのためだ。海未は勿論、穂乃果もことりもどこか鋭いところを時折見せることがある。言うなればこのメールは、彼女達が深入りし過ぎないための対策という事である。
「いくら何でも、限度ってものがあるでしょうよ…?」
「注意しても無駄ですよ…陽人君、昔から穂乃果の家に遊びに来た時ってこんな感じでしたから…。」
さらっと明かされた陽人の昔話に、俊平は思わず呆れるしかなかった。
いつまでも立っている訳にはいかないので、海未とことりはテーブルのそれぞれ一辺を一人ずつ陣取った。俊平もそうしようかと思ったが、既に陣取っていた陽人、そして海未とことりの流れを考えると、残り一辺は穂乃果の分だろう。察した俊平は、胡坐をかいてベッドにもたれかかることにした。
「お待たせ、皆!」
それぞれ座り終わると、穂乃果がトレーに人数分のお茶を載せて部屋にやってきた。穂乃果はトレーをテーブルに置き、お茶を各々に配ると、彼女もテーブルの残った一辺に陣取った。
「よーし、それじゃあこれから、スクールアイドルをどうやって活動するか、話し合おう!」
エイエイオー、と言わんばかりに握り拳をあげる穂乃果に、陽人は苦笑いする。ついさっきまでファントムに襲われていたというのに、すっかり元気を取り戻したようだ。
「まあまずは、あの冷たい生徒会長さんをどうにか言い包めなきゃなー…。」
陽人が示す一番の難点に、三人も唸って考え込む。俊平はというと、あえて蚊帳の外でいることを選んだ。彼の目的自体元々海未とことりの護衛だったし、穂むらに上がったのは一応ついでという面もあるからだ。
「そうですね…しかし、あの頑固者となると…。」
「どうにかして説得するのは、難しいよねぇ…。」
さらりと海未が毒舌な一面を覗かせた気がする。陽人は思わず海未の方を見やるが、自身の発言には気にも留めていないようだった。
「え? 別に説得する必要ないんじゃない?」
「え?」
「はい?」
「あ?」
突然の穂乃果の奇を衒った発言に、三人は思わず間抜けな声を出してしまった。
「…穂乃果の考えを聞かせてくれるか?」
訊ねる陽人に、穂乃果は悪戯を思い付いたような笑顔を浮かべて「ふっふっふ…」と笑い声を漏らす。そんな彼女に業を煮やした陽人は、頭を軽くチョップして、続きを促した。
「ほ、穂乃果の考えとしては…ライブをやればいいんじゃないかな!」
「ラ…」
「ライブですか?」
穂乃果の考えた事があまりにも突拍子が過ぎたのか、海未とことりは思わず鸚鵡返しで反応を返す。陽人も、何を言っているんだコイツはと言わんばかりに穂乃果に少し呆れていた。
「馬鹿かお前。生徒会長を説得しなきゃならないのに何でライブをしなきゃいけねえんだよ?」
「う、うう…ハル君に馬鹿って言われたぁ…。そ、そこはほら…こっそりとやれば…。」
「アホかてめえは! 何が悲しくてライブをこっそりやらなきゃいけねえんだよ!?」
「うわーん! ハル君にアホって言われたぁー!!」
おいおいと海未に抱きつく穂乃果だが、正直に言って、海未も陽人と同意見だった。ことりも流石に、呆れるしかなかった。
「口挟むのもあれですけど、仮にライブをやるとしてどこで開催するんすか?」
ここで、今まで黙っていた俊平が会話に入る。俊平の問いに穂乃果はきょとんとした顔を見せながらも答える。
「え、講堂だよ?」
「講堂…。」
穂乃果の答えに海未が復唱すると、ぶつぶつと呟きながら考え込みだした。数秒して、閃いた表情を見せた。
「穂乃果にしては、いい案を思いつきましたね…やはりライブを行いましょう。」
「あれ、海未ちゃん? 海未ちゃんも穂乃果馬鹿にした?」
「き、気のせいだよ…。」
ことりが海未の毒のある言葉に誤魔化しを入れるが、もはやその時点でことりも認めたようなものだった。
「おいおい、まさかお前までこっそりやるなんて言い出すんじゃないだろうな?」
「さ、流石に私もそこまで言いませんよ!? 私が言いたいのは、講堂の使用許可だけ貰おうという事です!!」
海未の意図に、ことりは「そっか、そういうことか!」と一人納得していた。話が分からない陽人からすれば、チンプンカンプンだった。
「講堂の使用許可自体は、一般生徒でも申請すれば可能なんです。」
「何っ、そうだったのか…。つまり講堂が使えたら、ライブもやれるって訳か?」
「ええ、その通りです。」
盲点を突かれたと陽人は思った。ライブの許可を得るのではなく、ライブの開催場所の許可を貰えればこっちのものだという事だ。逆転の発想に、陽人は思わずニヤニヤと笑いが止まらなくなった。
「全く…お前等は天才かよ…。」
口元を抑えながら、陽人が言う。傍から見ればニヤニヤした笑みを浮かべるのは気持ち悪い事だろう。それ程に気分が高揚していた。
「それじゃあ、ライブは開催するって事でいいんだよね?」
「ああ、そうだな。くれぐれも、馬鹿正直にライブやりますなんて言うんじゃねえぞ、穂乃果?」
「もー、そこまで馬鹿じゃないもん!」
頬をぷっくりと膨らませる穂乃果だったが、「どうだか」と陽人は軽く疑う。そこまで話が進んだところで、ふと、もう一つ決めなければならない事を思い出した。
「そういえば…仮に開催場所を確保できたとして、開催日程とかどうするよ?」
「そこは月末の新入生歓迎会の日を利用すればいいんじゃない?」
肝心の日程に、ことりの意見が冴え渡った。確かに普通の授業があるような疎らな時間が目立つ日よりは、挙って一年生が集まる歓迎会を利用しない手はない。
「よし、じゃあ明朝に早速講堂の使用許可を取りに行くぞ。日程は月末の新入生歓迎会…で、いいんだろ? 穂乃果?」
「うん、今日のところは、ひとまず解散!」
穂乃果の鶴の一声により決定し、彼女達はそのまま帰宅する流れになった。
「じゃあねー! また明日!」
手を大きく振って見送る穂乃果に、陽人達四人も手を振って返す。帰路につく四人が歩く中、誰も喋ろうとしなかった。
「そ、そういえば…なんで陽人君は穂乃果の家にいたんですか?」
沈黙が居た堪れなくなってきた海未が、陽人に訊く。陽人はというと、状況が状況故に出てしまった質問であるため仕方なかったが、やはり訊いてくるかと思った。
「ぶっちゃけ、先回りだよ。俊平からお前らがバケモンに襲われたって聞いたから、居ても立っても居られなくなって穂むらに先に行って、待ってることにしたんだ。」
「そ、そうだったんだ…なんか、ゴメンネ?」
ことりが謝罪してきた事に、陽人は面食らった。陽人だけでなく、俊平も同じような表情になっていた。
「謝る必要なんてないだろ。男ってのは、女が弱ってる時に手を差し伸べる生き物なんだからどうってことねえよ。」
そう言ってけらけらと笑う陽人のおかげで、四人に包まれた雰囲気は少しだけ和やかなものになりつつあった。
●
「…朝から何?」
次の日の朝。陽人達は講堂の使用許可申請書を生徒会長である絢瀬絵里に提出しに来ていた。絵里の方はというと、また来たのかと言わんばかりに鬱陶しい態度を隠さなかった。
「講堂の使用許可書を提出しに来ました! 最初に生徒会の許可を貰ってからじゃないと、先生にも判子を押してもらえないので!」
「新入生歓迎会の日に、講堂の使用許可を貰いたいので。」
「講堂を使用するだけなら、一般生徒の私達でも許可は貰える筈です。」
穂乃果、陽人、海未の順につらつらと理由を述べる。
「でも貴方達、一体どういう目的で講堂を使うの?」
「そ、それは…。」
「ライブです!」
絵里の問いに、海未は思わず言葉を詰まらせる。そういえばいざという時の誤魔化しを考えていなかったため、どんな理由にするか…そう考えていた矢先に、穂乃果が正直に理由を言ってしまった。
「新入生歓迎会の放課後に、ライブをやろうと思っています!」
「ほ、穂乃果ちゃん…ライブをやるって言っても、まだ仮決めのようなものだからね?」
「えー、やってみせるよ! 絶対!」
馬鹿正直に理由を言ってしまった穂乃果をことりは宥めようとするが、それでも穂乃果は止まらなかった。そんなやりとりに絵里は呆れたのか、ふう、とため息を吐いた。
「出来るの?」
「うっ…だ、大丈夫です! やってみせます!!」
言葉を詰まらせながら答える穂乃果の様子は、どう絵里から見ても行きあたりばったりで計画を進行していることは明確であった。
「新入生歓迎会は遊びでやっているのではない。そんなホイホイと簡単に決められるものではないのよ?」
「別にええんやない?」
絵里の冷たい反論によって講堂の使用許可も一蹴されるかと思われたが、意外な人物から援護が入った。生徒会副会長の東條希だ。
「講堂の使用を許可するのは確かにウチら生徒会と、先生達。だけど、その内容までとやかく言う必要はないんやない?」
「希…!」
希の正論に、絵里は何も言えなくなってしまう。希という意外な伏兵の援護に小さく笑みを浮かべた陽人は、念を押すように確認する。
「じゃあ、許可は貰えるということで?」
「うん、オッケーやで。…はい、これで正式に許可します♪」
陽人の確認に、希は四人の眼前で許可の証を示す判子を押す。その様子を見て、四人はそれぞれ嬉しげな反応を見せた。
「それじゃあ、失礼しました。」
陽人を皮切りに、穂乃果達三人もそれぞれ「失礼しました」と言い残し、生徒会室から出て行った。
「何故あの子達の味方をするの?」
生徒会室のドア越しに聞こえる少女達の歓喜の声をバックに、絵里が希に訊く。その声のトーンはどこか低く、まるで憎々し気な想いを乗せているかのようだった。
「何度やっても、そうなるんや…。」
そんな絵里に気にすることなく、希は窓を開けながら飄々と答える。そして両腕を大の字に広げた直後だった。
突風が窓から入り、資料や希の愛用するタロットカードが飛び散った。
「カードが…! カードがウチに、そう告げるんや!!」
そんな中でも動じる事無く自らのよく当たる“カン”を信じ、言葉にする。
やがて突風も止み、壁には希のタロットカードが、二枚張り付いていた。
<慈悲>・<連帯・協調性>・<信頼>・<尊敬>・<優しさ>・<思いやり>・<自信>・<法令・規律の遵守>の意味を持つ、教皇の正位置。
<成功>・<誕生>・<祝福>・<約束された将来>の意味を持つ、太陽の正位置。
まるで名も無きスクールアイドルの誕生を祝福し、その後を見守るかのようだと、希は壁に貼り付いたカードに向きながら思った。
次回、Love live is SHOWTIME!!
「せめてスカートの丈の長さは膝下までお願いします!
「…いくら何でも、タイミングが絶妙過ぎじゃないか?」
「そういえば、俺がいない放課後は何かあったか?」
「海未ちゃん…おねがぁい!!」
さあ、ショータイムだ!